2025年3月8日土曜日

中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%―【私の論評】中国vs加 関税戦争の裏側:中国が圧倒的に不利に陥る中、日本の使命とは

 中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%

まとめ

  • 中国は、カナダが中国製電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に輸入関税を課したことへの報復として、3月20日からカナダ産の菜種油、油かす、エンドウ豆に100%、水産物と豚肉に25%の関税を適用すると発表した。
  • カナダは昨年、中国からのEVに100%、鉄鋼とアルミニウムに25%の関税を課す方針を示しており、中国商務省はこれを「WTOルールに違反する保護主義的かつ差別的な措置」と批判している。

対立する王 毅とトルドー AI生成画像

中国は8日、カナダの農産物や食品の一部に関税をかけると発表した。カナダが中国の電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に輸入関税を適用したことへの報復とみられる。

商務省によると、カナダ産の菜種油、油かす、エンドウ豆に3月20日から100%の関税を適用。水産物と豚肉に25%の関税をかけるとした。

カナダは昨年、中国から輸入するEVに対し100%の関税を課すと発表した。中国製の鉄鋼とアルミニウムについても25%の関税を課す方針を示した。

商務省は今回、声明で、カナダの対中関税について「世界貿易機関(WTO)のルールに著しく違反し、典型的な保護主義行為であり、中国の正当な権利と利益を著しく害する差別的措置だ」などと批判した。

【私の論評】中国vs加 関税戦争の裏側:中国が圧倒的に不利に陥る中、日本の使命とは

まとめ
  • 中国とカナダの関税合戦は、2025年3月8日に中国がカナダ産農産物に高関税を課したことから始まり、カナダの2024年8月の中国製EVなどへの関税への報復だ。米中貿易戦争の影響で、カナダは米国と連携し、中国はカナダを叩いて米国を牽制している。
  • 米国は2025年3月4日にカナダなどに25%の関税を課し、関税戦争が拡大。カナダは両国から圧力を受け、農産物輸出が危機に。中国は固定相場制で為替調整ができず不利だ。
  • ポール・クルーグマンは、関税が短期で産業を助けるが長期で市場を歪めると警告。米国とカナダは為替でカバー可能だが、固定相場制の中国は直撃を受け、輸出依存経済が苦境に。
  • 中国は政府介入や内需拡大を試みるが、長期的効果は薄く、内需拡大も体制上難しい。CPTPPは関税削減とルールで注目され、日本主導で11カ国、2024年に英国も参加。
  • RCEPは2022年発効で市場は大きいが、自由化が浅くCPTPPに劣る。中国はCPTPPに入れず不利。日本はCPTPPを推進し、自由貿易で米国による関税戦争のバカバカしさ、中国の現体制の弱さを示すべきだ。

カナダ アルバータ州の広大な菜種畑

中国とカナダの関税合戦は、2025年3月8日に中国がカナダ産の菜種油やエンドウ豆に100%、水産物や豚肉に25%の関税をぶちかましたことから火蓋が切られた。きっかけは、カナダが2024年8月に中国製EVや鉄鋼、アルミニウムに高関税を叩きつけたことへの報復である。カナダは中国の過剰生産が自国産業を潰すと焦り、米国とタッグを組んだ形だ。中国は「WTOを無視した保護主義」とブチ切れ、カナダ経済を締め上げるべく菜種油を狙い撃ちしたのだ。両国の因縁は深く、2018年のファーウェイ事件で冷え切った関係が、ついに爆発したのである。

このバトルは、米中貿易戦争の余波である。カナダは米国の舎弟として中国にケンカを売り、中国はカナダを叩いて米国に「舐めるな」と警告している可能性がある。一方、米国は2025年3月4日にカナダやメキシコに25%の関税をぶち込み、「貿易赤字とフェンタニルをぶっ潰す」とトランプが吠えた。すると中国もすぐカナダに報復関税をぶつけ、連鎖反応で関税戦争が燃え上がったのだ。カナダは両巨人に挟まれ、農産物輸出が崖っぷちである。米国の関税は移民問題が主因だが、カナダが中国に喧嘩を売った裏には米国の影があり、中国との対立をドロ沼にしているのだ。

タリフマン(関税男)を自認するトランプ大統領

関税の話を前に書いたことがあるが、経済への打撃は為替変動で和らぐ場合があるのだ。関税で輸入品が値上がりすると物価が跳ね上がり、消費者は安い代替品に走る。だが購買力が落ちて経済が失速する危険もある。ドルが強まれば米国輸出は苦しくなるのだ。ノーベル賞のポール・クルーグマンは「関税は短期で国内産業を儲けさせるが、長期的には市場がガタガタになる」と警告する。

為替が動けば輸出国の通貨が下がり、競争力が戻って均衡が取れると彼は言うのだ。だが、これは変動相場制の国だけの話である。中国のような固定相場制では為替が動かず、緩和の余地はないのだ。だからこそ、米中加の関税戦争は中国に不利である。米国とカナダは為替で多少カバーできるが、中国は関税の直撃をモロに食らうのだ。

中国は輸出で食っている国である。その割には、WTOの貿易ルールなど無視しているくせに、カナダがそれを守らないになどと批判している。片腹痛いとはこのことだ。米国やカナダからの関税で輸出が死ねば、経済はさらにガタつくしかない。長引けば苦しい立場に追い込まれるのだ。政府の介入や内需拡大で誤魔化せるかもしれないが、短期の小細工にすぎない。長期で介入し続けるのは無理である。内需を増やしたいが、民主化も、法治国家化も、政治と経済の分離すらされていない今の体制では難しい。中国はジリ貧である。

イギリスが加盟して12カ国になったCPTPP

そんな中、貿易協定のCPTPPが熱い視線を浴びている。関税で貿易が困難になれば、加盟国間の関税を廃止し、安定したルールを提供するCPTPPは輝いて見えるのだ。日本主導でカナダも含む11カ国が動き、2024年12月には英国も仲間入りした。知的財産や電子商取引までカバーする本格的で先進的である。米中が殴り合う中、「米国抜き」の経済圏としてアジア太平洋を仕切る可能性があるのだ。

中国や韓国、台湾も興味津々だが、中国は厳しい加入条件に跳ね返されるだろう。地政学的に見ても、関税戦争がエスカレートすれば、米国以外の国々がCPTPPで結束を固める流れが加速するだろう。

対する中国が実質的な旗振り役の貿易協定RCEPは2022年に発効し、15カ国の巨大市場を誇るが、自由化が中途半端である。関税削減は緩く、ルールも甘いのだ。市場は巨大だが、深みがない。CPTPPの方が関税戦争で頼りになる選択肢である。特に貿易に命をかける国にはたまらない魅力だ。だが、成果は政治と情勢次第である。中国はCPTPPに入れず、RCEPでも勝てない。固定相場制の足枷もあり、関税戦争では完全に不利なのだ。

日本はCPTPPの旗を振って仲間を増やし、厳しいルールで自由貿易を推進すべきだ。日本も含めた加盟国全体を豊かにし、関税戦争のバカバカしさと、中国のような手前勝手な国の不利な状況を世界に見せつけるのだ。それでこそ、日本の存在感が世界中に響くことになる。日本が動かなければ、誰が動く。自由貿易の旗を掲げて、米中の鼻を明かすのが日本の使命である。

【関連記事】

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏―【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない 2025年3月7日

トランプ大統領が「日本の消費税廃止」を要求? JEEP以外のアメ車が日本で売れない理由は「そこじゃない」―【私の論評】トランプの圧力で変わるか?都内の頑丈な鉄橋の歴史が物語る日本の財政政策の間違い 2025年3月6日

コラム:「トランプ関税」に一喜一憂は不要、為替変動が影響緩和―【私の論評】変動相場制の国カナダ、メキシコとは異なる中国の事情 2025年2月11日

トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税 4日発動―【私の論評】米国の内需拡大戦略が世界の貿易慣行を時代遅れに!日本が進むべき道とは? 2025年2月2日

英国のTPP加盟が発効 12カ国体制で2300兆円規模の経済圏が始動―【私の論評】TPP加盟国の経済発展と米国への影響:競争激化と関税政策のリスク 2024年12月15日

2025年3月7日金曜日

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏―【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない

米国は対ロシア制裁強化も辞さず、和平につながるなら-ベッセント氏

まとめ
  • ロシア制裁、「最大限の効果もたらすべく積極的に活用される」
  • 対イラン制裁も強化、石油セクターを「シャットダウン」へ-長官

ベッセント米財務長官

ベッセント米財務長官は6日、ウクライナ停戦のためならロシア産エネルギーへの追加制裁も検討すると述べた。ニューヨークの講演で、トランプ大統領の指示に基づき対ロシア制裁を積極活用すると話し、停戦交渉での影響力増を期待。バイデン前政権の制裁躊躇を批判し、イランへの制裁強化も表明、石油セクターを「シャットダウン」して再び破産させると語った。

原題:US Won’t Hesitate on Russia and Iran Sanctions, Bessent Says (1)(抜粋)

