2025年10月12日日曜日

トランプ訪日──「高市外交」に試練どころか追い風


まとめ

  • 高市政権への移行は既定路線:石破首相の辞任により、自民党総裁に選出された高市早苗への政権移行は既定路線であり、最悪国会での指名が遅れても来春までには高市政権が正式発足する見通し。
  • 野党連合の暫定政権は一時的現象:公明党離脱後の数合わせで野党連合政権が成立する可能性はあるが、政策・理念の不一致により長続きせず、次の選挙で自民党が政権に復帰する公算が大きい。
  • トランプの100%関税政策が世界経済を再編:EV、半導体、鉄鋼など中国の主要輸出品に最大100%の関税が課され、米中経済は完全分断へ。変動相場制の日本と違い、固定相場の中国は為替調整ができず、直接打撃を受ける。
  • 日本はサプライチェーン再構築の中心に浮上:米国は日本との半導体協力を進めており、技術力と政治安定を武器に日本企業が新経済秩序の要となる。高市外交の「経済主権」構想が現実のものとなりつつある。
  • 高市外交は圧力を機会に変える戦略外交:トランプの要求を逆手に取り、防衛生産体制の強化、エネルギー分野の国際規格策定、日米投資協力へと転化。高市外交は安倍路線を継承し、日米同盟を新たな段階へ導く。

1️⃣高市総裁誕生をめぐる政局の実相――一時的混乱を超えて


「トランプ訪日は高市外交の試練」と騒ぐ報道がある。だが、その見立ては的外れだ。実際には、トランプの再登場と彼の掲げる対中政策こそが、高市早苗の現実主義外交を後押しする追い風となっている。

現時点で石破茂は総理の座にあるものの、すでに辞任を表明済みだ。自民党総裁には高市早苗が選出され、政権は移行段階に入っている。国会での総理指名を残すのみであり、実務面ではすでに「高市体制」が動き始めている。

ただし、公明党が連立を離脱したことで、国会での首班指名選挙は混迷している。野党が一時的に結束し、高市の指名を阻止しようとする“数合わせ”の構図が浮上している。理論上、別の人物が一時的に首相に指名される可能性はある。しかし、その確率は極めて低い。党内の力学、世論、国際環境のいずれを見ても、高市以外の選択肢は長続きしない。

仮に野党連合による暫定政権が誕生したとしても、それは烏合の衆による一時的現象にすぎない。理念も政策も共有できぬまま、短命で終わることは明らかだ。

世論もそれを裏付けている。外交・防衛・経済の一貫性を最も高く評価されているのは高市早苗であり、保守層の支持はすでに固まっている。仮に野党主導の内閣が成立しても、次の総選挙では自民党が確実に議席を取り戻すだろう。そして、政権の座に戻るのは高市内閣である。

国会での指名が訪日前に間に合わずとも、それは一時的な遅延にすぎない。数合わせによる暫定政権が成立したとしても、**来春までには高市政権が正式に発足する見通しだ。長期的に見れば、安倍政権以来の骨太な保守政権として定着することはほぼ確実である。
 
2️⃣100%関税がもたらす経済地殻変動――為替体制の差が運命を分ける


高市外交の真価が問われるのは、トランプが再び仕掛ける対中経済政策の荒波の中においてだ。トランプは2024年の選挙戦で、中国からの輸入品に最大100%の関税を課す方針を明確に打ち出した。これは単なる選挙用のレトリックではない。米通商代表部(USTR)の報告書でも、既存の制裁関税(平均25%)を抜本的に引き上げる可能性が明記されている。対象は、EV、バッテリー、半導体、通信機器、鉄鋼、アルミ、そして再エネ関連部品など、中国の主要輸出産業のほぼ全域に及ぶ。

この「100%関税」は、米中経済の完全な分断を意味する。加えて、トランプは中国以外の国にも一律10%の関税を課す構想を語っており、世界の貿易秩序は再編を迫られる。サプライチェーンは再構築され、各国は経済安全保障の名の下に、自国主導の産業体制を築かざるを得なくなる。

このとき重要なのが、各国の為替制度だ。変動相場制の国々では、関税上昇に伴う通貨安が自動的な緩衝材となり、輸出の打撃を和らげる。日本や韓国、台湾は為替の柔軟性を活かしてダメージを軽減できる。

しかし、中国はほぼ固定相場制に近い為替管理を続けている。人民元の対ドル相場を厳しく統制しているため、通貨安による調整が働かず、関税ショックの影響を直接受ける構造にある。結果として、中国経済は他の貿易国に比べてより深刻な打撃を受けることになる。

この構造変化の中で、日本の立ち位置は一段と高まる。米中分断が進むほど、日本は高い技術力と安定した政治基盤を持つ信頼の同盟国として浮上する。米商務省はすでに日本との半導体分野での共同投資スキームを検討しており、信越化学や東京エレクトロンなど、日本企業が新しい経済秩序の要となる可能性が高い。

関税政策は同時に、日本に構造転換を迫る。中国依存から脱し、国内回帰とインド・ASEANへの生産分散を進めることで、真の「経済主権」を確立する契機となる。それは高市外交の掲げる理念と完全に一致している。
 
3️⃣圧力を機会に変える戦略外交――「高市外交」こそ次の安倍路線


トランプは再び日本に防衛費増額や貿易是正を求めるだろう。だが、それを恐れる必要はない。外交とは、圧力をどう転化するかの技術である。

安倍政権も同じ局面を経験した。トランプ流交渉を逆手に取り、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という理念を共有し、日米同盟をかつてないほど強固なものにした。高市外交はその延長線上にある。

防衛費増を技術開発と防衛生産体制の強化につなげ、自動車関税を電動車・水素エネルギー分野の国際規格策定に転化する。そして、対中制裁を日米の共同投資と日本優先の供給網構築へと導く。まさに「受け身の外交」から「戦略外交」への転換である。

米USTRの政策見直し、米商務省の対日協力、そして台湾有事を背景に高まるFOIPの重要性――いずれも高市外交の方向性を裏付けている。

結局のところ、トランプ訪日を「試練」と見るのは表面的だ。実際には、米中対立の新局面で、日本がどのように国家戦略を構築するかを試される場である。野党連合政権が形式上その舞台に立つとしても、それは一時的なものにすぎず、外交の本筋はすでに高市外交の設計図に沿って動いている。

100%関税という時代の荒波が、経済主権と技術主権を掲げる高市外交を国家戦略の中心へ押し上げている。トランプ訪日は、その試練ではなく、新しい日米同盟の幕開けである。

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