2021年8月4日水曜日

サモアの女性新首相就任、中国支援の港湾開発中止を表明―【私の論評】中国が南太平洋の安定を揺るがす事態を防ぐため、日米豪は南太平洋諸国への関与を強めるべき(゚д゚)!

サモアの女性新首相就任、中国支援の港湾開発中止を表明

サモアのフィアメ・ナオミ・マタアファ氏

南太平洋の島嶼(とうしょ)国、サモアで4月の議会選挙の結果が確定し、フィアメ・ナオミ・マタアファ氏を同国初の女性首相とする新政権が始動した。フィアメ氏は就任後、中国が支援する港湾開発事業を中止する意向を表明。米国と中国が影響力拡大を競い、「陣取り合戦」の様相を呈する地域情勢に影響を与える可能性がある。

サモアでは4月に議会(定数51)選挙が行われ、ツイラエパ前首相の人権擁護党と、フィアメ氏のFAST党がともに25議席を獲得。その後、無所属の当選者1人を加えたFAST党が多数派を形成した。

フィアメ氏は5月に独自に首相就任の宣誓を行ったが、敗北を認めないツイラエパ氏は「私は神に任命された」などと主張し、政権を明け渡さない姿勢を示していた。裁判所が7月23日、就任宣誓は「有効」との判断を示し、27日にフィアメ氏を首相とする内閣が発足した。

サモアは23年間続いたツイラエパ政権が中国接近を進め、対中債務の膨張が課題となっている。そのうえ、中国が支援する1億ドル(約110億円)の大規模港湾開発計画も進んでおり、フィアメ氏は選挙戦で見直しを訴えていた。

フィアメ氏は首相就任後、ロイター通信に港湾開発事業について「現時点で優先順位が低い。自国に明確な利益がある投資のみを承認する」と表明。対中関係は「他の二国間関係と同じように評価する」と述べ、前政権の中国傾斜を修正する意向を示した。

【私の論評】中国が南太平洋の安定を揺るがす事態を防ぐため、日米豪は南太平洋諸国への関与を強めるべき(゚д゚)!

サモアは人口約20万人の小国。観光業が頼りで、慢性的な貿易赤字に悩まされています。

サモアの絶景スポット トスア・オーシャン・トレンチ

トゥイラエパ氏は1998年11月、首相に就任し、長期政権を維持してきました。空港や病院、政府庁舎などのインフラ整備を中国に頼り、中国からの借款は約1億6000万ドル(約175億円)に達し、サモアの対外債務の約40%を占めます。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」にも組み込まれていました。

サモアでは、上の記事にもある通り、中国が資金提供するバイウス湾の埠頭建設プロジェクト(2021~26年)が進められていました。トゥイラエパ氏は今年1月、地元紙の取材に、プロジェクトは交渉の最終段階にあり、新型コロナウイルス感染症が収まれば作業が始まるとの見通しを伝えていました。

トゥイラエパ氏

旧政権は雇用創出や貿易・観光促進という効果を全面に押し出していましたが、埠頭の設計や資金調達の方法は公開していませんでした。米国やオーストラリアなどの専門家の間では「埠頭が軍事利用されるのでは」という懸念が持ち上がり、中国の駐サモア大使館が「根拠のない主張」と反論してきた経緯がありました。

FAST党は、中国と良好な関係を維持しつつも、プロジェクトについて「サモアの輸出入産業の規模に見合わない」「軍事基地でなければ、規模の大きさを説明できない」などとして中止を公約に掲げてきました。

地元紙によると、無所属当選者もFAST党との連携を発表した際、こう語っていました。

「わが国に中国系企業が増え、非常に多くの中国人がいる。われわれが知らないこと、気づいていないことの背後に、何か大きなものがある。中国人はわれわれのビジネスを支配し、地元企業がそれに対抗するのは難しい。そして彼ら(中国人)が稼いだカネは彼らの祖国に行くだろう」

サモア総選挙後の混乱について、中国外務省の趙立堅(Zhao Lijian)副報道局長は5月25日の定例記者会見で「中国とサモアは良い関係にある。中国は一貫して内政不干渉の原則を堅持している。サモア側には内政をうまく処理する能力と知恵があると信じている」と述べるにとどめました。

フィアメ氏は首相就任後、ロイター通信に港湾開発事業について「現時点で優先順位が低い。自国に明確な利益がある投資のみを承認する」と表明。対中関係は「他の二国間関係と同じように評価する」と述べ、前政権の中国傾斜を修正する意向を示した。 

南太平洋諸国には中国が影響力拡大を狙っており、2019年にはキリバスとソロモン諸島が台湾と断交して中国と国交を樹立しました。一方、米国は国防権限を米国に委ねる「自由連合盟約」を結ぶパラオなどと連携を深めています。

オーストラリアの調査機関によると、中国は2006年からの10年間で、南太平洋の国々に17億8000万ドル(約1920億円)を援助しました。今や豪米両国に次ぐ主要な援助国となりました。

この地域の秩序を主導する米豪に対抗する戦略でしょう。

懸念されるのは、中国の南太平洋への進出によって、地域の緊張が高まる事態です。



「海洋強国」を国家目標とする中国は、太平洋やインド洋など遠海へと活動範囲を広げています。国際ルールに反した一方的な海洋進出や、相手国の財政状況を無視した融資が批判されてきました。

中国の習近平国家主席は南シナ海について「軍事拠点化しない」と約束しました。にもかかわらず、岩礁を埋め立てた人工島にレーダーやミサイルを設置し、「航行の自由」を脅かしています。

インド洋の島国スリランカは中国への債務返済が出来なくなり、南アジア最大級のハンバントタ港の権益を事実上、譲渡しました。

南太平洋で同様の問題が起きないとは言い切れません。島嶼国の多くが中国への経済的な依存度を高めています。バヌアツでは中国が港湾整備を進め、軍事利用するとの見方が出ています。

南太平洋はアジアと米大陸をつなぐシーレーン(海上交通路)にあたります。米軍がアジア太平洋の戦略拠点として基地を置くハワイやグアムに近いです。日米豪などが共有する「自由で開かれたインド太平洋」構想でも大切な地域です。

中国が島嶼国を拠点に軍事活動を強化し、地域の安定を揺るがす事態を防ぐため、米豪や日本が南太平洋諸国への関与を強めることが求められます。

経済援助に加え、安全保障協力が重要です。米豪はパプアニューギニア・マヌス島の海軍基地を拡充し、周辺での軍事演習も強化しています。島嶼国の防衛力向上に資する支援を積み重ねねるべきです。

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