まとめ
- DOGEにより失業保険詐欺550億円が発覚:米政府効率化局(DOGE)が、2020年以降の連邦失業給付金で約382百万ドル(約550億円)の詐欺を確認。2154年生まれの人物が4万1000ドルを請求。
- 不正受給の内訳:115歳以上の2万4500人が59百万ドル、1~5歳の2万8000人が254百万ドルを不正請求。イーロン・マスク氏は「制度にチェックがない」と批判。
- 今後の対応:トランプ政権下で設立されたDOGEが税金回収と再発防止策を検討。制度改革が求められる。
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トランプ氏は政府がDOGEと協力し人員削減・部客廃止などをすすめるように大統領令に署名していた |
DOGEの調査によると、不正受給の内訳は以下の通りだ。115歳以上の2万4500人が59百万ドル(約86億円)、1~5歳の2万8000人が254百万ドル(約370億円)を不正に請求していた。米国の最年長者は114歳とされる中、115歳以上の受給者が多数存在することから、死亡者への支払いも含まれているとみられる。
DOGEの共同リーダーであるイーロン・マスク氏は「失業保険には異常な若さや高齢の人々に対するチェックが全くなかった」と指摘し、制度のずさんさを批判した。マスク氏は「政府の無駄を根絶する」と強調しており、今回の調査はその一環だ。
DOGEはトランプ大統領が今年1月に就任後、政府支出の効率化を目指して設立した組織で、マスク氏とヴィヴェック・ラマスワミ氏が主導する。失業保険制度の脆弱性が露呈した今回の事態を受け、さらなる改革が求められている。政府は不正に使用された税金の回収を進めるとともに、再発防止策を検討する方針だ。
- 米国で550億円の失業保険詐欺が発覚:DOGEが暴いた不正は総額550億円。2154年生まれの人物が4万1000ドルを請求するなど、死者や幼児への給付が明らかになり、制度のずさんさが露呈。
- 米国社会の反応が分かれる:民主党系団体が「弱者への給付制限」と抗議する一方、保守派は「バイデン政権の不正を暴いた」と評価。DOGEスタッフは「年間数百ビリオンドルの詐欺」と主張し、改革の必要性を訴える。
- 労働省が強い決意:労働省長官ロリ・チャベス・デレマー氏は「盗まれた税金を回収し、詐欺を根絶する」と断言。DOGEと連携し、不正受給の撲滅に本腰を入れると発言。
- トランプの「どぶさらい」公約:トランプ氏は2016年と2024年の選挙で「どぶさらい」を掲げ、腐敗と無駄遣いの根絶を約束。ノースカロライナやニューハンプシャーでの集会で支持者の熱狂的な支持を得た。
- 日本も「どぶさらい」が急務:コロナ禍の給付金不正が300億円、高齢者詐欺被害が500億円に上る日本。Transparency Internationalも汚職対策の遅れを指摘。米国のような大胆な改革で税金の不正使用を根絶すべきだ。
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死者が受け取る年金? AI生成画像 |
この事態に、米国社会は大きく揺れている。米紙「Washington Examiner」(4月10日付)によると、民主党系の団体「MoveOn」や「Indivisible」が全国で抗議活動を展開している。DOGEの調査が政府サービス削減につながり、弱者への給付が制限されると彼らは懸念する。
一方、保守派の反応はまったく異なる。米保守系メディア「PJ Media」(4月10日付)は、「DOGEの調査はバイデン政権下での意図的な不正を暴いた。トランプ政権の効率化努力の成果だ」と高く評価した。イーロン・マスク氏が「政府の無駄遣いを根絶する」と強調した点を称賛し、「これこそ納税者が求める改革だ」と断言している。
Washington Examiner(同日付)も、DOGEスタッフ7人がFox Newsのインタビューで「政府支出の詐欺は年間数百ビリオンドルに上る」と主張し、保守派の間で「DOGEの取り組みは政府の透明性を高める第一歩」との声が広がっていると伝えた。
労働省の対応も注目を集めている。Washington Examiner(同日付)によれば、労働省長官のロリ・チャベス・デレマー氏は強い決意を示した。「DOGEチームの驚くべき発見だ。約400百万ドルの詐欺的な失業保険支払いが見つかった。労働省は盗まれた税金を回収し、悪質な詐欺を根絶するために全力を尽くす。責任は我々に課せられている」。この発言は、労働省がDOGEと連携し、不正受給の根絶に本腰を入れる方針を示すものだ。
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労働省長官ロリ・チャベスデリマー氏 |
トランプ大統領はこの結果を予見していたのかもしれない。彼は2016年の大統領選挙で「どぶさらい(Drain the Swamp)」を掲げ、政府の無駄遣い根絶を約束した。米紙「The Washington Post」(2020年10月24日付)によると、ノースカロライナ州の集会で「ワシントンでどぶさらいをする」と宣言した際、支持者から「Drain the Swamp!」のチャントが沸き起こった。
2024年の選挙キャンペーンでもトランプ氏はこのスローガンを再び強調した。米「The Guardian」(2025年4月10日付)が報じたところでは、2月のニューハンプシャー州の集会で「ワシントンの腐敗を一掃し、再びどぶさらいを実行する」と訴え、支持者から大きな拍手が湧き上がったという。
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2016年のトランプの「どぶさらい」を現したイラスト |
日本も目を覚ますべきだ。厚生労働省の発表(2023年3月31日付)によれば、コロナ禍での給付金不正受給が全国で約300億円に上り、2022年度だけで約1万件の不正が発覚した。2021年に大阪府で明るみに出た事例では、架空の事業者を装ったグループが持続化給付金約2億円をだまし取り、逮捕者が出る事態となった(朝日新聞デジタル、2021年6月15日付)。
さらに、国民生活センター(2024年10月1日付)が報告したところでは、高齢者を狙った詐欺被害が急増し、2023年度の被害総額が約500億円に達した。国際的な評価も厳しい。
Transparency Internationalの「腐敗認識指数」(2021年1月28日付)では、日本は世界19位(スコア73)と比較的高い評価を得ているが、アジア太平洋地域全体で「汚職対策が進展していない」と指摘されている。政府の不正摘発体制の強化が求められているのだ。日本も米国のような大胆な「どぶさらい」を急ぎ進め、税金の不正使用を根絶する取り組みを本格化させるべきだ。国民の信頼を取り戻すため、今こそ行動する時である。
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