まとめ
- 中国軍が台湾海峡封鎖を想定した大規模演習「海峡雷霆―2025A」を2日連続で実施。空母「山東」や数十隻の艦船、軍用機を動員し、船舶拿捕や港湾攻撃で封鎖能力を検証。台湾に心理的圧力をかけ、トランプ新政権の出方と頼清徳政権を牽制する狙いがある。
- 北東アジアの平和を乱す行為として、日米が強く反発。米国防長官は「中国の侵略阻止」を掲げ抑止力強化を表明し、米国務省は緊張悪化と地域安全への脅威を非難。日本の石破政権にも厳しい対峙が求められている。
- 2027年までの台湾侵攻準備を指示し、海上封鎖を鍵とする。軍事侵攻に加え、威圧と米台離反で28年の総統選を影響下に置き、統一を目指すシナリオも追求。今回の演習は侵略への威嚇として警戒が必要だ。
日米は抑止力強化を打ち出し、米国務省は「中国の攻撃性が地域と世界を危険に晒す」と非難した。習近平は2027年までに台湾侵攻準備を指示し、海上封鎖を鍵とする。米シンクタンクは、軍事侵攻せずとも威圧と離間で統一を狙うシナリオも指摘。28年の台湾総統選を睨んだ心理戦だ。今回の演習は侵略への威嚇であり、警戒が必要だ。中国は日本の懸念に「強烈な不満」を表明したが、石破政権は毅然と対峙すべきだ。
【私の論評】中国の台湾封鎖は夢想!76年経っても統一が実現しない理由と西側の備え
まとめ
- 中国の台湾封鎖は「夢想」:台湾の対艦ミサイル(雄風II・III)、潜水艦(海鯤・剣龍級)、米軍の原潜、台湾の空対空(AIM-120等)・地対空ミサイル(天弓III等)と航空戦力、中国の海上輸送力の限界とASWの弱さ、地理的条件(山岳と狭い海峡)が封鎖を困難にする。
- 核使用の非現実性:核ミサイルで簡単に終わるという考えは夢想。ウクライナ戦争でロシアは核を使わず3年経過し戦況は膠着し、国際的反発(バイデン警告、RAND報告)を恐れた例が証明。大量の通常ミサイルでも降伏は無理。
- 陸続きでないことが難易度を高める:台湾と中国は海峡で隔てられ、上陸作戦は補給が命。ウクライナ戦争でのロシアと違い陸で兵を送れず、CSIS報告が「史上最大の水陸両用作戦」と失敗リスクを警告。
- 76年経っても統一できず:1949年から毛沢東が統一を宣言し、76年経過。歴代指導者の試み(1979年、1995-96年、2019年)も失敗。台湾の抵抗と国際圧力が壁。
- 準備の必要性:封鎖・侵攻は無理でも、追い詰められた中国の予測不能な行動に備え、台湾と西側は政治・軍事的準備を怠れない。ウクライナの教訓から戦争を防ぎ、戦争になつって早期終結を目指すべき。
中国による台湾封鎖は無謀というよりは「中国側の夢想」に過ぎない。台湾の対艦ミサイル、潜水艦、米軍の攻撃型原潜、中国の海上輸送力の限界、台湾の空対空・地対空ミサイルと航空戦力、中国の対潜水艦戦(ASW)の弱さ、台湾の地理的条件からいってそういえる。
軍事に疎い奴が「中国が核ミサイルを数発ぶち込めば終わり」と考えるのも夢想だ。それをウクライナ戦争が証明してるし、台湾と中国が陸続きじゃないことが侵攻をメチャクチャ難しくしてる。そして、中国が台湾統一を言い出してから何十年経ってもできてない。それでも追い詰められた中国は何をしでかすかわからないから、台湾と西側諸国は準備を怠っちゃいけない。これを以下に解説する。
まず、台湾海峡を封鎖するには、中国人民解放軍が海上と航空を押さえる必要がある。しかし、台湾の地理がそれを許さないのだ。島は山だらけで、東側は海岸は切り立った崖。西側には平地もあるが、河川が複雑に入り組んでおり、上陸地点は限られている。このブロクでは何度か指摘してきたことだ。上陸は至難の業だ。
さらに、台湾海峡は幅130~180kmと狭く、浅瀬と潮流が複雑。大規模艦隊を動かすには窮屈だ。ここで台湾は「雄風II」「雄風III」対艦ミサイルをぶっ放す。射程は150~400km以上。超音速の雄風IIIは迎撃がほぼ無理だ。2023年の台湾国防部報告でも実戦配備済み。中国の艦艇なんてボロボロになる。
潜水艦もヤバい。台湾は2024年9月に国産「海鯤」を進水させ、2025年には就役済みだ。最新の魚雷と機雷を積み、ディーゼル電気推進で音が静か。中国が探し出すのは無理だ。古いタイプの「剣龍級」も改修済みで、2020年代の台湾海軍発表によれば少数でも侮れない。水中で封鎖艦隊や補給線を狙う。中国の肝が冷える。
中国のASW能力は未だ低い。米軍や日本に比べりゃ子供だ。2023年の米国防総省報告でも、対潜機やソナーが足りず、技術も訓練も追いついてない。台湾海峡の浅瀬は雑音だらけで、潜水艦を見つけるのはお手上げだ。台湾の「海鯤」や米軍の原潜にボロ負けだ。封鎖なんて穴だらけだ。
アメリカも黙っちゃいない。インド太平洋にはバージニア級やロサンゼルス級の攻撃型原潜がうろついてる。射程2500km以上のトマホークミサイルや対艦ミサイルをぶち込む準備ができてる。米軍の潜水艦はいつも哨戒中で、台湾海峡にすぐ飛び込んでくる。米国防総省の報告でも実力は折り紙付きだ。米軍が動けば、封鎖線は一瞬で崩れる。
