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高橋洋一 日本の解き方札幌大通り公園の五輪モニュメントの前で記念撮影する女性たち |
東京五輪が開催されているが、東京都をはじめ各地で新型コロナウイルスの感染者が増えている。「五輪の開催で気が緩んだ」「五輪関係者の入国で水際対策が甘かった」などの指摘もあるが、現状の感染拡大と五輪は関係があるのか。
「気が緩んだ」というのは、客観的に計測しようがないので検証不能だが、「五輪関係者の入国のため」というのは、五輪関係者に明確なクラスター(感染者集団)が発生しておらず、関係はないといえるだろう。
現在の感染拡大は日本だけでなく、世界でも起きているので、感染力の強い変異株によるものと考えられる。ちなみに、昨年1月からこれまで人口当たり新規感染者数について、日本と先進7カ国(G7)の相関係数(1が最大)をとると、0・35~0・68となっており、日本の新規感染者数は世界とかなりの程度連動している。
五輪期間といっても、感染傾向は従来通りであり、特に五輪の影響とは思えない。なお、G7では、日本はカナダ、ドイツとともに人口当たり新規感染者数、死亡者数は低位である。
世界で新規感染者数を増やしているのはデルタ株である。実際、東京の新規感染者も大半はデルタ株となっている。感染力が従来のものに比べて高いのは事実であるが、感染症ウイルスの経験則によれば、感染力の高いものは致死力は反比例するようにそれほど高くない。
デルタ株の致死率はまだデータではっきりと検証されていないが、従来のワクチンはほとんど同様に効果があることなどを基礎知識として理解しておいたほうがいいだろう。
そうした中、政府は8月2日から31日まで、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に新たに緊急事態宣言を発令した。対象はすでに発令中の東京都と沖縄県を合わせ6都府県に拡大された。さらに、北海道、京都、兵庫、石川、福岡の5道府県は蔓延(まんえん)防止等重点措置を新たに適用した。
期限を8月31日としたのは、同月末までに全人口のうちワクチンを2回打った人の割合が4~5割に達すると見込まれているためで、現役世代のワクチン接種を見極めたいとしている。
7月30日の政府分科会において、欧米のロックダウン(都市封鎖)のような強い措置を実施するための法改正も必要との意見が出たという。今後の検討課題だというが、こうした意見は1年以上前に言うべきだった。
ちなみに、こうした議論は、過去のインフルエンザ等特別措置法の制定時にも議論された。私権は憲法上認められているので、それを制限するには憲法に緊急事態宣言の根拠規定がないとできないということだった。こうした過去の経緯も無視して、再び議論するつもりなのだろうか。
そんな議論より、医療機関がコロナ患者を受け入れる病床の確保に必要な費用などに充てる「緊急包括支援交付金」約1兆5000億円の予算措置の未消化などを議論すべきではないか。分科会は、医療体制の供給拡大について何も言わずに、社会経済活動を抑制することしか言わないのか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題で、柳瀬唯夫元首相秘書官が学園関係者と首相官邸で計3回会っていたという平成27(西暦2015)年4月前後には、新設に反対する日本獣医師会が閣僚らに猛烈なロビー活動を展開していた時期と重なっています。学園側による柳瀬氏らへの面会要請は、活発化した獣医師会の動きへの対抗策だったとみるのが自然でした。
問題の本質は、獣医学部新設を目指す「愛媛県、今治市、加計学園、内閣府」と、新規参入を阻む「日本獣医師会、文部科学省」による権力闘争です。
何しろ獣医師会の会議録に、関連政治団体「日本獣医師政治連盟」の北村直人委員長が、衆院議員当選同期の石破茂地方創生担当相(当時)に複数回面会し、働きかけていた様子が詳細に記されていたのです。
会議録によると26(2014)年10月3日、国家戦略特区での獣医学部新設を目指していた新潟市について、北村氏は「石破大臣にお会いし」「本件が特区になじまないことを申し上げた」とされていました。27(2015)年6月22日には、北村氏はこう述べていました。
そうして当時柳瀬氏の「首相に面会を報告しなかった」との証言が疑問視されていましたが、ならば安倍内閣の閣僚で、獣医師会から100万円の政治献金を受けたことがある石破氏は、北村氏との面会をいちいち首相に報告していたのでしょうか。なぜ加計学園よりはるかに大々的な獣医師会による働きかけは、一切問われなかったのでしょうか。
同じく獣医師会から100万円の政治献金を受けた国民民主党の玉木雄一郎共同代表は2018年8月14日の衆院予算委員会で、官僚が首相を守るために仕事をしていると決めつけてこう主張しました。
「優秀な秘書官をはじめとした官僚が、悪知恵をめぐらせているのではないか。本来もっと天下国家のことに使うべき頭を、そんなことに使っている」
