安倍晋三元首相=6日、東京都港区 |
安倍晋三元首相は14日、台湾や米国、日本のシンクタンクなどが台北で開催した国際フォーラムでビデオ講演し、「中国のように巨大な経済体が、軍事における冒険を追い求める場合、控えめに言っても自殺的になる」と強調した。台湾統一を目標に掲げ、軍事的威圧を強める中国を再び批判した。
安倍氏は、「中国に対しては、領土拡張を追い求めてはならないと強く言うべきだ。隣国を挑発したり、しばしば追い詰めたりする行いは控えるべきだと言うべきだ」と発言。台湾や沖縄県の尖閣諸島、南シナ海の周辺で軍事活動を活発化させている中国を強くけん制した。その上で、日米台などの民主主義陣営の結束を呼び掛けた。
【私の論評】「中国による台湾武力侵攻は、控えめに言っても自殺的になる」は事実(゚д゚)!
安倍さんはここ最近、精力的に発言されていらっしゃいますが、 総理でなくなったということを、良い意味で活用されていると思います。中国共産党によるウイグル人に対する弾圧に対する批判を中国は「内政問題だ」と主張することに対して、安倍氏は総理の時代から反論されて来ましたけれど、ここまではっきりとは言えませんでした。
来年は、ますます「中国に対してどういう姿勢で臨むのか」ということが日本の鍵になるという示唆でもあると思います。アジアのなかで、いま中国共産党の独裁主義にものを言える国は、実は日本しかいないのです。
ナチズムの専制主義に対して、1930年代当時のヨーロッパでものを言うことができたのは、ドーバー海峡を挟んだ英国だけでした。 しかし、その英国でさえも最初はチェンバレン首相が宥和政策を取り、宥めようとして、かえってチェコやポーランドを差し出す結果となり、それが大きな戦争につながることになりました。
英国はそこで切り替えて、チャーチルが現れたのです。岸田総理は、その分岐点に立っていると思います。チェンバレンのようになるのか、チャーチルになるのか。
最近の安倍氏は、自由に意見を述べていますが、岸田総理に対しては「対中国に宥和的な姿勢はもう通用しない」と語りかけているのだと思います。 そうして、このメッセージは対中国のというよりは、日本国内に向けてのもでしょう。
中国共産党に対してメッセージを出すのも大事ですが、それで方向転換するような中国ではありません。というより、独裁体制ではそれは、できないのです。
民主主義のようにいろいろな意見が出て来ないですから、独裁者が失脚するような極端なことがなければ意見を変えられないのが、独裁主義の大きな弊害の1つです。
そのため、中国共産党をこのメッセージで動かそうとしているのではなく、岸田現政権に対して、「いたずらな宥和政策は、アジアの平和にとって有害ですよ」ということを言いたいのでしょう。台湾のことを例にして語っていますが、本当の真意はそこだと思います。
ただし、台湾国防部からすると、中国は演習に見せかけていきなり攻撃して来る可能性もなきにしもあらずです。その可能性の恐れを指摘されることは正しいのですが、現実の中国軍にはこのブログでも何回か述べたように、台湾に侵攻できるような能力はありません。
ただ、台湾の南には東沙諸島があり、日本の尖閣諸島と似ているのですが、そこに対して攻撃をしかける可能性はあると思います。そこに拠点を置き、台湾を破壊することはせず、そこを拠点に台湾の内政を動かし、中国共産党の思い通りにするという懸念はあります。
東沙諸島まで、横須賀からアメリカ海軍の主力である第7艦隊が向かっても、数日はかかりますから、狙われる可能性は否定できません。現在台湾海峡から南にかけては異常な緊張状態にあります。ただ、私自身は、このブログでも述べてきたようにすでに米国は台湾付近に強力な攻撃型原潜を潜ませていると考えています。
米海軍は、中国海軍よりもはるかに対潜水艦戦闘能力(ASW)が強力ですから、攻撃型原潜の脅威があれば、中国は迂闊に手を出せません。手を出した海軍部隊は破滅することになります。東沙諸島にさえ手をだすのは、中国にとっては大冒険です。
「中国のように巨大な経済体が、軍事における冒険を追い求める場合、控えめに言っても自殺的になる」という安倍総理の発言は、このことを意味していると思います。中国が台湾に武力侵攻した場合、米軍の攻撃型原潜の猛攻撃を受けるのは間違いありません。
そうなると、中国海軍はほぼ壊滅するでしょう。おびただしい数の犠牲者が出ることになります。これを安倍元総理は、「自殺的」と表現したのでしょう。
