2020年10月31日土曜日

大阪都構想「誤った試算だった」市財政局が謝罪で波紋…「4分割218億円コスト」問題―【私の論評】毎日新聞社は誤報を、認め即刻訂正記事を掲載すべき(゚д゚)!

 大阪都構想「誤った試算だった」市財政局が謝罪で波紋…「4分割218億円コスト」問題

 
       大阪市財政局としての試算が誤りだったとして謝罪する
       東山潔・財政局長=29日午後、大阪市役所

 「大阪都構想」(11月1日投開票)をめぐる日本維新の会と毎日新聞をめぐるバトルに新たな展開だ。大阪市財政局が、「市を4政令市に分割した場合、毎年度行政コストが約218億円増える」とした試算について、わずか数日で「誤った考えに基づいた試算だった」と撤回したのだ。

 数字は大阪都構想の反対派の一部にデメリットの宣伝として使われており、11月1日の住民投票投開票を控え、波紋を広げている。

 試算は報道機関の求めに応じて市財政局が算出し、26日以降、毎日新聞など複数のメディアで報道された。市財政局は27日に緊急の記者会見を開き、東山潔財政局長が「特別区に移行した場合の試算ではない」と都構想との因果関係を否定した上で、「大阪市を機械的に4政令市に分けた試算だ」と説明した。

 その後、松井一郎市長は29日に記者団に対し、東山財政局長に経緯を聞き取ったとし、「ありえない数字だったと言っている」と説明。同日夜に財政局の会見が再び開かれることになった。会見で東山財政局長は、「市長に説明し、厳重な注意を受けた。市民に誤解を招き申し訳ない」と謝罪。「人口だけを勘案した交付税の算定ルールに基づかない試算で、虚偽、捏造といわれても仕方がない」と頭を垂れた。

松井一郎市長

 「大阪都構想」(11月1日投開票)をめぐる日本維新の会と毎日新聞をめぐるバトルに新たな展開だ。大阪市財政局が、「市を4政令市に分割した場合、毎年度行政コストが約218億円増える」とした試算について、わずか数日で「誤った考えに基づいた試算だった」と撤回したのだ。

 数字は大阪都構想の反対派の一部にデメリットの宣伝として使われており、11月1日の住民投票投開票を控え、波紋を広げている。

 試算は報道機関の求めに応じて市財政局が算出し、26日以降、毎日新聞など複数のメディアで報道された。市財政局は27日に緊急の記者会見を開き、東山潔財政局長が「特別区に移行した場合の試算ではない」と都構想との因果関係を否定した上で、「大阪市を機械的に4政令市に分けた試算だ」と説明した。

 その後、松井一郎市長は29日に記者団に対し、東山財政局長に経緯を聞き取ったとし、「ありえない数字だったと言っている」と説明。同日夜に財政局の会見が再び開かれることになった。会見で東山財政局長は、「市長に説明し、厳重な注意を受けた。市民に誤解を招き申し訳ない」と謝罪。「人口だけを勘案した交付税の算定ルールに基づかない試算で、虚偽、捏造といわれても仕方がない」と頭を垂れた。

【私の論評】毎日新聞社は誤報を、認め即刻訂正記事を掲載すべき(゚д゚)!

この記事を読んで思い出したのは、随分昔ですが、私が学生のときあるシンクタンク(土木・建築系)でバイトをしていて、ある地方都市の下水道工事の積算の概算をしたことです。このブログの購読者なら何度か掲載したことがあるのでご存知化もしれません。

この積算をして、当該しの積算と比較していて気づいたのは、どう考えてもこの地方都市の下水道にしては容量が少なすぎるということでした。それでどういうことなのだろうと、実際積算をしていた当人に聴いたところ、何とその積算は、当時の当該都市の人口・世帯数に基づいて計算されており、当時その都市は人口・世帯数が増加しており、それは一切考慮にいれていないことが発覚しました。

そうして、計算した本人はその年に高校を卒業して当該市の建設局土木部に入ったばかりの新人でした。そうして、彼が行った積算書には部長、課長の認め印が押印してありました。

この積算書は新年度の土木工事計画に添付され、市議会に提出されるはずでした。幸いなことに、この積算は再度、人口・世帯数を考慮入れて実施されて、その後市議会に提出されました。

もし、そのまま提出されていたとしたら、当該市の下水道は、すぐに容量不足となり、新たな土木工事が必要になっていたことでしょう。

下水道本管の設置工事

その当時は、地方都市の土木などのレベルはこの程度のものなのだと思い、驚きました。後で知ったのですが、地方都市となると人材が少なく、土木部長や課長なども土木など全くの素人の人がなるのが普通だということを知りました。無論他の部署も似たようなもので、専門知識のある人が当該部署のトップにつくのは稀だとされています。

だからこそ、当該市の市長は、土木建築系のシンクタンクと契約し、市の土木・建築関係のことがらを二重チェックしていたのでしょう。もし、土木・建築に関しては市が行う事業の中でも、かなり経費のかかるものです。間違いが起これば大変なことになるので、当然といえば、当然です。

さすがに大阪市はそこまでレベルは低いことはないでしょうが、この財政局長はかなりレベルが低いと思います。大阪都構想とは元々、市と府の二重行政をやめて、余分なコストがかかることを防ぐという目的もあるはずです。

「毎年度行政コストが約218億円増える」という試算がでれば、何か間違っているのではと考えるのが普通だと思います。この財政局長にはそのような分別もなかったようです。さらには、そのようなこともせずに、市長に相談や報告もせずに、マスコミにその情報を流したということも言語道断です。これで、どのようなことになるのか、想像もつかなかったというのであれば、さらに大馬鹿です。当然何らかの処分を受けることでしょう。

そうして、毎日新聞は、この試算をそのまま掲載し、大阪都構想を批判しています。そのニュースのリンクを以下に掲載します。
大阪市4分割ならコスト218億円増 都構想実現で特別区の収支悪化も 市試算
この記事全部引用すると長いので、以下にこの記事に添付されていたチャートを以下に掲載します。興味のあるかたは当該記事を是非ご覧になってください。


四つの政令市に分割すれば基準財政需要が増えるに決まっています。四つの特別区なら、地方交付税法特例から、基準財政需要は特別区を合算した市と同じで今の大阪市と同じとみるべきてす。都構想反対派の毎日新聞はえげつないネガティブ・キャンペーとしか言いようがありません。

政令市と特別区は権限が全く別ものです。そもそも、政令市の権限を広域自治体の大阪府と特別区に分ける制度改革は初めてなので総務省に大阪特別区の基準財政需要額の計算式が無いのです。毎日新聞は総務省に計算式が無い事は承知したいるのに大阪市を4つの政令市した場合のコストを記事にしたのです。

それにしても、反対派はこのようなコストを持ちだすのですが、これまでかかつてきた莫大な二重行政のコストには口をつぐんでいます。

毎日新聞の報道をきっかけに、この誤ったコストの内容は、既に多くのTVメディアでも報道されてました。ネットを見ない大阪市民は、大阪市が4特別区になればコストが218億円かかると市が発表したと誤認するでしょう。多くの市民は、そう受け止めるでしょう。これは、メディアの暴挙です。218億円を報道したメディアは訂正報道が必要です。

ところが、毎日新聞は、この報道に関して「誤報」とされたことに反論し、未だ誤報と認めていせん。
今度の大阪都構想の住民投票で準用される公職選挙法148条の但書きでは「虚偽の事項を記載し又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して選挙の公正を害してはならな行い。」 となっています。

報道機関が法律違反はさすがにまずいです。毎日新聞の拡散に加担した人も同じことです。毎日新聞は、自社の顧問弁護士か、外部識者に確認して、すぐにでも正しい対応をすべきです。

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2020年10月30日金曜日

香港弾圧を「控えめ」にする中国共産党の「本音」―【私の論評】台湾を諦めざるを得ない習近平は、陸上の周辺諸国への侵攻をはじめるかもしれない(゚д゚)!

香港弾圧を「控えめ」にする中国共産党の「本音」

岡崎研究所

 10月8日付の英Economist誌が、「これまでのところ、香港の新しい国家安全法は控えめに適用されている。しかし民主化運動家は安心してはいけない」との解説記事を掲載し、国家安全法施行後の香港の情勢を報じている。


 エコノミスト誌の解説記事は国家安全法施行後の香港の状況をよく描写している。国家安全法の適用が控えめであるということは事実そうである。しかし、必要になればこの厳しい法律で広範な弾圧措置に中国共産党が出てくることは明らかであって、香港の民主活動家は安心していてはいけないとの記事の題名はその通りであろう。

 国家安全法が「一国二制度」の香港を打ち砕いた可能性があるとこの記事は書いているが、認識が甘すぎるだろう。打ち砕いた可能性があるのではなく、打ち砕いたのである。共産党はレーニンの教えに従い、1歩前進、2歩後退というように戦術的に柔軟に対応する。香港のメディア王で民主化運動の指導者であり、外国との共謀罪で告発されたJimmy Laiが言うように、北京は政治的都合にあうように彼の取り扱いも決めるということであり、法による保護はないということである。

 共産党には三権分立が良いものだという考えはない。三権分立の考え方は、フランスの哲学者モンテスキューなどが提起したが、要するに人間性悪説というかキリスト教の原罪論に基づくというか、権力者は悪いことをしかねないから、チェック・アンド・バランスを統治機構の中に組み込んでおくべしという考えである。アクトン卿の「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」との考えも同じ系譜にある。

 他方、共産党は人民のために良いことをする権力であり、これに制約を加えるなど、とんでもないという考えが共産主義者にはある。

 エコノミスト誌の記事の最後に、司法の独立が保たれれば少しは希望がある、というような記述があるが、共産党が主導する限り、そういうことにはならないだろう。それに、法律が悪ければ、司法判断は法の適用であるから、悪いものにならざるを得ない。

 今のところ国家安全法の適用が思ったよりも穏健だということで、物事の本質を見損なうことは避けるべきであると考える。香港のケースは、中国が国際法をあからさまに無視する国であることを示したものであり、それを踏まえてしっかり対応しないといけない。今回の香港は、ヒトラーのラインランド進駐と同じようなものとみられている。

【私の論評】台湾を諦めざるを得ない習近平は、陸上の周辺諸国への侵攻をはじめるかもしれない(゚д゚)!