公益社団法人日本医師会(にほんいしかい、英: Japan Medical Association、英略称: JMA)は、日本の医師であることを入会の要件とする職能団体です。入会は任意であり、組織率は、2019年12月1日時点で172,763人(有資格者の約5割強)です。
「気が緩んだ」というのは、客観的に計測しようがないので検証不能だが、「五輪関係者の入国のため」というのは、五輪関係者に明確なクラスター(感染者集団)が発生しておらず、関係はないといえるだろう。
現在の感染拡大は日本だけでなく、世界でも起きているので、感染力の強い変異株によるものと考えられる。ちなみに、昨年1月からこれまで人口当たり新規感染者数について、日本と先進7カ国(G7)の相関係数(1が最大)をとると、0・35~0・68となっており、日本の新規感染者数は世界とかなりの程度連動している。
五輪期間といっても、感染傾向は従来通りであり、特に五輪の影響とは思えない。なお、G7では、日本はカナダ、ドイツとともに人口当たり新規感染者数、死亡者数は低位である。
世界で新規感染者数を増やしているのはデルタ株である。実際、東京の新規感染者も大半はデルタ株となっている。感染力が従来のものに比べて高いのは事実であるが、感染症ウイルスの経験則によれば、感染力の高いものは致死力は反比例するようにそれほど高くない。
デルタ株の致死率はまだデータではっきりと検証されていないが、従来のワクチンはほとんど同様に効果があることなどを基礎知識として理解しておいたほうがいいだろう。
そうした中、政府は8月2日から31日まで、埼玉、千葉、神奈川、大阪の4府県に新たに緊急事態宣言を発令した。対象はすでに発令中の東京都と沖縄県を合わせ6都府県に拡大された。さらに、北海道、京都、兵庫、石川、福岡の5道府県は蔓延(まんえん)防止等重点措置を新たに適用した。
期限を8月31日としたのは、同月末までに全人口のうちワクチンを2回打った人の割合が4~5割に達すると見込まれているためで、現役世代のワクチン接種を見極めたいとしている。
7月30日の政府分科会において、欧米のロックダウン(都市封鎖)のような強い措置を実施するための法改正も必要との意見が出たという。今後の検討課題だというが、こうした意見は1年以上前に言うべきだった。
ちなみに、こうした議論は、過去のインフルエンザ等特別措置法の制定時にも議論された。私権は憲法上認められているので、それを制限するには憲法に緊急事態宣言の根拠規定がないとできないということだった。こうした過去の経緯も無視して、再び議論するつもりなのだろうか。
そんな議論より、医療機関がコロナ患者を受け入れる病床の確保に必要な費用などに充てる「緊急包括支援交付金」約1兆5000億円の予算措置の未消化などを議論すべきではないか。分科会は、医療体制の供給拡大について何も言わずに、社会経済活動を抑制することしか言わないのか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
【私の論評】医師会の医療体制の供給拡大反対は、「加計問題」と本質は同じ(゚д゚)!
医師会は医療体制の供給拡大に反対です。なぜなら、そのようなことをすれば、既得権益が脅かされるからです。その意味では、本質は数年前に取り沙汰された「加計問題」とその本質は同じです。
ただし、「加計問題」とはいっても、マスコミが報道したり、一部野党による倒閣のための問題指摘などとは全く異なります。
前川喜平・前文科省事務次官(右)の主張と真っ向から対立する証言をした、加戸守行・前愛媛県知事(左)。 |
何しろ獣医師会の会議録に、関連政治団体「日本獣医師政治連盟」の北村直人委員長が、衆院議員当選同期の石破茂地方創生担当相(当時)に複数回面会し、働きかけていた様子が詳細に記されていたのです。
会議録によると26(2014)年10月3日、国家戦略特区での獣医学部新設を目指していた新潟市について、北村氏は「石破大臣にお会いし」「本件が特区になじまないことを申し上げた」とされていました。27(2015)年6月22日には、北村氏はこう述べていました。
「蔵内(勇夫獣医師会)会長は麻生(太郎)財務大臣、下村(博文)文部科学大臣へ、担当大臣である石破大臣へは私が折衝を続けている」「(獣医学部新設に)一つ大きな壁を作っていただいている状況である」
その後、27(2015)年6月30日に安倍晋三内閣は獣医学部新設に関わる厳しい4条件、いわゆる「石破4条件」を閣議決定しました。9月10日の獣医師会会議で北村氏は、石破氏が「誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした」と述べたと紹介していました。
その後、27(2015)年6月30日に安倍晋三内閣は獣医学部新設に関わる厳しい4条件、いわゆる「石破4条件」を閣議決定しました。9月10日の獣医師会会議で北村氏は、石破氏が「誰がどのような形でも現実的に参入は困難という文言にした」と述べたと紹介していました。
