2025年10月7日火曜日

SNSは若者だけのものではない──高市総裁誕生が示す“情報空間の成熟”


まとめ

  • SNSはもはや若者だけの領域ではなく、中高年層も積極的に参加する社会全体の情報基盤となり、世代を超えた「共通言語」として定着した。
  • 高市早苗氏はSNSを通じて政策を自らの言葉で語り、他候補を大きく上回る発信力と共感力で草の根の支持を広げた。
  • SNS上で交わされた多様な議論が党員の意識を変え、結果的に国民の声が間接的に政治へと浸透する新しい形の民主主義が生まれた。
  • SNSは「国民覚醒の環」を拡張させ、地域や職域、世代を超えて人々の共感をつなぐ新しい共同体の中核として機能している。
  • SNSの成熟は、批判から提言へと議論の質を高め、政治家やメディアの限界を超えて国民自身が社会を動かす時代を切り開いた。
1️⃣若者が切り開き、中高年が成熟させた情報空間
 
「SNSは若者の遊び場」――そんな時代はすでに終わった。2025年、自民党総裁選で高市早苗氏が勝利した。これは単なる政局ではない。日本社会が情報空間において新たな成熟段階へ踏み出した象徴である。

SNSを動かしているのは、もはや若者だけではない。中高年もまた、この舞台で確かな存在感を示している。だが、その扉を最初に開いたのはかつての若者たちだった。彼らは旧来メディアの外に出て、自らの言葉で政治や社会を語り始めた。その波が彼ら自身が中高年層になった今他の中高年層にも広がり、いまや日本人のあらゆる世代がデジタル空間を共有している。

総務省の2024年通信利用動向調査によれば、SNS利用率は10〜20代でほぼ100%、50代で88%、60代でも76%に達する。マイナビマーケティングラボの分析では、X(旧Twitter)の利用者の31%が40代、Facebookでは50代が最多の33%だ。YouTubeの主力視聴層は40代後半から50代前半であり、SNSはもはや世代を超えた「共通言語」となっている。

2️⃣SNSが動かした総裁選──草の根から政治への波及
 
この現実は、総裁選の数字にも表れた。10月5日時点でのSNSフォロワー数は、高市氏がXで105万7000人。小泉進次郎氏は15万3000人、茂木敏充氏と小林鷹之氏はいずれも9万人台、林芳正氏は4万人台にとどまった。Instagramでは小泉氏が34万2000人で首位だったが、高市氏も18万9000人と他の候補を大きく上回った。これは単なる人気の差ではない。高市氏がネット空間に独自の支持基盤を築いていたことを示す確かな証拠である。

毎日新聞の分析では、高市氏が「SNS上で最も話題を集めた候補」と報じられた。投稿数や共有数、反応数で他候補を圧倒していたという。高市氏自身も投開票直前、「支持が急激に広がっている」と語っていた。さらに選挙データ分析サイト「Go2Senkyo」は、高市氏関連の動画再生数が他候補を凌駕していたと指摘している。SNSは確実に支持形成の中核を担っていたのだ。
高市氏のSNS発信は、信念が明快で政策の軸がぶれない(上は高市氏のX投稿)。外交、安全保障、経済、軍事といった国家の根幹に関わるテーマを真正面から論じてきた。一方、小泉氏の発信は、日常や環境問題をスタイリッシュに語るタイプで、印象の演出に長けている。前者が「政策の現場」からの発信であるなら、後者は「イメージの設計図」といえる。この対比は、SNSが単なる人気競争の場から、政策思想を可視化する政治の主戦場へと変化したことを象徴している。

地方の神社関係者、教育者、経営者、地方議員らがSNSを通じて互いに結びつき、情報を共有した。彼らは草の根のネットワークを築き、既存メディアでは拾われない声を可視化した。Business Insiderは今回の総裁選を「SNSが戦場となった選挙」と評し、候補者の情報発信力がかつてないほど政治に影響を与えたと分析している。

自民党総裁選で投票できるのは国会議員と党員に限られる。しかし、SNSでの議論は、その外にいる国民を巻き込み、党員の意識に影響を与えた。特に党員は一般国民に最も近い政治参加層であり、SNSで交わされた多様な意見が党員票を通じて“民意の延長線上”に反映された。間接的であれ、国民の意思が政治過程に浸透した初の事例といってよい。これは新しい民主主義の形である。
 
3️⃣SNSがつくる新しい民主主義のかたち
 

私は最近のブログ記事「高市早苗総裁誕生──メディアに抗う盾、保守派と国民が築く『国民覚醒の環』」で、地方議員や神社界、教育者、経営者が支え合う精神の輪こそ日本再生の鍵だと書いた。思想でも運動でもない。静かな共感の連帯――それが「国民覚醒の環」である。SNSは今、その環を拡張し、深化させる装置として機能している。投稿やコメントの一つひとつが、地域や世代を超え、日本人の心を再びつなげているのだ。

もちろん、SNSには誤情報の拡散や感情的な対立といった問題もある。だが、既存メディアの偏向報道や情報の閉鎖性と比べれば、その弊害ははるかに小さい。私はSNSの誕生期からその発展を見てきたが、特にこの10年の進化は目を見張るものがある。外交、安全保障、経済、軍事、社会といった分野では、かつて批判だけで終りがちだった議論が、いまや根拠を示し、提言にまで踏み込むようになった。

SNSの議論は決して完結しないが、深い議論への導線や情報源を示し、専門家にも一般市民にも有益な場となっている。難解な概念をわかりやすく解説する人も増え、議論の水準は10年前と比較すると確実に上がっている。こうした変化に、多くの政治家やマスメディア、いわゆる“識者”の多くはまだ追いついていない。SNSでは、もはや一方的な「解説」や「指導・啓蒙」は通用しない。対話の中で、論拠と誠実さが問われる時代が到来したのだ。

米国のPew Researchによる2024年の調査でも、50〜64歳のSNS利用率は83%、65歳以上でも49%に達している。10年前の倍である。SNSは世界的にも、若者文化から社会の共通基盤へと変わりつつある。それでも日本のメディアはいまだに「SNS=若者文化」という古い認識を引きずっている。だが現実に力を持つのは、志を持つ中高年層である。彼らは情報を共有し、支え合い、社会を動かしている。SNSはもはや若者の娯楽の場だけではない。民主主義を支える意識の共有装置としても機能するようになった。

かつての若者がこの空間を切り開き、その若者が中年層になり、他の中高年層も加わってそれを成熟させたと見るべきだろう。高市早苗総裁の誕生は、そうした成熟した情報空間が現実政治に影響を及ぼすことが、今後は当たり前になる時代の転換点を示している。SNSは、かつて若者が拓き、大人たちが育てた国民意識の舞台だ。これからの日本を動かすのは、世代を超えて覚醒した国民――志あるすべての日本人である。

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