2025年8月28日木曜日

米国で暴かれた情報操作の闇、ロシアゲートの真実を報じぬ日本メディア


まとめ

  • 米国ロシアゲートは司法・議会・報道の検証で「政治的プロパガンダ」であった可能性が高まり、情報機関の政治利用やFISA制度の乱用が明らかになった。
  • 英国元スパイのスティール文書は裏付けに乏しい虚偽情報でありながら監視令状の根拠となり、その政治利用が公式に確認された。
  • 石破政権は政策の迷走や外交方針の失敗で選挙に連敗しながら続投し、メディアは「裏金」「統一教会」「外国介入」問題を強調して責任転嫁している。
  • 2025年参院選でX(旧Twitter)が複数アカウントを凍結し、平将明デジタル大臣が外国勢力介入の報告を公言。こうした事実を盾にした世論操作の危険性が米国ロシアゲートと重なる。
  • 日本メディアはロシアゲート再評価をほぼ報じず、政権擁護的論調が目立つため、筆者は海外報道を重視し。読者もAI翻訳を活用し、海外情報を直接得るべき。
🔳ロシアゲートの崩壊と制度的再評価

2016年の米大統領選で広まった「ロシア疑惑(ロシアゲート)」は、いまや政治的物語の枠を超え、司法・議会・報道が動員される大規模な制度的検証へと姿を変えている。当初、民主党やリベラル系メディアは「トランプ陣営がロシアと共謀し選挙を不正に勝ち取った」という物語を繰り返し報じ、世界中の世論を煽った。ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、CNNなどは疑惑を「確定的事実」のように描き、政権初期のトランプを不信の渦に追い込み、米国の分断を一気に深めた。

「ロシア疑惑(ロシアゲート)」は米国では過去に確定的事実のように報道された

しかし、その後の調査で事態は一変する。2023年以降、司法省による独立調査や議会公聴会、さらに2025年夏の段階的な機密文書公開によって、この疑惑の土台は崩れ去った。ロシアゲートは事実ではなく、政治的意図を帯びたプロパガンダであった可能性が濃厚になったのだ。

2025年7月、国家情報長官(DNI)トゥルシー・ギャバードは2017年作成の「情報コミュニティ・アセスメント(ICA)」の関連文書を三度に分けて公開した。この公開で明らかになったのは、CIAやNSAがごく一部の情報を恣意的に重視し、異論を排除したまま「ロシアはトランプを支持した」という結論を作り上げた事実である。政治圧力が影を落とした報告書だったことが、初めて公式記録で示されたのだ。

司法省も動いた。パム・ボンディ司法長官は同年8月、大陪審を招集し、FBIの「クロスファイア・ハリケーン」捜査の起源やFISA令状申請の適法性を徹底的に洗い出した。ロシアゲートは単なる党派対立の材料から、国家司法制度による正式な調査対象へと格上げされた。

さらに、ジョン・ダーラム特別検察官の報告書付録がチャック・グラスリー上院司法委員長の要請で機密解除された。この付録には、ヒラリー・クリントン陣営が「トランプをロシアと結び付ける工作計画」を進めていた疑惑や、FBIが虚偽記載を含むFISA令状更新を繰り返した事実が明記されていた。議会の報告書は、当時の情報評価が限られた証拠に依拠し、意図的な情報操作があったことを指摘した。

トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)国家情報長官は評価作成に関わった37名の情報高官のセキュリティクリアランスを剥奪した。CIAはこれを「報復」と非難したが、政権側は「情報機関の政治利用を正すための措置だ」と断じた。ロシアゲートは、国家権力を使った情報戦争の象徴として、その真相が白日の下にさらされつつある。
 
🔳スティール文書とFISA制度に潜む政治利用

ロシアゲートの核心を握るのが、英国元スパイ、クリストファー・スティールの手になる「スティール文書」だ。この報告書は民主党寄りの調査会社Fusion GPSの依頼を受けて作成された。文書は、トランプ陣営がロシア政府と裏で癒着していたと断定し、メディアや議員の間で「動かぬ証拠」として扱われた。

だが2017年、FBIが情報源に直接接触した結果、この内容は伝聞や二次情報に基づくもので、裏付けがほぼ皆無であることが判明した。にもかかわらず、FBIはこの文書を基にFISA令状を取得し、カーター・ペイジ元陣営顧問らへの監視を正当化した。

