【日本の解き方】菅政権のマクロ経済政策は「第3次補正予算」が当面のポイント 内閣官房参与の仕事と決意
菅総理 |
マクロ経済政策は、金融政策と財政政策に分けられる。金融政策の実行主体は日銀であるので、政府としては日銀と共通の目標を確認し、実行状況の報告を受け、必要であれば適宜、意見を述べればいい。
菅政権はアベノミクスを継承しているので、金融政策のスタンスも同じはずだ。実際、菅首相は9月23日、黒田東彦(はるひこ)日銀総裁を官邸に呼んで会談した。その場で、政府と日銀が十分に意思疎通し、連携していくことを確認した。
アベノミクスではインフレ目標を設けているので、日銀はその達成に向けて尽力することが全てだが、金融政策のスタンスが菅・黒田会談で改めて確認されたとみていい。
もう一つの柱が財政政策だ。来年度通常国会前に提出される今年度第3次補正予算がポイントになるだろう。
安倍政権でのコロナ対応はどうだったのか。経済協力開発機構(OECD)および20カ国・地域(G20)の主要31カ国において、コロナショックでの財政支出の国内総生産(GDP)比をみると、日本はニュージーランド、米国に次いで第3位の高率だ。財政出動のGDP比は、当然それぞれの国のコロナショックに対する経済の落ち込みとも関係するはずなので、経済落ち込みに対する財政出動の割合で、各国のコロナ対応を見ると、日本は31カ国中、ニュージーランドに次いで第2位だ。
こうした財政出動の結果、日本経済の落ち込みは欧米と比較して軽微になっている。この良い傾向を第3次補正でも維持できるかどうかがポイントだ。
コロナショックへの対応で財政出動は正しい政策だが、最近、債務増大を危険視する論調が出始めている。例えば、国際通貨基金(IMF)が半年ごとに出している財務モニターでは、各国の債務残高が上昇したので、警戒が必要としている。ただし、その数字はグロス(総額)の債務残高対GDP比であり、ミスリーディングだ。例えば、日本では、日銀が保有している債務残高が半分近くあり、その利払い・償還は実質的にないので、相殺したネット(純)債務残高で見るべきだ。
なお、私事になるが、筆者は13日付で内閣官房参与に就任した。この身分は一般職(非常勤・諮問的官職)の国家公務員で、役割は内閣総理大臣の諮問に答え意見を述べることだ。
割り当てられた担当は、経済・財政政策となっている。国家公務員なので、国家公務員法は適用されるが、営利企業の役員等との兼業禁止などは適用除外になっている。その意味で、筆者の仕事は従来通りに行える。内閣官房参与を一般企業で言えば、顧問のような存在だ。
かつて筆者はキャリア国家公務員だった。その中で数%しか経験しない官邸官僚として退職し、12年ぶりに官邸に戻った感じだ。公務員は公僕であり、国民のためにしっかりやりたいと思う。(内閣官房参与・嘉悦大教授、高橋洋一)
加藤勝信官房長官は13日の記者会見で、宮家邦彦・立命館大客員教授、高橋洋一・嘉悦大教授ら6人を内閣官房参与に任命したと発表した。宮家氏は「外交」、高橋氏は「経済・財政政策」を担当する。このほかに任命されたのは、「感染症対策」で岡部信彦・川崎市健康安全研究所長。「経済・金融」で熊谷亮丸・大和総研チーフエコノミスト。「産業政策」で中村芳夫・経団連顧問。「デジタル政策」で村井純・慶応大教授。いずれも13日付(13日付朝日新聞)。
この発表を受けて、市場ではやや動揺というかさざ波が立ちました。それはいわゆるリフレ派を代表すると思われるひとり、高橋洋一氏の名前が挙がったためです。ところが、それと同時に、緊縮派で増税推進派である熊谷亮丸も参与に任命されたからです。
熊谷亮丸氏 |
その安倍政権の官房長官となったのが、現在の菅総理ですが、すでに当時から菅官房長官と高橋洋一氏は頻繁に会っていたとみられています。この意味でもアベノミクスには菅官房長官を通じて高橋洋一氏が絡んでいた可能性は十分に考えられます。
首相補佐官とは、政策提言などをするための直属のスタッフで、そのトップは内閣官房長官なのですが、内閣官房には属しません。安倍政権のときに「官邸官僚」という言葉が出て来ましたが、官邸官僚は内閣官房に属さずに官邸にいて、官僚、あるいは官僚的な仕事をします。
柿崎明二氏 |
姉崎氏の仕事は、「政策全般について評価や検証、さらには改善すべき点について、必要に応じて意見を言う。総理に対して進言や意見具申を行う」ということです。職務内容については、「この範囲のなかでやってください」とペーパーで総理から示されます。
