2025年8月8日金曜日

【日米関税交渉】親中の末路は韓国の二の舞──石破政権の保守派排除が招く交渉崩壊


 まとめ

  • 日米合意の自動車関税引き下げには「重畳課税」などの抜け穴が残され、米国の裁量で事実上引き上げ可能な危険がある。
  • 2018年の232条関税や米韓FTA改定の事例のように、米国は対中姿勢が弱い同盟国に対して通商面で強硬姿勢を取る傾向がある。
  • 石破政権は経済安全保障や通商の専門性に乏しい人物を重用し、交渉力の低下を招いている。
  • 岩屋毅外相は防衛畑出身で親中派とされ、500ドットコム事件でも米国から警戒される要因を抱えている。
  • 日本が危機を脱するには石破政権を退陣させ、自民党内保守派が実権を回復して米国と足並みをそろえることが不可欠である。
米相互関税の負担軽減措置をめぐり、赤沢亮正経済財政・再生相は7日、米政府が大統領令を修正し、日本を対象に加えると約束したと発表した。徴収し過ぎた関税は7日にさかのぼって還付されるという。さらに米国は、自動車関税引き下げの大統領令も同時期に出す方針を示した。表向きは日米関係の前進に見えるが、実態はそう単純ではない。協定文には重大な抜け穴があり、日本が将来、米国の意向ひとつで不利な立場に追い込まれる危険が潜んでいる。以下、その核心を明らかにする。
 
🔳協定に仕掛けられた“罠”
 
今回の日米合意は、米国が日本から輸入する乗用車の関税を27.5%から15%に下げるという内容だ。日本の自動車産業にとっては、米市場での競争力を高める朗報に見える。だが、その裏には看過できない問題がある。

米国が日本から輸入する乗用車の関税を27.5%から15%に下げることになったが・・・・

最大の懸念は「重畳課税」だ。本来15%に下がるはずの関税に、別の法律や安全保障条項を根拠とした追加課税を上乗せすることが可能な構造が残っている。協定にはこれを禁じる文言がない。つまり、数字だけを見れば譲歩を得たように見えても、米国はいつでも関税を事実上引き上げられるのだ。

さらに、発効時期が曖昧である。日本は即時実施を求めたが、協定には日付も条件も明記されていない。米国は政治状況や経済事情を理由に、発効を先送りできる余地を持つ。しかも協定そのものの拘束力が弱く、米国内の政権交代や議会の圧力で簡単に運用を変えられる。これは同盟国間の信頼を揺るがすだけでなく、日本経済の柱である自動車産業に深刻な打撃を与えかねない。
 
🔳米国の“圧力外交”の前例と対中姿勢の影響
 
この構図は、トランプ政権下での232条関税を思い起こさせる。2018年、米国は鉄鋼に25%、アルミに10%の追加関税を課した。当初、EUやカナダ、メキシコには一時的な適用除外が与えられたが、日本は同盟国でありながら対象から外されなかった。その後、除外措置は短期間で解除され、EUも最終的には対象となった。ただしEUはWTO提訴や報復関税で対抗し、条件付き譲歩を引き出す交渉を展開した。一方、日本は有効な反撃策を取れず、事実上、米国の条件を受け入れた形だ。安倍政権を持ってしてもこれに対処する術はなかったのだ。

親中、親北だった当時の文在寅韓国大統領

米韓FTA改定でも同じ構図が見られる。2018年、米国は韓国に対し、米国製自動車の輸入規制緩和や関税維持を一方的に認めさせた。当時の文在寅政権が親中的かつ北朝鮮に融和的だったことが、米国の強硬姿勢を後押ししたとされる。米国は安全保障と通商を一体で捉える。対中政策で足並みをそろえない同盟国には、経済面での圧力を加えることをためらわない。

この視点で見ると、石破政権の対中姿勢は危険だ。発足以来、中国との関係改善を打ち出し、経済交流や首脳往来を積極的に進めてきた。この動きが米国に「対中で中立に傾く政権」と受け取られれば、通商交渉で一層厳しい条件を押し付けられる恐れがある。
 
🔳石破政権の人事が招く交渉力の空洞化
 
日本がこうした不利な条件を受け入れてしまう背景には、石破政権の人事がある。経済安全保障や通商戦略に精通した保守系の実務派を外し、代わりに専門性に乏しい人物を重用したのだ。
石破政権発足時の閣僚 クリックすると拡大します

経済安全保障担当の赤澤亮正氏は、国際経済交渉の豊富な経験よりも首相との近さで選ばれたとされる。外務大臣の岩屋毅氏は、防衛・外交畑の経歴はあるが通商や経済安全保障の専門性はなく、加えて親中派と見られている。さらに、中国系オンラインギャンブル企業「500ドットコム」を巡る2019年のIR汚職事件で名前が取り沙汰され、東京地検特捜部の捜査対象にもなった。この件は起訴には至らなかったが、米国側から「対中資本と近しい人物」として警戒される要因となった。こうした人物が外相に就任すれば、米国からの信頼度が下がり、通商や安全保障交渉で不利に働くのは避けられない。

こうした布陣では、防御的な条文を協定に盛り込み、相手国の裁量を封じる発想は生まれにくい。結果として、米国の政治判断ひとつで合意の実質が変えられるような危うい協定が結ばれたのである。
 
🔳危機を脱する唯一の道
 
日本がこの危機を脱するには、政権の交代が不可欠だ。石破政権は発足当初から保守派排除の報復人事を繰り返し、保守系の有能な人材を重要ポストから外してきた。組閣に柔軟性はなく、党内融和よりも自らの支持基盤固めを優先している。実際、経済安全保障や外交の要職には、党内保守派や経済交渉の実務派はほぼ起用されていない。こうした人事の偏りが交渉力の低下を招き、今回のような不利な合意を許したことは明白だ。

もちろん、連立政権による再編や保守系新党の躍進というシナリオもあり得る。しかし、当面の課題はトランプ政権との交渉であり、ここで日本側が主導権を握るには、石破首相を退陣させ、自民党内の保守派が再び実権を取り戻すことが望ましい。米国は過去の文在寅政権への対応でも示したように、対中姿勢や安全保障の立場を重視して通商条件を決める。したがって、対中で明確に米国と足並みをそろえる保守派政権こそが、今の日本に必要であり、国益を守るための唯一の現実的な道である。トランプ政権もそれを期待しているからこそ、日本に圧力をかけている可能性も高い。

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  まとめ 日米合意の自動車関税引き下げには「重畳課税」などの抜け穴が残され、米国の裁量で事実上引き上げ可能な危険がある。 2018年の232条関税や米韓FTA改定の事例のように、米国は対中姿勢が弱い同盟国に対して通商面で強硬姿勢を取る傾向がある。 石破政権は経済安全保障や通商の...