クリストファー・スティール

2019年、司法省監察官マイケル・ホロウィッツの報告書は、申請過程での誤りや情報省略を明確に指摘し、スティール文書の信頼性を完全に否定した。Fusion GPS(米国ワシントンD.C.に本拠を置く調査・リサーチ会社)関係者の虚偽証言やBuzzFeed(米国のインターネットメディア、および同ウェブサイトを運営する企業)を相手取った訴訟の結果も、この文書が政治的プロパガンダだったことを裏付けた。

2017年8月にはFusion GPS共同創業者グレン・シンプソンが議会で「スティール文書はFBI捜査の起点ではなかった」と証言。2018年にはジェームズ・コミー元FBI長官が「ほとんど裏付けられていない」と述べ、ダーラム特別検察官は「証拠は皆無」と断言した。さらに「クロスファイア・ハリケーン」内部記録公開で、情報機関が政治圧力で判断を歪められていた事実が公式に裏付けられた。

FISA(外国情報監視法)は1978年制定の法律で、外国勢力やその関係者を秘密裏に監視する制度だ。国家安全保障の名の下に透明性が低く、監視の乱用リスクが極めて高い。ロシアゲートでは、この制度の仕組みが政治闘争に利用され、国家権力の危うさを世界に示す事例となった。
 
🔳日本の石破政権と「日本版ロシアゲート」

米国の教訓は、日本の現状にも重なる。2024年以降、自民党は衆院選、都議選、参院選と連敗を重ね、2025年には参院で少数派に転落した。それでも石破茂首相は辞任せず、続投を強行した。

政権の敗因は明白だ。左派リベラル寄りの政策、親中外交、外国人政策の緩和、財政・金融政策の不透明さなど、根本的な問題が山積している。しかし党執行部と主要メディアは政策批判を避け、「裏金問題」「統一教会問題」を前面に押し出し、保守派攻撃に利用している。これは米国でロシアゲートが「トランプ=ロシア共謀説」を政治的攻撃の旗印にした構図と酷似している。

さらに、選挙敗北の原因を「外国勢力の介入」や「SNSの工作」に転嫁する言説も増えた。2025年参院選ではX(旧Twitter)が複数のアカウントを凍結し、平将明デジタル大臣が『外国から介入された事例の報告がある』と公言した。総務省・デジタル庁の合同会見で明らかになったのは、海外IPアドレスを利用した情報操作の具体的痕跡である。

慣例をやぷって続投しようとする石破首相

TBSやNHKも「不自然なバズり」「世論操作の兆候」を報道し、産経新聞はセキュリティ企業SolarComの調査を引用。選挙期間中、150万人規模のフィッシング攻撃が確認され、中東系開発者の関与が疑われると報じた。

こうした脅威は事実だが、問題はそれが敗北の責任転嫁や物語づくりに利用される危険である。ロシアゲートも「選挙不正の象徴」とされながら、その後に政治的プロパガンダだったことが明らかになった。日本も同じ道を歩む恐れがある。

現在、政府はナショナルサイバーセキュリティーオフィスの強化や情報対策会議で防衛策を進めている。しかし、これが政権の失策隠蔽や保身の盾として使われれば、国民の信頼は失墜するだろう。

ロシアゲートの本質は、サイバー攻撃や外国勢力の脅威そのものではなく、それを政治的道具にした情報戦にある。日本でも「裏金」「統一教会」「外国介入」などの言葉が乱れ飛び、政策失敗が曖昧化されている。SNSやサイバー攻撃の実態が政権の盾になれば、民主主義の根幹は崩壊しかねない。

ロシアゲートは国家機関の政治利用を示す象徴だ。米国ではスティール文書とFISA制度の乱用が暴かれ、司法と議会が徹底検証を進めている。一方、日本では石破政権の政策失敗が「裏金」「統一教会」「外国介入」という物語に置き換えられつつある。

しかし、この米国でのロシアゲート再評価と真相解明は、日本国内ではほとんど報じられていない。むしろ日本のメディアは、石破政権の失政を覆い隠すかのような報道ばかりを繰り返している。だから私は、官報や議会資料などの一次情報は閲覧するが、日本のマスメディアはほとんど見ない。と言うより、あまり稚拙で見ていられない。

代わりに海外メディアを中心に情報を追っている。外国メディアも偏向や誤報はあるが、それでも日本メディアよりは情報の多様性と透明度が高い。特に保守系メディアは、日本国内ではほとんど触れられない重要情報の宝庫である。最近の私のブログでの引用記事の多くが海外報道であるのもそのためだ。

今では生成AIの翻訳機能で日本語化は容易である。だからこそ皆さんも日本の大手報道だけでなく、海外メディアを直接読み、多角的に情報を得るべきと思う。そうして初めて、国家の情報操作やメディア戦略に惑わされない視点を持つことができるだろう。

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