2025年1月4日土曜日

〝石破増税大連立〟あるのか 国民民主・玉木氏や高橋洋一氏が指摘 首相が立民・野田代表と維新・前原共同代表に秋波―【私の論評】与野党はと全有権者は、財務省の悪巧みに乗ってはいけない

〝石破増税大連立〟あるのか 国民民主・玉木氏や高橋洋一氏が指摘 首相が立民・野田代表と維新・前原共同代表に秋波

まとめ
  • 石破茂首相は、少数与党での厳しい政権運営を背景に、立憲民主党や日本維新の会との大連立の可能性を示唆している。
  • 自民党内の「石破おろし」や国民民主党との協議の難航を受けて、野党との連携を模索しているが、増税につながる懸念も広がっている。
  • 過去の消費税率引き上げの例を考慮し、「増税大連立」の可能性についての指摘がなされている。
石破首相

 石破茂首相は、現在の少数与党による厳しい政権運営を受け、立憲民主党や日本維新の会との大連立の可能性を示唆している。これは、自民党内での「石破おろし」や国民民主党との年収の壁引き上げに関する協議の難航を背景にしていると考えられる。石破首相は1日のラジオ番組で、野党との大連立について「選択肢としてあるだろう」と述べ、野田佳彦代表や前原誠司共同代表との信頼関係についても言及した。

 また、12月29日のTBSの番組では、国民民主党や日本維新の会との政策協議において、連立政権の可能性を示唆している。国民民主党の玉木雄一郎代表は、石破首相の意図について疑問を呈しており、政治家たちの間で意見が分かれている状況が見受けられる。

 さらに、高橋洋一氏は「増税大連立」の可能性を指摘し、過去の消費税率引き上げが自民党が単独政権でない時期に行われたことを例に挙げている。このような歴史的背景から、現在の状況においても「二度あることは三度あるのか」という懸念が存在している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事を御覧ください。

【私の論評】与野党と全有権者は、財務省の悪巧みに乗ってはいけない

まとめ
  • 2月末の野党による予算組替えが政治的対立を激化させる可能性が高い。国民民主党は基礎控除の引き上げを提案し、維新の会は教育無償化を求めている。
  • 財務省は、石破政権と国民民主党の協議を利用し、維新の会に乗り換えることで国民民主党を切り捨てるシナリオを描いている。
  • 最終的には自民・立民大連立の実現に向けて、増税や移民政策、選択的夫婦別姓などが一体的に推進される可能性がある。
  • 日銀は一般物価水準からいうと、まったく必要がないにもかかわらず、金利を年内2回上昇させる意向があるようだ。
  • 増税と金融引き締めは国民生活に深刻な悪影響を及ぼし、特に消費税の引き上げが家計に直接的な負担を強いることが懸念されている。国民生活に与える影響を真剣に考える必要がある。

国民民主党 玉木氏

2月末、野党による予算組替えが政治の舞台にどのような波紋を広げるのか、注目が集まっている。国民民主党が基礎控除を178万円に引き上げる提案を持ち出し、維新の会は教育無償化を求めている。立憲民主党の動きも見逃せない。これらの提案は、国民の生活に直結する重要な政策であり、各党の立場が明らかになることで、政治的対立が一層激化することが予想される。

しかし、その裏には財務省の悪巧みが潜んでいるのではないかと考えざるを得ない。財務省は、石破政権と国民民主党との協議を進めさせ、基礎控除を178万円にする提案を持ち出させる一方で、維新の会に乗り換え、教育無償化を推進することで国民民主党と基礎控除引き上げを切り捨てるという仕組まれたシナリオを描いている可能性がある。

最終的には、立憲民主党との大連立を目指し、これまでの関係を一掃し、無論基礎控除の引き上げも、教育無償化もなかったことにする動きが見え隠れしている。ここで注目すべきは、大増税や移民政策、選択的夫婦別姓、さらには親中路線など、様々な政策が一体となって推進される可能性があることだ。財務省の意図は、果たしてどこにあるのだろうか。


もし石破政権が総選挙を行い、自民・公明が大敗を喫した場合、石破に財務省にとっては使い勝手の良い増税派立憲民主党の佳彦代表との連携を図らせ、増税を伴う大連立を実現させる可能性が高い。具体的には、消費税が10%から12%、さらには15%へと段階的に引き上げるシナリオを描いているだろう。

このような政策を推進することで、石破政権はその名を歴史に刻むことができるかもしれないという見当違いの財務省寄りの見方を石破がしている可能性もあるし、野田立憲民主党も大連立と大増税で歴史に名を刻むことに執心しているかもしれないが、実際にはその実現には多くの障害が伴うのだ。