中国と習近平政権は、何を恐れたのでしょうか。香港民主派があのまま勢力を伸ばせば、立法院の選挙で多数を占めるかもしれません。そうなると立法院と行政院が対立することになります。行政院への批判が高まります。こうなると収拾がむずかしくなります。民主派の声が中国国内に飛び火すると、なおやっかいです。

そうならないうちに、芽を摘んでしまえ。そう思ったのかもしれないです。国際社会は、一時期騒ぐだろうが、時間が経てば静かになるだろう。天安門事件のときもそうでした。そう、タカをくくっているのかもしれないです。しかし、それだけでしょうか。香港での強硬策は、台湾問題と連動している可能性もあります。

今回の件は、上の記事にもあるように、ヒトラーのラインラント進駐を思わせます。ラインラントは、ドイツの一部。フランス国境沿いです。しかし、ヴェルサイユ条約(第一次世界大戦の講和条約)で、非武装地帯にされていました。これを、ドイツの人びとは不満に思っていました。

再軍備を始めたヒトラー政権は、ドイツ軍をだしぬけにラインラントに進駐させました。これは明白な条約違反でした。どうなるか。皆が固唾をのみました。

黄色の部分がラインラント

結局英仏軍は反撃せず、進駐は黙認されました。ヒトラーのドイツ国内での人気は高まりました。実はヒトラーは、反撃されたらどうしようと、びくびくだったといいます。あのとき英仏軍が反撃していれば、そのあとのナチス・ドイツの膨張もなく、第二次世界大戦もなかったかもしれません。

中国は、台湾統一をを宿願にしています。1978年に改正した憲法に以下のような条文があります。
台湾は中国の神聖な領土である。われわれは台湾を解放し、祖国統一の大業をかんせいしなければならない。
(序言)1983年に改正された憲法にはこうあります。
台湾は中華人民共和国の神聖な領土の一部分である。祖国統一を完成する大業は、台湾同法を含む中国人民の神聖な職責である。(序言)
2018年に改正された憲法も、この部分は変わっていない。1978年憲法では「解放」だったのが、そのあと「統一」になった。武力解放は控えて、平和統一を表に出した、とも読めます。

米国は、「中国はひとつ」の主張を認めています。そして、台湾(中華民国)と関係を断ちました。ただし同時に、台湾問題は「平和的に解決するように」とクギを差したはずです。米軍は強力で、中国も台湾に手出しできませんでした。

中国では改革開放が進み、台湾では民主化が進みました。国民党の独裁が終わり、民進党が現れて、選挙で政権が交替するようになりました。自由と民主主義が根づきました。

1999年ごろ、米国では、「2010年問題」が盛んに議論されていました。中国軍が、2010年には台湾を実力で解放できるようになる、どうしようというものです。今は2020年です。

当時この問題である米国の専門家が語っていました。中国が軍事力で台湾に手出しすれば、米国は黙っていないでしょう。でも、台湾の人びとが、中国に合流しようと民主的に決めたら、米国は邪魔しますか。答えは、それはどうしようもないです。と語っていました。なんと腰がひけているのだろうと思いました。

中国は、この可能性を、ずっと探っていました。

台湾に親中政権ができて、平和統一の合意ができないものか。香港の一国二制度がうまく行っているとみせることも、作戦の一部でした。でも台湾で、親中政権ができる見込みはなさそうです。それなら、香港の一国二制度はもうどうでも良いと考えたのかもしれません。台湾の武力統一を考え始めた、というサインかもしれません。

中国はその足元をみて、台湾を屈伏させ、既成事実をつくってしまえば、何とかなると思っているかもしれないです。

日本は昔、蒋介石の国民党政権と戦ういっぽう、親日の汪兆銘政権をつくりました。ヒトラーはフランスを軍事的に屈伏させたあと、親独のペタン政権をつくりました。まして中国は、「台湾は中国の一部」としています。親中政権をつくるまでもないです。直接統治してしまえば良いのです。

香港の一国二制度が50年を待たずに、なかったことになりました。国際社会は、無論抗議や批判はしましたが、直接的な軍事制裁や、それ以外の厳しい措置はほとんどしていませんでした。これでは、結局黙認したとみられても仕方ありません。そうなると、中国はさらにエスカレートするかもしれないです。

かつてヒトラーが、ラインラント進駐で味をしめ、オーストリアやチェコに手を伸ばしたのと同じです。台湾を攻める前に、尖閣を奪取して、米国がどこまで本気で反撃するか、試す可能性もあります。

中国が、台湾に侵攻するのは確実だ、と言うのではありません。ありうるシナリオのひとつだ、と言いたいです。そうして、対応を誤ると、その可能性が高まってしまう、と言いたいのです。とはいいつつ、香港は中国と地続きですから、中国も与し易いですが、台湾距離が近いとはいつつ、海峡があります。この海峡を超えて台湾に軍隊を送り、戦うということは、陸上国の中国にとってはかなりの困難が伴うのも事実です。




「深センの香港化、広東の深セン化、全国の広東化」。香港が中国に返還された頃、このようなフレーズがよく語られました。返還後は香港の影響が隣接する深セン、広東省へと及び、最終的には中国全体を変える触媒になるともみられていしました。

1990年代には、そんな楽観的な期待がありました。中国の内地も50年の過渡期が終わる頃には、経済システムだけでなく、政治システムの面でも体制転換が進むのではないかとみられていました。

つまり一国二制度とは、社会主義から資本主義へ過渡期だというわけです。しかし、23年を経た現在、われわれの目前には真逆の状況が現れています。一国二制度は内地同様の社会主義という一制度へ向かって収斂し始めているのです。

国家安全法はそれを確定的なものとしたように見られます。 中国は本法の施行により、香港でも社会主義という名の一党支配体制を実施することを世界に宣言しました。これは世界中に少なからぬ衝撃と落胆を与えてました。

一党支配の権威主義体制を中国の外へも拡大しようとする動きは、一帯一路構想、戦狼外交などにも現れていたところですが、香港での挙動はこれを一層明瞭に裏付けることになりました。 

元来、経済発展に陰りが見えてきたこともあり、経済力にものを言わせた強引な外交は、曲がり角に差し掛かっていました。本法の施行、さらに新型コロナパンデミックの源となったことで、国際社会は中共政権の本質をようやく覚るに至りました。

これを見た各国の中国に対する姿勢に加速度的な変化が生じつつあります。 台湾では今年1月の総統選挙で、中国との統一を拒否する民進党の蔡英文氏が圧勝しました。一国二制度とは社会主義という共産党一党独裁へと進む過渡期に過ぎなかったことを見せつけられた台湾の有権者は、中国が一国二制度ではない別バージョンを打ち出さない限り、今後も中国との統一を支持する可能性はないでしょう。

 中共は、香港版国家安全法により一国二制度に終止符を打ち、自由、人権、民主主義、法の支配といった国際社会で普遍的とされる諸価値を公然と踏みにじってしまいました。国際社会から批判を受けると、それは内政干渉であると強く開き直る姿は、一層グロテスクです。 中共は、引き返し不能な地点に自ら陥ってしまったようです。

ここで、日米豪印の国々が結局なにもしなければ、かつてのナチスドイツのように台湾にも職種を伸ばすことでしょう。

ただ、中国は現在のところは、このブログでも何度か解説させていただいたように、潜水艦隊の能力や対潜哨戒能力ではかなり遅れをとっているので、海洋の戦いでは日米には太刀打ちできません。

仮に、中国が台湾を武力で奪取しようと、多数の艦艇や航空機を送ったとすれば、台湾に橋頭堡を築く前に、ほとんどが撃沈、撃墜されてしまうことになります。

そのことを知っているからこそ、中国は海軍のロードマップては、今年確保することになっている第二列島線はおろか、尖閣諸島を含む第1列島線すら確保できないでいるのです。それが、中国海軍の実力です。


日米はこの優位を崩さないように、潜水艦隊の運用能力や対潜哨戒能力のイノベーションにこれからもつとめていくべきです。

これに対して日本はかなり貢献していると思います。今年の3月に進水した、最新鋭潜水艦「たいげい」は、リチュウム電池駆動で、静寂性をさらに向上させ、潜水時間が長くなっています。静寂性の向上によって、中国側はますますこれを発見することができなくなっています。

防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」では平成22年以降、中国の海洋進出を念頭に日本が保有する潜水艦を16隻から22隻に増強する目標を掲げてきました。「たいげい」が部隊に投入されると、22隻体制が実現することになります。

一方米国の原潜の攻撃力はかなりのものです。空母に匹敵するほどです。原潜は構造上どうしてもある程度の騒音が出るので、中国側もこれを発見できるのですが、米国の対潜哨戒能力は世界一なので、やはり潜水艦隊の運用では米国のほうがはるかに中国よりも勝っています。

この優位がある限り、中国は台湾を武力で奪取することはできないでしょう。仮に奪取しても、潜水艦隊で包囲されてしまえば、補給ができずに、陸上部隊はお手上げになるだけです。

それに最近米国は、台湾にトランプ政権の高官を派遣したり、台湾に武器を提供することを決めたりしました。これは、米国は台湾を守り抜くとの意思表示です。

では、どうなるかといえば、やはり中印国境や中露国境、さらには隣接する中央アジアの国々や、ベトナム、ミャンマーなどの国々が脅威にさらされることになるでしょう。これは、ドイツがラインラントに進駐したのと同じことで、これらの国を侵略しても、当時のように反撃を受けなければ、さらに拡張するかもしれません。

陸上国である中国は、海洋に進出しても、その戦略があまりにお粗末で資源を奪われるだけで、何ら益を得ることはありません。実際、南シナ海の環礁を埋め立てて作った中国軍の基地は、食料・水、燃料などの補給など中国本土から様々な膨大な物資を投入しないと成り立ちません。海水に日々浸潤される人工の陸地は、補修にも膨大な経費がかかります。

ところが、この基地は、何の利益も生みません。沖合にある人工島は、国際法的には恒久的な港湾工作物とは見なされず、領海の画定に影響を及ぼしません。ただし、それは中国には通じないかもしれですが・・・・・。

さらには、軍事的には象徴的な意味しかなく、米国の戦略家ルトワック氏は米軍ならこれを5分で吹き飛ばせるとしています。環礁を埋め立てて基地をつくるというような戦略は何の益も生みません。だからこそ、かつてどの国もこのような戦略はとらなかったのです。

海洋進出にあたって、このようなアイディアを思いつくという事自体が、中国の海洋戦略のお粗末さを物語っています。これでは、中国の海洋進出はこれからも失敗し続けることになり、いずれコスト的にも成り立たなくなります。

世界の国々は、まずは海洋の戦いでは、中国を完璧に包囲するとともに、中国周辺諸国への目配りをすべきです。

台湾を諦めざるをえない、習近平は地続きの近隣の国々への干渉や、圧力をかけたりあるいは侵攻して台湾ではあげられない成果をこちらのほうであげようとするかもしれません。陸上国ナチスドイツがラインラントやチェコに侵攻したのと同じです。私は、そちらのほうが本当の脅威だと思います。

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2020年10月29日木曜日

トランプ・ペンスとオバマ・バイデンの景気回復を比較する―【私の論評】過去最高速の回復、日本も見習え!その要諦はトランプが実証した財政政策と金融政策の両輪(゚д゚)!

トランプ・ペンスとオバマ・バイデンの景気回復を比較する

<引用元:ナショナル・レビュー 2020.10.28>ダグラス・カー著

COVID-19不況からの回復は、歴史的水準からみて著しく迅速

米国はわずか12年のうちに、2つの最も厳しい景気停滞を経験した。2008年の金融危機とコロナウイルス・パンデミックだ。

どちらの不況もうんざりするような損失を与えた。2008年の危機は、2009年第2四半期に2007年第4四半期から4.0パーセントのGDP低下を引き起こした。コロナウイルス・パンデミックは、2019年の最後の四半期から2020年の第2四半期までに、より短い期間でより著しい10.1パーセントの低下を引き起こした。GDPデータは四半期ごとにしか出ないため、月ごとの経済統計がトランプ・ペンスとオバマ・バイデンの回復を比較する上での基準となる。

GDPに加えて、広く認められた重要な指標には、非農業部門就業者数小売売上高工業生産高耐久財受注、そして住宅着工件数があり、全てが毎月評価されている。

下の表ではこうした指標の比率の変化が、不況前の月から底、つまり不況の底値に至るまでと、底値から5カ月後に評価されており、不況に関する権威として広く認められた全米経済研究所(NBER)が規定する期日を使用している。NBERはまだパンデミック不況の終わりがいつか規定していないが、恐らく2020年4月が選択されるだろう。


いずれの不況も世界大恐慌以来で最悪の落ち込みの1つになった。COVID-19不況では、雇用と小売がより悪く、2008年の危機では工業生産高、耐久財、住宅着工件数がより悪かった。それぞれのカテゴリーで、トランプ政権の回復は、オバマ・バイデン政権より劇的に強力だった。小売と住宅着工件数は、オバマ政権よりトランプ政権のほうが、25倍から100倍速く伸びた。工業生産と耐久財受注は、当時より現在のほうが3倍以上速く上昇した。雇用はトランプのほうが9.5パーセント速く増加した。

オバマ・バイデンの回復は、はるかに遅く、次の表で分かるように、トランプ回復の最初の5カ月で見られる増加を果たすのにさらに多くの月を要した。


トランプ政権が5カ月で獲得した雇用増加と小売り売上高を生み出すのに、オバマ・バイデン政権では6年以上を要した。工業生産高、耐久財、そして住宅着工件数はすべて、オバマ・バイデンよりトランプの下ではるかに急速に伸びた。

トランプ批判者は、パンデミック不況をトランプ政権のウイルス対応の失敗のせいだと言っている。どのようなつまづきがあったとしても、米国経済は、コロナウイルスに対して多かれ少なかれ、異なる対応を実施した場合と同等の経済よりも、高いパフォーマンスを出している。国際通貨基金は、2019年から2021年まで、米国はユーロ圏と日本より3パーセント以上速く成長するだろうと予測している。

確かに2つの大きな不況は、多くの点で似通っているが相違点もあり、経過が完全に比較できない恐れもあるが、厳密に比較する必要はない。オバマ・バイデン回復の最初の低調な5カ月は、米国の歴史上で最も遅い回復という結果をもたらした。パンデミックからの完全な回復までは、まだ長い道のりが残っている(そして、まだ分からないが、第2波の可能性も残る)が、トランプ政権の最初の5カ月の回復は、米国で史上最速のものだ。

ダグラス・カーは、金融市場・マクロ経済学研究者。シンクタンク研究員、教授、会社役員、投資銀行家の経歴を持つ。

【私の論評】過去最高速の回復、日本も見習え!その要諦はトランプが実証した財政政策と金融政策の両輪(゚д゚)!

