2021年8月3日火曜日

「コロナは武漢研究所から流出」米共和党が衝撃の報告書 ロイター報道 識者「バイデン政権と中国側の“談合”を強く牽制」―【私の論評】Intelligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった。変化を起こすチャンスは誰でもある(゚д゚)!


中国科学院武漢ウイルス研究所=1月、中国・武漢

 東京五輪の大半を「無観客」開催にした、新型コロナウイルスの「起源」が注目されている。ジョー・バイデン米大統領は5月末、情報機関に「90日以内」の追加調査を指示したが、タイムリミットが今月末に迫っているのだ。こうしたなか、米議会共和党が、中国・武漢の中国科学院武漢ウイルス研究所から漏洩(ろうえい)した大量の証拠があるとの衝撃の報告書を出したという。

 ロイター通信(2日)によると、報告書は、米下院外交委員会の共和党トップ、マイク・マッコール議員が公表した。

 「武漢ウイルス研究所の研究員がコロナウイルスを秘密裏に操作し、2019年9月12日以前にウイルスが流出し、人に感染させた多くの証拠がある」などと記されているという。

 新型コロナの「起源」をめぐっては、米紙ウォールストリート・ジャーナルが5月23日、米情報機関の報告書を引用し、感染拡大が発表される前の一昨年11月、武漢ウイルス研究所の研究者3人が深刻な体調不良に陥っていたとスクープした。

 バイデン氏はこの直後、追加調査を指示したが、その後も、英紙デーリー・メールが5月末、「新型コロナウイルスは中国・武漢の研究所の実験室で作成された」と主張する、英国とノルウェーの研究者による論文について報じた。

 世界保健機関(WHO)は1月から調査団を中国に派遣し、3月に「武漢の研究所から漏洩した可能性は低い」とする報告書を出したが、不満足な代物だった。

 英コーンウォールで6月に開かれた先進7カ国(G7)首脳会議では、中国を「巨大な脅威」と位置付け、コロナの「起源」について再調査を求める声が上がった。

 自由主義陣営の強い怒りを受け、WHOのテドロス・アダノム事務局長は7月、WHO会合で武漢の研究所などへの追加調査を提案した。

 米共和党が、このタイミングで報告書を公表した意味をどう見るか。

 福井県立大学の島田洋一教授(国際政治)は「米議会共和党は、これまでも中国語に堪能なマット・ポティンジャー前大統領安保副補佐官らが、中国側から得た秘密文書を精査し、『武漢研究所漏洩説』に自信を持っているようだ。『親中派』とされるバイデン民主党政権と中国側が“談合”して、中身の緩い報告書を発表しないよう、民主党政権と中国を強く牽制(けんせい)した動きだ」と語っている。

【私の論評】Intelligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった。変化を起こすチャンスは誰でもある(゚д゚)!

上の記事にもあるように、多くの筋から、コロナは武漢研究所から流出したとする説が噴出しています。その中で、なぜか日本ではあまり注目されないものがあります。それについては、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!―【私の論評】今やいかなる組織も、何らかの非合法な活動や隠蔽をすれば、オシントで合法的に素人に暴かれる(゚д゚)!


なお、この記事の元記事となっている、ニューヨーク・タイムズの記事には、続編があります。その続編のリンクを以下に掲載します。

武漢研究所は長年、危険なコロナウイルスの機能獲得実験を行っていた

これらのニュースは、日本でももっと注目されても良いと思うのですが、なぜか日本ではあまり報道されません。

これらの記事の急所は、パンデミック発生後早い段階で「反中の陰謀説」とされてきた新型コロナウイルスの「研究所流出説」が6月あたりから、急に見直されたのは、中国の説明がおかしいと感じた世界各地のアマチュアネットユーザーがチームを組んで否定しがたい新事実を科学界と大メディアに突きつけたということです。

このアマチュアネットユーザーの名称は、言ってみれば「オープンソースの自由参加型ブレインストーミング」であり、ネット調査と市民ジャーナリズムの要素が合体した、全く新しい調査方法といえます。彼らは自分たちをDRASTIC(Decentralized Radical Autonomous Search Team Investing COVID-19=新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チームの頭文字を取った略称だ)と名乗っています。

そうして、彼らの調査方法は、諜報機関でいうところのOSINTに近いものです。OSINTとは、オープン・ソース・インテリジェンス(open source intelligence)の略称です。これは諜報活動の一種で、一般に公開され利用可能な情報を情報源に、機密情報等を収集する手法を指します。

一般に公開され利用可能な情報とは、合法的に入手できる情報で、トップに対するインタビュー記事や企業のプレスリリース、書籍、インターネット情報等が挙げられます。これらを合法的に調べて分析することにより、一見、断片的なデータから、意味を持った情報が得られる場合があります。

身近な例から考えると、例えば自社の戦略を考えるために、他社を分析することが挙げられるでしょう。ライバル企業の資料やウェブページ、IR情報等を分析して、ライバル企業が次にどのような戦略を取りうるかを予測するのです。OSINTはこのようにビジネスで有効に活用することもできますが、攻撃者がターゲットの情報をつかむ目的で用いる場合もあるため、注意が必要です。