【私の論評】米国がロシアとイランを締め上げる制裁の本質、ウクライナのためだけではない

まとめ
  • 制裁の概要: 米国はロシアとイランに制裁を課す。ロシアは2022年のウクライナ侵攻以来、エネルギーや軍事産業が対象。2025年1月、250の個人・団体が追加された。イランは核開発やロシア支援で、2025年2月に石油産業が締め上げられた。
  • 背景: イランは2024年9月の国連報告でロシアへのミサイル供与が発覚。2024年米選挙介入疑惑も制裁理由。トランプ政権はイラン石油をゼロに近づける計画だ。
  • 継続性: ロシアへの制裁は2025年3月7日時点で継続。トランプは和平次第で緩和を示唆。イランは新制裁で石油輸出を潰す方向だ。
  • 誤解の否定: 「ウクライナばかり厳しい」は誤り。2025年2月、インド・UAEとイラン石油摘発。ロシアとの和平論もあるが、裏切りリスクで単純ではない。
  • 本質: 制裁は軍事力疲弊が目的。2025年3月IMFはロシア成長を報告するが、2024年12月国防総省は兵器開発遅れを指摘。イランも勢力削減が狙いだ。

米国によるロシア制裁(sanctions)は、ウクライナ戦争のためだけではない

米国がロシアとイランに突きつける制裁は、ただの経済圧力ではない。そこには国際政治のドロドロした力学が渦巻いている。まずはロシアだ。2022年、ウクライナに軍を突っ込んで以来、アメリカは容赦なく締め上げてきた。狙いは明確だ。エネルギー、金融、軍事産業をズタズタにして、ロシアの息の根を止めること。石油やガスの輸出を絞り、北極や深海での新プロジェクトを潰す。

2025年1月、米国務省がぶち上げた発表では、軍事産業を支える250もの個人や団体が新たに制裁の標的となった。中国経由の裏ルートまで叩き潰す気満々である。これぞ、ロシアの戦争マシンをぶっ壊し、同盟国と手を組むアメリカのしたたかな一手だ。

次にイランだ。これは1979年の大使館占拠からずっとアメリカとケンカ状態だ。最近では、核開発、ロシアへの武器支援、中東でのテロ資金ばらまきが制裁の火種である。2025年2月25日、米国務省がイランの石油・石油化学産業に絡む16の団体や船を新たに締め上げ、「最大圧力」をまたぶちかました。

なぜか。イランがロシアに弾道ミサイルを渡している証拠が暴露されたからだ。2024年9月、国連で公開された報告書がそれを白日の下に晒した。イラン製ミサイルがウクライナ戦場で火を噴いてるなんて、ゾッとする話だ。さらには、2024年の米大統領選に介入した疑惑で、イラン革命防衛隊(IRGC)の連中も制裁の網に引っかかった。圧力は全方位だ。


この制裁は、続くのだろうか? 新たな一撃はあるのか? 答えは簡単ではない。ロシアを見ろ。バイデン時代に作った制裁の鉄の枠は、2025年3月7日時点で未だ残っている。1月20日にトランプ政権が船出した今も、ウクライナ戦争がくすぶっている限り、方針は揺るがないだろう。

だが、トランプは一筋縄ではいかない。「ロシアが和平交渉に乗るなら、制裁を緩める余地もある」と、2025年2月20日のブルームバーグで口にした。3月4日のロイター報道では、ホワイトハウスが条件付きで緩和をチラつかせてるという話しもある。実際、2024年末にはトランプ陣営がウクライナと接触し、停戦の糸口を探ってたらしい。制裁は外交の切り札だ。

イランはどうだ。トランプは核合意(JCPOA)をゴミ箱に叩き込んで、「最大圧力」をガンガン進める気だ。ベッセント財務長官が吼えた。「イランの石油をシャットダウンする。計画はもう動いてる」。石油輸出をゼロ近くまで絞り、経済を再び破産させる魂胆だ。2025年2月の制裁強化はその第一歩。

2020年、トランプがイランの石油を日量50万バレル以下に叩き落とした再現を狙ってるって、専門家も騒いでる。ロシアとの軍事タッグをぶち壊す意味でも、新たな制裁がどんどん追加される可能性は大きい。

2025年1月、ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)での討論会(注: CSISと推定。公式記録は未確認で、他の可能性もあり得る)で、専門家が叫んだ。「イランの石油マネーを断てば、ロシア支援も終わる」。アメリカの政策屋もその線に乗り気だ。

最近は、「アメリカはウクライナにばかり厳しい」などという声があるが、その見立ては間違っている。ロシアやイランの締め上げは、ウクライナ支援と肩を並べて進んでいる。ロシアに遠回しにプレッシャーをかけるイラン制裁は続いている。2025年2月、インドやUAEと組んでイラン石油の裏輸出を摘発した動きは、それが続いている証だ。アメリカは世界の安全保障を睨んだ多面作戦を繰り出しているのだ。

トランプ政権の安全保障チームには、こんな声もある。「ロシアと握ってでも、欧州のグダグダ戦争を終わらせよう。欧州の安保は欧州人に押し付けろ」。2025年2月、ヘリテージ財団の報告書がそう吠えた。「ロシアとのケンカを緩めて、中国に集中すべきだ」。しかし、米国が中国とバチバチやってる最中にロシアに裏切られたらどうする?

 2014年のクリミア併合で、西側との約束を平気でぶち壊したロシアだぞ。トランプだって、2024年選挙戦で「ロシアは信用ならん。しかし交渉で押さえ込む」とハッキリ言った。対ロシア戦略は単純ではない。トランプは和平模索と中国牽制の二刀流で、制裁の緩急を巧みに操るだろう。

ロシアが併合したウクライナ南部クリミア半島セバストポリの街頭に掲げられた、プーチン露大統領のポスター

何にせよ、単純で薄っぺらい見方では、この本質は掴めない。ロシア制裁がウクライナのためだけだけなどという見方は噴飯ものだ。2025年3月のIMF報告では、ロシア経済が制裁下で2.1%成長だとぬかしてる。効果がない? こういう連中は、大きな戦争を遂行するための戦争経済においては、GDPが伸びるという経験則を知らないようだ。米国の本当の狙いは、GDPがどうのこうのという前に、ロシアの軍事力をジワジワ疲弊させることだ。

2024年12月、国防総省が「ロシアの軍事予算が圧迫され、新兵器が遅れている」と暴露した。イラン制裁も同じだ。経済的締め付けなどは表層に過ぎない。本当の狙いは、中東でのイランの勢力を削ぎ、ロシアとの連携を断つことだ。2025年2月、シリアでイラン支援の民兵が後退したニュースがそれを証明してる。

表向きの経済数字や外交の甘言に騙されず、裏の戦略と、長期の視点で見るべきだ。ロシアとイランへの制裁は、両国の経済と軍事力を削ぐため続いている。トランプ政権でもその流れは変わらない。ロシアは和平交渉で緩む隙があるが、イランは石油と軍事支援への新制裁でガチガチに締め上げられる公算大だ。

ウクライナや中東の動き次第で、どうなるかまだ流動的だ。ロシアが停戦飲めばある程度、制裁が軽くなるかもしれないし、イランが核を加速させればさらに制裁はきつくなるだろう。しかし、米国がロシアと握って中国と対峙するなどとう単純な見方だけでは、現実を見誤ることになるだろう。

【関連記事】

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か―【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域の団結を誇示 
2025年3月3日

米露首脳が電話会談、ウクライナ戦争終結へ「ただちに交渉開始」合意 相互訪問も―【私の論評】ウクライナ和平は、米国が中国との対立に備えるための重要な局面に 2025年2月13日

ロシアの昨年GDP、4・1%増…人手不足で賃金上昇し個人消費が好調―【私の論評】ロシア経済の成長は本物か?軍事支出が生む歪みとその限界 2025年2月9日

トランプ大統領“停戦会合ゼレンスキー大統領出席重要でない”―【私の論評】トランプ大統領の本当の対ロシア・ウクライナ戦略とは?日本メディアが報じない真実とは 2025年2月22日

北大で発見 幻の(?)ロシア貿易統計集を読んでわかること―【私の論評】ロシア、中国のジュニア・パートナー化は避けられない?ウクライナ戦争の行方と世界秩序の再編(゚д゚)〈2023/11/14〉

2025年3月6日木曜日

トランプ大統領が「日本の消費税廃止」を要求? JEEP以外のアメ車が日本で売れない理由は「そこじゃない」―【私の論評】トランプの圧力で変わるか?都内の頑丈な鉄橋の歴史が物語る日本の財政政策の間違い

トランプ大統領が「日本の消費税廃止」を要求? JEEP以外のアメ車が日本で売れない理由は「そこじゃない」

まとめ
  • 2025年1月20日就任のトランプ大統領が日本の消費税廃止に言及したとネットで話題だが、伝統メディアではあまり報じられていない。
  • 「相互関税」を提案し、アメリカ製造業の再生と販売促進を目指す。メキシコやカナダに25%関税を検討中。日本・EUには付加価値税(消費税)は、関税と同じようなものと主張。
  • 日本で消費税が廃止されても、アメリカ車の販売が大きく伸びるとは限らず、右ハンドル対応や販売網整備等が課題。
  • アメリカ車は、燃費や品質で日本車に劣るイメージが根強く、アメリカ市場でも日本車や欧州車が人気。
  • 関税政策は公正な貿易環境整備が目的と見られ、日本での販売拡大より企業判断に委ねる姿勢とみられる。筆者は消費税引き下げを期待。

なにかと話題なトランプ大統領の言動は、今後自動車の分野でも影響が出そうだと関係者たちは語る。今すぐは難しいかもしれないが、もしかすると今後アメ車が日本で買いやすくなる可能性も!?

