「日本も尿素水不足」報道は本当なのか? 韓国では需要逼迫し流通に打撃 経産省担当者「来年1月には緩和期待」
韓国でトラックなどディーゼル車に使われる尿素水(アドブルー)の需要が逼迫(ひっぱく)し、流通に打撃を与えたことが話題になった。日本でもフリマアプリで高値で取引されており、韓国メディアでは、「日本も混乱の兆しがある」と報じたが、果たして本当なのか。韓国では、アドブルーの原材料となる産業用尿素の97%以上を中国に依存しているが、中国が輸出規制したことで物流や社会インフラが混乱し、詐欺事件まで発生した。
韓国で11月、尿素水確保のため列を作るトラック |
一方、中央日報(日本語電子版)は「韓国批判した日本も『尿素水大乱』の兆し…」と報じている。
「価格が高騰していることは事実で、企業側から手に入りづらいと聞いている。ただ国内の製造メーカーはフル稼働していると聞いており、需要逼迫の明確な理由が分からず、われわれも困惑している」
そう語るのは、全日本トラック協会の担当者だ。企業側が必要以上の在庫を抱えていることに加え、アドブルーの転売が横行している可能性があると推察する。
フリマアプリ「メルカリ」を確認したところ、数多くのアドブルーが出品されており、従来1リットル当たり300円程度のものが1000円程度で取引されている。中には10リットルのアドブルー57個を約54万円で取引したものまであった。メルカリは21日、冷静な行動を取るよう呼び掛けた。出品者に入手経路を確認する可能性もあるという。
そもそも日本は韓国と違って、アドブルーを国内で生産できるはずだが、なぜ逼迫しているのか。
経済産業省は「10月15日からアドブルー用の尿素について中国が輸出を停止している状況のためだ。ネット上での高額な出品は把握しており、対策は不断に検討している」(素材産業課)と回答した。
中国では尿素の原料となるアンモニアの生産に不可欠な石炭不足が輸出規制の背景にあった。
一方、国内最大級の商用生産尿素プラントを持つ三井化学は「アドブルーの原材料が液化天然ガス(LNG)のため、中国の影響は受けていない。ただ10月中旬から11月末にかけて定期修理のため工場の稼働を停止していた。稼働停止中も在庫をお客さまに適切に供給しており、現在は高稼働を続けている」(コーポレートコミュニケーション部)と回答した。
中国の影響と大手の一時的な稼働停止が重なったのが要因だと考えられるが、前出の経産省担当者は「早ければ来年1月を目途に需要逼迫の緩和が期待できる」と話す。
国内での影響は限定的といえそうだ。
カズノコといえば、正月のおせち料理には欠かせない食べ物。ニシンの卵を原料にするカズノコは「黄色いダイヤ」とも呼ばれる高級品です。
カズノコが高級品となる理由は、漁期が短いことです。多くはカナダやアラスカで取れますが、だいたい3月から4月までの1か月間しか漁ができません。
そうして、取り扱う水産会社にとってもリスクの高い商品です。というのも、春ごろに取って加工し貯蔵できるにもかかわらず、売れるのは年末の1か月ぐらいしかないのです(卸は10~11月)。
そのため、買い付ける際は正月前にどれくらい売れるかを予測して価格を決めなければなりません。うまくいけば利ざやが稼げますが、売れなかったら大損です。
カズノコを仕入れる水産会社が利益を得るために考えるのは、市場価格だけではありません。為替相場も重要です。
仕入れたときよりも円高であれば、その分利益も増えます。いわゆる北商倒産事件の起こる1970年代後半は円高が進んでいる時期でしたから、いわゆる北商倒産事件前年の1979(昭和54)年も例年通り利益が得られるだろうと考えられていました。
北商の倒産を伝える当時の新聞紙面 |
そこで同社は卸の時期になっても在庫を売らず、年末が近づき価格が上がるのを待つことにします。そうなると、今度は市場への供給量が減り価格は高騰に転じます。
正月には欠かせないカズノコは、それでも売れるはずでした。しかし多くの人は買わず、「今年は高いから諦めよう」と思ったのです。
この予想だにしなかった「カズノコ離れ」によって、大量の在庫を抱えた北商は経営が悪化し、倒産してしまいます。
しかも大量の在庫を抱えての倒産だったことから、親会社である三菱商事はマスコミから買い占めをもくろんだとして大きな批判を浴びることになったのです。これは「カズノコ買い占め事件」として、今なお日本の経済史に残る事件として語り継がれています。
どんな理由や意図があったとしても、価格が高騰している中で大量の在庫を抱えていれば「買い占め人」のそしりを受けることは否めません。
転売ヤーやマスク事業に参入した中国企業の没落や、北商倒産事件の事例などをみているとドラッカーの「社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させる」という言葉を思い出してしまいます。
社会的責任の問題は、2つの領域において生ずる。第一に自らの活動が社会に対して与える影響から生ずる。第二に自らの活動とは関わりなく社会自体の問題として生ずる。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)工場の目的は、騒音を出し、有害なガスを出すことではありません。顧客のために高性能の製品をつくることである。そのために騒音を出し、熱を出し、煙を出す。これら社会に及ぼす影響は、組織の目的に付随して起こる。かかる副産物はゼロとすることが理想です。
他方、組織は社会環境のなかに存在します。それは社会の機関です。したがって社会自体の問題の影響を受けざるをえないのです。地域社会が問題視せずとも、社会の問題は組織にとって関心事たらざるをえないです。健全な企業、健全な大学、健全な病院は、不健全な社会では機能しえません。
あらゆる組織が、自らの本業を傷つけない限りにおいて、それら社会の問題の解決に貢献しなければならないのです。
社会や経済はいかなる企業をも一夜にして消滅させるとドラッカーは言います。企業は社会や経済の許しがあって存在しているのであり、社会と経済がその企業は有用かつ生産的な仕事をしていると見なす限りにおいて、その存続を許されているにすぎないのです。
社会性にかかわる目標が必要となるのは、マネジメントが社会に対して責任を負うからではない。企業に対して責任を負うからである。(『マネジメント【エッセンシャル版】』)
そもそも、組織的な転売ヤーとか、 短期的な儲けのためだけに新たな事業に参入するなどの組織は、組織ではあるものの、とてもまともな組織とは呼べません。
健全な社会においては、まともでない組織は生き残れないのです。たとえ、当初はまともな組織であっても、途中からまともでなくなった組織は生き残れないのです。そうして、不健全な社会ではまともな組織は機能しえません。
それは、特に中国にあてはまるでしょう。中国のような不健全な社会では、まともな組織は機能しえないのです。
米中両サイドから中国デカップリンクがはじまり、チャイナ・リスクはさらに破滅的になりました。中国当局による中国企業への統制強化が新たな「チャイナ・リスク」となってるのですから、日本企業だけが安泰でいられるわけなどありません。
尿素は、石炭から作られますが、海外メディアなどによりますと、米中の対立によって、米国と歩調を合わせたオーストラリアに対し、中国は石炭の輸入を停止。尿素の原料となる石炭の不足に加え、中国国内では「農業の肥料」としての用途が高いため、そちらを優先し、尿素水の輸出を制限したのです。
日本のような比較的まともな社会では、まともな企業こそが生き残るでしょうが、中国のような異常な社会ではまともな組織は生き残れないのです。だから、儲けを狙った新規参入が一般化しているのです。マスク騒ぎはその典型例です。誰もがまともに事業をして、成り立つのなら、このようなことはないはずです。
中国に拠点を持つ企業も、なるべくはやく撤退すべきです。もう、中国でまともにビジネスができると考えるのは大きな間違いです。
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