2021年8月27日金曜日

札幌で抗体カクテル療法開始 臨時診療所も1日から投薬 感染妊婦8カ所で入院可―【私の論評】抗体カクテル療法の先にあるのは、コロナに負けない強靭な社会を構築すること(゚д゚)!

札幌で抗体カクテル療法開始 臨時診療所も1日から投薬 感染妊婦8カ所で入院可

 札幌市は26日の市新型コロナウイルス感染症対策本部会議で、患者の重症化を防ぐ効果があるとされる「抗体カクテル療法」を市内17医療機関で始めたことを明らかにした。患者を一時的に受け入れる臨時診療所「入院待機ステーション」でも、9月1日から薬剤投与を開始する。感染した妊婦が入院できる8医療機関も確保したという。

 抗体カクテル療法で薬剤が投与されたのは8月24日時点で80人。これとは別に、5医療機関が同23日から糖尿病や肥満など重症化リスクが高い入院患者に投与しているという。入院待機ステーション2カ所のうち、患者数の減少で休止中の中央区のステーションを9月1日に再開し、1日10人程度に投与する。

【私の論評】抗体カクテル療法の先にあるのは、コロナに負けない強靭な社会を構築すること(゚д゚)!

8月13日、「抗体カクテル療法」として中外製薬の「ロナプリーブ」が承認されました。軽症から中等症に対して治療効果が期待でき、その効果は「入院または死亡リスクを約70%減少する」「重症化の抑制と症状消失までの期間を短縮する」として注目されています。

抗体カクテルとは、2つの抗体蛋白を混ぜて投与するものです。その2つの抗体蛋白は「カシリビマブ」と「イムデビマブ」です。

新型コロナウイルスは表面に「スパイク蛋白」という鍵のようなものを持ち、その鍵が細胞に結合してウイルスが細胞内に侵入、増殖していきます。抗体蛋白は、スパイク蛋白に結合し、ウイルスの侵入、増殖を阻止します。

新型コロナウイルスの構造

2種類の抗体を混ぜるのは、変異ウイルスへの効果を担保するためであす。現在、猛威を振るうデルタ株への効果も期待できるといわれています。すでに実際に抗体カクテルを使用している医療機関もあり、その効果についは良好であることが報告されています。

各地で感染爆発が起こり、各自治体は頭を悩ませていますが、そのなかでも大阪の感染者増加は顕著です。

こういった現状を受けてか大阪府の吉村洋文知事が8月20日抗体カクテルについて、以下のようにツイートしました。

<本日から「短期入院で抗体カクテル療法からのホテル療養」を始めました。なんで完治してないのに、ホテルやねん!最後まで入院させろ!と思われる方もいらっしゃると思いますが、より多くの人が治療を受ける為に必要です。重症化から一人でも多くの人を守る為にご協力下さい>

大阪府の吉村洋文知事

この発言には驚かれた方もいらつしゃるでしょうが、私としては賛同したい内容です。吉村知事や秋元札幌市長のの思いが国を動かし、抗体カクテル療法が標準治療となることを望みますが、現状ではそのハードルは高いようです。

抗体カクテル療法は、発症から7日以内で酸素を必要としない患者に有効性が期待できるとされとています。現状では、自宅待機等で急激な悪化が起きることも珍しくなく、抗体カクテル療法を受けるタイミングを判断する難しさがあります。

また、現状では、抗体カクテル療法を受けることができる患者は、重症化リスクがある場合とされます。厚生労働省が示す重症化リスクは、以下の通りです。
65歳以上高齢者
悪性腫瘍
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
心血管疾患
慢性腎臓病
高血圧
糖尿病 肥満(BMI値30以上)
喫煙
妊娠後期
重症化リスクを十分に考慮した判断が必要となり、今後の医療構築が課題となるでしょう。

また、国の調達予定は20万回分ほどで、そのうち7万回分程度をすでに確保したことを明らかにしていますが、新型コロナウイルスの終息までは、さらなる確保が必要となります。連日、自宅療養するなかでの死亡例も報道され、少しの猶予もありません。

そうして、この先には何があるかといえば、コロナ感染者が多少増えても、重症者、死者を増やさず、自粛によって社会経済活動が阻害されない、強靭な社会です。

そのためには、有効な治療法を確立することが前提です。つまり、ワクチンはすでに製造され、接種が進んでいる状況ですが、その他に抗ウイルス薬が完成することです。「ロナプリーブ」はそうなる可能性が高いです。

そして最後に、おそらくこれが最も重要なのですが、多くの人が免疫を獲得することです。

抗体カクテル療法が、効果をあらわし、重症化リスクのある患者以外にも普通に投与されるようになり効果があれば、そうなる可能性は高いです。

話は変わりますが、インフルエンザは、恐ろしい病気です。2016年には全国で1週間で、200万人もの感染者が発生し、インフルエンザは年齢層を問わず感染するので、小学生がインフルエンザ脳炎でなくなったという痛ましい事例もありました。しかし、それでも医療崩壊の危機に見舞われたり、緊急事態宣言が出されたりして、社会経済活動が阻害されるようなことはありませんでした。

なぜそうだったかといえば、インフルエンザウイルスには以前から、ワクチンはありましたし、それに加えて抗ウイルス薬もあったからです。飲み薬はシンメトレル、タミフル・ゾフル、吸入薬はリレンザ・イナビル、点滴はラピアクタという薬です。

 これらは、体内でインフルエンザウイルスが増殖するのを抑える作用があります。これらによって、感染者が増えても、死者、重傷者はあまり増えない状況になっていたからです。

抗インフルエンザ薬の用法・用量

さらにこのブログで以前から述べてきたように、インフルエンザは我が国の感染症分類では、5類に分類されていて、重症な風邪と同じような扱いができましたので、医療崩壊の恐れもなく、緊急事態宣言を発することをせずに、通常社会経済活動を維持できたのです。新型コロナウイルスによる感染症も現在は2類の扱いですが、いずれ5類にできるでしょう。

「ロナプリーブ」以外にも様々な有効な抗ウイルス薬が開発され、医師の判断によって普通に使用されるようになれば、コロナウイルス感染症も、いずれインフルエンザと同じ扱いになるでしょう。そうして、その日は目前です。

そうなれば、コロナウィルスを撲滅することには長い時間がかかるかもしれないですし、場合によっては、永遠に撲滅はできないかもしれませんが、それでも感染症で多くの人が重症化し亡くなることの無い、社会経済活動を制限しなくてもすむ強靭な社会を構築できるようになります。

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