米商務省は29日、2020年7~9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)を発表します。年率換算の前期比で二桁のプラス成長が見込まれ、マイナス31・4%と過去最大の下落率だった4~6月期から大きく反発します。新型コロナウイルスの感染拡大で急失速した景気は改善していますが、回復の勢いが持続するかが今後の課題です。

市場予想はプラス31%前後(ロイター通信調べ)と記録が残る1947年以降で最大の上昇率になると予想されています。これまでは50年1~3月期の16・7%増が最大でした。このときの大統領は民主党のハリー・トルーマン、副大統領はアルバン・W・バークリーでした。今回は、この民主党による記録を破ったのです。

新型コロナ感染を防ぐ営業規制や外出制限が響き、4~6月期のGDPは戦後最悪のマイナス成長となりました。雇用も深刻な打撃を受け、失業率は4月に戦後最悪の14・7%を記録しました。

ただし、トランプ米政権が3兆ドル(約310兆円)超の経済対策を実施し、企業や家計を手厚く支援。連邦準備制度理事会(FRB)も大胆な金融緩和を実施したため失業率は5カ月連続で低下(改善)しています。

この改善の速さをみれば、トランプの経済政策は正しいと言わざるを得ないです。トランプ政権による3兆ドル超の経済対策の実施が功を奏しているは間違いないですが、トランプ大統領は、FRBに厳しい注文をつけており、それに関してはFRB議長もトランプ大統領が正しかったことを後に述べています。

これについては、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクをいかに掲載します。
トランプが最初から正しかったとFRBが認める―【私の論評】トランプの経済対策はまとも、バイデンの対策は異常、日本は未だ準備段階(゚д゚)!

ジェローム・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長

この記事は、今年9月6日のものです。この記事より一部を以下に引用します。

だが過去数年の間で、トランプこそがFRBは引き締め過ぎていると警鐘を鳴らしてきた人物であり、物価と長期金利(市場価格)の下落からも分かるように、期待インフレ率はFRBの目標の半分となっていることを示している。

トランプはエコノミストとしての訓練を受けていないかもしれないが、成長を作り出すということに関して、この不動産王は不思議な直観を持っている。

今年の初めのパンデミック以前、経済は今世紀最高のペースで前進していた。

だが、FRBがトランプの(そして我々の)助言に従っていたら、実質GDPと賃金はもっと高い成長の潮流に乗っていただろう。トランプは近代経済学に浸透する成長モデルに対する間違った考え方の制限を本能的に拒否していた―我々と同様に。

この記事にもあるように、もしFRBがトランプの助言に従っていれば、実質GDPと賃金はもっと高い成長軌道に乗っていたはずであり、私はさらにコロナによる不況からの立ち上がりも早かったかもしれません。

もし、FRBが姿勢を変えなければ、もつと回復は送れていたかもしれません。

トランプ大統領が、 3兆ドル(約310兆円)超の経済対策を実施し、さらにFRBがまともな緩和を策を始めたことにより、今になってようやっとプラス31%前後の過去最大成長率を達成することが見込まれることになりました。これは、大統領選でも有利に働くことになるでしょう。

何しろ、バイデン氏は様々な政策を打つとは言っているものの、その財源は増税によるとしています。これでは、日本の財務省とあまり変わりありません。

さて、日本はどうだったかといえば、以下にほんの少しだけ2008年の状況を掲載します。

1月21日 東京証券取引所の日経平均株価が535円35銭値下げしたのをはじめ、インド・ムンバイ証券取引所で平均株価が一日当たり過去最大の下げ幅を記録するなどアジア各地の証券市場が軒並み暴落

10月27日  日経平均株価、2003年4月のバブル崩壊以降最安値を更新、前週末比486円18銭(6.36%)安の7162円90銭となり、1982年10月7日以来26年ぶりの安値水準を記録
10月30日 麻生太郎首相、記者会見で総事業規模26兆9,000億円の追加経済対策概要を発表、同時に、3年後の消費税率引き上げ案、及び現時点での衆議院の解散・総選挙はないことを明言。
一言でまとめると、当時の日本は世界的な金融情勢の変動に巻き込まれ、株価暴落や円高ドル安などの大幅変動の最中にありました。

この最中にあって、米国、EU、中国、英国など他の殆どの国々がこぞって金融緩和をしたのですが、日銀は実施しませんでした。そのため、超円高・デフレになりました。

さらに、政府は追加経済対策などを実行しましたが、確か真水の経済対策は記憶では数兆円だったと思います。これでは、焼け石に水に過ぎず、少なくとも真水で最低10兆円、できれは20兆円くらい実施すべきでした。

現在のコロナ禍での給付金と同じように給付金も配布されたのですが、給付対象者1人につき12,000円。ただし、基準日において65歳以上の者及び18歳以下の者(1990年2月2日生まれの者も含む)については8,000円加算され、20,000円という、みすぼらしいとしか言いようのないものでした。

日銀も大規模な金融緩和を実施せず、政府もまともに財政政策を実施しなかったため、どういうことになったかといえば、リーマンショック時のショックの震源地である米国や、悪影響をかなり被った英国が比較的はやく立ち直ったにもかかわらず、本来あまり影響を受けていなかったはずの日本が一人負けの状態となりなかなか立ち直ることができませんでした。

ただし、このときの米国はオバマ政権であり、トランプ政権の現在のコロナからの立ち直りより、はるかに遅いのです。

しかし、日本はこのオバマ政権の米国よりも、さらに回復が遅かったのです。当時の日本政府(麻生政権)は、最低最悪の経済対策を実施したということです。

まともなエコノミストが口を揃えていうところでは、不況になった場合は、金融政策と財政政策の両方を速やかに強力に実施し、いち早く不況から抜け出すべきと主張していますが、まさにそのとおりです。

以前、私はこのブログで菅政権はトランプの経済対策を見習えと主張しましたが、今回はこの主張が正しかったこと裏付けたと思います。

米経済の回復をさせたトランプ大統領

日銀の金融緩和政策については、日経新聞の経済面を見ると、「物価目標2%というのも見直すべきなのではないか」というような話も出ています。それも、高い方で見直すのではなく、「2%は達成できないのだから1%にしろ」というような内容です。

金融政策は雇用に結びつく(緩和をすると新規雇用が生まれる)ということが米国では当然のこととみなされ、雇用はFRBの責任であるとみなされています。雇用さえ確保できればいいので「雇用を確保するときに、物価は上がり過ぎてはいけませんよ」というのがインフレ目標の意味なのです。

実際2%にならなければ大きな問題にはなりません。金融緩和政策をよくレンジで決めようとする人がいるのですが、正しくは「何々以下」です。以下であればいいのです。欧州中央銀行(ECB)ではインフレ目標が「何々以下」となっています。金融緩和をしても、2%以下なら良いのです。

無論金融緩和をして、2%以上になれば、それは問題で緩和策をすみやかにやめて、引き締めに転じ、それでも2%以上になるなら、増税をすれば良いです。

思い切った緩和をしても、2%以下であれば良いのです。「2%」でなけばならないということではありません。にもかかわらず、「達成していないではないか」という批判は、そもそもこれを理解していないということになります。

そもそも、「雇用を良くする」というのが正しい理解なのです。雇用が良くなっていても、2%を超えてしまっては良くないということですので、「2%でなければ達成していない」と言う人は、全く金融緩和のことを理解していないと言っても良いです。

さらに、日本ではなぜか不況になった場合には、財政政策のみを実行せよとか、金融政策のみを実行せよという人も多いです。なぜか、金融と財政を両方実行するという2つのことを同時に実行すべきということが理解できない人も多いです。

しかし、以上で述べた批判は間違いであることを、まさにトランプが実証したと思います。

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2020年10月28日水曜日

中国が侵攻なら台湾「戦う」 世論調査8割が回答 米国、ミサイルなど新たに武器売却へ ―【私の論評】日米が台湾に加勢すれば、中国は永遠に台湾を奪取できない(゚д゚)!

 中国が侵攻なら台湾「戦う」 世論調査8割が回答 米国、ミサイルなど新たに武器売却へ 

“暴走”北朝鮮

台湾の防空識別圏に侵入したとされるY8対潜哨戒機の同型機

 習近平国家主席率いる中国共産党政権は、連日のように台湾に軍事的圧力をかけている。これに対し、「自由・民主」「人権」「法の支配」を重視する台湾では、中国から軍事攻撃を受けた場合、「台湾のために戦う」と考える人々が8割近くに上った。米国は、台湾防衛のために対艦ミサイル最大400基を含む武器を、新たに台湾に売却することを決めた。


 「中国軍機が台湾の防空識別圏に侵入 先月中旬以降で24回目」

 台湾の中央通信社が運営する日本語サイト「フォーカス台湾」は27日、このようなタイトルの記事を報じた。

 中国人民解放軍のY8対潜哨戒機とY8情報収集機が26日、台湾南西の防空識別圏に侵入したことを伝えたものだ。中国軍機の侵入は、活動を活発化させた9月16日以降で24度目という。

 台湾海峡は最も狭い部分で約130キロしかない。当然、台湾の防衛意識は高まっている。

 与党、民主進歩党系のシンクタンク、台湾民主基金会が今月中旬に行った世論調査では、中国が台湾に侵攻した場合、「台湾のために戦う」と答えた人は79・8%に上った。さらに、中国寄りだった台湾最大の野党、国民党系のシンクタンク、両岸発展研究基金会が21日~22日に行った調査でも、「戦う」との回答は77・6%に達したという。

 米国も、中国の軍事的覇権拡大を阻止する構えだ。

 米国務省は26日、台湾に地上発射型の対艦ミサイル「ハープーン」400基を含むハープーン沿岸防衛システム(HCDS)最大100基を、総額23億7000万ドル(約2480億円)で売却することを承認し、議会に通知した。ドナルド・トランプ政権による武器売却決定は9回目。

 国務省は声明で、「海からの侵略行為や沿岸封鎖などに対する、効果的で信頼性の高い反撃や抑止を可能にする」と説明した。

 中国が香港に国家安全法を施行した6月、「今日の香港、明日の台湾、明後日の沖縄」と言われた。台湾有事は、日本有事に直結する。中国の暴走を許してはならない。

【私の論評】日米が台湾に加勢すれば、中国は永遠に台湾を奪取できない(゚д゚)!