 2025年1月20日に就任したアメリカのドナルド・トランプ大統領は、物議を醸す発言で注目を集めており、最近では日本の消費税廃止に言及したとの報道がネット上で話題となっている。ただし、新聞やテレビなどの伝統的なメディアではほとんど取り上げられていない。トランプ氏は「関税」を武器に各国との交渉を進めており、アメリカ製造業の再生と製品の販売促進を背景に、メキシコやカナダに対しては不法移民や違法薬物の取り締まり強化を求めつつ、全輸入品に25%の関税を課す計画を進めている。本稿執筆時点では、この関税導入が目前に迫っている状況だ。

 さらにトランプ氏は「相互関税」という概念を提案し、相手国がアメリカ製品に課す関税と同じ水準をアメリカへの輸入品に課すことを検討中。この調査対象に消費税のような付加価値税が含まれ、トランプ氏は「付加価値税と関税は本質的に同じ」と発言したと報じられた。これがネット上で「日本の消費税廃止を要求している」と解釈され、議論を呼んでいる。しかし、消費税が廃止されただけでアメリカ車が日本で売れるようになるかは疑問だ。シボレー・コルベットやジープの一部は右ハンドル仕様があるが、ドイツ車ほど右ハンドル対応が一般的ではなく、アメリカ車ファンの中には「ジャパンナイズ」された仕様に抵抗を示す人もいる。

 一方、アメリカ車を個人輸入する愛好家もおり、左ハンドル車を好む層も存在する。販売網の充実がなければ、消費税廃止だけでは販売が飛躍的に伸びるのは難しい。過去、バブル期には「燃費が悪く品質が劣るアメリカ車」とのイメージが報道で強調され、その印象が今も残る。現在のアメリカ車はダウンサイズが進み、1.5~2リッターのターボエンジンが主流だが、日本車に比べ燃費性能が劣るとの声もある。

 アメリカ国内では、日本車や欧州車、韓国車が人気で、特にハイブリッド車が売れている。フォードは日本市場から撤退したが、ジープやGMは右ハンドル車を用意し堅実な展開を続ける。トランプ氏の関税政策は公正な貿易環境整備が目的と見られ、日本でのアメリカ車販売拡大を直接目指しているわけではないだろう。筆者は、消費税の大幅引き下げを庶民として期待している。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になってください。

【私の論評】トランプの圧力で変わるか?都内の頑丈な鉄橋の歴史が物語る日本の財政政策の間違い

まとめ
  • トランプ圧力によって、日本の消費税廃止が実施されれば、購買力が増え、GDPが3~5%押し上げられる可能性がある。
  • 消費税撤廃で消費が活性化し、アップルやハーレーなど輸入が増え、米国製品の輸入も増える可能性がある。
  • しかし、関税引き上げをすれで、景気が悪化し、米国製品が売れなくなる可能性がある。
  • コルビーが防衛費GDP比3%超を主張、石破首相は増税を検討するかもしれないが、それでは経済低迷で米国製品の売上減少を招くことになる。
  • 増税でなく国債で賄えば現世代の負担が減り、景気回復で米国に利点。関東大震災復興の鉄橋がその有効性を示す。
トランプ大統領が、「日本の消費税廃止を要求している」という話題については、最近このブログに述べたばかりである。その記事のリンクを以下に掲載する。
日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領―【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?

この記事では、日本が消費税を撤廃した場合、どうなるかについて述べた。以下にその部分を引用する。

日本で消費税が撤廃されれば、消費者の可処分所得が増え、購買意欲が高まる。2025年3月時点で日本の消費税率は10%。これがゼロになれば、家計の実質的な購買力は大きく向上する。2014年に消費税が5%から8%に引き上げられた際、個人消費が落ち込み、GDP成長率がマイナスに転じた。逆に、消費税を撤廃すれば、内閣府の試算によるとGDPは3~5%押し上げられる可能性がある。

景気が回復すれば輸入需要も増し、米国産の農産物やエネルギー、工業製品の需要が拡大するかもしれない。日本は米国農産物の主要輸出先であり、年間約150億ドルを輸入している。消費税撤廃で日本の消費が活性化すれば、米国の農家にとっても追い風となる。結果として、米国の対日貿易赤字(2024年で約600億ドル)も縮小する可能性がある。

しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らない。為替レートや中国、EUとの競争が影響し、米国製品が割高なら効果は限定的だ。

確かに、消費税を撤廃したからといって、急激にアメ車が売れるとは限らない。しかし、消費税があるよりは、売れやすくなるのは間違いない。

アメリカ製品といえば、車以外にも様々なものがある。パソコンなどのデバイスではアップル製品があり、バイクはハーレダビッドソンなど、根強い人気がある。ハーレーダビッドソンは、輸入二輪車市場でシェアトップを維持している。

これらだけではなく、他の製商品も米国企業が日本にあわせたマーケティング戦略をとれば、さらに売れる可能性は高まるだろう。

私自身も、50年代の米国音楽や、雰囲気が好きで、そのようなテーストのある店には、今でも足繁く通っている。ただ、そのような店は減りつつあり残念に思っている。

50年代ジャズが聴ける"D-Bop"Jazz Club

消費税を撤廃すれば、米国製品・商品は今以上に売れる可能性は高まる。しかし、関税があがると岸田、石破政権の経済差政策の不味さもあいまって、日本の景気は後退し、米国製品が今以上に売れる可能性はなくなるどころさらに売上は下がるだろう。一般にどこの国でも、景気が良くなると輸入が増え、景気が悪くなると輸入は減る。米国にとっては、短期的には関税は良いかもしれないが、中長期的には良くない。

このような状況のなか、エルブリッジ・コルビー元国防副次官補は、トランプ米大統領による国防総省政策担当次官への指名に伴い、上院の承認プロセスで、日本が防衛費をGDP比3%以上に早期に引き上げるべきだと主張した。

現在の日本の方針である2027年度の2%目標を「不十分」と批判し、中国や北朝鮮の脅威を考慮すれば2%では不合理だと述べた。また、日本は西太平洋の防衛で更さらに大きな役割を担うべきとし、台湾にはGDP比10%の防衛費を求めた。一方、石破茂首相は5日の参院予算委で、防衛費は他国の指示で決めるものではなく、積み上げによる慎重な議論が必要との立場を示した。

石破総理は、防衛費増の財源としては、消費税などの増税しかないと考えているのだろう。しかし、現状で増税すれば、日本経済は低迷し米国製品はますます売れなくなってしまうだろう。

いつまでも、増税に拘っていれば、ますます米国製品は日本国内で売れなくなるだろう。このジレンマを解決するには、財源を消費税などの増税ではなく、国債によって賄うことを考えるるべきだろう。

長期政策を実施を税金だけに頼ると、現世代が長期政策の全コストを背負い、将来世代がその恩恵をほとんど負担せずに受け取る構造になる。これは現世代に過剰な負担を強いるだけでなく、世代間の不公平を生み、経済的・社会的な歪みを引き起こす。現実は、財務省が主張する、将来世代への付け回しではなく、現世代が多大なコストを背負わせることを意味するのだ。国債を活用すれば、この負担を将来に分散させ、現世代と将来世代の間でより公平な分担が可能になる。

このことは、都内の江東地区に多い頑丈な鉄橋をみてもわかる、これらの橋梁は関東大震災の復興で実施されたものだが、この復興はほとんどが国債で賄われている。関東大震災で江東地区は灰燼に帰し、ほんどの木造の橋が燃えてなくなってしまった。それを復興で現在のような丈夫な鉄橋に架替えたのだ。

江東新橋

これらの頑丈な鉄橋は、建造後20年後に絶大な威力を発揮した。1945(昭和20)年3月9日深夜から10日未明、アメリカ軍のB-29重爆撃機の大編隊が東京を焼夷弾で絨毯爆撃し、江東地区は再び灰燼と化した。しかし幸いなことに、震災復興橋梁のうち鉄橋のほぼ全部が激しい空襲に耐えて避難路となったため、多くの被災者の命が助かっている。無論それでも死者数は多く、このときの東京大空襲の死者は江東区を含めて10万人とされている。しかし、もし鉄橋がなかったら、更に多くの人々がなくなっていただろう。

さらに、これらの橋は、戦後80年を経ても今でも使われていて、多くの車両や人々が行き交い、私達は今でもその便益を受けている。今でも、江東新橋などの橋がテレビドラマなどにでてくるのを見かける。

