高市早苗 |
この中で、高市氏は、去年、菅総理大臣が選出された経緯に触れ「私が1票を投じたのは、安倍内閣の政策を踏襲すると明言したからだが、アベノミクスの2本目の矢である『機動的な財政出動』は適切に実行されなかった。小出しで複雑な支援策に終始している感がある」と指摘しています。
そのうえで、菅総理大臣の自民党総裁としての任期が来月末に迫っていることを踏まえ「力強く安定した内閣を作るためには総裁選挙を実施し、すべての党員から後押ししてもらえる態勢を作ることが肝要だ。社会不安が大きく課題が多い今だからこそ、今回、私自身も総裁選挙に出馬することを決断した」として総裁選挙への立候補に意欲を示しました。
高市氏は、衆議院奈良2区選出の当選8回で60歳。
党内の派閥には所属していませんが、安倍前総理大臣に近いとされ、安倍政権では、党の政務調査会長や総務大臣などを歴任しました。
【私の論評】総裁候補になると見られる人で「インフレ率2%を達成するまでは財政出動を優先する」と発言したのは高市氏だけ(゚д゚)!
高橋早苗氏の「文藝春秋」に寄せた論文のリンクを以下に掲載します。
高市早苗「総裁選に出馬します!」詳細は、この記事を是非ご覧になってください。
インフレ率2%を達成するまでは、時限的にプライマリーバランス(PB)規律を凍結して、戦略的な投資にかかわる財政出動を優先する。頻発する自然災害や感染症、高齢化に伴う社会保障費の増大など困難な課題を多く抱える現状にあって、政策が軌道に乗るまでは、追加的な国債発行は避けられない。
こう述べると「日本国が破産する」と批判される方がいる。しかし、「日本は、自国通貨建て国債を発行できる(デフォルトの心配がない)幸せな国であること」「名目金利を上回る名目成長率を達成すれば、財政は改善すること」「企業は借金で投資を拡大して成長しているが、国も、成長に繋がる投資や、将来の納税者にも恩恵が及ぶ危機管理投資に必要な国債発行は躊躇するべきではないこと」を、強調しておきたい。
「強い経済」は、結果的に財政再建に資するものであり、全世代の安心感を創出するための社会保障を充実させる上でも不可欠だ。外交力や国防力、科学技術力や文化力の強化にも直結する。
「インフレ目標2%を達成するまでは、インフレ率2%を達成するまでは、時限的にプライマリーバランス(PB)規律を凍結して、戦略的な投資にかかわる財政出動を優先する」ということをはっきりと発言したのは総裁候補とみられる人の中では高市早苗氏だけかもしれません。
総裁選出馬にあたって、高市氏は政権構想「日本経済強靭化計画」の一部を披露しています。う上で引用した部分は、その流れで出てきた内容です。高市氏は、「私は、国の究極の使命は、『国民の皆様の生命と財産を守り抜くこと』『領土・領海・領空・資源を守り抜くこと』『国家の主権と名誉を守り抜くこと』だと考えている」
そう基本軸を設定したうえで、大胆な「危機管理投資」と「成長投資」が必要だと指摘。
そう基本軸を設定したうえで、大胆な「危機管理投資」と「成長投資」が必要だと指摘。
『成長投資』とは、日本に強みのある技術分野をさらに強化し、新分野も含めて、研究成果の有効活用と国際競争力の強化に向けた戦略的支援を行うことだ」
さらに、「中国リスク」への対策も盛り込まれています。
「今後、中国共産党が日本社会への浸透と工作を仕掛けてくる可能性もある。(中略)日本国内の企業や大学や研究機関の内部に設置された中国共産党組織が、先進技術や機微技術の流出拠点となる懸念も大きい」としたうえで、法制度整備と体制強化を提案している。
中国対策に関しては、現状の中国の傍若無人な態度や行動をみていれば、当然であり、他の総裁候補も同様のことをいうでしょう。
しかし、どのような形であれ「インフレ率2%を達成するまでは財政出動を優先する」と発言するのは高市氏だけかもしれません。やっと、自民党総裁候補にも、緊縮派とはいえない人が出てきたと思います。安倍元総理も、緊縮派ではありませんでしたが、ここまではっきりとは言っていなかったと思います。
景気が低迷したとき、標準的なマクロ経済学では、積極財政、金融緩和をせよと教えています。
それは特にデフレのときには、これらを実行して、速やかにデフレから脱却せよと教えています。そうしてそれは、古今東西どこでも正しいことが立証されています。これ以外の政策を実施した場合はすべて失敗しています。
