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米国人医療専門官が警告していた研究所からウイルス流出の危険性
米国人医療専門官が警告していた研究所からウイルス流出の危険性
武漢にある中国政府のウイルス研究機関(手前) |
(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
全世界に広がった新型コロナウイルスがどこで発生したのかはいまだ不明のままであるが、真相に迫る動きが米国で進んでいる。
まず4月14日、米国政府専門官が2年前に武漢にある中国政府のウイルス研究機関を訪れ、コウモリ由来のコロナウイルスの研究を視察して、「安全性に問題があり、流出の危険もある」と警告を発していたことが明らかとなった。また、米国の大手テレビは4月15日、「米国政府は、今回のコロナウイルスが武漢の中国政府研究機関から流出したことを確信するに至った」と報道した。
新型コロナウイルスが武漢の市場ではなく研究機関から流出したという説は、これまで根拠のない「陰謀説」とみなす向きが多かった。だが、こうした新情報により、新型ウイルスが市場で発生したという説が揺らぎ、陰謀説の真偽が問い直されようとしている。
武漢の研究所を訪れた米国の医療専門家の警告
ワシントン・ポストは4月14日、国際問題専門のジョシュ・ローギン記者による「コウモリのコロナウイルスを研究する武漢の研究所の安全性について国務省が警告していた」と題するコラムを掲載した。
同報道によると、米国政府国務省は2018年1月から3月の間に数回、北京の米国大使館の科学・医療担当専門官2人を、武漢の国立武漢ウイルス研究所(WIV、中国の公式名称は「中国科学院武漢病毒研究所」)に派遣して、同研究所内でのコロナウイルス関連の研究や実験を視察させた。
中国では2002年にSARS(重症急性呼吸器症候群)が発生し感染を国際的に広げたが、2018年1月当時、同研究所ではSARSコロナウイルスに似たコロナウイルスに関する研究や実験が行われていた。その研究にあたっていたのはウイルス研究の著名な学者として知られる石正麗氏だ。石氏らは、コウモリから発生したコロナウイルスも調査していたという。
北京の米国大使館の同専門官2人は、この視察の結果に基づき、国務省本省あてに懸念や警告を表明する公電を送ったという。ローギン記者はその公電を入手したとして、その内容の骨子を以下のように記していた。
・この研究所では、コウモリ由来のコロナウイルスの発生とそのウイルスの人間への感染について研究をしている。その目的は人間への感染を防ぐことだとされているが、研究所でのウイルスの扱い方は安全性や管理方法に問題があり、ウイルス流出の危険性がある。
ローギン記者によると、以上の公電を書いた米側2人の専門家の最後の来訪は2018年3月18日で、同研究所側の記録サイトにもその来訪が詳しく記されていたが、その記述は2020年4月上旬に削除されたという。
同記者は「今回の新型コロナウイルスが同研究所から発生したと断定する証拠はない」と述べながらも、「同研究所からではないと断ずる根拠もない」と総括していた。
トランプ大統領は「全力で調査中」
このワシントン・ポストの報道に歩調を合わせる形で、FOXテレビは4月15日、「米国政府国務省は、新型コロナウイルスが中国・武漢の研究所から発生したと確信するに至った」という内容のニュースを放映した。
同ニュースは、複数の政府筋からの情報として「米国政府が『同ウイルスが武漢ウイルス研究所(WIV)で生まれ、外部へ流出した』と断定するようになった」と伝えていた。
そのウイルスは生物兵器として作られたわけではない。危険なウイルスの拡散防止や管理に関して中国のほうが米国よりも優れていることを証する目的で研究が進められた。ところが、コウモリから人間への感染を研究したその後にウイルスが外部へ流出したという。
こうして米国では、「研究所発生源説」がにわかに注目されつつある。中国政府は武漢市内の海鮮市場で新型コロナウイルスが発生したと主張しているが、いまだにその明確な証拠は示されていない。当初、武漢でのウイルス拡散を隠ぺいしたこともあり、中国政府が唱える「市場起源説」に改めて疑惑の目が向けられている。
この研究所発生源説について、4月15日の記者会見で記者から質問されたトランプ大統領は「政府はいま全力で調査中だ」と答えた。
いまや全世界を揺るがす新型コロナウイルスの発生源をめぐって、中国政府の当初の発表がいよいよ疑われる状況となってきた。
【私の論評】中国人医師らが、ウイルスの存在を突き止めた段階で、中共がこれを隠蔽したことが後にパンデミックを招いたことこそ詳細に調査するべき(゚д゚)!