台湾の軍事力については、よく知らないので、ここでは論ずることはしませんが、日本の現状の軍事力を以下に掲載しておきます。以下は、中国のメデイアに掲載されたものを紹介します。

日本政府は、ことさら日本の軍備の良さを誇ったりせず、中国の軍事力に関して特にその脅威を報道することはしますが、日本の軍事力についてはほとんど報道せず、そのため中国からみた日本の軍事力のほうが、わかりやすいし、中国にとってどのような脅威と写っているのかがわかり興味ぶかいです。

2020年10月21日、中国軍網は、日本の新潜水艦「たいげい」について「警戒すべき」とする記事を掲載しました。

日本の最新鋭潜水艦「たいげい」の進水式

記事は、共同通信の報道を基に、日本の次世代潜水艦「たいげい」が、三菱重工業神戸造船所で進水したと紹介。2022年3月に就役予定で、その時には海上自衛隊の潜水艦は22隻となり、防衛省が10年の防衛計画の大綱で設定した潜水艦を16隻から22隻に増やすという目標を「基本的に達成することになる」と伝えました。

また、「たいげい」について長さ84メートル、幅9.1メートル、基準排水量3000トン、定員70人であると解説。「従来の鉛蓄電池に代わって新リチウムイオン電池を採用しており、潜水時間はそうりゅう型の約2週間という記録を大きく上回る」と伝えました。そして、「たいげいの進水はリチウムイオン電池が成熟したことを意味しており、大規模装備潜水艦部隊の需要を満たすものだ」と評価しました。

さらに、「従来のディーゼル・エレクトリック・システムにおける部品の多くをなくしたため、水中での静粛性が増し、敵による監視や追跡を困難なものにしている」と紹介。兵装ではそうりゅう型と同様の装備で、533mm魚雷発射管を6門搭載し、米製のMK37、89式長魚雷、18式長魚雷、ハープーン対艦ミサイルを発射することができると伝えました。

水中の潜水艦から発射されたハプーン

その上で、「日本は最近、アジア太平洋の周辺海域での潜水艦の活動状況を声高らかに発表している」と指摘。例として、海上自衛隊の潜水艦とヘリコプター搭載護衛艦「かが」、護衛艦「いかづち」などがアジア太平洋海域で合同訓練を行い、べトナムのカムラン湾に寄港したことを挙げました。

こうした日本の動きについて、「アナリストからは『対潜演習によってアジア太平洋地域における存在感を示し、空中、海上、海中の全方位かつ立体的な介入を実現しようとしている』との分析が出ている」とし、「米国のインド太平洋戦略に協力し、海上安全をけん引して重点国家との防衛協力関係を高める狙いもある」と伝えました。

このほか、日本とベトナムが防衛装備品の技術移転協定の締結で実質的に合意したことに言及し、「日本はべトナムに海上偵察・監視システムを輸出できるようになる」と説明。今年7月にはベトナムに対して6隻の哨戒艇を支援することを決定していたことにも触れました。

記事は、「日本は頻繁に潜水艦建造や活動動向を公開すると同時に、アジア太平洋地域の関係国の懐柔・支持を強化している。これは、日本の地域戦略の意図について外部からの強い懸念を招いており、アジア太平洋の安全はより大きな不確実性に直面している」と警戒感を示しました。

また、中国のサイトメディア中国メディアの騰訊も以下のような報道をしています。

四方を海に囲まれた島国である日本は、明治維新以降、海における防衛力を重視しており、それは戦後の今となっても変わらないといえるでしょう。実際、海上自衛隊の実力は世界でも上位に入るといわれます。中国メディアの騰訊はこのほど、海上自衛隊の実力について分析する

記事は、海上自衛隊には護衛艦隊、潜水艦隊、航空集団などがあり、人員は約4万5000人で、艦艇数は英国やフランスより多いほどだと紹介。敗戦国の日本は、航空母艦や原子力潜水艦、戦略爆撃機、核弾頭などを持つことができないが、「グレーゾーン」を使って戦力を増大していると主張しました。

その一例が「ヘリ空母」だと記事は指摘。日本はヘリコプター搭載護衛艦を何隻も就役させているが、排水量はいずれも1万トンを超えており、他国の軽空母よりずっと大きいので「ヘリコプターを乗せているというだけで、その実質は軽空母だ」と論じました。しかも「かが」を改修してF35Bを搭載できるようにする方針であるほか、さらに大きくて先進的な「軽空母」が建造される可能性もあるとしています。

また、海中の戦力も日本は非常に強いと記事は紹介。リチウムイオン電池搭載の潜水艦は、静粛性に優れており、長期間潜水し続けることができると指摘。また対潜水艦能力や、機雷掃海、海上補給能力も世界一流で、哨戒機を約80機も保有しており、「海上、海中、空中の三位一体の対潜能力を形成している」と伝えました。

最後に記事は、「日本の恐ろしいほどの急速な発展は注意すべきで、その実力は過小評価できない。海上自衛隊はますます海軍のようになっている」と締めくくりました。中国も国産空母を建造して就役させるなど海軍力を強化しているが、それでも海上自衛隊には強く警戒しているようです。

ちなみに、両メディアとも中国の弱点に関しては報道しませんが、中国の弱点は対潜哨戒能力が低いということです。そのため、日本の静寂性に優れた最新鋭の潜水艦を発見することができないようです。

さらに、中国の潜水艦は今年の6月に奄美の接続水域を航行しているのが発見されたように、日本側からすぐに発見されてしまうようです。さらには、日本の対潜哨戒能力は世界一の米国とならんで世界のトップクラスです。

米国においては、日本のような通常型の潜水艦はないですが、それでも攻撃力の大きい原潜を多数所有しています。残念ながら、静寂性においては、原潜はその構造上どうしても劣るのですが、それでも中国の対潜哨戒能力が劣っていることと、それとは対照的に米軍の対潜哨戒能力は世界一ということで、潜水艦隊の運用においては、中国は米国に比較してかなり劣っています。

米国のバージニア級攻撃型原子力潜水艦「ミシシッピ(SSN-782)」

以上のことから日米が協力して、台湾を守るということを想定した場合、中国の艦艇は、強襲揚陸艦や空母、駆逐艦などすぐに撃沈されてしまいます。たとえ中国が台湾奪取しようとして、多大な犠牲をはらった陸上部隊などを台湾に送りこむことができたにしても、米中の潜水艦隊に台湾を包囲されてしまえば、中国は台湾急襲部隊に食料・水・燃料などを補給できず、急襲部隊はお手上げ状態になってしまいます。

お手上げ状況で、米潜水艦から攻撃をされれば、急襲部隊は崩壊します。日本としては、静寂性を利用して、中国軍の偵察などで米軍に貢献することができるでしょう。この偵察行動があれば、米軍の原潜が危険を犯してまで偵察行動をしなくてもすみます。

日米が協同して、台湾を守った場合、中国の人民解放軍は台湾の橋頭堡を築くことができも守ることができず、結局退散するか、降参するしかなくなります。尖閣においても、同じことです。人民解放軍もしく民兵も、包囲されればなすすべはなくなります。

ただ、日本は米軍の艦艇が攻撃を受けたり、受けそうなときには、国内法的にも敵を攻撃できるようにしておくべきでしょう。さらには、日本の領海・領空内では、最悪の場合、日本が敵艦艇や航空機を撃沈・撃墜できるようにしておくべきでしょう。

中国が台湾奪取の具体的動きをみせれば、日米は黙ってはいません。わざわざ負けると決まっている戦はしないでしょうから、私自身は中国は無謀なことをしないと信じたいです。しかし、実行してしまえば、完敗するので、習近平の信用は地に落ちるでしょう。

ただ、中国がもし奪取しようとすれば、台湾の人々が立ち上がるのは間違いなく、それに日米が加勢できれは、中国には全く勝ち目かないでしょう。

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2020年10月27日火曜日

中国、尖閣で海保機に“異常”警告 「領空侵犯」と退去要求 日本の公用機に初の領空主権を主張―【私の論評】日本はそろそろ、最悪の場合「撃墜」も視野に入れた法改正をすべき(゚д゚)!


尖閣諸島魚釣島の側を飛行する海上自衛隊哨戒機P3-C

 習近平国家主席率いる中国人民解放軍による、日本への主権侵害が明らかになった。沖縄県・尖閣諸島付近の上空で昨年11月、海上保安庁の航空機が中国海軍の艦船から「中国の領空を侵犯している」と警告を受け、空域からの退去を求められたというのだ。日本側は、現場や外交ルートで「中国の一方的な主張で受け入れられない」と抗議した。中国の軍事的覇権拡大は、看過できないレベルになりつつある。

 産経新聞27日朝刊によると、中国海軍の艦船による尖閣周辺の領空主張は昨年11月中旬と下旬に計4回確認されたという。

 尖閣周辺では当時、中国海警局の公船が領海外側の接続水域を航行し、海保の巡視船が領海侵入に備えて警戒監視に当たっていた。海保の航空機も上空から哨戒していたところ、中国海軍の艦船から海保機に対し、無線通信で「中国の領空だ」「領空に接近している」などと呼び掛けがあり、空域から離れるように警告されたという。

 中国は尖閣の領有権を強弁するが、日本の公用機に領空主権を主張したのは初めてとみられる。

 評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「中国による主権侵害だ。尖閣周辺海域での長時間の滞在や、日本機への『領空侵犯』警告を繰り返すことで、将来的に中国の主張を正当化しようとしている。中国の立場に立てば、国際法上、領空侵犯への警告を無視すれば撃墜できる。今後も自衛隊機だけでなく、海保機も撃墜のリスクが高まる恐れがある」と語る。

 領空は、国際ルールで無害通航権が認められている領海と異なり、当該国の許可がない侵入を不法行為とみなし、戦闘機を緊急発進(スクランブル)させるなど厳密な措置が取られる。

 1983年9月、米ニューヨークからアラスカ・アンカレジ経由で、韓国・ソウルに向かっていた大韓航空機が、ソ連領空を侵犯したとして、ソ連戦闘機によって撃墜されたこともある。

 新型コロナで世界が苦しむなか、中国は東・南シナ海での軍事的覇権拡大を進めている。口頭での抗議だけでは、日本の主権は守れない。

 前出の潮氏は「尖閣周辺などに警戒の航空自衛隊機を常時配備し、中国軍用機の接近があれば、戦闘機の緊急発進など対領空侵犯措置を講じることなどはすぐできる。また、外交ルートなどを通じた従来の抗議ではなく、国連や国際会議などの他国の面前での抗議も必要だ」と語った。

【私の論評】日本はそろそろ、最悪の場合「撃墜」も視野に入れた法改正をすべき(゚д゚)!