同じく獣医師会から100万円の政治献金を受けた国民民主党の玉木雄一郎共同代表は2018年8月14日の衆院予算委員会で、官僚が首相を守るために仕事をしていると決めつけてこう主張しました。
「優秀な秘書官をはじめとした官僚が、悪知恵をめぐらせているのではないか。本来もっと天下国家のことに使うべき頭を、そんなことに使っている」
野党議員こそ、倒閣ばかりでなく、もっと日本のためになる違う頭の使い方があるのではないかと痛感させられたものです。
今回のコロナ禍に対応するための病床の増床なども似たようなところがあります。結局病床拡大を医師会側が、自分たちへの既得権益の脅威とみなし、政治家、官僚などに対する働きかけがあったものとみるのが、自然でしょう。
結局1年以上たっても、病床の大幅な増床はみられず、その範囲の中で医療体制を考えるといったことがなされ続けているようです。
記者会見する日本医師会の中川俊男会長=昨年12月23日午後、東京都内 |
法人の種類としては公益社団法人ですが、開業医らが運営する利益団体としての性格をもちます。世界医師会に加盟し、本部は東京都文京区本駒込2-28-16に所在します(日本医師会館)。略称は日医(にちい)。都道府県医師会、全国に約890存在する郡市区医師会は、いずれも独立した公益法人ですが、日本医師会の下部組織です。本会・日本歯科医師会・日本薬剤師会を合わせて「三師会」と称します。
医師会は、開業医のための団体と考えて良いでしょう。公立病院の勤務医などの利益を代表するものではないといえるでしょう。
この医師会は、開業医の利益を守るため、政治家、官僚などに働きかけを行っているのは間違いないでしょう。今回も結局、他の国にみられるような、バラックのコロナ病棟を建てる、公立病院などで、コロナ病棟を設けるなど、あまり目立った形で、大掛かりになされず、「緊急包括支援交付金」約1兆5000億円の予算措置の未消化などの問題に発展しているのは、こうした経緯があるからでしょう。
そもそも、医師会には既得権益を守るため、従来から医療体制の供給拡大に反対する傾向がありました。
そのため、公正取引委員会は、「医師会の活動に関する独占禁止法上の指針」を定めています。これは、昭和56年に定められ、平成22年に改正しています。
詳細は、以下のサイトをご覧になってください。
医師会の活動に関する独占禁止法上の指針
詳細は、この記事をごらんいただくものとして、以下にその趣旨だけをこの記事から引用します。
医師会、特に地区医師会の活動については、いわゆる医療機関の適正配置に関する活動等に関し、独占禁止法違反とされた事例もあり、当委員会は、医師会の活動に関してアンケート調査を実施し、その実態の把握に努めたのを機に、今般、医師会の活動と独占禁止法との関係についての考え方を、活動指針として取りまとめた。この活動指針は、医師会の諸活動に対する独占禁止法の適用について当委員会の考え方を参考例を挙げつつ、具体的に明らかにすることにより、同法に抵触することとなる活動を未然に防止しようとするものである。高橋洋一氏は、上の記事の最後で「分科会は、医療体制の供給拡大について何も言わずに、社会経済活動を抑制することしか言わないのか」と述べていますが、まさにそのとおりであると思います。 それどころか、オリンピック中止まで提言するというありさまです。
なお、医師会の具体的な活動が、独占禁止法に抵触するおそれがあるか否かについては個々の事案ごとに判断を要する場合も多いと考えられるので、かかる場合には、当委員会に設けられた一般相談、あるいは、事前相談制度により個別の相談に応じることとした。
医療体制の拡大には、触れずに、社会経済活動を抑制することしか言わないことには、問題がありすぎます。感染者数だけが減れば良いという考え方には、賛同できません。インフルエンザでいちいち社会が麻痺したとしたらとんでないことになります。
コロナに関しても、昨年コロナ感染がはじまったばかりのときなら、正体がわからず、とにかく感染者数を低減することに注力することは理解できますし、それは正しかったと思います。あの時点で、コロナは風邪やインフルエンザと同じと、言い切ることには問題があったと思います。
ただし、現在では、コロナ感染症について知見がかなり深まり、何よりもワクチンの接種が進んでいます。現在では、コロナ感染症に対する昨年までの考え方は捨て去り、新たな取組をすべきです。
今後、わたしたちは、コロナウイルスが今後長い間にわたって撲滅することはできないと見るべきです。そうなると、多少感染者が増えたくらいでは、社会・経済が機能しなくなるようでは、強い社会とはいえません。
やはり、感染者が増えたにしても、社会・経済が簡単には機能しなくなることのない強靭な社会を目指すべきです。そのためには、「医療体制の供給拡大」に関しての論議は避けて通れません。
医師会がどこまでも、反対するというなら、公取委が動いても良いのではないかと思います。今後も長きにわたって、コロナに社会・経済が翻弄され続けることがあってはならないです。
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