この橋の建設を含むを首都崩壊の復興が、税金だけで賄われたとしたら、どうだっただろう。建設当時の人々の負担は、目を覆うばかりのものとなっただろう。当時豊かではなかった日本では、多くの人々が貧困にあえぐことになっただろう。そうして、その後の世代は立派な橋が残っても、貧困で、せっかくの立派な橋も経済活動が乏しいため、あまり有効に使われないという結果になっただろう。この事例のように長期にわたって便益を与える大きなブロジェクトは、国債で賄うべきなのだ。これらの橋とその歴史がその正しさを示している。

トランプ大統領の関税圧力や防衛費増額圧力などが、日本の財政政策を結果として良い結果に導くならば、歓迎したい。ただ、米国の圧力で日本経済が復活するのではなく、やはり自発的にこれを行うべきだろう。

【関連記事】

日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領―【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か? 2025年3月4日

コラム:「トランプ関税」に一喜一憂は不要、為替変動が影響緩和―【私の論評】変動相場制の国カナダ、メキシコとは異なる中国の事情 2025年2月11日

トランプ氏、カナダ・メキシコ・中国に関税 4日発動―【私の論評】米国の内需拡大戦略が世界の貿易慣行を時代遅れに!日本が進むべき道とは? 2025年2月2日

「大統領令」100本署名〝移民やEV〟大転換 トランプ氏、第47代大統領に就任 中国の息の根を止める?融和姿勢目立つ日本は大丈夫か―【私の論評】戦略なき親中姿勢により、米・中から信頼を失いつつある石破政権 2025年1月22日

「多臓器不全」に陥った中国経済―【私の論評】何度でも言う!中国経済の低調の真の要因は、国際金融のトリレンマ 2023年7月10日

2025年3月5日水曜日

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道―【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

ウクライナと米国、鉱物資源で合意か トランプ氏が演説で発表意向 米報道

まとめ
  • トランプ米政権とウクライナが鉱物資源(レアアース)の共同開発合意を計画し、トランプ大統領が3月5日の施政方針演説で発表意向を示したものの、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名に至っていない。
  • 会談での激しい対立によりウクライナ側がホワイトハウスから退去させられ、合意は未署名のまま流動的だが、ゼレンスキー氏は協議を続ける意向を示し、トランプ氏との言い合いを「残念」と表現した。

トランプ、ゼレンスキーの会談は決裂

 トランプ米政権とウクライナが鉱物資源に関する合意に署名する計画が報じられた。トランプ大統領は3月5日の施政方針演説でこの合意を発表する意向を示したが、2月28日のゼレンスキー大統領との首脳会談が決裂し、署名は実現していない。

 会談では激しい言い合いとなり、ウクライナ側がホワイトハウスから退去させられた。合意はまだ署名されておらず、状況は流動的。ゼレンスキー氏は協議継続の意向を示しつつ、トランプ氏との対立を「残念」と述べた。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたいかたは、元記事をご覧になってください。

【私の論評】ウクライナ戦争はいつ終わる?適切なタイミングを逃したゼレンスキーと利権の闇

まとめ
  • 戦争は適切なタイミングで終えるべきだという鉄則があらゆる戦争に当てはまる。戦略的バランスを重視する米戦略家ルトワックは、ウクライナ戦争をロシアの誤算と膠着状態とみなし、住民投票による妥協的終戦を提案した。
  • 日露戦争は適切なタイミングで終わった好例だ。日本は成果を上げつつ国力の限界で1905年に終戦を選び、歴史家半藤一利が「絶妙な判断」と評価する。
  • 戦争が長引くと、ゼレンスキーの権力維持や西側の戦争継続派(EUリベラル派、米民主党、ネオコン)の利権が強まる。ウクライナ戦争では支持率65%を維持するゼレンスキーだが、終戦後、パナマ文書疑惑や経済難で地位が危うくなるのは確実。
  • 第一次世界大戦やベトナム戦争は長期化で利権と私的動機が顕著になり、適切なタイミングを逃した。軍需産業の儲けが戦争を延ばしたと解釈できる。
  • ウクライナ戦争はルトワックの提案を逃し、2025年3月時点で利権(支援金1830億ドルやロッキード株価上昇)が肥大化。トランプの終戦主張は戦争継続派と対立し、マスコミが追随する中、終戦の決断が求められている。
戦争などというものは、どの時代でもどの場所でも、「適切なタイミングでやめるべき」と私はは思う。どんな戦争にも当てはまる、シンプルで揺るぎない鉄則だ。特に戦争が長引いた場合はそうだ。

米国の戦略家ルトワック氏

アメリカの戦略家エドワード・ルトワックは、ウクライナ戦争を冷徹に見つめ、ロシアのプーチンが「ウクライナを一気に叩ける」と見誤った結果、双方が限界にぶち当たって膠着状態に陥ったと言う。

2023年7月のUnHerd記事「Why no one can end the Ukraine war」では、「ウクライナがモスクワを落とせるわけないし、ロシアだってキエフを奪えやしない」とバッサリ切り捨てている。彼は現実を直視し、住民投票でドネツクとルガンスクの帰属を決めて、ロシアに他の占領地から手を引かせる案をぶち上げた。

2022年4月の記事「How the Ukraine war must end」で、核戦争の火種を消しつつ、勝ち負けにこだわらない戦略的バランスを説く。この視点は、戦争の目的と損失を天秤にかけ、ズルズル長引かせて消耗する愚を避けるべきだと示す。まさに「適切なタイミング」の証明だ。

歴史を振り返れば、日露戦争(1904~1905年)がその典型だ。日本は旅順を落とし、日本海海戦でロシアを叩きのめし、朝鮮半島と南満州の利権を握った。だが、戦費は国家予算の2倍に膨れ上がり、16万もの命が消えた。そこで1905年、ポーツマス条約でスパッと戦争を終えた。

歴史家の半藤一利は「勝ちすぎず負けすぎず、絶妙なところで引いた」と言い切り、国力のピークで終わらせた判断が日本を救ったと断言する。ルトワックの目で見ても、ロシアを完膚なきまで潰すような無茶をせず、現実的な成果で手を打った好例だ。

日露戦争で用いられた日本陸軍の28センチ榴弾砲

ところが、戦争が長引くと話は変わってくる。ウクライナ戦争は2022年から2025年3月まで続き、死傷者が公式で5万人超、非公式なら数十万人とも言われる中、ゼレンスキーの支持率は戦争前の20%台から今や65%をキープしている(キーウ国際社会学研究所)。

だが、戦争が終われば、汚職の闇が噴き出し、経済はどうしようもないほど落ち込んでいる。2016年のパナマ文書や2021年のパンドラ文書で暴露されたゼレンスキーのオフショア口座疑惑が再燃するのは確実だ。ゼレンスキーは大統領になる前、テレビ会社「クヴァルタル95」の稼ぎを英領バージン諸島などで隠し、4000万ドル以上を動かしていたとされる。戦争が終われば、この汚点が国民の怒りを呼び、彼の地位はガタガタになるだろう。それが戦争を続ける理由かどうかは定かではないが、可能性は大きい。

他にも、戦争が長引くと私利私欲や利権が顔を出す。第一次世界大戦(1914~1918年)は、当初の目的が霞み、消耗戦に突入。軍需産業や指導者の権力維持が裏で糸を引いた。ドイツは1918年に停戦を選んだが、それまでのグダグダで経済はボロボロ、ヴェルサイユ条約でさらに締め上げられ、それが後の第二次世界大戦の引き金の一つにもなったとされる。

ルトワックなら「タイミングを逃した」と言うだろうが、戦争継続派の利権が遅らせたとも考えられる。アメリカの軍需生産は1914年の1億ドルから1918年には20億ドル超に跳ね上がり(米国商務省データ)、戦争が一部の連中の飯の種だったのは明らかだ。

ベトナム戦争(1955~1975年)もそうだ。アメリカは共産主義を潰そうと20年戦って、死者5万8000人、戦費3兆ドルをドブに捨て、南ベトナムが崩れて終わりだ。歴史家のスタンリー・カーノウは「勝てないと分かった時点でやめるべきだった」と喝破するが、軍産複合体、ロッキードやボーイングの儲けが戦争を引っ張ったとしか思えない。

ウクライナ戦争に戻れば、ルトワックの「住民投票で終わらせる」が正しいタイミングだったはずだ。だが、2025年3月までダラダラ続く今、ゼレンスキーは権力を守るために、西側の「戦争継続派」――EUのリベラル派、米民主党、ネオコン――は軍需産業の儲けや地政学的野心のために、戦争をやめさせない。

フォンデアライエン次期EU委員長はマクロン仏大統領

支援金1830億ドル(米国)や1450億ドル(EU)が軍需や復興企業に流れ、ブラックロックが暗躍する状況は、長期化が利権を大きくしている証だ。ロッキードの株価だって、2022年の350ドルから500ドル超に跳ね上がってる。

「戦争は適切なタイミングでやめるべき」は、ルトワックの現実主義から見れば正しい。日露戦争のように、成果と損失を見極めて終わらせるのが賢い道だ。だが、長引けばゼレンスキーの私的動機や利権が絡み、タイミングを逃す。

今のウクライナがまさにそれだ。ルトワックが言うように、ロシアもウクライナも適切な瞬間を逃したのかもしれない。もうグズグズしてる場合じゃない。トランプ大統領が「終わらせろ」と叫ぶのも当然だ。だが、ゼレンスキーは権力を握り続けたいし、西側の戦争継続派とは真っ向からぶつかる。マスコミがトランプを叩くのも、そいつらの尻馬に乗っているだけだ。こうしている間にも、多くの人々が、亡くなり、重症を負っている。結局、戦争を終わらせるのは誰かが見極めるしかない。そこに真実がある。

【関連記事】

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か―【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域の団結を誇示 2025年3月3日

ドナルド・トランプを無能と言い捨てる「識者」たちは現実を見失っている…ロシア・ウクライナ戦争を終わらせるトランプ大統領の交渉戦略―【私の論評】トランプの「力による平和」とドラッカーの教え:「良き意図」から実務へ 2025年2月28日

トランプ大統領“停戦会合ゼレンスキー大統領出席重要でない”―【私の論評】トランプ大統領の本当の対ロシア・ウクライナ戦略とは?日本メディアが報じない真実とは 
2025年2月22日

コラム:「トランプ関税」に一喜一憂は不要、為替変動が影響緩和―【私の論評】変動相場制の国カナダ、メキシコとは異なる中国の事情 2025年2月11日

2025年3月4日火曜日

日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領―【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?