中国がなぜ、日本の主権を無視するようなことをするのか、それはやはり日本は現状では、最悪の場合でも中国軍機を撃墜できない可能性が高いからでしょう。

外国の航空機が日本の領空を侵犯した場合、航空自衛隊はどのような対処を行うのでしょうか。

日本は国の主権が及ぶ領域として「領土」と「領海」、そして領土・領海の上空に「領空」を設定しています。航空自衛隊は日本各地に配置されたレーダーサイト、および空中警戒管制機のE-767・E-2Cによって領空を監視。この領空の外側に設定された「防空識別圏(ADIZ)」を越えて日本に接近する国籍不明機を発見した場合、戦闘機を「スクランブル(緊急発進)」させています。

スクランブルするF15


スクランブルした戦闘機は必ず2機が1組となって行動し、防空管制システムの誘導に従い不明機に接近。これを目視で確認し、まずは無線によって日本の領空に接近しつつあるという「注意」を促します。そして不明機が領空へ侵入した場合、違法行為として「必要な措置」を取ります。この「必要な措置」については、自衛隊法第八十四条において以下のように規定されています。

【自衛隊法第八十四条】
防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。
以上のように、領空へ侵入した不明機に対しては「着陸」または「退去」のいずれかを強制することになります。具体的には、まず無線を使用し「注意」より強力な「警告」を与える、それでも従わない場合は相手不明機の前方に出て、20mmバルカン砲による「信号射撃」を行います。20mmバルカン砲には火線をひく「曳光弾」が混ぜられており、威嚇効果を発揮します。

20mmバルカン砲を発射するF15

しかしながら、不明機がそれでも従わなかった場合、これ以上の手出しは一切できません。

スクランブルした戦闘機には必ず短射程空対空ミサイルの実弾が搭載され、場合によっては視程外距離空対空ミサイルも携行しますが、これらの武器を使用し撃墜することは「正当防衛」ないし「緊急避難」、すなわち不明機の攻撃によって自身や第三者(僚機や地上)が攻撃される恐れが高い場合にのみ可能となります。

一般的に空中戦は「先手必勝」であり、最初の一撃を相手に撃たせるということは“死”を意味しますから、対領空侵犯措置において不明機の撃墜は事実上、不可能です。

内閣総理大臣により「防衛出動」が発令された場合は合法的に武力の行使が可能となりますが、これは戦争状態を意味し、過去一度も発令されたことはありません。

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       フェリー「なっちゃんワールド」が佐世保港に入港

戦後、日本はソ連爆撃機による沖縄本島上空通過を含む39回の領空侵犯を受けました。そして今後は、高性能な無人機を使用した“気軽な領空侵犯”が増える可能性があります。

平時において「撃墜」は事実上、日本がとり得る選択肢ではありません。しかし撃墜を可能とする法的根拠を整備することは、抑止力の面において重要です。

日本はそろそろ、最悪の場合「撃墜」も視野に入れた法改正をすべきです。撃墜するしないは別にして、「撃墜」できるようにしておくことは、抑止につながります。

その他にも、最悪の場合は、潜水艦で艦艇を撃沈できる、機雷を用いて海上封鎖ができるよにすべきです。

このような法改正をしても、日本の領海、領空に限っての法制ならば、日本国民のほとんどは反対しないでしょう。反対するのは外国人か、それに近い勢力だけでしょう。

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2020年10月26日月曜日

トランプ氏“大逆転当選”なら「内戦」勃発!? 大統領就任阻止へ極左組織が実力行使も…銃撃戦伴う「南北戦争」起きたら日本も無傷でいられず―【私の論評】米国では誰が大統領になっても、大規模な内乱が起こる可能性がある(゚д゚)!

トランプ氏“大逆転当選”なら「内戦」勃発!? 大統領就任阻止へ極左組織が実力行使も…銃撃戦伴う「南北戦争」起きたら日本も無傷でいられず

トランプ氏(写真)とバイデン氏は選挙戦最後の直接対決で舌戦を展開した=22日


 終盤を迎えた米大統領選では、共和党のドナルド・トランプ大統領(74)が、民主党のジョー・バイデン前副大統領(77)の次男の疑惑で攻勢を強めている。国際投資アナリストの大原浩氏は緊急寄稿で、劣勢が伝えられるトランプ氏が逆転勝利した場合、日米の「韓国無用戦略」が加速する一方、米国内で暴力的左派が「内戦」を引き起こす懸念があると指摘する。


 11月3日の米大統領選が近付くにつれ、両候補の舌戦は激しさを増し、お高くとまっていた自称知識人のいわゆる「リベラル」たちも、感情をあらわにした下品な発言を抑えきれないようだ。

 そして、最近浮上してきたのが、バイデン氏の次男、ハンター氏の外国企業に関わる金銭疑惑である。これまでバイデン氏は「息子とはそのようなビジネスの話をしたことはない」と否定し続けていたのだが、関与を証明するとされるメールが「再発見」された。

 実は昨年、当該パソコンの修理を行った店主が、修理後も持ち主が取りに来ず不審な内容であるため米連邦捜査局(FBI)に通報し、押収されたパソコンに入っていたという。それまでまともな調査をしなかったのは、ミスでも故意でもFBIの信頼性を揺るがすものだが、後者であれば事態はかなり深刻だ。

 前回2016年の大統領選で民主党大統領候補のヒラリー・クリントン氏が敗北した大きな原因の一つが、私的メールサーバー使用の問題だったが、今回も民主党はバイデン氏の「メール問題」で墓穴を掘りそうだ。

 そもそも、偏向したメディアの世論調査でいくらバイデン氏有利という結果が出ても、本音は「トランプ氏支持」という米国民もいる。

 筆者はメール問題をきっかけにトランプ氏が再選する可能性は高くなっているとみるが、仮に敗北した場合、最高裁判事の構成で保守系が多いことから、法廷闘争に持ち込むだろう。

 しかし、バイデン氏敗北の場合、トランプ氏の大統領就任阻止のための暴力的実力行使が行われる恐れもある。ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動という大義名分を使って、アンティーファなどの極左組織が、商店からの略奪や放火を行ったことは記憶に新しい。選挙終盤での偏向メディアや左翼系学者のヒステリックな言動を見ていると、バイデン氏が敗北したら、どのような暴力行為が起こるかわからない。比喩ではなく、銃撃戦を伴った「南北戦争」が起こる可能性は決して低くはないと思う。

 そうなれば、日本も無傷ではいられないが、幸いにして7年8カ月続いた安倍晋三政権が、見事に菅義偉首相にバトンタッチされた。

 ■学術会議は“おとり”

 日本学術会議問題は、野党や偏向メディアが大騒ぎしたおかげで、その「闇」が世間に暴かれた。政府が正攻法で問題提起しても、偏向メディアは「報道しない自由」を駆使して無視したであろうから、国民に知られなかったはずだ。相手の力を利用したのも、官房長官時代に偏向メディアと特定野党の扱いに手慣れている菅首相だからであろう。

 留学生ビザ審査の強化、安全保障上重要な土地の取得への監視強化、防衛省における「電子戦専門部隊」の設置、先端技術規制の新たな枠組みの米国などへの提案、経済安全保障を推進する法案の提出準備などがスピード感を持って進められている。学術会議問題は日本の安全保障を妨害する勢力の目をそらすおとりだといえよう。

 菅首相は、いまや民主主義国家共通の敵といえる存在になった中国を牽制(けんせい)したほか、厄介な隣人である韓国に対しても、「いわゆる元徴用工問題」を韓国自身が解決しなければ訪問しないと言い渡している。

 こうした重要な時期に、トランプ氏の新型コロナウイルス感染問題があったとはいえ、ポンぺオ米国務長官が日本だけを訪問し、韓国訪問を中止した。

 これは、日米をはじめ、巨大な敵に立ち向かうため一丸とならなければならない民主主義陣営全体にとって、身勝手な主張を繰り返す国は「無用」であるということの証明ではないだろうか。

 ■大原浩(おおはら・ひろし) 人間経済科学研究所執行パートナーで国際投資アナリスト。仏クレディ・リヨネ銀行などで金融の現場に携わる。夕刊フジで「バフェットの次を行く投資術」(木曜掲載)を連載中。

【私の論評】米国では誰が大統領になっても、大規模な内乱が起こる可能性がある(゚д゚)!

米国は、すでに内乱状態にあるといつても良いかもしれません。白人警官による黒人暴行死事件が起きたミネソタ州ミネアポリス市で5月26日に始まった抗議デモは、全米50州に広がりました。

「息ができない」黒人男性が警察官に膝で首を押さえつけられ死亡

運動が盛り上がるにつれて、「今度こそ人種差別問題が解決に向かう」との期待が高まっていましたが、これは結局11年前にオバマ大統領が誕生した当時の米国の熱狂状態と同じ結末をたどるのではないかと思います。

オバマ大統領が8年間にわたり「国を変革し、国民を一つにしよう」と懸命の努力した結果、その意図とは裏腹に米国は分断されました。黒人大統領時代に白人層の間で溜まっていたマグマがトランプ大統領を誕生させたのは周知の事実です。

メディアの報道を見ていると、「人種差別撤廃」の旗の下で米国民が団結し、失言を繰り返すトランプ大統領が孤立無援となっている印象を持ってしまいますが、実態は違います。米世論調査会社ラスムッセンが6月に実施した調査によれば、「あなたの地域の警察の仕事ぶりはどうか」との質問に対し、67%が「良好又は優れている」と回答しています。

「あなたの地域の警察は人種差別的か」という質問に対しては、65%が「そうは考えていない」と答えています。「暴徒に対する警察の対応」については、「不十分」が28%、「適切」が30%でした。こうした隠れた民意を意識して、トランプ大統領は「法と秩序」を強調したとみられます。

トランプ大統領が「抗議デモを煽っている真犯人」と名指ししたことで日本でも有名になった「アンティファ」については、49%が「テロリスト」と捉えています。アンティファとは、左派の過激な活動家らの運動のことであり、人種差別、極右の価値観などに猛然と抗議の意思を示し、自己防衛としての暴力的戦術は場合によって正当化されると主張しています。グループ同士の結束は緩やかで、明確なリーダーは存在されていないといわれています。

 
                    極左集団「アンティファ」の旗を身にまとう抗議デモ参加者
                    =米東部マサチューセッツ州ボストンで2020年5月31日

アンティファの歴史は長く、1930年代に旧ソ連がドイツに共産党政権を実現するための作戦の一環として誕生したとの説があります。黒いマスクや服装を着用しているのが特徴であり、米国ではトランプ大統領の就任を契機に台頭し、2017年1月20日の大統領就任式にはワシントンで窓を壊したり車を燃やしたりしました。トランプ大統領にとってアンティファは、自らの晴れの舞台にケチをつけた因縁の仇敵です。

このように人種差別撤廃というスローガンに酔いしれる抗議デモの陰には、その動きを苦々しく思っている米国人が少なからず存在します。

抗議デモ参加者を民主党支持、これに批判的な人たちを共和党支持と仮定すると、両者は新型コロナウイルス対策でも意見が対立しています。

5月21日付ロイターによれば、民主党支持者の多い地区(人口密度が高い都市など)では新型コロナウイルスの死亡率が、共和党支持者の多い地区(農村部や郊外)の3倍に達していました。このこともあってか、共和党支持者のほうが封鎖措置の解除を強く望んでおり、大統領選挙運動が本格化する過程で新たな対立の火種にもなっていました。

ウォールストリートジャーナルとNBCが5月下旬から6月上旬にかけて1000人を対象に調査を行ったところ、80%の人々が「米国はコントロール不能の状態にある」と回答しました。このような情勢を見ていると、2018年に実施された世論調査結果が現実味を帯びてきていると思わざるを得ないです。

ラスムッセンが18年6月に有権者登録済みの1000人を対象に実施したアンケート調査によれば、3人に1人が「今後5年以内に南北戦争のような内戦が起きそうだ」と回答し、10人に1人は「その可能性が極めて高い」と考えていました。戦争の原因については6割が「不法移民の親子を強引に引き離そうとするトランプ大統領に対して、反トランプ派が過激な暴力に訴えるのが心配だ」とする一方、「メディアのトランプ大統領の扱いを不満に思う人々がいずれ暴力に訴える」との声も5割を超えていました。

しかし国が二分されてしまうことへの不安の高まりは、18年が最初ではありませんでした。オバマ前大統領が成立させたオバマケア(医療保険制度改革)をめぐって国民の間で対立が極度に先鋭化した2010年も同様の状態だったとされています。