高橋洋一氏 |
退職金を受け取ったばかりの元財務省官僚の高橋氏が金に困っていて、わずかな金品を盗むとは考えにくい。しかも、大学教授、著名な言論人であるという社会的地位・名誉をあわせ考えると、そんな軽はずみな行動を取るとは信じがたいです。そのため、陰謀説なども囁かれています。
高橋氏はこの事件で東洋大学を懲戒解雇され、東京地検は起訴猶予処分という判断を下しました。それ以来、高橋洋一氏は嘉悦大学の教授となり、様々な言論活動をしてきました。ただ、政府などの機関で表立った立場では仕事ができない状況となっていました。
高橋氏としては、やはり能力を活かして、具体的にマクロ経済的な施策を実行したいとの希望はあると思います。高橋氏の年齢は65歳です。まだまだ、政治の世界では様々なことができると思います。
私は、菅総理は、この二人を競わせるかもしれないと思っています。うまくいけば、いずれ他の人事が待っているかもしれません。それは姉崎氏の例をみれば明らかです。姉崎氏に関しては、菅総理はこの二人よりは、はやく上にあげて、すぐにでも使いたいと考えたのでしょう。
高橋氏にはさらに上を目指し、できれば現在ではなくなってしまった日本の高度成長を主導した経済企画庁のような組織を新たな創設して、日本で再びまともなマクロ経済政策できるようにしていただきたいです。
もうその時々で、財務省や日銀の意向を気にせざるを得ないような政府ではあるべきではありません。そのようなことよりも、国民に顔を向けた経済政策を日本でも実行できるようにすべきです。
それにしても、菅総理の人事は「内閣人事局がらみの発言」、「日本学術会議人事」、「内閣補佐官人事」、「内閣参与人事」において、真骨頂を発揮しつつあるようです。
大企業においても、まともな企業では考え抜かれた人事が実行されています。その中には、当然一般の社員にはなかなか理解できない人事もあります。しかし、まともな企業であれば、人事発令の裏にはそのような深謀遠慮があるのが普通です。
というより、ある企業のことを深く知りたいと思えば、長期にわたって公表される人事を詳細に調べれば、その企業が何をしようとしているか、他のいかなる情報よりもはるかに知ることができます。
過去に日本経済がかなり落ち込んだ平成年間の中期あたりには、いくつかの企業が総務本部長にかなり有能な人物が選ばれたりして話題になったことがありました。これは、その企業が不況に本格的に立ち向かおうとしていることを雄弁に物語る人事といえます。
経営学の大家ドラッカーは、組織において真に力のあるコントロール手段は、人事の意思決定、特に昇進の決定だといいます。
貢献させたいのならば、貢献する人たちに報いなければならない。つまるところ、企業の精神は、どのような人たちを昇進させるかによって決まる。(『創造する経営者』)
まさに、真に力のあるコントロール手段は、人事なのです。他にも様々なコントロール手段もありますが、しかし人事にまさるものはありません。単純な人事なら、AIにもできますが、政府の仕事に関わる重要な人事はやはり、総合的な観点から人間が行わなければなりません。
このようなことを知ってか知らずか、野党やマスコミなど、人事に関する無責任な発言が多すぎです。人事が最大のコントロール手段であることを考えると、野党やマスコミは今後ますます自らの組織のコントロールが効かなくなり衰退するでしょう。
政府の機関である「日本学術会議」が左翼のゴミ溜めのようになっているのは、どう考えても政府にとって良いことではありません。このような人事を長年にわたって歴代の政権が許してきたこともあり、前川喜平のような非常識な人間が文部次官になってしまうようなことがまかりとおってきたのです。
ちなみに、前川氏は文部省が作成した「天下りに関する調査報告書」に50回も名前が登場しています。無論、天下りに関与した人物としてです。前川氏は退職金も満額(8000万円)もらっています。これは、政府による温情的な措置であることが非常識な前川氏には理解できていないようです。私は、このような人物は懲戒免職したほうが良かったと思います。
そういった意味では、菅総理は人事が真のコントロールであることを熟知しており、人事の魔術師と呼ぶにふさわしいかもしれません。今後どのような人事をしていくのか、注目です。
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