中国の海上輸送力もボロボロだ。2023年で輸出額3.5兆ドルを支える商船隊はあるが、軍事用の輸送力は足りない。補給艦は10隻程度。2022年の米国防総省報告では、米軍の30隻には及ばない。民間船を引っ張り出しても改造と訓練に時間がかかる。戦場で台湾のミサイルや潜水艦に補給線を切られたら終わりだ。
台湾の空の力も半端じゃない。F-16戦闘機が140機あって、AIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを300~400発持ってる。射程100~180kmだ。AIM-9XサイドワインダーもF-16Vに載ってる。地対空ミサイルは「天弓III」で射程125マイル。弾道ミサイルも航空機もぶち落とせる。パトリオットPAC-3は射程70km、2025年にはNASAMSが台北を守る。射程20マイルだ。国産F-CK-1経国号は50機あって、雄風IIIや「万剣」巡航ミサイルを積む。射程200~400kmで、海も陸も叩ける。中国の航空優勢なんて夢だ。
軍事に疎い奴が言う。「中国が核ミサイルを数発ぶち込めば終わりだろ」と。笑いものだ。ウクライナ戦争がそれを証明してる。2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻した時、核をちらつかせた。だが、2025年4月時点で3年目だ。ロシアは核を使わず、ウクライナは降伏しない。なぜだ?核を使えば、アメリカやNATOが黙っちゃいないからだ。2022年10月、バイデン大統領が「核使用は壊滅的な結果を招く」と警告した。
ロシアは経済制裁でボロボロだ。中国が台湾に核を撃てば、同じ道だ。アメリカは「台湾関係法」で支援を約束してるし、核戦争に発展すれば中国の都市も灰になる。2023年のRAND研究所の報告でも、核使用は国際的反発と報復を招き、中国の経済と政権が持たないと結論づけてる。核で終わりなんて夢想だ。核以外のミサイルを多数用いて攻撃にしても、それですぐに台湾が降伏するはずもない。実際、ウクライナ戦争であれだけロシアがウクライナを攻撃して破壊しても、ロシアは戦争に勝てず、膠着状態だ。これから戦況がどうなっても、ロシアの完全勝利などない。
しかも、台湾と中国は陸続きじゃない。これが侵攻をメチャクチャ難しくしてる。ロシアはウクライナと国境を接してるから、戦車や兵をガンガン送り込めた。2022年のキエフ攻勢では、数百kmの補給線を陸で確保した。だが、台湾は海を隔ててる。幅180kmの海峡を渡るには、船と飛行機しかない。上陸作戦は補給が命だ。中国の補給艦は10隻しかないし、台湾のミサイルと潜水艦に狙われる。陸続きじゃないから、兵力と物資を運ぶのは悪夢だ。2023年のCSIS報告でも、台湾侵攻は「史上最大の水陸両用作戦」になり、失敗リスクがデカいと警告してる。第二次世界大戦末期にも、米軍は台湾に侵攻しなかった。ノルマンディー上陸作戦を上回る史上最大の軍事作戦になることがわかっていたからだ。
中国が台湾統一を言い出したのは1949年だ。中華人民共和国が建国されてすぐ、毛沢東が「台湾は中国の一部」と宣言した。それから76年経つ。2025年の今でもできてない。1979年の「台湾同胞に告ぐ書」で「平和統一」を打ち出し、鄧小平が「一国二制度」を提案した。それでもダメだ。1995年や1996年の台湾海峡危機でミサイルを撃ち込んで脅した。結果はゼロだ。習近平は2019年に「統一は必然」と演説し、2049年を目標に掲げた。それでも進まない。なぜだ?台湾の抵抗と国際社会の圧力だ。76年経っても夢想のままだ。
国際社会も中国を見放す。台湾封鎖は日本、韓国、東南アジア、アメリカのシーレーンをぶった切る。アメリカは原潜や空母を繰り出す。2022年のペロシ訪台で中国が喚いた時も、世界は冷ややかだった。中国経済は輸出で食ってる。2023年で3.5兆ドルだ。封鎖で自分の首を絞めるなんてアホだ。中国の軍事力は伸びている。だが、空母や遠洋作戦はアメリカに比べりゃ子供だ。2023年の国際戦略研究所の分析でも、遠洋補給も対潜能力も貧弱だ。台湾の対艦ミサイル、潜水艦、米軍の原潜、空の戦力、天然の要塞のような地理、中国のASWの弱さに耐えられるわけがない。補給線を保つ力も経験もない。潜水艦戦じゃボロ負けだ。
台湾の地理、対艦ミサイル、空対空・地対空ミサイル、潜水艦、空の戦力、米軍の原潜、中国の輸送力の限界とASWの弱さ、核の夢想、陸続きじゃない現実、76年経っても統一できない事実。これを並べると、封鎖も侵攻も無理ゲーだ。「夢想」以外の何ものでもない。だが、威嚇や心理戦は仕掛けてくるのだ。
それでも、追い詰められた中国は何をしでかすかわからない。経済が傾き、政権が揺らげば、ヤケクソでロシアのように無茶をする可能性はゼロじゃない。ウクライナ戦争は膠着状態にいたり、もはやロシアにもウクライナにも勝利はない。しかし、戦争によって失われた一般市民や軍人の命は戻ってこない。台湾も西側諸国も、中国にそもそも戦争させない、仮に起こったにしても、初戦で木っ端微塵に打ち砕き戦争を早期終了させるようにするために、前もって政治的にも軍事的にも準備を怠ってはないけないのだ。
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