増税と金融引き締めは、国民生活に深刻な悪影響を及ぼすことが懸念されている。特に、消費税の引き上げは家計に直接的な負担を強いることになり、消費の冷え込みを招く恐れがある。加えて、金利の上昇は住宅ローンや教育ローンなどの借入金利を引き上げ、家庭の資金繰りを厳しくする可能性が高い。これにより、実質的な可処分所得が減少し、国民の生活水準が低下する事態も考えられる。

しかし現実には、予算組み換えで野党が結束する場合、「予算案の否決」が次のステップとして考えられる。この場合、解散の動きが出てくる可能性が高く、石破おろしによる石破辞任、さらには7月の参院同時選挙が行われることになるだろう。

逆に、野党が結束しない場合は「予算案の可決」が進むことになるが、それでも参院選の前に石破おろしが進むことは避けられないだろう。自民党と立憲民主党の大連立が実現する前に、石破政権が持たない可能性が高い。次の政権がどのような方針を打ち出すのか、それによって大増税路線がどう変わるのか、目が離せない。

さらに、日銀は2025年中に金利を2回上昇させることを目論んでいるようだが、米国では逆に2回の金利引き下げが予想されている。このような金利の動向が為替市場にも影響を与え、円安が終息し、円高傾向になる可能性がある。日銀は植田総裁の任期が続く2028年4月までに金利2%とし、この水準を維持することを目指しているようだが、そもそも現状の一般物価水準で利上げをする必要姓など全くない。

新川浩嗣財務次官


ただ、何かの歯車が狂って、自民・立憲の連立政権ができた場合、これは財務省の大勝利であり、財務省の悲願である大増税だけではなく、金融引き締めも実現されるだろう。失わた30年はこれからも続き失われた50年かそれ以上になる可能性は高い。

国民にとって、2月末の野党による予算組替えがどのような影響をもたらすのかを真剣に考える必要がある。財務省や日銀の狙いや政局の変化が国民生活に与える影響は計り知れない。私たちが今、目を向けるべきは、ただの政治ゲームではなく、私たちの生活そのものなのだ。果たして、この先、私たちが望む未来は実現できるのか。政治の行方に目が離せない。有権者の我々は、石破政権の行く末だけでなく、財務省の悪辣な動きを見逃してはならない。

無論選挙で選ばれることのない、財務官僚が政治に直接関わることは本来許されるべきことではない。しかし、現実には強い関わりをもっていることを忘れてはならない。いまこれを無視して、綺麗事を並べ立てても無意味である。全有権者と多くの財務省に絡め取られていない政治家が目先の利害に拘泥することなく、リアリストにならなければならない。米国では、トランプ政権が誕生したが、この真の理由をいまだにマスコミは報道しない。米国では、多くの有権者がリアリストになった結果、いわゆるディープステートを駆逐しようとするトランプ政権が誕生したのだ。

【関連記事】

来年度予算案、税収70兆円台後半とする方針…6年連続で最高更新の見通し―【私の論評】日本の税収増加と債務管理の実態:財政危機を煽る誤解を解く 2024年12月25日

財務省と自民税調の〝悪だくみ〟減税圧縮・穴埋め増税 野党分断で予算修正阻止 足並み乱れた間隙狙い…特定野党に便宜も―【私の論評】これからの日本政治における野党の戦略と国民の役割 2024年12月19日

「178万円玉木案」を否定…”何としてでも減税額をゼロに近づけたい”財政緊縮派の「ラスボス」宮沢洋一・自民党税調会長の正体―【私の論評】宮沢洋一氏の奇妙な振る舞いと自公政権の変化:2024年衆院選後の財政政策の行方 2024年12月16日

「最低賃金1500円」の幻想、石破政権の左派政策は失敗する 理念先行で具体的手順なし 安倍元首相は「リアル」を先に考えていた―【私の論評】フィリップス曲線の真髄:安倍政権の置き土産を食い潰す愚かな自民と立民 2024年10月8日

民間企業なら絶対許されない…政治家が繰り返す「減税の法改正は時間がかかる」の大嘘「本当は能力がないだけ」―【私の論評】国民を苦しめる与党税調の独占!自民党は国民の声を反映した迅速な減税を! 2023年10月21日

2025年1月3日金曜日

【速報】韓国 ユン大統領拘束に向け 捜査官が公邸の敷地に進入―【私の論評】韓国の民主主義崩壊危機、日米はどうすべきか

 【速報】韓国 ユン大統領拘束に向け 捜査官が公邸の敷地に進入

ユン・ソンニョル(尹錫悦)韓国大統領

韓国の通信社、連合ニュースは、ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が「非常戒厳」を宣言したことをめぐり、内乱を首謀した疑いで大統領の拘束令状をとった合同捜査本部の捜査官らが、ソウル市内にある大統領公邸の敷地に入ったと伝えました。拘束令状の執行に着手するとみられるものの、大統領府の警護庁が阻止しようとする可能性もあると報じています。
2025年1月3日 10時55分