19世紀半ばに起きた南北戦争は、奴隷制度をめぐる対立が原因でしたが、現在の米国は道徳的、思想的、政治的というあらゆるレベルで深刻な分断が起きているようです。対立の構図も当時のように州単位ではなくモザイク状になっていることから、今後生じるかもしれない事態は正規軍同士の戦争ではなく、市民レベルの紛争が内乱状態に発展するというかたちになるのかもしれないです。

意外なことに、このような事態を予言した小説が10年以上前の日本で出版されています。『アメリカ第二次南北戦争』(佐藤賢一著)と題する小説が04年から05年にかけて雑誌「小説宝石」(光文社)に連載され、06年に単行本として出版されたのですが、作中の時間は13年1月でした。


米国初の女性大統領が暗殺されたことで大統領の座についた黒人の副大統領が、銃規制に乗り出したことを契機に反政府運動が生じ、それが内乱に発展するというストーリーですが、米国の内乱のおかげでその他の世界各国は戦争特需の恩恵に浴しているということになっています。

「事実は小説より奇なり」ではないが、コロナ禍の世界では何が起きてもおかしくないのではないでしょうか。

私は、上で大原氏が指摘しているように、トランプ氏が逆転勝利して大統領に再戦された場合、アンティファなどが動き出してとてつもない内乱のような状態になる可能性は高いでしょう。

一方バイデン氏が大統領になった場合もそのようなことが起こる場合もあり得ると思います。特にトランプ氏が法廷闘争に持ち込んだ場合、これを阻止しようという勢力がまた、大規模なデモから内乱に発展する可能性も十分にあります。

いずれになっても、米国は内乱状態をすみやかに沈静化させるべきです。多くの米国民にとって本当の敵は、全体主義で世界を脅かす中国なのです。仲間内で争っている場合ではないのです。

2009年には、ロシアの学者が米国は分裂するという説を出しています。それについては、このブログにも掲載したことがあります。その当時には全くありえないと思っていましたが、以上で述べたてきたことを考えると、あながちありえないことでもないと思えてきます。

ただ、私はこれは、ロシアの願望でもあると思います。米国が分裂すれば、現在よりは弱体化し中国やロシアにとっては動きやすいです。無論、中露は米国が分裂の兆しをみせれば、これを助長するような様々な行動をするかもしれません。それが本格的になれば、大変なことになります。

米国はこの動きも牽制しつつ、中国と対峙していく必要があります。

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2020年10月25日日曜日

中国・習主席「領土分裂には痛撃を与える」 台湾への武力行使を念頭に強硬発言 日米は共同訓練で牽制―【私の論評】中国は哨戒能力や兵站で米国と同等とならなければ、台湾を奪取できない(゚д゚)!

中国・習主席「領土分裂には痛撃を与える」 台湾への武力行使を念頭に強硬発言 日米は共同訓練で牽制

習近平

 中国の習近平国家主席が、また好戦的な発言を行った。蔡英文政権が率いる台湾への武力行使を念頭に、「祖国の神聖な領土を分裂させるいかなる勢力も絶対に許さない。中国人民は必ず正面から痛撃を与える」などと威嚇したのだ。新型コロナウイルスで世界が苦しむなか、連日のように繰り返される習氏の恫喝(どうかつ)発言に対し、米軍と自衛隊は、最新鋭ステルス戦闘機「F35A」や、超音速戦略爆撃機「B1B」などが参加する共同訓練を実施するなどして、牽制(けんせい)した。

 異様な発言は、北京の人民大会堂で、23日に開かれた中国軍の朝鮮戦争(1950~53年)参戦70周年の記念大会で披露された。

 習氏は重要演説で、朝鮮戦争当時の米中両国は国力差が巨大だったにも関わらず、中朝両軍が「米軍の不敗神話」を打ち破り、「尊大な侵略者」に休戦協定を結ばせたと主張。「どんなに強大な国も、世界の発展の潮流に逆らえば必ず散々な目に遭う」と述べ、中国側の対米強硬姿勢を誇示した。

 さらに、ドナルド・トランプ米政権とその対中政策について、「現在の世界では一国主義や保護主義、極端な利己主義は全く通用しない。恫喝や封じ込め、極限の圧力も通用しない」と言い切った。

 習氏は13日、台湾侵攻の主力部隊とされる広東省の海軍陸戦隊(海兵隊)の部隊を視察し、「全身全霊で戦争に備え、高いレベルの警戒態勢を維持しなければならない」と指示。19日には北京の中国人民革命軍事博物館を訪問し、「あらゆる強大な敵にも打ち勝つ」と発言している。

 米国では現在、大統領選(11月3日投開票)後の政治的混乱が予想されている。新型コロナウイルスの打撃も大きい。中国がこの機に乗じて、台湾に「行動」を起こす危険性が指摘されている。

 日米両国は、台湾と「自由・民主」「人権」「法の支配」という基本的価値観を共有し、連携を強めつつある。

 こうしたなか、航空自衛隊は23日、青森県・三沢基地に配備されているステルス戦闘機「F35A」2機が20日、太平洋上で、長崎県・米海軍佐世保基地所属の強襲揚陸艦「アメリカ」と戦術訓練を実施したと発表した。空自のF35Aと米海軍との訓練は初めて。

 さらに空自は23日、北海道・千歳基地と、宮崎県・新田原基地、石川県・小松基地、沖縄県・那覇基地所属の「F15」戦闘機16機と、茨城県・百里基地所属の「F2」戦闘機2機が20日、日本海、東シナ海および沖縄周辺空域で、超音速で敵地に侵入する米空軍の戦略爆撃機「B1B」と編隊航法訓練や要撃戦闘訓練を実施したと発表した。

 「力による現状変更」は許さない、というメッセージといえそうだ。

【私の論評】中国は哨戒能力や兵站で米国と同等とならなければ、台湾を奪取できない(゚д゚)!

習近平氏本気で戦争しようとしているのでしょうか。私にはどうしてもそうは思えません。このブログにも掲載したように、米軍は5月の時点で、原潜を派遣していることを公表しています。

実際米海軍太平洋艦隊の潜水艦が多数、東シナ海、南シナ海など西太平洋海域で活動中であることが5月下旬、明らかにされました。その任務はアメリカ国防総省の「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿って中国への抑止を誇示することにあるのだといわれました。

米軍全体としては当時新型コロナウイルスの感染が海軍艦艇の一部乗組員にも及び、艦隊の機能低下が懸念されることに対応しての潜水艦隊出動の公表のようでした。

これは無論コロナウイルス対応という側面もあるでしょうが、そもそもこの方面に米軍の原潜が存在している事で、米軍は十分に中国に対する牽制になると考えていることを示しているものと思います。

これは、このブログでも何度か掲載してきたことですが、簡単にいうと、中国の対潜水艦も含めた哨戒能力が献上でもかなり劣っているので、米軍の原潜を発見することは困難であるということです。しかも、その原潜がかつて緒戦半島有事のときに語ったトランプ大統領の言葉を借りると「空母」なみの破壊力持っていという事実があります。

一方、米国は世界一の哨戒能力を持つので、中国軍の潜水艦を含む全ての艦艇や、航空機は米軍によって簡単に発見されてしまいます。

そうなると、台湾に侵攻しようとする人民解放軍は、米軍の原潜により攻撃され、艦艇も航空機も破壊されてしまうことになります。

たとえ守備よく、人民解放軍が台湾に上陸したとしても、米原潜が台湾を包囲してしまえば、中国の補給船はことごとく撃沈されて、台湾に上陸した人民解放軍に食料や、消耗品などを補給できなくなります。

そうなると、人民解放軍はお手上げになり、結局米軍や台湾軍に追撃され、掃討されることになります。

それに、日本の自衛隊も協力ということになれば、日本の通常型潜水艦は人民解放軍には、探知不可能で、台湾海峡を含めあらゆる海域に航行して、偵察行動を行い米軍をサポートできます。

以上のことはこのブログでは、何度か解説してきたことです。

いずれにせよ、人民解放軍はそもそも、台湾に上陸できないか、上陸したとしても橋頭堡を維持できません。

さらに、人民解放軍には元々弱点があります。それは兵站です。

中国は南シナ海と東シナ海、黄海、渤海の4海域で同時に軍事演習を行うなど大規模な演習をしましたが、10月になると小規模なものに変化しました。しかも南シナ海で軍事演習を行ったですが、他の海域では行っていません。それに対して日米の合同軍事演習は、堅実にインド洋でも行っています。これは、何を意味するのでしょうか。結局兵站の差であるといえます。

軍事演習は定期的に行い、部隊の練度向上と練度維持に行われるというのが表の目的ですが、裏の目的は仮想敵国への政治的な恫喝です。

そのため米国は、中国共産党への対抗措置として合同軍事演習を行っているのです。政治の延長の仮想敵国への恫喝として軍事演習が行われているのですが、物資消費は実戦と同じです。

端的に言えば兵士1人当たり1日3000kcalの食糧、重さではおよそ100キログラムです。2万人規模の一個師団なら、2000トンの物資を消費します。さらには、弾薬その他消耗品の補給も必要です。

米軍のMRE(Meals,Ready to Eat=携行食)

これを適宜補うためには、作戦本部が予め消費を予測し、生産・輸送・備蓄・補給がネットワークとして存在しなければならないのです。

人民解放軍の軍事演習は、上にも述べたように9月には4海域で同時に行われました。ところが1ヶ月を経過すると、人民解放軍の軍事演習は南シナ海などの一部で行う様になりました。これは中国共産党が、開戦初頭で敵を数で圧倒する構想を持つことの証左です。ところが1ヶ月を経過すると、人民解放軍の攻勢が止まることを示しています。

沖縄の第3海兵遠征軍は今月6日、神奈川県に拠点を置く米海軍第7艦隊との合同演習「ノーブル・フューリー21」を始めたと発表しました。15日まで沖縄県内や周辺、硫黄島などで活動する。対中国戦を想定し、前方で攻撃や給油の拠点を設ける作戦構想「遠征前方基地作戦(EABO)」を念頭に置いているとみられます。

ノーブル・フューリー21

また、自衛隊とアメリカ軍は、2020年10月26日(月)から11月5日(木)まで、令和2年度日米共同統合演習「Keen Sword21/02FTX」を実施しています。

米海軍は10月7日、南シナ海で「大量死傷者演習(Mass Casualty Drill)」を行いました。一方中国軍は10月20日から22日まで軍事衝突による負傷者の海上救助演習を実施しました。10月の同海域等で中国の軍事演習は発表されているのはこれだけです。

どうしてこのようなことになるかといえば、やはりその原因は人民解放軍の兵站の貧弱さです。人民解放軍は近代化して数も多いとされながらも、生産・輸送・備蓄・補給のネットワークが完成していないようです。

だからこそ、1ヶ月を経過すると物資不足で攻勢が行えないのです。仮にまともな兵站が完成していれば、米軍の演習が続いている現在人民解放軍の大規模な軍事演習は今も続いているはずです。

以上で、元々兵站が貧弱な人民解放軍が、たとえ台湾に上陸できたとしても、補給が1ヶ月程度で不十分になることが予想されます。

さらに、人民解放軍が探知できない、日米の潜水艦に台湾が包囲されてしまえば、中国は台湾急襲部隊に補給ができません。人民解放軍がたとえ台湾に橋頭堡を築けたにしても、日米や台湾軍は積極的に人民解放軍を攻撃しなくても、包囲して補給を絶てば、人民解放軍はお手上げになります。

人民解放軍が兵站に弱いということは、なんとなく理解できます。人民解放軍は兵站を重視する先進国と戦ったことは一度もありません。兵站を軽視しがちであったものの、それでも近代的な日本と戦ったのは、戦後台湾に移った中華民国であり、大日本帝国と中共は戦ったことはありません。中共が戦った手強い相手といえば、旧ソ連とはありますが、これは国境紛争の域を超えず、兵站の重要性は高いものではありませんでした。

中越戦争では人民解放軍は、あと10キロで当時の敵国ベトナムの首都ハノイを落とせるとろころでしたが、結局補給が追いつかず前進することができなくなりました。他にも様々な理由がありますが、これが最も大きな原因といわれています。これは、人民解放軍の補給経路へのベトナム軍による襲撃はかなり激しかったからとされています。

1979年の中越戦争では中国は惨敗
https://yutakarlson.blogspot.com/2020/10/blog-post_15.html

これは戦争時における兵站でも最も重要な、補給線路の沿線の安全の確保が十分になされていなかったからです。

補給経路といえば、援蔣ルート(えんしょうルート)は日本でも有名ですが、これは日中戦争に於ける大日本帝国と中華民国の対立の際、主にイギリス、アメリカ、ソ連が中華民国を軍事援助するために用いた輸送路のことです。一方、日本はこのようなルートが確立されていなかったので、中国大陸では苦戦しました。

中国は、中越戦争と同じ愚を繰り返すのでしょうか。いくら、中国が三戦で強くなったり、超音速ミサイルを開発したり、宇宙兵器を開発しても、政治的には意味があるかもしれませんが、対潜哨戒能力や兵站で米国以上にならなければ、台湾を実際に奪取することなどできません。実際に台湾を攻撃して奪取することと、強硬発言をすることとの間には大きな乖離があるのです。たとえ、一時的にそれができても、すぐに奪い返されます。

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2020年10月24日土曜日

イスラエルとスーダン、国交正常化で合意 トランプ氏仲介3例目―【私の論評】米国の関与が減少しつつある現在、日本が中東で果たす役割はますます増える(゚д゚)!

