【図解】アフガニスタン |
タリバンは声明で「カブールでは戦わない」と述べており、戦闘員に「市内に入らず待て」との指令を出した。政府側が権力移譲に言及したのは初めてで、引き換えに停戦に向かう可能性が高い。2001年の米英軍によるアフガン攻撃を機に成立した民主政権は崩壊の瀬戸際に立たされており、アフガン情勢は重大な局面を迎えた。
ガニ氏は14日の国民向け演説で、軍の再動員を進め抗戦を続ける姿勢を強調。ただ、地元民放トロTVは同日、ガニ氏が停戦や暫定政権発足に向け、政治家や地元有力者で構成する交渉チームを組織したと報じていた。
カブール市内で大規模な戦闘は伝えられていない。地元記者は電話取材に「15日になって電話が通じにくくなった。(日曜が平日のアフガンで)銀行も緊急休業した」と証言した。住民が避難するための現金も引き出せない状態という。
タリバンの首都郊外進出に先立ち、米国防総省は、大使館員の退避支援のためカブールに軍を増派すると発表。ロイター通信によると、15日にはヘリコプターで大使館員の退避が始まった。
タリバンは14日、北部バルフ州の州都である要衝マザリシャリフを制圧した。政府側は東部ジャララバードも15日に喪失。政府軍の士気の低下は明らかで、連日の州都陥落により、全34州都の約4分の3がタリバンの手に落ちた。
マザリシャリフは、中央アジア・ウズベキスタンとの国境に近い交易の拠点で、ガニ氏が反撃の拠点とすべく11日に訪れ、政府軍を激励したばかりだった。地元州議会議員は取材に「タジク人のアタ・モハンマド・ヌール元州知事、ウズベク人のドスタム将軍ら軍閥トップを含め、街の守備部隊は国境に向かって逃げ出した」と語った。
米軍アフガン撤収 タリバン攻勢に歯止めを―【私の論評】米国は、中国を弱体化させる方向で、対アフガニスタン政策を見直しつつある(゚д゚)!この記事より一部を以下に引用します。
超大国がアフガニスタンで苦杯を喫するのは米国が初めてではありません。米国と入れ替わるようにアフガニスタンを去った旧ソ連は、親ソ政権擁護のために1979年から10年間駐留したましたが、武装勢力ムジャヒディーンの抵抗で1万4000人以上の戦死者を出し、ソ連崩壊の原因の一つにもなりました。
それ以前に英国も、帝国全盛時代の19世紀から20世紀初めにかけて三次にわたりアフガニスタンで戦いましたが、1842年にはカブール撤退で1万6000人が全滅させられました。その後シンガポールで日本軍に敗北するまで「英軍最悪の惨事」と言われていましたた。
こうしたことから、アフガニスタンは「帝国の墓場(Graveyard of Empires)」と呼ばれるようになり、米国もその墓場に入ったのですが撤退を余儀なくさせらました。
最貧国にあげられるこの国がなぜ超大国を屈服させられるのでしょうか。まず、国土の四分の三が「ヒンドゥー・クシュ」系の高い山で、超大国得意の機動部隊の出番がありません。ちなみに「ヒンドゥー・クシュ」とは「インド人殺し」の意味で、この山系を超えるインド人の遭難者が多かったことによるものとされています。
アフガニスタン ヒンドゥー・シュク山脈 |
次に、古くは古代ギリシャのアレクサンドロス大王やモンゴルのチンギスハーン、ティムールなどの侵略を受けて、国民が征服者に対して「面従腹背」で対応することに慣れていることです。
さらに、アフガニスタン人と言っても主なパシュトゥーン人は45%に過ぎず、数多くの民族がそれぞれの言語を使っているので、征服者がまとめて国を収めるのはもともと無理なことが挙げられます。
アフガニスタンの国土のほとんどが山岳地帯であるということが、アフガニスタン統治を難しくしています。 そもそも、陸路で正規軍を大量に送ることはできません。戦車や車両などを大量に送って、陸戦を有利にすすめることもできません。
それどころか、武器・食糧を大量に送って、戦線を長期間維持することも困難です。兵站の維持は困難なのです。このような山岳地帯においては、航空機による攻撃も、遮蔽物が多く、通常の陸上攻撃と比較すれば、その威力は半減します。さらに、冬には山岳地帯では気象が悪すぎで、とても戦いができる状況ではなくなります。
だからこそ、英軍、ロシア軍、米軍でさえこの地を軍事力をもって統治するのは不可能だったのです。
この地で最も有利なのは、山岳の地理を熟知した少数の兵でゲリラ戦を仕掛けることです。ただ、アフガニスタンの国土は広いですし、山岳を熟知するためには、ある程度限定された局地で、長い間生活した者のみです。
詳しい地図があったとしても、それだけでは、局地戦に役立ちません。そのため、ある局地に詳しいものは、その局地では有利に戦えますが、その他の局地に行けば素人同然になってしまうのです。
現在タリバンが有利に戦いをすすめているのは、各局地において、その局地の地理に熟知した人間を雇うことができいるからでしょう。
ただし、首都カブールは比較的平地が多く、開けた地形であり、こういうところでは、戦車や航空機での攻撃はしやすいので、タリバンが現政府軍と真っ向から市街戦を挑めば、犠牲者がかなり出ることを覚悟しなければならなくなります。
だからこそ、タリバン側は首都の包囲を狭め、ガニ大統領に権力を移譲するように迫っているのです。
ただし、現状は間違いなく、アフガニスタン政府にとって暗澹たるものです。しかし、まだ政治的駆け引きでなんとかなる状況かもしれません。もしも政府が各地の部族長を味方につけることができれば、タリバンと政府のどちらも決定的に勝つことも負けることもない、膠着状態が訪れるかもしれないからです。
特に、かつて有力な軍閥の長だったアブドル・ラシド・ドストゥム氏がマザーリシャリーフ(アフガニスタン北部のバルフ州にある都市)へ帰還したのことは、重要な展開です。ドストゥム氏はすでに各方面と取引を始めています。
アブドル・ラシド・ドストゥム氏 |
双方手詰まりの状態が年末までにやってくる可能性はまだあります。アフガン現政府は首都カブールなどの大都市にしがみつき続けるでしょう。
自分たちが奪い取った米軍のハムヴィー(車両)を見せびらかすタリバン戦闘員 |
さらに、タリバンが分裂するようなことがあれば、その場合も潮目は変わります。
現時点でタリバンがアフガニスタン全土を掌握するのは間近と判断するのは時期尚早ですし、たとえタリバンが全土を掌握したとしても、それは長続きはしないでしょう。かつて、英軍、ロシア軍、米軍が全土を掌握して、統治しようとしてもできませんでした。
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