これは、わかりやすい言葉です。特に、米攻撃型原潜の攻撃力は以前にも述べたように、強力ですから、中国のほとんどの艦艇は撃沈され、壊滅状態になる一方米側にはほとんど被害がでず、このような言葉は使いたくないですが一方的な「虐殺」に近いことになるでしょう。中国が台湾に武力侵攻するということは、これだけ無謀なことなのです。
さらに、中国海軍が壊滅するだけではなく、米国は報復のため国際金融支配力を用いて本格的に中国を世界経済から切り離すことになるでしょうから、そうなるとまさに「自殺行為」になってしまいます。安倍総理のこういった実体を中国側に認識させるという意味もあったでしょう。
ただ、現状では、日本の自衛隊と台湾軍が何かをやろうという動きは、公式にはできないところがありまます。 法的にできないわけではないのですが、ただ、簡単に言うと、自衛隊は活動範囲がかなり限定されています。
もちろん憲法9条の制約もあります。安倍政権下で平和安全法制ができて、集団的自衛権を認めたのですが、米軍筋の反応として、むしろ逆にこの安保法制は限定条件が厳しすぎてで使えないとみているようです。
第二次世界大戦当時からそうですが、戦争を避けるには、一国だけで自国を守備するというのではなく、様々な国と組まなければならないという厳しい現実があります。この時代に米国側からは「自衛隊だけで国防ができる」という考え方を、日本はいつまで続けるのかと見られているのです。
存立危機という奇妙な言葉を使ったり、「〇〇事態」なるものがたくさんあり、国民には理解しにくいですが、米国にとっても理解しにくいのです。無論台湾にとつても理解しにくいです。ただ、中国にとっては、いざというときに自衛隊かが動けないわけですから、理解しにくいままで良いのです。
ただし、このブログで過去に主張してきたように、自衛隊の海戦能力、特に潜水艦艇の能力は、世界最高レベルです。原子力潜水艦より、日本の通常艦の方が局地戦で見れば上といっても良いです。
確かに、日本の潜水艦は、攻撃力や巡航能力は米攻撃型原潜には劣るところがあります。ただし原子力潜水艦は構造上どうしてもある程度騒音が出ますから、中国海軍でも探知できる可能性があります。ところが日本の潜水艦は、ステルス性(静寂性)がかなり高いですから中国はこれを探知できません。
そうりゅう型潜水艦「とうりゅう」 「出典:海上自衛隊ホームページ」 クリックすると拡大します |
そのため台湾や米国から、「平和を守る範囲内において、もう少し活動範囲を広げるべきだ」という議論がずっとあります。安倍元総理の発言はそこに対しても問題提起をしていると思います。
私たちの国日本は民主主義の国です。総理大臣をはじめとする国会議員の後ろには有権者がいるわけですから、主権者の方も改めて客観的に冷静に、「平和を守るために何をすべきなのか」ということを、現実の中国の動きをよく見て考えるべきです。
ただ、「中国にとっても利益にならない」と、安倍元総理は語っています。例えば経済から言うと、中国がものを買ってくれる大きさと、台湾がものを買う大きさは、桁がゼロ3つくらい違います。
それでも、これだけ台湾の存在感が増して来ているということは、あまりにも中国共産党の最近の動きが、習近平国家主席の独裁が極端に強化されているからです。それは自滅につながるでしょう。
それに対して、諫言するような人は、習近平政権の体制下では生まれ得ないです。 もともと少なかったのが、習近平は、汚職追及の名の下に徹底的に敵対勢力を失脚させ、追放し逮捕し、投獄ししました。
しかし、習近平の派閥に属する人たちは一切そういう目に遇いません。習近平、あるいは中国共産党自身は独裁体制のほうが良いのです。決定も早いし、ブレもないのだと自負しているようですが、弊害も自分で大きくしているというのが実情です。
そうすると、いろいろな諫言は国外からもせざるを得ません。 さらに人間の尊厳、命に関わる台湾、ウイグル、チベット、南モンゴルなどの問題は、内政問題で片付けるわけにはいきません。
来年(2022年)の通常国会まで待たずに、対中国、人権非難決議を本国会で行うべきです。とは言っても、もう時間がなくなってしまったのですが。少しでもはやくすべきです。
安倍元総理の発言は、そういうことを促すと意味もあると思います。
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