【私の論評】韓国の民主主義危機、日米はどうすべきか

まとめ
  • 韓国の大統領が拘束される事態は、民主主義の根幹を揺るがし、選挙で選ばれたリーダーに対する信頼を損なう。
  • 法治主義が脅かされ、国民の自由や権利が侵害され、政治的対立が激化している。
  • 過去の政権による法律の乱発が、政治的抑圧や監視の強化を招いているとされる。
  • フリーダムハウスの2021年のランキングでは、韓国は「部分的に自由」と評価され、自由度スコアは2.5で約43位となっている。
  • 韓国の民主主義の成熟が求められ、日本との関係は例外はあるものの基本的に冠婚葬祭レベルに限るべきである。
韓国の現状は、まさに異常事態である。大統領が拘束されるかもしれないという事態は、民主主義の根幹を揺るがすものであり、私たちが知っている政治の常識を覆す。ユン・ソンニョル大統領が「非常戒厳」を宣言したが、それに対して内乱の首謀者としての疑いで拘束令状が発行されたことは、選挙で選ばれたリーダーに対する信頼を根底から揺るがす行為だ。

法治主義は、民主主義の基礎であり、すべての国民が法の下で平等であることを保障する。しかし、現在の韓国では、その原則が脅かされている。国民の自由や権利が侵害され、政治的対立が激化し、社会の分断が進んでいるのが現実だ。こうした状況の背後には、過去の大統領たちが政敵を排除するために乱発した法律があるとされる。

朴槿恵政権下の2016年に改正された国家情報院法。この法律は、国家情報院の権限を強化し、情報機関が政治活動に介入する余地を与えたとされる。特に、国家情報院が選挙に介入したことが問題視され、2012年の大統領選において、国家情報院がSNSを通じて世論操作を行った事例が明らかになったとされる。これにより、権力の乱用が疑われる中、監視や弾圧が行われる危険性が高まったとされる。

李明博

また、李明博政権の2008年には「反国家団体法」が強化された。この法律は、従来から存在していたが、李明博政権下での適用が特に問題視され、左派や進歩的な団体に対する抑圧を助長したとされる。具体的には、労働組合や市民団体が反国家団体として認定され、活動が制限される事例が多発した。これにより、国民の自由が脅かされ、政治的対立が一層激化していったとされる。

文在寅政権下での性犯罪特例法の改正は、性犯罪に対する罰則を強化するものであったが、その適用や運用に関しても問題が生じ、特に公務員に対する厳しい処罰が逆に政治的な反発を招く結果となったとされる。例えば、2020年には性犯罪を告発した公務員が自ら命を絶つ事件が発生し、社会に大きな衝撃を与えたとされる。このような法の運用が、国民の不安を増幅させているとされる。

文在寅

上では、敢えて「される」という表現を用いた。なぜなら、「される」ということの是非が不確かだからである。そもそも民主国家以外の国で「何々とされる」という事柄は、顔面通りに受け取るべきではない。しかし、こうした法律の乱発や権力の行使は、韓国が既に随分前から民主国家とは呼べない状況にあることを示している。

国際的な評価においては、例えばリベラルな視点が強いとされる、フリーダムハウスの「自由度」ランキングでさえ、韓国の政治的自由度や市民の権利が侵害されていると指摘され、2021年には「部分的に自由」と評価された。自由度スコアは 2.5 だった。この評価に基づき、韓国の順位は 約 43位 となっている。権力の集中やメディアへの圧力が問題視され、国際社会からの信頼が揺らいでいるのだ。

ちなみに、日本は2021年の「自由度」ランキングで 自由国 として評価され、スコアは 自由度スコアは 1.0(1が最も自由、7が最も不自由) のうち 自由度スコアは 1.0 という評価を受けていた。日本は 自由国の中での順位は 11位 だった。これは、アジアにおいては比較的高い評価に位置している。

さらに、韓国の民主主義に対する批判は、怪しげな国連や国際人権団体からも寄せられている。特に、国連の報告書では韓国における言論の自由や集会の自由が制限されていると指摘されており、政府によるメディアへの圧力や情報操作が懸念されている。これにより、国際的な評価がさらに低下し、韓国の民主主義が危機に瀕していることを示している。

