2025年4月2日水曜日

米ロ、レアアース開発巡りロシアで協議開始=ロシア特使―【私の論評】プーチンの懐刀ドミトリエフ:トランプを操り米ロ関係を再構築しようとする男

米ロ、レアアース開発巡りロシアで協議開始=ロシア特使

まとめ
  • ロシアと米国がレアアース鉱床開発などの共同プロジェクト協議を開始し、ドミトリエフ特使が協力の重要性を強調、複数企業が関心を示している。
  • プーチン大統領が将来的な経済協力協定での米国参加の可能性に言及し、次回協議が4月中旬にサウジアラビアで予定されている。

ドミトリエフ特使

ロシアと米国は、ロシアのレアアース鉱床開発などの共同プロジェクトについて協議を開始した。ロシアのドミトリエフ特使は、レアアースが協力の重要分野であると述べ、すでに複数の企業が関心を示していると明かした。プーチン大統領は、将来の経済協力協定で米国が参加する可能性に言及。次回の米ロ協議は4月中旬にサウジアラビアで開催される可能性があり、そこでさらに議論が進むと見られている。

【私の論評】プーチンの懐刀ドミトリエフ:トランプを操り米ロ関係を再構築しようとする男

まとめ
  • キリル・ドミトリエフはロシア直接投資基金の総裁で、プーチンの側近だ。米国での教育と金融経験を武器に、トランプの「ディール外交」に食い込み、米ロ経済協力を進める。
  • プーチンとの絆は強く、2016-2017年の「ロシアゲート」や2025年のウクライナ停戦交渉で暗躍。レアアースや北極圏エネルギー事業で米国企業を引き込む。
  • 2025年2月のリヤド会談で「3240億ドルの損失回復」を提案し、トランプ側を動かす。3月にはイーロン・マスクとの宇宙協力や制裁解除を視野に交渉を進める。
  • ロシアは黒海安全航行合意で制裁解除を要求。KGB流「ミラーリング」でトランプを取り込み、和平への道を模索するが、駆け引きは続く。
  • 2020年のコロナワクチン、スプートニクVで実績を上げ、2025年第2四半期に米国企業のロシア復帰を予言。制裁下でも柔軟に米ロ関係修復を目指す注目人物だ。

プーチン(右)とドミトリエフ

キリル・ドミトリエフはロシア直接投資基金の総裁だ。プーチン大統領の懐に深く食い込んだ側近として名を馳せている。

1975年、ウクライナで生まれ、スタンフォードとハーバードで頭を磨いた男だ。ゴールドマン・サックスで金融の荒波を泳ぎ、2011年にRDIFの舵取り役に抜擢される。ロシア経済を多角化する使命を背負った。

この男、プーチンとの絆は鉄壁だ。妻がプーチンの次女と同級生という縁が絡む。プーチンの経済戦略を現実のものに変える実行者だ。

特に米国との交渉では、まるで将棋の駒を動かすように立ち回る。2016年から2017年、トランプ政権のジャレッド・クシュナーやエリック・プリンスと密かに手を握ろうとした。「ロシアゲート」騒動で一気に名が売れた。米ロの裏のつながりを作ろうとした野心がそこにある。

2025年2月、サウジアラビアのリヤドで米ロ高官が顔を突き合わせた。ドミトリエフはウクライナ停戦の裏舞台で暗躍する。レアアース開発を切り札にプーチンの意志を押し通した。3月にはイーロン・マスクに目を付ける。スペースXとロスコスモスを結びつけ、プーチンの宇宙への夢を後押しした。

2025年初頭、トランプとプーチンの電話会談が失敗に終わったと騒がれたが、ドミトリエフの手腕が光る。経済協力の土台を固めたのだ。2月18日のリヤド会談では、「米国企業がロシアで3240億ドルの損失を取り戻せる」とぶち上げた。米国のマルコ・ルビオ国務長官が「歴史的なチャンスだ」と目を輝かせた。

マルコ・ルビオ国務長官

エネルギー分野の共同事業も提案し、トランプの特使スティーブ・ウィトコフが前のめりになったとCNNが報じた。3月にはレアアースの具体的な話が動き出し、米国企業が食いついたとロイターが伝える。プーチンとトランプの間を縫うドミトリエフの調整力が証明された瞬間だ。ただし、CNNなどの報道は一面的なものであり、以前このブログでも指摘したように実際の交渉はかなり困難なものである。

この男、トランプの「ディール外交」にぴったりの交渉人だ。米国での学びと金融経験が武器だ。プーチンの後ろ盾を得て、トランプのビジネス魂に火をつける。

リヤド会談では「北極圏で年200億ドルの利益」と具体的な数字を叩きつけ、ウィトコフが「現実的だ」と唸ったとウォール・ストリート・ジャーナルが書いた。ロシアが狙うディールはでかい。レアアース、北極圏のエネルギー事業、そして経済制裁の解除だ。

イズベスチヤは3月に「レアアースが制裁緩和の第一歩」と叫び、ドミトリエフが米国企業に「制裁が解ければ5000億ドル超の投資が動く」と囁いたと報じた。北極圏の天然ガスでは、エクソンモービルとの再タッグを画策中だ。ブルームバーグがトランプ政権の前向きな反応を漏らした。これがドミトリエフの描く米ロ再構築の青写真だ。

3月25日、ウクライナとの黒海安全航行の合意が話題に上った。クレムリンサイトが条件を突きつける。①ロシア農業銀行の制裁解除とSWIFT復帰だ。②食料貿易のロシア船への制裁解除。③農業機械や食料生産品の供給制限解除だ。停戦への道で、ロシアは米国に制裁解除を迫る。

米シンクタンクCSISのマリア・スネゴワヤは言う。「ロシアのトランプへのアプローチは、KGBの『ミラーリング』そっくりだ」と。相手の言葉を真似て信頼を掴む手口だ。

プーチンは2020年の米大統領選でトランプの「勝利を盗まれた」という叫びを拾い、「それがなければ22年のウクライナ危機はなかった」と同調した。和平への道は険しい。だが、ロシアはトランプを取り込み、制裁解除を進めながら、紆余曲折を経て前進するだろう。3月のレアアース協議では米国が制裁緩和をチラつかせたが、ロシアの強硬姿勢で一時暗礁に乗り上げた。両国の駆け引きが続く。

1月25日のTBSの報道

ドミトリエフは、2020年、コロナ禍でスプートニクVワクチンを世界に売り込んだ。中東やインドとの契約をまとめ、ロシアの影響力を高めた。プーチンから「よくやった」と評価された。米国企業をロシアに引き戻す実利主義を貫き、2025年第2四半期には米国企業の復帰を予言する。

制裁の網に絡まり、ウクライナ侵攻への関与や倫理無視で叩かれたものの。その柔軟さと実行力はプーチン政権の停戦交渉の柱だ。国際金融の知恵と人脈をフル回転させ、米ロ関係の修復とロシアの地位向上に挑む。今後交渉自体はどうなるか未知数だが、今後のロシアにとってドミトリエフは、なくてはならない人物となるだろう。

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