近年、情報収集の手法として「OSINT(オシント)」が注目されています。OSINTとは本来、国家保障等の専門領域で使われる言葉ですが、OSINTの考え方や手法がサイバー攻撃でも用いられていることから、最近ではサイバーセキュリティ分野でも耳にする言葉となりました。

最近では、「OSINT」に用いることができる、様々なツールがオープンソースとして提供され誰でも使用できるようになっています。そのため、様々な使い方がされるようになりましたがDRASTICの情報の収拾・集約もこのような手法も用いているのは確実だと思います。

オープンソースのオシントツールの一つMaltego

ただし、本来のOSINTは軍事目的であり、軍関係者ならびにその協力者などが用いるということで、オープンなものとは言えなかったと思いますが、このOSINTの手法がDRASTCなどにも用いられているのは確実であり、これは、今後新たな動きを作り出すことになるでしょう。

従来だと不可能だった、情報の収拾と集約ができるようになりつつあるといえます。誰かが何かの目的で、何かを実施して、それが好ましくない影響を及ぼした場合、あるいは及ぼしそうな場合、それを隠蔽することは、おうおうにしてあることです。

しかし、情報社会においては、そのようなことをしても、必ず何らかの痕跡が残ります。その痕跡を丹念に調べて、つなぎ合わせていけば、何かを隠蔽しているかを突き止めることができます。

インターネットが発達していない時代においては、新聞記事、雑誌記事、書籍、論文などがOSINTの対象であり、それらを集めるにも膨大な時間と、労力と、資金が必要でしたが、最近ではそれ以外にも、様々なネット上の情報が加わわったために、従来と比較すれば、比較的短時間にしかもあまりお金をかけなくても、情報が集められようになりました。

今でも膨大な労力が必要なのは変わりはないですが、現在ではインターネットが普及したため、大勢の人が、それも世界中の人々が関わり情報を交換したり、分析する事により、その労力は従来と比較すれば、かなり低減できるようになりました。

だかこそ、DRASTICのようなグループができあがり「コロナは武漢研究所から流出」した可能性を否定することはできないということを、様々な根拠によって、提示することができたのです。

先にあげた、ニュースウィークの続編の記事の結論部分には、以下のようなことが掲載されています。
新たな情報が暴露され、サイエンス誌に公開書簡が発表されてから数日以内に、さらに多くの学者や政治家、主流メディアまでもが研究所流出説を真剣に受け止め始めた。そして5月26日、ジョー・バイデン米大統領が情報機関に対して、「我々を明確な結論に近づけるような情報の収集・分析に改めて励む」よう命じた。

「アメリカは同じような考え方を持つ世界のパートナーたちと協力して、中国に対して全面的で透明性のある、証拠に基づく国際調査に協力するよう圧力をかけ、また全ての関連データや証拠へのアクセスを提供するよう強く求めていく」と語った。

中国はもちろん強く反発している。彼らが調査に協力することはないかもしれない。だが確かなことは、武漢の研究所がパンデミックの元凶だったのかどうか(そして次のパンデミックを引き起こしかねないのかどうか)について、調査研究が行なわれるだろうということだ。それも、DRASTICのようなアウトサイダーたちが援軍として加わった形で。

「科学はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった」と、シーカーは本誌に述べた。「変化を起こすチャンスは誰にでもある」

最後の文章の「科学」という言葉は、今回の事例にはあてはまることだと思います。DRASTICが、暴いたのはコロナ感染症に関することであり、テーマが生物学的なものだからです。

しかし、今回はたまたまそうだったのであり、今後は「科学」に限られることなく、ありとあらゆる分野でDRASTICのようなグループが発生する可能性があります。いや、もうすでにあります。

ただ、今回のDRASTICのようなドラスティックな、公表をしていないので、わからないだけだと思います。また、怪しげな陰謀論に終始するグループも多数あることも事実です。

OSINTトレーニングの様子

シーカー(DRASTICの1人、「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性)がニューヨーク誌に語った、「科学はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった」「変化を起こすチャンスは誰にでもある」という言葉は、もっと大きな括りでは、「Inteligence(諜報活動)はもう、専門家だけの独占領域ではなくなった」「変化を起こすチャンスは誰でもある」とすべきだと思います。 

これは、本当だと思います。実際私自身も、政治家や官僚、識者といわれる人々の言動の内容の真偽が判断しかねる場合、ネットで検索すると、その言動の内容の真偽がはっきりすることがあります。歴史的な経緯や、統計資料からはっきりすることが良くあります。

現在のところは、調べるだけなのですが、いずれOSINT的なことも実行してみようと考えています。そのためには、現在の世界の共通語にもなっている英語の能力をもっと磨くべきであると考えています。翻訳という手もありますが、基本的な情報のやりとりまで、いちいち翻訳に頼っているようでは、不可能だと思います。

今後、政治家や企業経営者らもOSINT的な考え方をすべきです。無論、彼らが直接キーボードを叩いて、情報を収拾する必要はないですが、得るべき情報の方向性や、得られた情報を統合する能力が求められることになるでしょう。特に統合力がなければ、せっかく良い情報が得られても、それが何を意味するのか理解できません。こういう分野では、分析力が重視されるようにみえますが、それだけでは無意味です。

分析した結果が、全体のどの部分に相当するものなのか、全体にどのような影響を与えるのか、あるいは何をすれば大きな影響を与えられるのかを認識するには、統合力は欠かせません。

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