2025年10月13日月曜日

財務省支配の終焉へ――高市早苗が挑む“自民税調改革”


まとめ

  • 自民党税調は、党の政策機関を装いながら実際には財務省の意向をそのまま受け入れる“増税装置”と化しており、国民の生活や景気を無視して増税を当然視してきた。
  • 「税制改正は年に一度しか行えない」という慣習は法律ではなく、自民党内部のルールにすぎない。この制度疲労が、政治の判断力と機動性を奪い、国の経済運営を麻痺させている。
  • 税調の仕組みを民間企業に置き換えれば、価格改定や給与改定などの重要な意思決定を年一度に制限するようなもので、経営判断が遅れ倒産に至るほどの愚行である。国の税制がこれと同じ構造で動いているのは異常だ。
  • 財務省と税調の共依存が、政治の意思を奪い続けてきた。「財政健全化」という名のもとに官僚が政治を操り、政治は国民のためではなく財務省の都合のために存在するようになってしまった。
  • 高市早苗改革は、この構造を断ち切り、政治が主導して税調を動かす体制を取り戻す戦いである。財務省支配を終わらせ、政治を国民の手に取り戻す――それが高市改革の真の目的である。

1️⃣年に一度しか動かない税制――異常な慣習の実態

自民党の高市早苗総裁は12日、X(旧ツイッター)で党税制調査会の人事に言及した。小林鷹之政調会長に「スタイルそのものをガラッと変えてほしい」と指示したと明かした。

自民党の税制調査会、いわゆる税調は、戦後政治の中で最も閉ざされた組織の一つだ。表向きは党の政策機関だが、実際は財務省の出先機関である。国民経済よりも官僚の論理を優先し、景気や生活の苦しさなど意に介さず、増税を当然のように推し進めてきた。国民のための機関ではなく、財務官僚の理屈を守るための装置と化しているのが現実だ。

税制改正の手順も、半ば儀式のように毎年繰り返されてきた。

この流れが続くうちに、「税制改正は年に一度しかできない」という奇妙奇天烈な慣習が定着した。しかし、そんな法律などどこにもない。税制改正法案は通常国会でも臨時国会でも提出できる。つまり、年に一度というのは自民党内のルールにすぎず、法的な根拠など存在しない。

この党内ルールが国家の税制を縛り、経済政策の機動性を奪ってきた。年に一度しか税を見直せない仕組みなど、民間企業で言えば愚行そのものである。

新製品の発売を半年も検討している間に、競合他社が先に市場を奪う。にもかかわらず、「次の会議は来年だから対応できない」と放置すれば、企業は即座に破綻する。税調のやっていることは、まさにそれと同じだ。

商品価格の改定は年に一度しかできないとか、従業員の給与も福利厚生も年に一度しか変えらない、あるいは新規事業の立ち上げには半年を要するとか、不採算事業の撤退すら役員会の多数決を待たねばならないというようなものだ。そんな会社は外部環境の変化に耐えられず、経営効率を失って競争から脱落する。だが日本は、国家の税制でその愚を堂々と繰り返してきたのだ。

2️⃣財務省と税調の共依存――“増税装置”の正体

この「年一回ルール」は、民主主義国家として異常である。米国では大統領が、英国では財務大臣が、必要に応じていつでも税制改正法案を提出できる。多くの先進国では、年に複数回の改正が当たり前だ。ところが日本では、財務省と自民党税調が互いに寄りかかり合い、政治の意思よりも官僚の都合が優先されてきた。


自民党の宮沢洋一税調会長=2025年5月15日、東京・永田町の自民党本部

本来、税調は国民生活を守るためにあるはずだ。だが現実は、財務省の意向を代弁するだけの“増税装置”に堕している。経済が冷え込もうが、物価が上がろうが、「財政健全化」の名のもとに増税を強行する。その背後には、財務省の影響下にある税調幹部の存在がある。自民党税制調査会長宮沢洋一氏はその典型だ。ネット上では財政緊縮派の「ラスボス」と評された。これはすでに解任の見通しとされている。

こうして政治は官僚の下請けとなり、国民の暮らしは後回しにされてきた。財務官僚の理屈が国家を動かす限り、国民の豊かさなど回復するはずがない。

3️⃣高市改革の挑戦――政治が国民のために決断する国家へ

この閉塞を破ろうとしているのが、高市早苗総裁である。彼女は就任直後、小林鷹之政調会長に「スタイルそのものを変えてほしい」と指示した。財務省出身者で固めた体制を崩し、国会議員が主体となる開かれた税調へと作り替える――その決意は明確だった。

会見する高市早苗・新総裁

高市氏は言う。「議員は税制で達成したい目標を示し、官僚はそれを制度として形にする」。これは単なる人事刷新ではない。政治が官僚から主導権を取り戻すという、戦後政治の根本改革である。

彼女の狙いは、税調を“財務省の出先機関”から“政治の中枢機関”へと変えることだ。税調が政治に従う時代を築き、政治が税調を動かす構造を作り出す。その先にこそ、迅速で柔軟な政策運営がある。物価高が進めば即座に減税し、景気が冷えればすぐに立て直せる――そうした政治の即応力を取り戻すことが、高市改革の真の目的である。

この改革を成功させるためには、二つの要素が欠かせない。

第一に、政治が官僚に依存しない知的基盤を築くことだ。議員や民間の専門家が自ら税制案を作れる独立シンクタンクを党内に設ける必要がある。

第二に、透明性を高めることである。税調の審議過程を原則公開とし、どの議員がどんな意見を述べたのかを国民が確認できるようにする。それが実現すれば、税調は国民に開かれた真の政策機関となる。

税制は国家の骨格であり、政治の力の源泉だ。そこに財務省の論理が居座り続ける限り、日本の政治はいつまでたっても官僚の下請けに過ぎない。

高市早苗が挑む税調改革は、単なる減税論ではない。政治が再び国民のために決断する国家へと戻す闘いである。霞が関の都合ではなく、国民の暮らしの時間で政治を動かす――その一歩を踏み出したのが、高市改革の真の意味である。

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