日中の通貨安誘導を批判 関税引き上げ示唆―トランプ米大統領

まとめ
  • トランプ大統領が日本と中国の通貨安誘導を批判し、不公正な貿易条件を是正するために追加関税を課す可能性を示唆したこと。
  • 関税を簡単かつ効率的な解決策と位置づけ、発言後に円買い・ドル売りが進み円相場が上昇したこと。

 トランプ米大統領は3日の記者会見で、日本や中国が通貨安を誘導していると批判し、これによる不公正な貿易を是正するために関税を活用すると述べた。日本からの輸入品にも追加関税を課す可能性を示唆し、関税が「簡単かつ効率的で公正さを生む」と強調。

 中国の習近平国家主席や日本の首脳に通貨安をやめるよう伝えたと明かし、必要なら商務長官に指示して関税を引き上げると語った。この発言を受け、ニューヨーク外国為替市場では円買い・ドル売りが進み、円相場が1円以上上昇した。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】トランプの相互関税が日本を直撃!消費税撤廃で米国製品輸入増か、関税戦争で景気後退か?

まとめ
  • トランプ前大統領は「相互関税」導入を指示し、日本の消費税を非関税障壁と問題視した。
  • 日本の消費税撤廃はGDPを3~5%押し上げ、米国からの輸入増加につながる可能性がある。
  • しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らないが期待はできる。
  • 一方、米国の対日関税引き上げは、日本経済に打撃を与え、米国の輸出や供給網にも悪影響を及ぼす。
  • 石破政権は迷わず消費税を撤廃し、日本経済の復活を図るべきである。


2025年2月14日、NHKや日本経済新聞が報じたところによると、トランプ大統領は「相互関税」の導入を指示する文書に署名した。これは、貿易相手国が米国製品に課す関税や規制と同等の関税を課すという方針である。その中で、日本の消費税が非関税障壁として問題視された。ホワイトハウス高官は「日本の関税は比較的低いものの、構造的な障壁が高い」と指摘した。トランプ氏はEUの付加価値税(VAT)を例に挙げ、「関税と本質的に同じ」と主張しており、同じ論理が日本の消費税にも適用される可能性がある。

日本の消費税撤廃が景気を刺激し、米国からの輸入を増やすか、それとも米国が日本製品に関税を課し、日本の景気が悪化することで米国製品の売上が落ちるのか。どちらのシナリオも経済理論上、成立しうる。

まず、日本の消費税撤廃の影響を考える。日本で消費税が撤廃されれば、消費者の可処分所得が増え、購買意欲が高まる。2025年3月時点で日本の消費税率は10%。これがゼロになれば、家計の実質的な購買力は大きく向上する。2014年に消費税が5%から8%に引き上げられた際、個人消費が落ち込み、GDP成長率がマイナスに転じた。逆に、消費税を撤廃すれば、内閣府の試算によるとGDPは3~5%押し上げられる可能性がある。

景気が回復すれば輸入需要も増し、米国産の農産物やエネルギー、工業製品の需要が拡大するかもしれない。日本は米国農産物の主要輸出先であり、年間約150億ドルを輸入している。消費税撤廃で日本の消費が活性化すれば、米国の農家にとっても追い風となる。結果として、米国の対日貿易赤字(2024年で約600億ドル)も縮小する可能性がある。

しかし、輸入増加が米国製品に集中するとは限らない。為替レートや中国、EUとの競争が影響し、米国製品が割高なら効果は限定的だ。さらに、日本の消費税は国家歳入の約20%(2024年で約22兆円)を占めている。撤廃による財政赤字の拡大が景気回復の足を引っ張るリスクも無視できない。2019年の消費税10%引き上げ時、政府は財政健全化を理由に増税を正当化した。今度はその逆の議論が巻き起こるだろう。

一方、米国が日本製品に高関税を課した場合、日本経済は深刻な打撃を受ける。日本の輸出産業はGDPの15~20%を占め、米国は最大の輸出先の一つだ(2024年時点で約20%)。日本経済新聞の試算では、米国が25%の追加関税を課した場合、日本の対米輸出が年間約5兆円減少し、GDP成長率は0.8~1%低下するとされる。

1980年5月10日、米ミシガン州で日本の乗用車にハンマーを振るう自動車工場をレイオフ(一時解雇)された男性。

1980年代の貿易摩擦の際、米国は日本車の輸入を制限し、日本の自動車メーカーは苦境に立たされた。しかし、現地生産を増やすことで対応した歴史がある。だが、今回は関税が広範囲に及ぶ可能性があり、日本全体の景気後退が避けられない。そうなれば、日本の消費が冷え込み、米国からの輸入、特に高価格帯の消費財や資本財の売上が落ちる。2020年のコロナ禍でも、日本の消費が低迷し、米国産農産物の輸入が一時的に減少した例がある。

さらに、日本が報復関税を検討する可能性もある。2025年2月の報道では、日本政府がその準備を進めているとの情報がある。そうなれば、米国の輸出産業は二重の打撃を受ける。日本からの部品供給が滞れば、米国のサプライチェーンにも混乱が生じる。2021年の半導体不足の際、米国の自動車生産が遅延した事例を思い出せば、その影響の深刻さは明らかだ。

短期的には関税の引き上げが米国の歳入を増やし、国内産業を保護する効果があるかもしれない。しかし、日本経済の悪化が波及すれば、米国の輸出減少や供給網の混乱を招き、長期的にはマイナスの影響が避けられない。

日本の長期停滞の原因は金融政策の失敗にある。1990年代以降、日本銀行はマネタリーベースを十分に拡大せず、デフレ期待を払拭できなかった。2023年にインフレ率が一時2%を超えたが、これはエネルギー価格上昇などのコストプッシュ型であり、需要拡大によるインフレではなかった。

日銀植田総裁

FRBは2021年、大規模な金融緩和を実施し、インフレ率を一時10%近くまで押し上げた。これにより消費と投資が刺激され、米国のGDP成長を支えた。しかし、日本銀行の慎重な姿勢が続いた結果、日本では同様の効果が見られなかった。

ユーロ圏では、ECBがマイナス金利政策と資産購入を進め、インフレを回復させた。中国は為替介入と信用統制で通貨安を維持しつつ、インフラ投資で内需を補完している。これらの国と比較すると、日本の金融政策の停滞が際立つ。

総合的に見れば、日本の消費税撤廃による景気刺激が、米国からの輸入増加につながる可能性が高い。関税の引き上げは短期的な効果しかなく、日本経済の縮小が米国にも跳ね返るリスクがある。伊藤忠総研の試算では、関税戦争がエスカレートすれば、米国のGDP成長率は0.5~1%低下する可能性がある。

石破政権は迷うことなく消費税を撤廃すべきだ。トランプ大統領のように、ドラスティックな政策も厭わない相手には、こちらもそれ相当の政策をすべきだ。それに、財政再建などという言い訳で国民を苦しめるべきではない。日本経済の復活には、思い切った決断が必要なのだ。

先日も当ブログに掲載したように、安全保障面では、海自護衛艦台湾海峡初の単独通過という政治決断をした石破首相だが、経済面では同様なドラスティックな決断ができるのだろうか。

【関連記事】

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か―【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域の団結を誇示 2025年3月3日

トランプ大統領“停戦会合ゼレンスキー大統領出席重要でない”―【私の論評】トランプ大統領の本当の対ロシア・ウクライナ戦略とは?日本メディアが報じない真実とは 
2025年2月22日

コラム:「トランプ関税」に一喜一憂は不要、為替変動が影響緩和―【私の論評】変動相場制の国カナダ、メキシコとは異なる中国の事情 2025年2月11日

トランプ氏 ウクライナ鉱物権益で合意も安全の保証は欧州責任―【私の論評】米国がウクライナ支援転換!トランプ政権の真意と日本への影響とは? 2025年2月27日

「大統領令」100本署名〝移民やEV〟大転換 トランプ氏、第47代大統領に就任 中国の息の根を止める?融和姿勢目立つ日本は大丈夫か―【私の論評】戦略なき親中姿勢により、米・中から信頼を失いつつある石破政権 2025年1月22日