このような状況において、選挙で選ばれたリーダーを拘束することは、民主主義の根本を揺るがす行為である。国民はこの事態にどのように対処するのか、政治的な解決策が求められているが、いかなる理由があろうとも、民主主義の原則が破られてはならない。ユン大統領の拘束に関する問題は、法治主義や民主主義の観点から深刻に受け止められるべきであり、今後の展開に注目が集まる。

10月29日、尹錫悦大統領の退陣を求める市民たち。

したがって、韓国の民主主義が成熟し、西側諸国の水準に達するまで、日本としては韓国との関係を冠婚葬祭レベルに限るべきである。例外的に北朝鮮の挑発があったり、ありそうな場合は、日本もこれに対抗するために、韓国と関わりを保つことは避けるべきではないだろう。

ただ、北朝鮮の軍事力は、核・ミサイルに偏重しており、通常兵力はかなり遅れており、韓国軍には全くかなわない。特に防空システムは、60年以上前のものであり、現代戦には対応できない。よって、38度線を超えて、侵攻することはしないだろうし、仮にすればすぐに撃滅される。日本は北の核・ミサイルの恫喝に限って韓国と連携すべきだろうが、これも深入りは禁物である。

これにより、韓国の内政に対する理解を深めつつ、必要な距離を保つことが、今後の国際関係において重要である。 トランプ政権はそのような対応をするだろう。あるいは、韓国の政治的混乱を避け、正常化させるために、意図的に在韓米軍を撤退させると宣言するかもしれない。

【関連記事】

韓国は外交ストップなのに…「軍事支援を明言」さらに緊密化する北朝鮮とロシア―【私の論評】韓国の戒厳令発令と解除に見る北朝鮮の影響と情報戦略の可能性 2024年12月6日

韓国の尹大統領「非常戒厳」一夜で失敗 野党は退陣要求「大統領弾劾」準備で〝反日〟警戒 「文政権に逆戻りかそれ以上の反動に」―【私の論評】ロシアの韓国戒厳令への関心とその影響:日米の戦略的対応 2024年12月5日

米戦争研究所、北朝鮮のウクライナ派兵で報告書 実戦経験を将来の紛争に応用 対中依存脱却の狙いも―【私の論評】北・露軍事協力の脅威と石破政権の対応不足が招く地域安定リスク 2024年11月3日

日中韓「朝鮮半島の完全な非核化目標」…首脳会談の共同宣言原案、北朝鮮の核・ミサイル開発念頭―【私の論評】北朝鮮の核、中国の朝鮮半島浸透を抑制する"緩衝材"の役割も 2024年5月25日

日韓関係の改善は進んだのか 徴用工訴訟で日本企業に実害 肩代わりなくば「スワップ協定」白紙、さらなる制裁を検討せよ―【私の論評】日韓対立 - 韓国の約束不履行に対し日本国内で強硬対応を求める声 2024年3月13日

2025年1月2日木曜日

中国全土に新たな収容施設、汚職への粛清拡大で建設相次ぐ―【私の論評】中国の収容施設増加と全体主義の影響:ソ連・ナチスドイツとの類似点

中国全土に新たな収容施設、汚職への粛清拡大で建設相次ぐ

まとめ
  • 中国では、習近平国家主席の反汚職キャンペーンの一環として、全国200カ所以上で「留置」施設が建設・拡張されている。
  • 「留置」は、法的根拠を持つ新たな拘束形態であり、収容者が外部との接触を遮断され、最長で半年間拘束されることが可能で、弁護士や家族との面会は認められない。
  • 従来の「双規」は、汚職や不正行為の疑いで党員や公務員が拘束される手法であり、外部との接触が遮断され、法的根拠がないため権利がほとんど保護されない。留置は一定の手続きに基づくが、双規は党の内部で秘密裏に行われる。
  • 国家監察委員会(NSC)が設立され、汚職監視の権限が公共部門全体に拡大されているが、「留置」制度下での虐待や自白の強要が報告されている。
  • 著名なビジネスマンや公務員が「留置」によって拘束されるケースが増加しており、反汚職活動の名の下で人権侵害が進行している。
河北省張家口市にある「留置」用施設は2020~22年に建設された。費用は6億3800万人民元(約138億円)。通常の収容施設とオフィスビル、「重要案件」のための建物が2棟ずつ建つ

中国では、習近平国家主席が主導する反汚職キャンペーンが進行中であり、その一環として全国200カ所以上で「留置」と呼ばれる特殊な収容施設が建設または拡張されている。この制度は、収容者が尋問を受けるためのものであり、習氏の弾圧の対象は共産党の枠を超え、公的部門全体に広がっているのが特徴である。