 イスラエルとスーダン、国交正常化で合意 トランプ氏仲介3例目

23日、ホワイトハウスでスーダンのテロ支援国家指定を
解除する決定について電話で話すトランプ米大統領(手前)

 米ホワイトハウスは23日、イスラエルとアフリカ北東部のアラブ国家、スーダンが国交正常化に合意したと発表した。トランプ米大統領の仲介によるもので、イスラエルとアラブ諸国の国交正常化で合意したのはアラブ首長国連邦(UAE)、バーレーンに続いて3カ国目となる。

 トランプ氏は11月3日に迫った大統領選を前に、自身の支持基盤でイスラエルへの支援を信仰の柱に据える福音派などキリスト教右派へのアピール材料として外交成果を誇示するとみられる。

 トランプ氏はホワイトハウスで記者団に対し「イスラエル、スーダンにとって信じられないほど素晴らしいディール(取引)だ」と強調した。

 今回の3カ国による共同声明は、「地域の安全保障を高め、スーダン、イスラエル、中東、アフリカの人々にとって新たな可能性を開く」と国交正常化の意義を訴えた。経済・貿易分野で関係構築を進める方針で、まずは農業分野での協力を実施する。

 またこれに先立ち、トランプ政権は23日、スーダンのテロ支援国家指定を解除すると議会に通告したことを明らかにした。

 ホワイトハウスによると、スーダンが米国のテロ犠牲者や家族に支払うための3億3500万ドル(約351億円)を米側に送金する手続きを行ったという。米国はスーダンに対し、テロ支援国家指定解除を条件にイスラエルとの国交正常化を迫っていたとされ、指定解除の前提として賠償金支払いを求めてきた。米国は1993年にスーダンをテロ支援国家に指定していた。

【私の論評】米国の関与が減少しつつある現在、日本が中東で果たす役割はますます増える(゚д゚)!

自民党参議院議員の佐藤正久氏は、過去に以下のような予測をしています。


スーダンは、アフリカのアラブ諸国の一つということで、この予測は当たっています。

その他、近いうちにイスラエルと和平を結ぶ国々としてオマーン、スーダン、モロッコ、クウェート、サウジの名が既に挙げられています。これは単なるイラン包囲網ではなく、イランを代表とする政治も生活も全部イスラム主導で行うというイデオロギーイスラム主義との決別と理解すべきです。

国交正常化に反対しているのはイスラム主義に固執する主体です。アラブ諸国の新世代はイスラエルに対して明らかに旧世代とは異なる感情を抱いているようです。



今回の合意は、米国主導の「イラン包囲網」がより強固になったことを意味します。イランは核開発を進め、周辺国の親イラン勢力への支援を通じて影響力を拡大させています。これを地域の脅威とする認識が中東各国に広がっていました。

今後さらにイランと敵対するアラブ諸国、他の湾岸諸国が今回の動きに追随し、中東の勢力図が変わる転換点となる可能性があります。日本は原油の9割を中東に依存します。事態の推移を注意深く見守るべきです。

留意すべきは、この動きが一方で、新たな不安定要因を生じさせたことです。最大の懸念は、イスラエルとの和平交渉が停滞しているパレスチナ問題です。

アラブ諸国では、「2国家共存」によるパレスチナ国家の樹立を条件にイスラエルと国交を結ぶことが共通認識でした。今回の一連の国交正常化はパレスチナの頭ごしになされた格好であり、自治政府は「パレスチナ人を裏切る行為」と強い抗議の声を上げています。

確かにイスラエルが入植地併合計画の停止を表明したのは合意の成果といえます。当面、中東の火種の一つがなくなったといえます。

しかしながら、そもそも占領地の自国領土への編入は国際法違反です。併合計画は世界の大半が反対し、撤回を求めていました。その中での合意によりパレスチナ和平交渉の停滞が固定化する恐れがあります。パレスチナの孤立が深まり、過激派の動きが活発化すれば、テロや衝突のリスクも高まります。

シリア、イエメンの内戦など、中東は数多くの困難を抱えています。今回の一連の合意はこうした状況を変えるものではないですが、安定に向かうきっかけとしたいところです。

トランプ米大統領は、これらの合意で、「米国が中東にいる必要はなくなりつつある」と考えているようです。これは、やはり中国との本格的対峙に備えてのことでしょう。ただ米国は、パレスチナ和平交渉の仲介者であることを銘記すべきです。当面は、軍を駐留させて治安の維持にあたらざるをえないでしょう。

2018年5月14日、イスラエルの建国70周年の記念日に、米国は、テルアビブにあった大使館を、米国がイスラエルの首都と認定する聖地エルサレムに移転しました。

これに先立ち、日本は、同年5月1日と2日、それぞれパレスチナとイスラエルの両当事者と首脳会談を行っています。

同年5月1日、安倍総理は、パレスチナのアッバース大統領と会談しました。その際、日本は二国家解決を支持し、大使館をエルサレムに移転する予定がないことを表明しました。日本は、エルサレム問題を含め、国連諸決議や当事者間の合意に基づき、中東和平問題が、平和的に解決されることを望んでいます。

安倍首相とパレスチナ・アッバースス大統領との会談

安倍総理は、また、米国の役割は大変重要で、米国から何らかの和平提案があれば、当事者が向き合って話し合い解決策を見出すことが大切だと述べました。日本は、同年4月24日に、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への追加1千万ドルの支援を決定し、更にガザ中央淡水化プラント建設計画や食糧への支援も行いました。

同年5月2日、安倍総理は、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、中東和平に関しては、二国間解決を支持するが、米国の関与が不可欠であることも述べました。

パレスチナ、イスラエルの首相の双方から、日本のイニシアティブとして評価されたのが、「平和と繁栄の回廊」構想です。この構想は、日本、パレスチナ、イスラエル及びヨルダンの4者が協力し、ヨルダン渓谷の社会経済開発を進め、パレスチナの経済的自立を促す中長期的取組で、2006年に始まりました。

同年4月29日、河野外務大臣は、訪問先のヨルダンで、「平和と繁栄の回廊」構想第6回四者閣僚級会合を開催しました。ヨルダンからはファーフーリー計画・国際協力大臣、イスラエルからコーヘン経済産業大臣、パレスチナからマーリキー外務庁長官がそれぞれ出席し、河野外務大臣が議長を務めました。会合では、本構想の旗艦事業であるジェリコ農産加工団地(JAIP)の発展を推進し、JAIPとアレンビー/キングフセイン橋間の物流環境を整備することが話し合われました。

「平和と繁栄の回廊」構想第6回四者閣僚級会合に先立ち
イスラエルのコーヘン経済産業相と握手する河野外務大臣

この時期に、パレスチナ、イスラエル双方の閣僚が集って、共同プロジェクトを語ることが出来たこと自体が、外交的には特筆すべきことです。その場所をヨルダンが提供し、そのアイデアを日本が出したと言うことです。

安倍総理は、JAIPからヨルダン国境までのアクセス道路建設への支援と、その早期着工への期待を、パレスチナ、イスラエルそれぞれの首脳に表明しました。

地味で道のりの長い「平和と繁栄の回廊」構想ですが、10年以上続く、この四者会談の場が、中東和平の当事者間の対話の機会を提供しているならば、それだけでも意義のあることです。あまりメディアでは報道されない所に、意外と重要な日本外交の役割があるのかもしれません。

西岸からヨルダン川を渡って湾岸諸国まで、人と物の行き来を活性化させることについて、それまでイスラエルはなかなか許可を出してくれませんでした。人と物の出入りが活性化すれば、それだけテロに対するアラートレベルが高くなるからでした。

しかし、今や日本はイスラエルにとって信頼できるパートナー国として認められています。近隣国ヨルダン・エジプトとも長年に亘る友好関係が実を結び、日本は信頼関係を築いています。「平和と繁栄の回廊」構想の実現には、パレスチナ国内外で超えるべき課題はまだまだ多いです。それでも、地域内の各国首脳が前向きに推進させようと合意している世界に誇れる平和に向けた活動ということができます。

米国の中東への関与が減少しつつある現在、日本が中東すべき役割は今後ますます増えていくものと思います。これにどのように取り組んでいくのか、菅政権の課題でもあります。

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中国軍が中東に基地を構える日――中国は「第二のアメリカ」になるか— 【私の論評】中共が力を分散すれば、対中勢力にとってますます有利になる!(◎_◎;)

2020年10月23日金曜日

EUが対中政策を再考、台湾との関係は深化するのか―【私の論評】台湾は、中国の全体主義への砦として、日米欧その他価値観を共有する国々にとって最重要拠点になった(゚д゚)!