2025年3月3日月曜日

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か―【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域の団結を誇示

海自の護衛艦が台湾海峡を通過 単独での通過は初 中国をけん制か

まとめ
  • 海上自衛隊の護衛艦「あきづき」が初めて単独で台湾海峡を通過、その後南シナ海やフィリピン海域でアメリカなどと共同訓練を実施。
  • 台湾海峡は国際水域とされるが中国が反対しており、日本による通過は中国の軍事圧力をけん制する狙い。
海上自衛隊の護衛艦「あきづき」

海上自衛隊の護衛艦「あきづき」が先月上旬、初めて単独で台湾海峡を通過したことが判明した。通過後、南シナ海やフィリピン海域でアメリカや他国との共同訓練に参加した。

台湾海峡は国際水域とされるが、中国はこれを否定し、日本の通過に反発している。今回の行動は、中国の軍事圧力をけん制する狙いとみられる。

この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】あきづき、パシフィック・ステラー、トランプ談話が一本の糸で共鳴!インド太平洋地域での団結誇示

まとめ
  • 中国が昨年12月に沖縄周辺で軍艦と海警船を共同航行させ、尖閣諸島近辺で武装した海警船を展開するなど挑発を強めており、石破首相は危機感から「あきづき」の台湾海峡通過を極秘裏に決断したとみられる。
  • 「あきづき」は通過後、2月5日に南シナ海で日米豪比共同訓練、2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加し、フランス空母の参加や沖縄寄港で三カ国の結束を示した。
  • トランプ大統領は2月19日、「硫黄島の戦い」80周年談話で日米同盟を称賛し、中国への対抗姿勢を打ち出し、2月7日の石破首相との会談で確認した「台湾海峡の安定」を補強した。
  • 「あきづき」の行動とトランプの談話は直接関係ないようだが、中国への対抗と日米連携の強化という共通目標で間接的につながり、タイミングの近さがその意味を増幅させた。
  • 日米仏の協調が「あきづき」の通過、「パシフィック・ステラー」、トランプ談話で一体となり、インド太平洋での団結を誇示し、中国に強いメッセージを突きつけた。


中国が昨年12月から今年の1月にかけて、沖縄本島と宮古島の間で軍艦3隻と海警船3隻を初めて一緒に走らせたり、尖閣諸島周辺で76ミリ砲を積んだ海警船4隻をうろつかせたりと、挑発をエスカレートさせているのは見逃せない事実だ。石破首相はこれに危機感を募らせ、「あきづき」を送り込む対抗策を決断したようだ。

関係閣僚の声を聞き、最終的にGOサインを出したが、その計画は極秘裏に進み、事前に一言も漏らさなかった。日本の動きに目を光らせる中国に悟られないよう、緻密に仕組まれた作戦だったのだろう。親中的ともみられた、石破政権にも抗えない何かがあったものとみられる。

「あきづき」は台湾海峡を抜けた後、2月5日に南シナ海で日米豪比4カ国の共同訓練に飛び込み、息つく間もなく2月8日から18日にフィリピン東方で日米仏の「パシフィック・ステラー」に参加した。この訓練は2月10日から18日にかけて繰り広げられた大軍事演習である。

アメリカの空母「カール・ヴィンソン」が2月17日、Facebookで「かが」やフランスの「シャルル・ド・ゴール」と並ぶ訓練の写真を公開した。そこには「スーパーホーネット」「ライトニングII」「ラファールM」といった戦闘機が勢揃いし、「あきづき」も含まれる艦隊が堂々と海を切り裂く姿が映し出されている。何とも迫力のある光景だ。

カール・ビンソンの公式Facebookで公開された写真の一枚

フランス空母が太平洋に姿を見せたのは1960年代以来初めてで、インド太平洋への本気度を世界に示す出来事である。2月13日には「シャルル・ド・ゴール」の艦隊が沖縄の米海軍ホワイトビーチに堂々と寄港し、「クレマンソー25(パシフィック・ステラー参加を含む、仏の空母打撃群の太平洋での行動作戦の仏の呼称)」の一環として三カ国の絆をこれでもかと見せつけた。

さらに、トランプ大統領は2月19日、「硫黄島の戦い」80周年を祝う談話をぶち上げ、2万人の負傷者と6000人以上の死者を出したあの戦いをアメリカの誇りと讃え、日米が敵から盟友へと変わった軌跡を熱く語った。「自由を守る未来を築く」と締めくくり、中国に対する結束を鮮明に打ち出している。2月7日の石破首相との会談で「台湾海峡の安定」を確認した流れともしっかりとつながる力強いメッセージだ。歴史を盾に今を語る、トランプらしい豪快な一撃である。

「あきづき」の動きは日本が独自に決めたもので、トランプの談話とは別物と見られている。アメリカと事前に相談した可能性はあるが、確かな証拠はない。それでも、両者は中国への対抗と日米の結束という同じ旗の下に立っている。「あきづき」の件は、トランプは日米首脳会談の直前においてすでに了解していただろう。このことがあったから、トランプは石破に対して塩対応はできなかったのだろう。ゼレンスキーとの会談とは対照的だった。

「あきづき」が海峡を抜け、日米首脳会談で方向性が固まった直後、トランプが談話で歴史を引き合いに出して補強した形だ。中国はこれを連続したプレッシャーと受け止めたかもしれないし、タイミングが近かったことでその意味はさらに大きく響いた。

硫黄島80年で、談話を発表したトランプ大統領

結局、直接の因果関係はないかもしれないが、戦略的には深い結びつきがあるのだ。日米仏が中国との対決を見据え、「あきづき」の台湾海峡通過、「パシフィック・ステラー」、そしてトランプの談話がまるで一本の糸でつながったように響き合い、インド太平洋での団結をこれでもかと誇示する流れができた。意図を超えたところで、このつながりは戦略の文脈で生まれ、歴史と今を結ぶ力強いメッセージとして、世界のリーダーたちに轟くものとなったことだろう。中国に対しては、これまでないくらいの力強いメッセージとなったのは間違いないだろう。

【関連記事】

「硫黄島の戦い」から80年 トランプ大統領が談話「日米同盟は平和と繁栄の礎となった」―【私の論評】トランプのゼレンスキー塩対応と硫黄島80周年談話の驚くべき連動を解き明かす
2025年2月20日

日米仏の「空母」共同訓練を実施 空母と艦載機が一同に会したレアショットを公開―【私の論評】仏軍空母、60年ぶりの太平洋展開が示すインド太平洋戦略の新局面 2025年2月18日

米海軍がグアムに初のバージニア級原潜を派遣、印太地域情勢に対応―【私の論評】日本メディアが報じない米ヴァージニア級原潜の重要性と南シナ海における米軍の戦略 2024年11月28日

【中国の南シナ海軍事要塞の価値は500億ドル超】ハワイの米軍施設を超えるか、米シンクタンクが試算―【私の論評】米国の南シナ海戦略:ルトワック氏の爆弾発言と軍事的優位性の維持の意思 2024年11月21日

海自護衛艦「さざなみ」が台湾海峡を初通過、岸田首相が派遣指示…軍事的威圧強める中国をけん制―【私の論評】岸田政権の置き土産:台湾海峡通過が示す地政学的意義と日本の安全保障戦略 2024年9月26日

2025年3月2日日曜日

次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」―【私の論評】全樹脂電池の危機:中国流出疑惑と経営混乱で日本の技術が岐路に

次世代電池技術、機微情報が中国に流出か 潜水艦搭載を検討中 経産相「調査したい」

まとめ
  • 情報漏洩の疑い: APB社の全樹脂電池技術が、中国と関係の深い日本企業(TRIPLE-1)経由で中国企業(ファーウェイ)に流出した可能性がある。
  • 経済安全保障リスク: 福島伸享議員が、潜水艦への転用で軍事バランスが逆転する危険性やスパイ行為の可能性を指摘し、政府に調査を要求。
  • 技術の重要性: 全樹脂電池は安全性と容量に優れ、次世代潜水艦への搭載が検討される日本発の先端技術で、NEDOから75億円の補助金が投じられている。

APB創業者の堀江英明氏

 全樹脂電池の機微情報が中国企業に流出した可能性が浮上した。APB社(福井県越前市)が中国と関係の深い日本企業に経営権を握られ、情報漏洩が疑われている。武藤容治経済産業相は経済安全保障の観点から調査意向を示した。

 衆院議員の福島伸享氏は、政府に実態調査を求め、特にAPB社の筆頭株主がTRIPLE-1(T社)に変わり、中国企業との接点が増えた点を問題視。T社取締役が主導したファーウェイ技術者による工場見学や技術情報問い合わせが漏洩の具体例とされた。

 福島氏は潜水艦への転用で軍事バランスが逆転するリスクを警告し、スパイ行為の可能性も指摘。警察庁は先端技術流出対策の重要性を認め、公安調査庁も関心を寄せている。全樹脂電池は安全性と容量で優れ、次世代潜水艦への搭載が検討されている日本発の技術である。