習近平氏は、2012年に権力の座に就いて以来、汚職と背信行為を根絶するための運動を展開してきた。この運動は、政敵や腐敗した当局者をターゲットにし、前例のないペースと規模で行われている。習氏は、政権の3期目に入る中で、自身の反汚職キャンペーンを永続化し、制度化することによって、その統治の重要な柱と位置付けている。

「留置」とは、特定の人々が拘束される新たな形態であり、収容者は外部との接触を遮断され、最長で半年間拘束されることが可能である。この間、弁護士や家族との面会は認められず、全ての監房には24時間態勢で看守が配置されている。この制度は、共産党が長年にわたり用いてきた統制手法の拡大版であり、従来の「双規」制度から発展したものである。

「双規」は、中央紀律検査委員会(CCDI)により運用され共産党幹部が汚職などの疑いで拘束される際に用いられ、捜査対象者は党の施設や秘密の場所に連れて行かれ、数カ月間姿を消すことがあった。しかし、2018年にはこの慣行が廃止され、法的根拠を持つ「留置」に移行した。国家監察委員会(NSC)が新たに設立され、中共はこれをCCDIに統合し汚職監視の権限は公共部門全体に拡大されている。

この「留置」は、共産党員だけでなく、公共の権力を行使するすべての者が対象となり、民間企業の経営者や公立学校、病院の管理者、さらには国有企業の幹部も含まれる。最近では、著名なビジネスマンやスポーツ界のスター選手もこの制度の標的となり、拘束の件数は急増している。これにより、国営メディアはこの制度を反汚職キャンペーンの強化と位置づけており、長年の抜け穴を埋めるものと評価している。

しかし一方で、批判の声も高まり、習氏の統治は独裁的であり、社会のあらゆる側面を掌握しようとする動きが見られる。「留置」に関しては、拘束中の虐待や自白の強要が報告されており、収容者の権利がほとんど保護されていない状況が続いている。法律専門家によれば、国家監察法が制定されたにもかかわらず、実際の制度は司法体系の枠外で運用されており、外部からの監視が欠如しているのが現状である。

また、最近の報告では、拘束者が自白するまでほとんど食事を与えられないケースや、精神的・肉体的な苦痛を受ける事例が続出している。多くの収容者が圧力に屈し、自白に至ることが多いとされており、これが正確な司法の実現を妨げている。中国の最高意志決定機関では、国家監察法の修正案が検討されているが、拘束中の弁護士へのアクセスを認めることは無視され、逆に拘束期間が延長される可能性が示唆されている。これにより、拘束者の権利保護がさらに脅かされる恐れがある。

このような状況を受けて、中国国内外での人権侵害への懸念が高まり、習近平政権に対する批判が強まっている。習氏は、社会のあらゆる側面を掌握し、反汚職を口実に権力を行使する姿勢が、国内経済や人権状況に深刻な影響を及ぼす可能性が指摘されている。特に、汚職調査を口実に民間の起業家から金銭をゆすり取る行為や、虚偽の自白を強要する事例が増加している。

さらに、拘束された人々の中には、著名な投資銀行家やスポーツ選手なども含まれ、彼らの経験は、制度の問題点を浮き彫りにしている。拘束中に受けた精神的および肉体的な苦痛は、報道されている通りであり、これらの問題は中国社会全体に悪影響を及ぼす懸念がある。

このように、「留置」という制度は、表向きは反汚職活動の一環として正当化されているが、実際には権力の集中と人権侵害を助長するものである。習近平政権の下でのこの動きは、中国社会における自由や権利の侵害をより一層深刻化させており、国際社会からの批判も高まっている。今後の展開が注目される中で、中国国内の人権状況の改善が求められる声はますます強くなっている。

この文章は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】中国の収容施設増加と全体主義の影響:ソ連・ナチスドイツとの類似点

まとめ
  • 習近平政権下での反汚職キャンペーンにより、「留置」施設と呼ばれる収容施設が急増し、著名な公務員や企業経営者もターゲットになっている。
  • ソ連時代やナチスドイツの収容所制度と類似しており、権力の濫用と人権侵害が共通して見られる。
  • 全体主義体制が進行すると、国家が個人の自由を完全に制御し、批判や反対意見を封じ込める傾向が強まる。
  • 国際的な人権団体が留置制度の不適切な運用を報告しており、拘束中の人々が虐待や自白の強要を受ける事例が多発している。
  • 抑圧が続く限り、社会の発展や人権の尊重は難しく、現在の中国の状況は自由や権利の侵害を深刻化させる要因となっている。
中国全土で新たな収容施設が建設されている現状は、習近平国家主席の反汚職キャンペーンの一環として進行しており、これはノーベル賞作家アレクサンドル・ソルジェニーツィンの『収容所群島』を想起させる。ソ連時代の強制収容所制度、現在の中国の状況、そしてナチスドイツの事例を対比することで、権力の濫用や人権侵害の深刻さが浮き彫りになる。