中国ウイルスの世界的大流行をめぐり、エマニュエル・マクロン大統領率いるフランスが、米国に続いて「中国・武漢の生物研究所から流出」「中国政府による情報隠蔽」といった疑惑の検証・追及に乗り出す可能性が出てきました。自国内で感染者や死者が多発しているからです。フランスが誇る原子力空母「シャルル・ドゴール」の艦隊でも多数の感染者が確認されています。
米紙ウォールストリート・ジャーナル(日本語版)は18日、米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長が「多大なる関心を持って情報当局が調査を実施することに、驚きは全くないはずだ」と記者団に語ったと報じました。
フランスは科学技術で中国と協力関係にあったとされます。もし、米国主導の疑惑検証に加われば、「中国の闇」が明らかになるかもしれないです。
武漢にある中国政府のウイルス研究機関の正式名称は、「中国科学院武漢ウイルス研究所」のことで、ここでは、危険性が最も高い、バイオセイフティーレベル4のウイルスや病原体が研究されており、コロナウイルス研究の中心的な研究所としても知られています。
この研究所で感染した科学者が“感染者第1号”となって、地域に感染を広めたという“武漢研究所起源説”は“中国ウイルス生物兵器説”とともに、“トンデモ説”として、科学者たちに否定されていますが、今、トランプ政権は、この説の検証を進めています。
私自身は、生物兵器説は、当初からあり得ないと考えていました。なぜなら、世界のいくつかの国々が長い間、生物兵器を開発してきたのですが、現在に至るまで様々な障害があったために、未だに生物兵器が実用化の段階に入ったという報告はありません。ただし、原始的な方法で最近やウイルス等をばら撒くことまで、生物兵器の範疇に含めるというなら、そのような兵器は作成可能だと思います。
ただし、「中国科学院武漢ウイルス研究所」で保存してあったウイルスが、外部に何らかの形で外に漏れたということは十分にあり得ることだとは思っていました。そのウイルスに人為的に何か手を加えたものなのか、あるいは天然のウィルスが、漏れてしまっただけなのかは、現状では何らのエビデンスもないので、それは新たな情報を待つしかないと考えます。
一方、検証を進めているトランプ政権にとっては、好ましくない情報も流れています。英米メディアが、武漢研究所のコロナウイルスの研究に、米政府が莫大な研究資金を援助していたことを報じているからです。
つまり、もし、この研究所から新型コロナが流出していたことが証明された場合、新型コロナの感染拡大には、間接的ではありますが、米政府も関与していたということになるからです。米の議員は、米国民の税金が中国の危険な研究に使われた可能性があるとして、怒りの声をあげているそうです。
トランプ政権の国家安全保障担当の高官らは、武漢研究所から中国ウイルスが流出した可能性と、中国ウイルスが人工的に開発された生物兵器であるという可能性を考えていました。しかし、このブログでも指摘したように、後者の可能性はゲノム解析の結果、人工的に作られたものではないとわかり、否定されました。
そして、2ヶ月前から、2年前の公電がトランプ政権内を駆け巡り始め、安全運営に問題があったと指摘されていた武漢研究所から新型コロナが流出した可能性が議論され始めたといいます。
2年前の公電とは、北京のアメリカ大使館の外交官が、武漢研究所を数度訪問、その際、研究所の安全性に問題があることに気づかされた外交官は、米政府に「コウモリのコロナウイルスに関する危険な研究を行なっている研究所の安全性が不十分である」と警告する公電を2回送っていたというのです。
2018年1月19日付の公電は、
「この研究所には、高度に密閉された研究室の安全運営に必要な、訓練された技術者や調査員が非常に不足している」
と安全運営の問題を指摘していました。
では、どうやって新型コロナは流出したのでしょうか。
英紙デイリーメールは、新型コロナを含んだ血を浴びた武漢研究所の科学者が感染者第1号となり、その科学者が地域に感染が広めた可能性があると報じています。
公電はまた、コウモリのコロナウイルス研究は重要かつ危険であることから、米政府は武漢研究所を支援するよう訴えていますが、実際、米政府は研究所に研究資金を援助をしていたと英米のメディアは指摘しています。