 この記事は、元記事の要約です。詳細を知りたい方は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】全樹脂電池の危機:中国流出疑惑と経営混乱で日本の技術が岐路に

まとめ
  • 技術の有望性: APBが開発する全樹脂電池は、安全性と容量に優れ、次世代潜水艦への搭載が検討される先端技術。
  • 経営権争い: 2024年夏に創業者の堀江英明氏が解任され、TRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任したことで、資金調達が停滞している。
  • 情報漏洩疑惑: TRIPLE-1が中国企業と接触し、2023年3月にファーウェイの技術者がAPB工場を見学したことで、技術流出が疑われている。
  • 技術の重要性とリスク: NEDOから75億円の補助金を受けたこの技術は、経営混乱により量産化が不透明となっている。
  • 経済安全保障の懸念: 政府と関係機関は、日本の技術保護のため状況を注視し、対策が求められており、日本ではやはりスパイ防止法を制定すべきである。

福井県越前市に拠点を置く日本のスタートアップ企業APB

APBは福井県越前市に拠点を置く日本のスタートアップ企業だ。全樹脂電池を開発している。この電池は次世代潜水艦への搭載が検討されるほど有望な技術である。全樹脂電池は電極に金属を使わず樹脂を採用することで、発火や爆発のリスクを大幅に減らす。容量は従来型の約2倍だ。生産コストは半減できるという特徴を持つ。

2018年に日産自動車出身の堀江英明氏によって設立されたAPBは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から75億円の補助金を受けている。川崎重工業と共同で潜水艦向けの研究を進めてきた。しかし、現在この企業は経営危機と情報漏洩疑惑に直面している。経済安全保障上の懸念が高まっている。

2024年夏、創業者の堀江氏は代表取締役を解任された。福岡のスタートアップTRIPLE-1出身の大島麿礼氏が新代表に就任した。これにより状況が大きく変わった。経営権争いが激化している。資金調達にも影響が出ている。2023年に北国フィナンシャルホールディングス(FHD)傘下のQRインベストメントから調達した12億円の資金は、堀江氏の続投が条件だった。追加融資が止まった可能性がある。

大島麿礼氏

さらに、FHDの投資子会社が東京地裁に会社更生法の適用を申請した。その後取り下げた一連の動きは、TRIPLE-1との争いの激しさを示している。

一方で、TRIPLE-1と中国企業との関係が注目されている。TRIPLE-1は半導体設計・開発を主とする企業だ。ビットコイン採掘用のチップ「KAMIKAZE」を開発している。ユニコーン企業とも称される。2022年に三洋化成からAPBの株式を取得した後、中国企業との接触が増加した。

特に、2023年3月にTRIPLE-1派遣の取締役が主導した。中国通信機器大手のファーウェイの技術者4人がAPB工場を見学したことが問題視されている。見学前には「全樹脂電池の素材に興味がある」とのメールが交わされた。その後も技術情報の問い合わせが続いたと報告されている。衆院議員の福島伸享氏は、「潜水艦に転用されれば日中間の軍事バランスが逆転する」と警告している。

TRIPLE-1の中国とのつながりは、ディレクターのZhongxin Panという人物の存在からも推測されている。Zhongxinは中国語で「忠信」と表記される。Panは中国で一般的な姓だ。ただし、この人物の国籍や背景は明らかではない。証拠は間接的である。

表:TRIPLE-1と中国との関連エピソード
エピソード詳細証拠の強度
Zhongxin Panのディレクター就任名前から中国とのつながり推測間接的
ファーウェイの工場見学(2023年3月)技術者4人がAPB工場を見学、技術情報の問い合わせが続いた直接的、報告済み
中国企業との提携提案堀江氏が大島氏から中国企業との業務提携を提案されたと証言証言ベース
北村報告書の指摘取締役に「中国との密接な関係」が見受けられると記されている報告書ベース

北村滋元国家安全保障局長が代表を務める北村エコノミックセキュリティ合同会社の報告書では、TRIPLE-1の取締役について「中国との密接な関係が見受けられる」とされている。具体的な裏付けは不明だ。堀江氏は「大島氏が中国企業と秘密保持契約を結んだ。技術情報を共有した形跡がある」と証言している。懸念を表明している。

TRIPLE-1は華々しい看板を掲げつつ、その裏で何かを隠しているような気配が濃厚だ。実態の曖昧さ、中国との不自然な接近、経営の不透明さ。これらが絡み合い、ただの企業とは言い難い怪しさを放っている。真相が明らかになるまで、疑いの目は離せない。

こうした状況の中、TRIPLE-1の行動が意図的なスパイ行為なのか、単なるビジネス上の接触なのかははっきりしていない。警察庁は「先端技術流出対策は極めて重要」と強調している。公安調査庁も強い関心を示している。情報漏洩の直接的な証拠は限定的だ。それでも、全樹脂電池が中国に流れ、潜水艦に転用されれば、日中の力関係の変化のリスクは無視できない。

無論、中国が全樹脂電池を搭載した潜水艦を製造して配備したからといって、それだけではすぐに日中の軍事バラランスが崩れるということはない。潜水艦は、日本の高度な対潜水艦戦(ASW:Anti Submarine Warfare)能力の要ともなる重要な要素だが、潜水艦の動力源だけが優秀なものに変わったとしても、それだけでASWの能力が飛躍的に伸びるわけではないからだ。ASW能力は、様々な要素がからむ、総合的であるだけではなく統合的な能力だからだ。それにしても、この技術が中国側にわたり、それが実用化されれば中国を利することは間違いない。

それにこの技術だけではなく、他の機微な技術も中国の手にわたれば、現在は圧倒的に日本が強い海戦能力が中国に逆転される可能性もある。そうなれば、由々しき事態だ。

TRIPLE-1の会社概要

APBの全樹脂電池は日本が誇る先端技術である。経営権争いと情報漏洩リスクにより、量産への道は不透明だ。堀江氏はこの状況について、「トリプルワンは半導体技術などに出資をしている会社だが、技術が分かる人はいないようだ。43億円の資金をAPBに入れるとの約束も事前にしていたが、一向に何も実行されることもない。実態が不明な会社に株を引き渡してしまったことは、私の責任だ」「今回のように技術の価値が分からない人の手に渡るような事態は想定していなかった。わなにかかったと言われても仕方ない」と悔やんでいる。

裁判所の判断や新たなスポンサー探しが注目されている。政府と関係機関は、この状況を注視している。日本の技術を守るための適切な対策を講じる必要がある。これだけ警鐘が鳴り響いているのだ、もはや月並みと言っていいくらいだが、やはり日本は、スパイ防止法を制定すべきだろう。
主要引用元 

【関連記事】 

中国海軍の測量艦、鹿児島沖で領海侵入 防衛省発表―【私の論評】日本南西海域の地形と潮流、中国の侵犯と不適切発言が意味するもの 2024年9月1日

セキュリティー・クリアランス創設 国際ビジネス機会の拡大へ―【私の論評】日本セキュリティー・クリアランス制度の欠陥とその国際的影響 2024年5月11日

2025年3月1日土曜日

予算案修正案「財務省の勝ち、予備費1兆円以内の枠ありき」 嘉悦大教授・高橋洋一氏―【私の論評】3野党が結託したら予算はどうなった? 財務省の裏ワザと特例公債法の闇

予算案修正案「財務省の勝ち、予備費1兆円以内の枠ありき」 嘉悦大教授・高橋洋一氏

まとめ
  • 予算案修正の規模と財務省の意図: 自民・公明が提出した2025年度予算案修正は、財務省が予備費1兆円の範囲内に抑えたい意向を反映。国民民主党の7兆円超減税案や立憲民主党の3兆8千億円減額案は受け入れられず、維新の2千億円増案が採用され、公明の6千億円減税案も含め修正は1兆円内に収まった。
  • 野党間の調整と財務省の戦略: 財務省は国債発行増や法改正を避けるため、大規模修正を拒否。野党3党(立憲、国民、維新)の協調を防ぎ、政府・与党をコントロールする形で予算をまとめた。
財務省解体デモ

 自民党と公明党は2025年度予算案の修正案を国会に提出した。財務省は予備費1兆円の範囲内で修正を抑えたいと考えており、それを超えると国債発行額が増加し、法改正が必要になるためだ。

 国民民主党の「年収103万円の壁」を178万円に引き上げる案は7兆円以上の減税となり、受け入れられない。立憲民主党の修正案は3兆8千億円の減額だが手続きが煩雑で避けたい。一方、日本維新の会の教育無償化案は歳出増が2千億円と少なく、同意しやすかった。

 公明党の減税案は6千億円で、予算修正は1兆円以内に収まった。財務省は野党間の協調を防ぎ、政府・与党をコントロールした形だ。立民、国民、維新の3野党が協調して、政府・与党に対峙(たいじ)させないように計算した財務省の勝ちのようなものだ。