ソルジェニーツィン氏


ソ連時代、特に1930年代から1950年代にかけて、約1,500の強制収容所が運営され、数百万の人々が抑圧された。ソルジェニーツィンの『収容所群島』は、こうした収容所での体験を描いたものであり、彼自身が戦争中に捕虜となり、収容所での過酷な生活を余儀なくされた。収容所では、政治的抑圧が蔓延し、反体制派や知識人、一般市民が捕らえられ、長期間にわたり過酷な環境で拘束されることが常態化していた。彼が描いた収容所の一つでは、食糧不足や過酷な労働が強いられ、精神的な苦痛が伴う状況が描かれている。これにより、思想や言論の自由が厳しく制限され、政府に対する批判が許されない環境が形成されていた。

現在の中国では、習近平政権のもと、反汚職キャンペーンが進行し、「留置」と呼ばれる収容施設が急増している。この制度は特に、汚職や不正行為の疑いを持たれた公務員や民間企業の経営者をターゲットにしており、著名なビジネスマンや公務員が標的になっている。2018年には国有企業の幹部や地方政府の官僚が相次いで拘束され、その数は数千人に上るとされる。広東省では、汚職撲滅を掲げた地元政府が数十人の幹部を「留置」によって拘束する事例が報告されている。

「留置」は法的根拠があるとされるが、実際には外部との接触が遮断され、権利がほとんど保護されていない。国際的な人権団体は、留置制度が不適切に運用され、拘束中の人々が虐待や自白の強要を受ける事例が多発していると報告している。具体的には、ある経営者が留置中に精神的な圧力を受け、虚偽の自白を強要された事例があり、これは中国社会の恐怖政治を象徴する一例である。

ナチスドイツにおいても、国家による抑圧と収容所制度が存在していた。ナチスは、反体制派やユダヤ人、その他のマイノリティを対象に、強制収容所や絶滅収容所を設置した。アウシュビッツなどの収容所では、数百万人が虐殺され、残虐な実験や非人道的な扱いが行われた。このような収容所は、政府が敵と見なす者を排除するための手段として機能しており、外部との接触が完全に遮断され、恐怖政治の象徴となっていた。

ソ連軍による解放翌日の45年1月28日に、アウシュビッツ収容所構内を歩く生き残ったユダヤ人ら(1945年01月28日)

全体主義の体制が進行すると、権力の濫用と人権侵害が避けられない現実が浮かび上がる。全体主義は、国家が個人や集団の自由を完全に制御しようとする試みであり、批判や反対意見を封じ込めるために収容施設や抑圧的な法律を利用する。歴史的に見ても、ソ連やナチスドイツのような全体主義体制は、権力者による恣意的な行動や無辜の市民に対する抑圧を助長してきた。

中国では国家監察委員会(NSC)の設立により、汚職監視の権限が拡大されているが、留置制度下での虐待は依然として報告されている。留置中の収容者に対して十分な食事が与えられず、過酷な労働を強いられることがある。また、拘束者が自白するまで食事を与えられない場合や、精神的・肉体的な苦痛を受ける事例が続出している。

中国の収容所における権力の乱用と人権侵害 AI生成画像

このような状況は、ソ連時代の抑圧やナチスドイツの恐怖政治と類似しており、抑圧の手法として収容所や留置が利用されている。ソ連では、多くの人々が恐怖の中で生き、自由を求める声が抑え込まれていたが、現在の中国でも同様に、政府に対する批判を恐れる市民が多く、自由な議論や情報発信が困難な状況が続いている。

結論として、ソ連とナチスドイツの抑圧の手法、そして現在の中国の状況には多くの類似点がある。権力の濫用と人権侵害がもたらす悲劇を警告するものであり、抑圧が続く限り、社会の発展や人権の尊重は難しい。全体主義の体制が続く限り、個人の自由が制限され、権力者による恣意的な抑圧が横行する危険性がある。この歴史的教訓は、現在の中国の状況を考える上でも重要であり、自由や権利の侵害が深刻化する要因となっている。 

【関連記事】

中国が南シナ海スカボロー礁とその周辺を「領土領海」と主張する声明と海図を国連に提出 フィリピンへの牽制か―【私の論評】中国の明確な国際法違反と地域緊張の高まり 2024年12月4日

〝対中強硬〟アップデートの「トランプ2・0」 新政権は国務長官にルビオ氏、国家安全保障担当補佐官にウォルツ氏と鮮明の布陣―【私の論評】米国の対中政策が変える日本の未来—新たな戦略的チャンスを掴め 2024年11月16日