英デイリーメールが入手した書類によると、米国は武漢研究所のコロナウイルス研究に370万ドルの資金援助を行なっていたといいます。
武漢研究所は、研究所から1千マイル以上離れた雲南省の洞窟に住むコウモリをコロナウイルスの実験に使っていたのですが、同紙によれば、その実験には、米国立衛生研究所(NIH)が出した370万ドルの研究資金が投じられていたというのです。
また、フォックスニュースも、武漢研究所は、米国立衛生研究所から710万ドル相当の研究資金を得ていたと報じています。うち、370万ドルが前述のコウモリのコロナウイルス研究に関する研究資金で、340万ドルがウイルスをねずみの脳に注入する研究資金だったといいます。
ちなみに、中国は、コロナウイルス研究を通して、中国は米国並みか米国以上に、コロナウイルスの発見に取り組んでいることを示したかったようです。
また、武漢研究所の主任研究員で「コウモリ女」というニックネームを持つジェンリー・シー氏は、1年前に発表した論文で、コウモリに由来するSARSのようなコロナウイルスの感染爆発が中国で起きることを、以下のように警告していたといいます。
「将来起きるSARSやMERSのようなコロナウイルスによる感染爆発はコウモリに由来する可能性が非常に高い。そして、感染爆発は中国で起きる可能性が高まっている」
コロナ研究を行なっている武漢研究所 |
米政府の資金援助で行われたコロナウイルス研究の過程で新型コロナが流出し、感染が世界に拡大した可能性があることに対し、米国の議員たちは怒りを抑えきれません。
「米国立衛生研究所は370万ドルの研究資金を武漢研究所に提供し、研究所はそのお金でコロナウイルスの研究者を募集、その後に、武漢で新型コロナ感染が発生した。アメリカ政府が何年間も、武漢研究所の危険で残酷な動物実験に資金提供を行い、それが、新型コロナ感染の世界拡大を引き起こした可能性があることを知り、むかついている」(共和党下院議員のマット・ガエズ氏)
「米国人が死んでいるのは中国共産党政府の責任であることに疑いの余地はない。彼らは、新型コロナの起源を隠蔽することで、米国人の命を危険にさらしている。米国立衛生研究所はすぐに米国人の税金を中国の危険な研究に投じるのをやめなければならない」(共和党上院議員のマーサ・マクサリー氏)
ところで、武漢研究所に資金提供していたのは米国だけではありませんでした。
カナダも、直近では、先月、この研究所に資金提供していたことを、カナダのレベルニュースが伝えています。カナダの研究機関は、3月初め、新型コロナと闘うための研究開発資金を同研究所に提供すると発表したといいます。
信憑性を帯びてきた、武漢研究所起源説ですが、武漢研究所も中国政府も感染爆発は研究所とは無関係と主張しており、多くの専門家も関係性を否定しています。
一方で、新型コロナが武漢の海鮮市場に由来するという中国政府の主張はおかしいという指摘もあります。
ランセットに出された中国人研究者の論文によると、昨年12月1日に確認された最初の感染者や、最初の感染者集団の3分の1以上の人々は海鮮市場と繋がりがなく、また、市場ではコウモリが売られていなかったからです。
また、中国政府は新型コロナの感染源に関する情報を完全に封じ込め、米国人専門家に、初期の患者から採取した新型コロナの検体をまだ提供していないといいます。
1月11日に新型コロナのゲノムを発表した上海の研究所はすぐに閉鎖され、医者や初期に感染拡大を報じたジャーナリストは姿を消してしまったとも言われています。
トランプ政権がこの研究所から新型コロナが流出したという証拠を突き止めるのは難しいという声もありまうが、今後の行方が注目されるところです。
上記のように様々な情報が錯綜してますが、このブログでも以前指摘したように一つだけ確かなことがあります。
それは、このブログでも掲載した2010年にノーベル文学賞を受賞したペルーのリョサ氏の発言です。その発言を掲載した記事のリンクを以下に掲載します。
ノーベル賞作家、中国が「独裁国家」でなければ事態は違った 新型コロナ―【私の論評】中国に対する怨嗟の声が世界中から沸き上がり世界は大きく変わる(゚д゚)!