 この記事は、元記事の要約です。詳細は、元記事をご覧になって下さい。

【私の論評】3野党が結託したら予算はどうなった? 財務省の裏ワザと特例公債法の闇

まとめ
  • 3野党が結束すれば、予算案を大胆に修正し、10兆円規模の歳出拡大や減税をぶち上げることになった。国民生活を支える財政出動が膨らみ、国債発行や特例公債法改正が避けられなくなる。
  • 統一戦線を組んで政府・与党に圧力をかけ、減税や社会保障拡充などの国民目線の政策で支持を集め、国会運営を乗っ取る勢いで予算を国民目線に変えるシナリオが考えられた。
  • 財務省の硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠が崩れ、特例公債法を活用した大規模財政出動や改正で、国民経済の成長と暮らしの向上につなげるチャンスが生まれたかもしれない。
  • 高橋洋一が「財務省の勝ち」と言うのは、3野党の足並みを揃えさせず、バラバラな提案を放置した財務省の策略が成功したからだ。
  • 特例公債法の改正は必須で、「赤字国債」という誤解を招く呼称を捨て、国債を経済成長の原資と捉え直せば、財政政策が柔軟になり国民生活が向上する。コロナ禍の100兆円国債発行と雇用調整助成金で経済を安定させた例がその証だ。

立憲・維新・国民は「給食費無償化」法案ではまとまったが・・・・

高橋洋一氏が言う「立民、国民、維新の3野党が手を組んで政府・与党に立ち向かう」とは、一体どんな展開になるのか。 まず考えられるのは、3野党が一丸となって予算案を大胆にぶった斬り、書き換えるシナリオだ。国民民主党の「年収103万円の壁を178万円に引き上げ」で7兆円超の減税、立憲民主党の3兆8千億円減額案、日本維新の会の教育無償化で2千億円増。

これを全部合わせたら、10兆円規模の歳出拡大や減税だ。もしこれが実現したら、国民の暮らしを支える財政出動が一気に膨らみ、国債発行が増え、特例公債法の改正だって避けられない。

次に、3野党がバラバラに動くのではなく、事前に作戦を練って統一戦線を張り、政府・与党にガツンと圧力をかけるパターンだ。予算委員会や国会審議で共同提案をぶち上げ、減税、教育投資、社会保障の拡充と、国民が「おお!」と目を輝かせる政策を並べ立てる。与党に譲歩を迫り、国民の支持をガッチリつかむ戦略だ。

さらに、国会運営を乗っ取る勢いで動く可能性もある。維新が現実的な歳出増を打ち出しつつ、立民と国民が大規模な財政出動を叫べば、与党は分裂し、予算案を国民目線でガラッと変えざるを得ない。審議日程をグズグズ引き延ばし、硬直的な予算成立をぶち壊す展開だってあり得た。

もしこんな協調が現実になったら、財務省が頑なに守る硬直的な財政規律や予備費1兆円の枠など吹っ飛び、国民経済を活性化させる政策が大規模に動き出したかもしれない。

ここで特例公債法の話だ。これは財政法第4条で「赤字国債はダメ」と禁止されているのを、特別な事情があれば認めるにする法律だ。経済危機や災害のような緊急時に国会で決め、一時的に国債発行を認める仕組みだ。だが日本では、この特例公債法が毎年お決まりで制定され、「特別な事情」なんて関係なく運用が常態化している。

結果、財政法第4条の原則は形だけで、実質的な財政規律の歯止めが効かなくなっているのが現状だ。野党が力を合わせたら、この特例公債法を使って国民生活を支える大規模な財政出動をぶち上げるか、抜本的に法律の改正を求めることで、硬直的な財政運営をひっくり返し、国民経済の成長と暮らしの向上につなげるチャンスが生まれるかもしれなかった。

高橋洋一が「財務省の勝ち」と評したのは、こういう国民目線のシナリオを潰し、3野党の足並みを揃えさせなかった財務省の策略がハマったったという意味だ。立民の大規模減額、国民の大胆な減税、維新の控えめな増額と、各野党の提案規模や優先順位がバラバラなのをそのまま放置し、協調の時間を与えず、1兆円の予備費枠を盾に「財政規律崩壊」と脅した。野党同士を対立させ、団結の芽を摘んだ。財務省は野党の「違い」を利用し、10兆円規模の国民目線政策を潰した。統一戦線を組ませなかった。財務省は高笑いだ。

だが、特例公債法の抜本的な改正は、国民経済を考えれば絶対に見直すべき課題だ。例えば、2020年のコロナ禍だ。政府は特例公債法を使って約40兆円の赤字国債を発行し、給付金や事業支援を打ち出した。これで経済の急落を食い止めた。

2020年財務省は「国の借金」一人当たり1000万超と煽っていたが・・・

安倍政権時代に60兆円、菅政権で40兆円の合計100兆円もの国債を発行し、日銀がそれを買い取る形でコロナ対策を進めた。さらに、日本特有の雇用調整助成金制度が効いて、他国では失業率が一気に跳ね上がったのに、日本ではそんなことはなかった。

米国だと2020年4月に失業率が14.8%まで爆上がりしたが、日本は最大でも2.8%で済み、雇用を守り抜いた。この事実が示すのは、国債発行と政策がうまく噛み合えば、経済の安定はしっかり守れるということだ。そうして、このようなことを実行しても当時から岸田政権初期までは、良いことばかりで何の不都合もなかった。もしあれば、財務省やマスコミ、識者などはここぞとばかり「赤字国債大量発行の失敗」を批判しただろう。いや、本当は批判したかったのだが、批判すれば、ボロがでることを恐れているのかもしれない。

マクロ経済の常識から見ても、国債発行で財政支出を増やすのは景気調整に効く。特に低金利の今なら債務負担だって軽い。1990年代以降の日本は緊縮財政で経済が停滞した苦い過去がある。特例公債法の硬直的な運用は、国民経済の可能性を押し潰しているといえる。3野党が結束して、特例公債法をを改正し、財政法第4条の古臭い原則を今の経済状況に合わせて柔軟に変えるべきだ。それが国民生活を良くし、経済成長を引っ張る道だ。財務省の硬直的な財政運営をぶっ壊す、真の国民のための政策だ。

そもそも、「赤字国債」という呼び方自体が正しくない。「国が借金で財政を賄う」などと暗いイメージを植え付けるが、マクロ経済で見れば、国債発行は経済全体の需要を支える大事な武器だ。経済学者のポール・クルーグマンは、低成長期に国債を発行すれば経済が動き出し、税収が増えて長期的には財政が安定すると喝破している。

 ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン

2008年のリーマンショック後、米国は大胆な財政出動でGDP比の債務が増えたのに経済を立て直した。日本では「赤字国債」という言葉が1970年代から使われてるが、これは財政法の古い枠組みに縛られた政治的な言い回しにすぎない。他国ではこんな呼び方はしない。米国だと一般的には「Treasury Bonds」、英国なら「Gilts」と呼ばれ、「赤字」などというネガティブな響きはない。

日本の「赤字国債」は財政法第4条の特有な背景から来てる異端児ともいえる。国民経済の視点で見直せば、国債は「経済成長の原資」だ。「赤字」などの誤解を招く言葉は捨て去るべきだ。特例公債法の改正と一緒にこの認識をぶち壊せば、財政政策はもっと柔軟になり、国民生活をグッと押し上げる力になる。

野党の幹部らは、そこまで読んだのか? 情けないの一言に尽きる。だが、今後このような機会は、自公が少数野党である限り、何度でもある。ここは、野党に期待したい。こと経済面に関しては、本当の大きな敵は、自公ではなく財務省であるという視点を忘れるな!

【関連記事】

高校授業無償化が柱の新年度予算案、合意文書に自公維が署名…予算成立確実に―【私の論評】高校無償化で中国の魔の手が!? 中長期では医療費タダ乗りと移民急増の危機 2025年2月26日

〝石破増税大連立〟あるのか 国民民主・玉木氏や高橋洋一氏が指摘 首相が立民・野田代表と維新・前原共同代表に秋波―【私の論評】与野党と全有権者は、財務省の悪巧みに乗ってはいけない 2025年1月4日

来年度予算案、税収70兆円台後半とする方針…6年連続で最高更新の見通し―【私の論評】日本の税収増加と債務管理の実態:財政危機を煽る誤解を解く 2024年12月25日

財務省と自民税調の〝悪だくみ〟減税圧縮・穴埋め増税 野党分断で予算修正阻止 足並み乱れた間隙狙い…特定野党に便宜も―【私の論評】これからの日本政治における野党の戦略と国民の役割 2024年12月19日

「178万円玉木案」を否定…”何としてでも減税額をゼロに近づけたい”財政緊縮派の「ラスボス」宮沢洋一・自民党税調会長の正体―【私の論評】宮沢洋一氏の奇妙な振る舞いと自公政権の変化:2024年衆院選後の財政政策の行方 2024年12月16日

中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100%―【私の論評】中国vs加 関税戦争の裏側:中国が圧倒的に不利に陥る中、日本の使命とは

  中国、カナダの農産物・食品に報復関税 最大100% まとめ 中国は、カナダが中国製電気自動車(EV)や鉄鋼・アルミニウム製品に輸入関税を課したことへの報復として、3月20日からカナダ産の菜種油、油かす、エンドウ豆に100%、水産物と豚肉に25%の関税を適用すると発表した。 カ...