トランプ大統領「ウイグル人権法案」署名 中国反発必至の情勢— 【私の論評】「ウイグル人権法」は中共が主張するような内政干渉ではないし、国際法に違反でもなく前例もある 2020年6月18日

2025年1月1日水曜日

「平和な世界へ手携えて」 天皇陛下が新年の感想―【私の論評】天皇陛下の新年のご感想:戦後80年の節目に寄せる希望と平和への願い

「平和な世界へ手携えて」 天皇陛下が新年の感想

まとめ
  • 天皇陛下は新年の感想を述べ、平和な世界を築くためにお互いの違いを認め合い協力する重要性を強調された。また、戦後80年の節目に戦争の悲惨さに対する深い悲しみを表明された。
  • 両陛下は新年祝賀の儀に臨み、阪神・淡路大震災30年追悼式典や国民文化祭などの行事に出席される予定であり、広島県や沖縄県への訪問も検討されている。
  • 宮内庁の長官は天皇陛下の戦争の悲惨さを後世に伝えたいというお気持ちを述べ、秋篠宮家の悠仁親王殿下は今年、成年皇族となり筑波大学に進学される予定である。


 天皇陛下は新年の感想を述べ、平和な世界を築くためにお互いの違いを認め合い協力する重要性を強調された。また、戦後80年の節目に戦争の悲惨さに対する深い悲しみを表明された。
両陛下は新年祝賀の儀に臨み、阪神・淡路大震災30年追悼式典や国民文化祭などの行事に出席される予定であり、広島県や沖縄県への訪問も検討されている。

宮内庁の長官は天皇陛下の戦争の悲惨さを後世に伝えたいというお気持ちを述べ、秋篠宮家の悠仁親王殿下は今年、成年皇族となり筑波大学に進学される予定である。

 天皇陛下は新年に際し、戦後80年の節目を迎え、「平和な世界を築くためには、人々が互いの違いを認め合い、協力することが重要である」と述べられた。また、「終戦以来、多くの人々の努力により、我が国の平和と繁栄が築かれたが、現在もなお世界各地で戦争や紛争により多くの命が失われていることに深い悲しみを覚える」とお言葉を寄せられた。

 昨年の災害や物価上昇による困難を振り返り、「今年も人々が互いに思いやりを持ち、支え合って困難を乗り越えることを願っている」と記された。天皇、皇后両陛下は新年祝賀の儀に臨まれ、2日には皇族方と共に新年一般参賀に出席される。

 両陛下は、阪神・淡路大震災30年追悼式典のため神戸市を訪問し、長崎県での国民文化祭など四つの恒例行事に出席される予定である。関係者によれば、戦後80年にあたることから広島県や沖縄県への訪問も検討されている。

 宮内庁の西村泰彦長官は、天皇陛下が後世に戦争の悲惨さを伝えたいというお気持ちを持たれていると述べた。また、秋篠宮家の悠仁親王殿下は昨年、18歳の成年皇族となり、春に高校を卒業し筑波大学に進学される予定である。成年式は高校卒業後の適切な時期に行われ、大学在学中は学業を優先しながら公務にも臨むこととなる。

 この文章は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】天皇陛下の新年のご感想:戦後80年の節目に寄せる希望と平和への願い

まとめ
  • 天皇陛下は新年のご感想で、昨年の災害や物価高騰を案じつつ、社会のために尽くす人々に希望を見出している。
  • 戦後80年を迎え、平和と繁栄は先人たちの努力によるものであり、現在も続く戦争や紛争に対する深い悲しみを表明された。
  • 日本の皇室は2670年以上の歴史を持ち、その存在が国体の根幹であることを強調。これは偶然ではなく必然である。
  • 陛下は「お互いの違いを認め合い、協力すること」の重要性を訴え、平和な世界の実現に向けた努力を呼びかけている。
  • 新しい年が希望に満ちたものとなるよう祈り、皇祖から続く「すめらぎ」の御代が末永く栄えることを願う。
戦後80年の節目を迎えた日本。平和と繁栄の陰で、今なお続く戦火と悲しみ。そんな世界を見つめる天皇陛下の眼差しは、慈愛に満ちていた。陛下は宮内庁を通じ、新年のご感想を公表された。その言葉の一つ一つに、国民を思う深い愛情が滲み出ていた。

