2025年10月24日金曜日

米軍『ナイトストーカーズ』展開が示す米軍の防衛線──ベネズエラ沖から始まる日米“環の戦略”の時代」


まとめ
  • 米軍のベネズエラ沖展開は侵略ではなく、防衛のための行動であり、麻薬・密輸・中露イラン勢力の進出を抑止する目的がある。カリブ海は米国の本土防衛線である。
  • トランプ政権の「アメリカ・ファースト」は孤立ではなく、自国の安全に直結する地域でのみ果断に行動する現実主義外交である。
  • 日本のFOIPはアジアにとどまらず、太平洋からインド洋、米州へと広がる世界的な自由圏防衛構想であり、米国のカリブ海防衛と連動している。
  • 日本と米国は、インド太平洋とカリブ海という異なる海域で同じ防衛線を共有し、自由圏を守る一体の戦略を形成している。
  • 高市政権が目指すべき「環の戦略(Arc Strategy)」は、インド太平洋から南米・カリブ海までを結ぶ新しい世界秩序の骨格であり、日本が中心的役割を担う構想である。

米軍特殊部隊ナイトストーカーズのベネズエラ沖展開は、表向きは麻薬取締だが、実際には中露・イランの南米進出を抑止する防衛行動である。高市政権のFOIP戦略と連動し、日本はインド太平洋の東端、米国は西半球の防衛線を担う。両国の戦略は「環の戦略」として一本につながり、自由世界の新たな秩序を形成しつつある。
 
1️⃣米軍の作戦は「攻め」ではなく「守り」

ナイトストーカーズ

米陸軍の特殊部隊「第160特殊作戦航空連隊(ナイトストーカーズ)」が、ベネズエラ沖のカリブ海で活動していることが確認された。ウサマ・ビンラディン殺害作戦に関与した精鋭として知られるこの部隊は、夜間や悪天候でも敵地に突入できる米軍随一の特殊航空戦力である。

ワシントン・ポスト紙は、10月上旬にナイトストーカーズのヘリがカリブ海上空を飛行する映像がSNSで拡散されたと報じた。衛星画像では、作戦支援船「MVオーシャン・トレーダー」とみられる艦影も確認されたという。さらに同紙は、トランプ大統領がCIAに対し「ベネズエラ政府への攻撃的措置」を検討するよう指示する機密文書に署名したと伝えている。

米国政府は今回の展開を「麻薬取締」と説明する。米司法省は2020年、マドゥロ大統領を麻薬テロ組織への関与で起訴しており、国家ぐるみの犯罪構造に対抗する行動として法的根拠を明確にしている。つまり、これは主権侵害ではなく、国際犯罪への警察的対応という理屈で成り立っているのだ。

背景には、中露・イランの影がある。ロシアは戦闘機を供与し、中国は通信監視技術を提供、イランはドローンと燃料支援を行う。米国の裏庭である南米が、これら三国の影響圏に取り込まれつつある。米国が危機感を抱くのは当然だ。ナイトストーカーズの出動は侵略ではない。自国の防衛線を守るための先制的抑止なのである。

トランプ政権の外交理念「アメリカ・ファースト」は、しばしば誤解される。だが実際は、世界への関与を放棄する孤立主義ではない。自国防衛と直結する地域に限定して果断に行動する現実主義外交である。中東の泥沼には深入りせず、カリブ海での抑止に集中する。その姿勢は冷静で、合理的だ。
 
2️⃣FOIPの「東端」を守る米国と「西端」を担う日本

共同訓練を行う日米連合艦隊(出典:海上自衛隊)

日本が提唱してきた「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」は、単なるアジア戦略ではない。太平洋からインド洋を経て米州へと続く、自由圏防衛のための海洋秩序構想である。したがって、米軍がカリブ海で防衛線を張ることは、FOIPの東端を守る行為に他ならない。

高市政権の外交方針もまた、この構図を明確に意識している。インド太平洋の安定化を軸にしつつ、米州諸国や太平洋島嶼国との安全保障協力を拡大する。その根底には「民主主義圏を海でつなぐ」という戦略思想がある。

南シナ海とカリブ海──遠く離れた二つの海域だが、構造は酷似している。どちらも独裁的体制が勢力を拡大し、密輸と軍事化が進む不安定な海域だ。日本が南西諸島・台湾周辺で防衛線を張るのと同じように、米国はカリブ海で防衛線を維持する。両国の行動は「自由圏防衛」という一本の思想で結ばれている。

高市政権はこの現実を見据え、日米の戦略的接続を掲げるべきである。半導体やAI、海底ケーブルなどの基幹インフラの保全は、単なる経済政策ではない。自由圏全体の生命線を守る国家安全保障そのものである。日本の「FOIP戦略推進会議」が強調する「日米政策の接続強化」とは、このグローバルな文脈の中でこそ意味を持つ。
 
3️⃣「環の戦略」──自由世界の新秩序へ


いま世界は、理念だけでは動かない。国益を共有する国々が連携し、海洋を通じて秩序を保つ時代だ。その現実を直視しFOIPを次の段階へ進化させるべきである。すなわち、インド太平洋から南米・カリブ海へとつながる「環の戦略(Arc Strategy)」である。

この戦略の中核に日本が立つのは必然だ。我が国はインド太平洋の西端に位置し、太平洋の自由圏とユーラシア外縁の安定圏を橋渡しする。高市政権の外交は、米・豪・印との連携を軸に、中東・アフリカ、さらには中南米へと協力を広げている。これは単なる自由主義陣営の再結束ではない。理念を超え、現実に基づく国家群の秩序形成である。

この「環の戦略」が完成すれば、南シナ海からインド洋、アフリカ東岸、さらに南米・カリブ海まで、自由圏による海上交通路の安全保障が確立する。日本はその中心として、海底ケーブルや通信インフラ、港湾整備などで「静かな防衛網」を構築すべきだ。

米国がカリブ海で自由を守るなら、日本はインド太平洋でインド、オーストラリアとともに自由を守る。この域内で大きな紛争が起これば、一致協力して守る。これにより二つの防衛線は一本の線で結ばれ、「環の戦略」こそが自由世界の新しい秩序の骨格となる。我が国が問われているのは、その環の一角を担う覚悟である。高市政権の外交が目指す現実主義の果実とは、この覚悟と責任に他ならない。
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