EUが対中政策を再考、台湾との関係は深化するのか

岡崎研究所

 9月19日付の台湾の英字紙Taiwan Newsは、中国が世界中、とりわけ最近は欧州で厳しい目を向けられている状況は、台湾と西側民主主義諸国との関係を強化する千載一遇の好機である、とするDavid Spencer(在台湾コンサルタント)の論説を掲載している。


 たしかに、最近のEU諸国と中国との関係の悪化とは裏腹に、EU諸国と台湾との関係はより良好かつ緊密になりつつある。ただし、このような EU諸国と台湾との関係改善の傾向がさらに強化されるかどうかについては、今後、関係各国が台湾との具体的関係をどのように展開させるかにもかかっているので、過度の楽観は禁物であるといえよう。

 9月14日付の仏ル・モンド紙に寄稿した9人の専門家(学者、元政治家を含む)たちが、最近、ますます攻撃的になり、かつ独裁色を強める中国に直面して、欧州は台湾の民主主義を擁護するため行動をとるようにと呼び掛けた。この寄稿文は、これまで欧州は台湾についての中国の主張を追認してきたが、最近、とくに香港をめぐり、国際ルールを平然と無視する中国の動きを見て衝撃を受け、EU諸国にとって対中国、対台湾政策を再考すべき時期に来た、と述べている。

 それだけ香港への「国家安全法」の適用は、香港に2047年まで保証されるはずだった「一国二制度」を抹殺するものとして、大きな影響を欧州諸国に及ぼしていることを意味する。

 さらに、チェコ上院議長一行の台湾訪問団について、中国の王毅外相がチェコは「重い代価」を払うことになる、と恫喝したことは、EUの人々にその傲慢さを強く印象付けたことになる。その他、新型コロナウイルスへの中国の対応やWHOの対応の過ち、ウイグル、チベット等における人権無視、東シナ海・南シナ海を含む周辺海域における独善的拡張主義などはEU諸国に対し、台湾との関係見直しの材料になってきた。

 欧州諸国と中国の関係を見るとき、欧州から見て、中国は経済面で重要性をもっていたが、外交、安全保障面での関係は二の次と見られることが多かった。2008年のリーマンショク等の金融危機直後の欧州は中国からの投資を必要とした時期があった。しかし、その後の過去10年の間にEU諸国と中国の経済関係には大きな変化があったといえる。

 なお、欧州諸国の中では、中国との緊密な経済関係から、ドイツの対中態度は他のEU諸国とは温度差があるのではないかと見られていたこともあり、今後の独中関係には特別の注視を必要としよう。

 今後の欧州諸国と台湾との関係は、日本にとっても他人事ではない。とりわけ、今後の課題としては(1)自由、民主の価値観を共有する台湾との間で、人的交流を拡大し、接触のレベルを上げること(これは、最近米上下両院が可決した「台湾旅行法」の趣旨に合致する)、(2)対話・交流の内容を経済活動だけではなく、安全保障面にまで拡大すること、(3)WHO への台湾の加入促進だけではなく、TPP(環太平洋連携協定)への台湾の加盟を促進することなどは、日本が欧州、米国とともに、あるいはこれら諸国に先駆け率先して、行うべき課題であろう。

 今日、台湾が有する経済・技術のレベル、民主化のレベルはすでに「自由で開かれた」インド・太平洋地域における大きな資産となっているといっても言い過ぎではないと思われる。

【私の論評】台湾は、中国の全体主義への砦として、日米欧その他価値観を共有する国々にとって最重要拠点になった(゚д゚)!

上では、主に欧州と中国にの関係について述べていて、我が国に関する記述は少ないです。では、我が国についてはどうすべきなのかを以下に述べます。

我が国が中国との戦いに勝利するには、第一として長期戦を戦い抜く覚悟が必要です。米国との貿易戦争で苦戦している中国は、短期的には米国に対し恭順の姿勢を示し、部分的な譲歩妥協を重ねて早期の合意に導き、経済や国家制度の根幹見直しが強いられる事態の回避に全力を挙げようとするかもしれません。

しかし、中国は“面服従一面抵抗”の戦術に長けています。上辺だけの妥協、戦術的譲歩で時間を稼ぎ、その間にハイテクやAI技術を高め、やがて米国を抜き去る時期が来れば、一転攻勢に転ずることは間違いないです。短期の合意で問題が解決することはないということを肝に銘じるべきであす。中国の脅威を完全に取り除くには、長期の戦いになることへの覚悟と、それを勝ち抜くための強い決意が求められます。

対中戦略の第二のポイント、それは自由主義諸国が引き続き科学技術、なかでもハイテクノロジーなどの知的財産における優越を保ち続けることです。精強な軍事力の維持や経済の繁栄も無論大切な要件ですが、世界をリードし社会を発展させる礎となるのは科学技術です。世界で最初に第1次産業革命を成し遂げた英国は18~19世紀の覇権国に、それに続く米国は第2・3次産業革命を主導して20世紀の覇権国となりました。

他方、近代科学の吸収に遅れた中国はそれまでの大国の座から一挙に転がり落ちていきました。その中国が200年後の現在、第4次産業革命(The Fourth Industrial Revolution:4IR)をリードし、21世紀における覇権国家の座を射止めんとしています。

これを阻止し、日本や欧米が第4次産業革命の主導権を維持するためには、科学技術教育の充実や研究体制の整備、労働力の質的向上等ソフト・ハード両面における大規模な改革が不可欠です。そして人工知能(AI)やビッグデータの精通度、インテリジェントシステムを駆使した巨大プラットフォームの運営能力の高さが、中国との戦いの帰趨を決する鍵になるでしょう。

特に日米としては、これはなぜかあまり注目されないのですが、対潜哨戒能力の圧倒的優位性や、原潜、通常型潜水艦の攻撃能力の優位性については何が何でも守り抜くべきです。


韓国海軍のレーザー照射事件で有名になった海自のP1哨戒機

この優位性があるため、中国が日米の潜水艦の行動をつかめないのに対して、日米は中国の潜水艦の行動を逐一把握できるのです。実際に戦闘になった場合は、中国は日米の潜水艦を発見できないため、中国の潜水艦や空母を含む中国の艦艇は、すぐに撃沈されしまいます。

現在、この能力に関しては米中が中国を圧倒しているため、台湾を軍事的に守ることは実はさほど難しいことではありません。しかし、この優位性が崩れれば、中国はすぐにも台湾や尖閣を占拠し、大々的に世界の海に乗り出すことになるでしょう。

実際米海軍太平洋艦隊の潜水艦が多数、東シナ海、南シナ海など西太平洋海域で活動中であることが5月下旬、明らかにされました。その任務はアメリカ国防総省の「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿って中国への抑止を誇示することにあるのだといわれました。

米軍全体としては当時新型コロナウイルスの感染が海軍艦艇の一部乗組員にも及び、艦隊の機能低下が懸念されることに対応しての潜水艦隊出動の公表のようでした。

この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて5月下旬に報道しました。米海軍は通常は潜水艦の動向を具体的には明らかにしていません。だが今回は太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされました。

その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされています。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられます。

私自身は、米国はコロナに関係なく、原潜を南シナ海や東シナ海に常時派遣しているのでしょうが、今回はコロナ感染により、米軍の力が弱っていると中国にみられ、この地域で中国の行動を活発化することが予想され、それを抑止すためあえて公表したものとみています。米軍は潜水艦のみでも、抑止ができるとみているということです。

中国は、自らの経済的利得拡大のためにグローバリズムを最大限活用し、他国の市場や技術力を貪欲なまでに取り込んでいます。他方、自国に対する外部からの働きかけには徹底した閉鎖鎖国主義で対抗するという非対称のアプローチを採っています。その中国と戦うには、第三の戦略として“真逆の非対称戦略”が効果的です。

これには、自由と公平、そして開かれた国際貿易を守るための多国間ルールの整備・厳格化やWTOの強化・改革などの取り組むことが重要です。


での共同声明では、日米両国が「第三国の非市場志向型の政策や慣行から日米両国の企業と労働者をより良くするための協力を強化する」ことが合意され、「WTO改革、電子商取引の議論を促進するとともに、知的財産の収奪、強制的技術移転、貿易歪曲的な産業補助金、国有企業によって創り出される歪曲化及び過剰生産を含む不公平な貿易慣行に対処するため、日米、また日米欧三極」が緊密に協力することがうたわれました。

2018年9月にニューヨークで行われた日米首脳会談

これは名指しこそしていないですが、国際規範やルールの壁で中国の横暴を阻むための戦略の一環とです。

さらに、中国社会の自由化や民主化を促し共産党独裁の体制に穴をあけるため、グローバリズムを活用することです。

すなわち、①世界および中国国内の大衆に向けて、人権や民主主義といった普遍的価値の重要性を繰り返しアピールするとともに、中国国内の人権抑圧や少数民族弾圧の惨状を発信します。②共産党による抑圧や自由の否定は、国際社会だけでなく中国国民も最大の犠牲者であることを訴えます。③世界にとっての主敵は共産党であり中国人民ではありません。自由と解放の社会に向けて、中国国民と自由民主主義諸国が連携を深めるのです。

対中戦略における第四のポイントは、主敵を中国一国に絞り込むということです。ソ連のアフガニスタン侵攻で開始された新冷戦が僅か10年足らずで幕を閉じ、ソ連を崩壊へと追い込んで西側世界が冷戦に勝利できたのは、当時の米国のレーガン政権が主敵をソ連一国に絞った世界戦略を展開したからです。現在のトランプ政権はその方向に進みつつあるようですが、我が国を含む自由主義諸国も戦略の焦点を中国にあわせ、その孤立化を最優先目標とすべきです。

武力による現状変更を躊躇しないロシアも国際秩序の攪乱者であり自由世界の脅威ですが、戦略目的達成のためには時にロシアとの戦術的な妥協も厭うべきではないです。そもそも、現在のロシアのGDPは東京都なみであり、ロシアができることは限られており世界の脅威になることはありません。

しかし、旧ソ連の核兵器や軍事技術を継承するロシアは、軍事的には侮ることはできません。しかも、中国と長大な国境を接しており、ロシア自身が中国を驚異とみなしています。ロシアを自らの陣営に引き込み、中露の密接な関係に楔を打ち込み両国を引き裂くとともに、北朝鮮問題の早期にロシアも巻き込み、中国のライバルであるインドとの関係も強化する必要があります。

同盟国を持たず、一帯一路、南シナ海どころか地球の至るところで、中国は行動を起こし、集中することがないという中国の弱点を突き、その孤立化を図ることは極めて効果的な戦略になります。

膨張を続ける中国から自由世界を守るには、中国の海洋進出は絶対に阻止しなければならないです。一帯一路構想を挫き、南シナ海やインド洋における影響力の拡大を阻むことも重要だですが、最優先すべきは台湾の防衛です。

中台統一を目論む中国の活発な動きを看過すべきではありません。もし台湾が大陸中国に吸収されれば、中国海軍の外洋進出を食い止めることが困難になるでしょう。中国が民間船舶の妨害を仄めかすだけで、東アジア諸国は中国の威圧に屈せざるを得なくなるでしょう。

日本を含むアジア太平洋諸国のシーレーン防衛は、台湾を確保できるか否かにかかっており、台湾の喪失は自由世界への重大な脅威となることを認識すべきです。

自由と民主主義の理念を台湾と共有する日米欧は、台湾を守るための取り組みを強めていかねばならないです。18年8月にアメリカで成立した「国防権限法」では、台湾との防衛協力を強化する方針が打ち出され、軍事演習の促進も盛り込まれました。

18年3月には米台政府高官の往来を可能にする「台湾旅行法」が成立し、台湾の防衛当局との相互訪問も明記されました。中台紛争の火の粉が南西諸島に波及し、台湾有事が即日本有事となる危険性を考慮すれば、自らの生存と台湾の防衛が一体不可分であることを日本は忘れてはならないです。

台湾は、中国の全体主義への砦

最後に、唯一の超大国米国が、海洋諸国家と緊密な連携と協力を深めていくことが対中戦略において何よりも重要な課題です。海洋への進出を企てる中国からリムランドを防衛し、自由主義諸国のシーレーンを守る重要な役割を担うのは日米豪英印ASEANなどで構成される海洋同盟です。その機能発揮がなければ対中防護壁の構築やグローバル戦略の発動に穴が開いてしまいます。

政治・経済・軍事・文化等を駆使し総合戦略を発揮する中国に対抗するには政経分離のアプローチでは不十分です。「自由で開かれたインド太平洋構想」の枠組みを活用し、海洋諸国家共通の包括的総合的な戦略の構築が求められます。

中国が足並みの乱れを突いて切り崩しに動き、海洋同盟が分断される事態を防ぐことも必要です。米国の影響力が相対的に低下しつつある現在、覇権と抑圧の政治に対抗し、公正で自由な国際経済秩序を維持するため、海洋同盟の主たるプレーヤーとしての日本の責任や果たすべき役割は極めて大きいです。

そうして、台湾の喪失は日本にとって大きな脅威となることは言うまでもありません。

最早台湾は、中国の全体主義への砦として、日米欧その他価値観を共有する国々にとっては、最重要拠点といっても過言ではありません。何が何でも守り抜くべきです。

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