天皇皇后両陛下は昨年3月22日、石川県内入りし、能登半島地震の被災者を見舞われた。

昨年、日本列島を襲った数々の災害。年初の能登半島地震、台風、豪雨。そして、止まることを知らない物価高騰。陛下は「多くの人にとってご苦労の多い年であったと思います」と案じられた。苦しむ国民の姿を案じつつも、陛下は希望の光を見出していた。それは、地道に社会のために尽くす人々の存在だった。「困難を抱えている人々のことを案じると同時に、そのような人々のため、また、社会のために地道に活動に取り組んでいる人も多いことをうれしく思っています」と述べられている。

先人たちの血と汗で築き上げられた平和と繁栄。陛下は「終戦以来、人々のたゆみない努力により、今日の我が国の平和と繁栄が築き上げられた」と評価された。しかし、世界に目を向けると、今なお戦火は絶えない。無辜の民の命が奪われる現実に、陛下は深い悲しみを覚えておられる。「現在も戦争や紛争により、世界各地で多くの人の命が失われていることに深い悲しみを覚えます」と述べられた。

平和な世界を築くために何が必要か。陛下の答えは明確だった。「お互いの違いを認め合い、共に手を携えて力を合わせていくこと」。この言葉には、長年の叡智が凝縮されている。

日本という国家の存在意義。それは計り知れない。我々日本国民が享受する恩恵は、他に類を見ない。天皇を戴く我が国の国体。それは世界に冠たる優れたものだ。だからこそ、一つの王朝が2670年もの長きにわたり続いてきた。「すめらぎ」の存在こそが、日本の根幹。この事実を忘れてはならない。「すめらぎ」なくして、日本は存在し得ない。

連綿と続く皇統

陛下は、戦後80年の節目に広島、長崎、沖縄を訪問される方向で検討が進められている。宮内庁の西村泰彦長官は「戦後80年は一つの節目であり、天皇陛下も後世に正しく戦争の悲惨さなどを伝えていかなければいけないというお気持ちです」と述べている。この訪問は、平和の尊さを改めて国民に伝える重要な機会となるだろう。

また、新年の行事として、1日に皇居で「新年祝賀の儀」が行われ、2日には2年ぶりに「新年一般参賀」が行われる。上皇ご夫妻も1日にお住まいの仙洞御所で皇族方からあいさつを受けられる。特筆すべきは、右大腿骨を骨折してリハビリ中の上皇后さまも、上皇さまと一緒に午前中に3回、皇居・宮殿のベランダに立たれる予定であることだ。これは、国民に寄り添う皇室の姿勢を象徴する出来事と言えるだろう。


陛下は感想の締めくくりに、「新しい年が、我が国と世界の人々にとって、希望を持って歩んでいくことのできる年となることを祈ります」と述べられた。この言葉には、日本と世界の平和と繁栄を願う陛下の深い思いが込められている。我々国民一人一人が、この思いを胸に刻み、新しい年を歩み始めることが求められているのではないだろうか。

この新しい年が、陛下のお言葉通り、希望に満ちた年となりますように。そして、皇祖から連綿と続く「すめらぎ」の御代が末永く栄えますように。天皇弥栄。

【関連記事】

<正論>別姓でなく通称使用法の制定を―【私の論評】夫婦別姓絶対反対!文化・法的背景と国際的事例から見る家族制度の重要性 2024年12月17日

葛城奈海氏、国連女子差別撤廃委員会でスピーチ「日本の皇位継承は尊重されるべき」―【私の論評】守るべき皇統の尊厳 2024年10月21日

なぜ「女系天皇」は皇室を潰すのか 「皇室そのものの正当性の根拠は消え…内側から解体されていく」との見方も 門田隆将氏特別寄稿―【私の論評】皇統を守り抜かなければ、日本は日本でなくなる 2021年5月3日

【新元号】安定的な皇位継承の確保を検討 男系継承を慎重に模索―【私の論評】なぜ皇位は男系によって継承されなければならないのか? 2019年4月2日

二重国籍解消の自民・小野田紀美氏が蓮舫氏を猛批判「ルーツや差別の話なんか誰もしていない」「合法か違法かの話です」―【私の論評】日本でも、国会議員や閣僚は、多重国籍を禁止すべき 2017年7月17日

〝石破増税大連立〟あるのか 国民民主・玉木氏や高橋洋一氏が指摘 首相が立民・野田代表と維新・前原共同代表に秋波―【私の論評】与野党はと全有権者は、財務省の悪巧みに乗ってはいけない

〝石破増税大連立〟あるのか 国民民主・玉木氏や高橋洋一氏が指摘 首相が立民・野田代表と維新・前原共同代表に秋波 まとめ 石破茂首相は、少数与党での厳しい政権運営を背景に、立憲民主党や日本維新の会との大連立の可能性を示唆している。 自民党内の「石破おろし」や国民民主党との協議の難航...