マクロ経済の全体像 |
ところが、安倍政権が成立するまでの日本では、デフレであるにもかかわらず、政府は緊縮財政を行い、日銀は金融引締策ばかりを実行してきました。
そこに安倍政権が登場して、政府は積極財政、日銀は金融緩和に転じました、そうして景気は凄まじい勢いで回復していきました。特に雇用の改善には目覚ましいところがありました。
ところが、財務省は増税キャンペーンを執拗に繰り返し、これにマスコミや多くのエコノミストが加勢し、安倍政権は二度にわたり増税を延期したのですが、とうとう増税せざるを得ない状況になり、2014年4月には消費税を8%に増税し、2019年10月には消費税は10%になりました。
日銀は、安倍政権発足のときには、異次元の包括的金融緩和を実施しましたが、緩和の姿勢を崩してはいませんが、2016年からは、イールドカーブ・コントロールを実施し、抑制的な緩和に転じました。
増税と、抑制的な緩和により、物価目標2%の達成は未だできていないどころか、現状のままでは、とてもおぼつきません。
これに対しては、積極財政と金融緩和が有効であり、コロナ禍の現状で経済が低迷してい現状では、すみやかに大規模な財政出動と金融緩和を実行して、素早く景気を回復させる必要があります。そのためには、国債を大量に発行すべきです。
金利がマイナス、もしくはゼロに近い国債を大量発行したとしても、政府の負担はそれほどでもありません。マイナスであれば、発行すればするほど政府は儲かることになります。これは、たとえば銀行の貸し出し金利がマイナスになれば、借りれば借りるほど儲かるし、マイナスでなくても金利がゼロに近ければ借りやすいというのと同じであり、小学生にでも理解できると思います。
国債を発行すると将来世代へのつけとなるという非常識な人もいますが、それは完璧に間違いであることをこのブログでは、根拠を示して何度も述べています。
高市氏は、日銀の金融緩和については、はっきりとは述べていませんが、当然これも視野に入っていると思います。日銀法の改正も視野に入れていただきたいものです。
日本では、中央銀行(日本では日銀)の独立性とは、日銀が独自で日本国の金融政策を定めて実行することだと理解されているようですが、世界水準では、中央銀行の独立性とは政府の定めた目標に従い、自由に方法を選択できるというのが中央銀行の独立性であると理解されています。
日銀法を改正して、日本でも世界水準の中央銀行の独立性を確保するとともに、政府が日本国の金融政策の目標を定められるようにすべきです。ただし、そうなっても、マクロ経済がわかっていない人が政治家の多数を占めていれば、同じことです。
やはり、政治家自身がマクロ経済をある程度理解すべきでしょう。とはいえ、政治家自身は、細かなことまで知る必要はないです。このブログにも過去に何度も掲載してきた以下のグラフの意味が本当に理解しているだけで十分です。
NAIRUとは、インフレ率を上昇させない失業率(non-increasing inflation rate of unemployment)のことです。
現在の日本では、NAIRUは2%の半ば程度であるとみられています。インフレ目標は物価目標と同じで2%です。
このグラフをみて、何のことだかわからない人は、マクロ経済を全く理解できていません。経済のことを知りたいとか、語りたいと思うなら、最初にこのグラフの意味を理解すべきです。そうでないと、無意味な議論しかできませんし、経済に関して知識を積み上げようとしてもできません。安倍元総理や、高市早苗氏はこれを十分理解していることでしょう。
高市氏は、これを理解しているだけではなく、まともな経済対策を打つことを邪魔する財務省の取り扱い方についても、理解していることでしょう。
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いずれにしても、日本の総裁候補の中に、緊縮とは無縁の人がでてきたのは喜ばしいことです。高市氏が総裁になれば、日本経済もかなり良くなると思われますが、そうならなくても、総裁選で大善戦して、新総裁に経済対策の面で大きな影響力を行使できるようになっていただきたいものです。
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