2010年ノーベル文学賞を受賞したマリオ・バルガス・リョサ氏 |
この記事より、一部を引用します。
リョサ氏は最近スペイン紙パイスとペルー紙レプブリカに執筆した論説で「もしも中国が独裁国家ではなく自由な民主国家だったら、今世界で起きているようなことはどれも起きていなかったかもしれない、とは誰も指摘していないようだ」と記しました。
一党独裁国家で反体制派に容赦ない弾圧を加えていると人権団体などから広く批判されている中国は、このリョサ氏の言及に激怒し、在ペルー中国大使館が抗議声明を発表。
「わが国は表現の自由を尊重しているが、そのことは恣意(しい)的な中傷や汚名を受け入れることを意味するものではない」と述べた。
また中国大使館はリョサ氏に対し、「著名人として、無益で無責任、偏見に満ちた意見を広めないよう」求めると述べた。
リョサ氏は同じ論説の中で、「少なくとも一人、あるいは複数の高名な医師が、十分に時間がある段階でこのウイルスを突き止めたにもかかわらず、中国政府は対応する措置を取る代わりに情報の隠蔽(いんぺい)を試み、そうした声、良識ある声を黙殺し、情報を抑え込もうとした。すべての独裁国家がそうするようにだ」とも述べている。
リョサ氏はまた新型コロナウイルスは「中国が発生源」とも表現しているが、中国大使館はこれを「不正確」だと指摘。「世界保健機関(WHO)は現段階まで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生源を特定できていない」と反論した。中国ウイルスの発生源がいずれであろうと、それが生物兵器であろうとなかろうと、それに米国などが資金援助をしていたかどうかなどとは、別にして、 少なくとも一人、あるいは複数の高名な医師が、十分に世界が、そうして当の中国が、中国ウイルスに対応できる時間がある段階でこのウイルスを突き止めたにもかかわらず、中国政府は対応する措置を取る代わりに情報の隠蔽を試み、そうした声、良識ある声を黙殺し、情報を抑え込んだことは事実です。
米国やフランスも、「中国・武漢の生物研究所から流出」「中国政府による発生源の情報隠蔽」などを追求することも実施できるならすべきですが、中国人医師らが、ウイルスの存在を突き止めた段階で、中国政府がこれを隠蔽、それが後のパンデミックにつながったことこそ、時系列的に整理し、詳細を調査するべきです。
それなしに、他の調査を詳細に行ったところで、それが今後中共がパンデミックスを起こすことを防ぐための端緒にはならないどころか、中国に格好の隠れ蓑を与える結果になってしまいかねません。
そうして、詳細を調査し、さらに具体的な改善点を指摘し、それを中共に実施させるべきです。そうして、実施したか否かを模擬的に試験などをして、調査すべきです。
そうして、もし中国がそうした要請に応じないというのなら、世界の国々は、中国を自分たちの社会から隔離すべきです。これは、厳しい措置にみえるかもしれませんが、曖昧にしたまま、中国を隔離しなければ、次に何か中国発でウイルスとなども含めて、危険なことが発生した場合、また危機が世界に及ぶこと可能性は否定できないどころか、かなりの高い確率で発生しうるからです。
当然、陸上の国境はすべて封鎖、海上は機雷などで封鎖し、人的交流はなし。そのために、世界の国々の軍事力を総動員することになるでしょう。貿易もしません。それを実行するため、中国による対外的なドル使用は禁止とします。ただし、定期的にオブザーバーを受け入れるなら、定期的に調査をして、中国人民が窮乏して危険なレベルになったときは、援助をするということにするべきです。
もし、そのようなことに反対する国々が多かったとすれば、それらの国々と、中国とを、自由世界から隔離するしかないでしょう。無論これらの国々では、ドル使用はできないようにすべきです。要するに、世界は東西冷戦の時代のようになるかもしれません。ただし、東側陣営はかなり少なくなることが予想されます。
こんなことを言うと、ヘイトだなどという方もいらっしゃるかもしれませんが、中共が自らを変える、すなわちそれは、自ら崩潰することを意味しますが、それを決心しない限り、中国発の危機を食い止めるにはこれしか方法はありません。それが現実です。そうしなければ、世界はいつまでも中国発のパンデミックなどの脅威に悩まされることになります。
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