2021年12月6日月曜日

〈独自〉大企業は賞与含む継続雇用者の給与総額4%以上で最大30%控除、賃上げ税制概要判明―【私の論評】岸田政権に望む経済政策は、これ以上日本経済を毀損しないでいただくことのみ(゚д゚)!

〈独自〉大企業は賞与含む継続雇用者の給与総額4%以上で最大30%控除、賃上げ税制概要判明

臨時国会の衆院本会議で所信表明演説に臨む岸田文雄首相=6日午後、衆院本会議場

 令和4年度税制改正で最大の焦点となっている、賃上げを行った企業を優遇する「賃上げ税制」見直しの概要が6日、分かった。大企業では法人税額から差し引くことができる控除(減税)率の最大値を20%から30%に引き上げ、賞与などを含む継続雇用者の給与総額を前年度比で4%増やせば対象となる。また、中小企業では最大値を25%から40%に引き上げ、総従業員の給与総額を2・5%増やせば優遇を受けられる制度にする方向だ。

 岸田文雄首相は6日の衆院本会議での所信演説で、「賃上げに向け全力で取り組む」と表明しており、賃上げした企業の減税率を大幅に増やすことで企業の賃上げを促す考えだ。政府・与党で適用条件などの詳細を詰めた上で、10日にもまとめる与党税制改正大綱に明記する方針だ。

 現行制度では、大企業は新たに雇用した従業員の給与総額を前年度より2%以上増やした場合、支給額の15%分を法人税から差し引ける。中小企業は全雇用者の給与総額が1・5%以上増えた場合、増加額の15%分を控除できる。さらに従業員の教育訓練費を一定額以上増やすと大企業は5%、中小企業は10%それぞれ控除率が上乗せされる。

 4年度税制改正でも、企業が最大の控除率を受けたい場合、投資や教育訓練費を前年度に比べて増額することが条件になる方向だ。

 一方、赤字の中小企業は法人税を納める必要がないため、賃上げをしても優遇税制の恩恵がない。このため、補助金を活用して賃上げを促す特別枠を設ける。中小企業を対象に設備投資額の50%を補助している制度を見直し、赤字の中小企業が従業員の給与総額を前年度比で1・5%以上増やすことを条件に、補助率を3分の2に引き上げる案が検討されている。

【私の論評】岸田政権に望む経済政策は、これ以上日本経済を毀損しないでいただくことのみ(゚д゚)!

上の記事を読んでいると、全く意味がわかりません。税制で本当に賃金が挙げられるのでしょうか。まともに考えれば、あげられるはずかないという結論に至るはずです。

税制では、一部の人の賃金を上げられるかもしれないですが、日本国民の全体の賃金を上げるのは不可能です。そもそも、税金で賃金を上げるというのは、全体では貨幣の量が変わらないで、一部の人の賃金を上げるだけに終わるということです。

賃金を上げるというのなら、まずは金融緩和です。無論日銀は金融緩和を継続はしているのですが、それにしても物価目標2%すら達成できていません。このような状況で全体の賃金をあげられるはずもありません。

賃金については、このブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
【日本の解き方】日本の賃金はなぜ上がらない? 原因は「生産性」や「非正規」でなく、ここ30年のマネーの伸び率だ!!―【私の論評】日本人の賃金が低いのはすべて日銀だけのせい、他は関係ない(゚д゚)!
この記事の元記事の高橋洋一氏の記事の結論部分を以下に引用します。
1990年までは日本のマネーの伸び率は先進国の中でも平均的だったが、バブル潰しのために90年に入ってから日銀は引き締めた。その引き締めをその後30年近く、基本的に継続しているのだ。

 「非正規雇用の多さ」という議論は、非正規雇用が総じて低賃金だからという発想であろうが、国際比較すると日本だけが特別に多いわけではないので、必ずしも日本の賃金の低さを説明できない。

 「企業の内部留保の大きさ」というのは、企業が内部留保を吐き出さないので低賃金になっているとの主張だが、30年間常に日本企業の内部留保が大きかったわけではないので、30年間の現象をよく説明できない。

 マネーの伸び率を高めるために有効な政策は、インフレ目標の数字を引き上げることだ。筆者はすでに、インフレ目標を現状の2%から4%に引き上げれば、所得倍増を12~13年で達成できることを指摘している。 
結局、日本の賃金の全体の底上げをするには、まずインフレ率は2%以上にしなければ、ありえないということです。そうして、2%を達成したとしても、その状態をただ継続するというのでれば、賃金が倍増するまでに30年くらいもかかってしまうということです。

それは、70歳以上の方なら実生活でも体験されていたのではないでしょうか。2%くらいの緩やかなインフレが続いている状況では、物価も上がりますが、賃金もあがります。

1年くらいでは、賃金があがったなどという感覚はなく、誤差くらいのものですが、それが20年〜30年くらいたつと物価も1.5倍くらいあがりますが、賃金も2倍となっているので、相対的には20年前と比較すると賃金そのものも上がっているというのが普通でした。

しかも、これは、同じ会社にいて、同じ職位でそうなるわけですから、職位があがればもっと賃金があがるわけです。あるいは、転職がうまくいけば、賃金が上がるわけです。

特に70歳以上の方であれば、若い時分は、そのように思われていたでしょう。そういう意味では誰もが将来に希望を持てたわけです。今は貧乏でも、20年、30年と努力を続けていれば、かならず賃金があがり、生活がよくなることを期待できたわけです。

ただ、現状のように日本人の賃金が30年間も上がらない状態が続いたのですから、それを短期であげるためには、インフレ率を当面4%にすべきというのが、高橋洋一氏の主張です。ただ、仮に4%の物価目標を達成したにしても、賃金を倍にするには、12〜13年かかるということです。

ただ、これが本当に実行すれば、5年くらいで倍にはならないものの、ある程度目に見えるように賃金が上がることになります。そうなれば、多くの人が将来に希望を持てるようになります。そうして、これこそが全体の賃金の底上げをはかることです。

私は、終戦後の日本人は現在と比較すると、かなり貧乏でしたが、賃金があがると期待できたために、将来に希望が持てて、今よりも幸福だったのではないかと思います。


高いインフレ率を許容し、日銀が量的緩和を拡大し、さらに政府もこれに呼応して積極財政を実施すれば、日本人の賃金はよりはやく上昇し、経済も良くなります。

これを「高圧経済論」ともいいます。「高圧経済論」とは潜在成長率を超える経済成長や完全雇用を下回る失業率といった経済の過熱状態を暫く容認することで、格差問題の改善も含めて量・質ともに雇用の本格改善を目指すというものです。

以下では、就職氷河期時代の日本の状況や、元FRB長官イエレン氏のとった経済政策などを振り返りながら、2つのキーワードを解説します。

まず「(負の)履歴効果」とは、端的に言えば「一時的な経済ショックが長期にわたってマイナスの影響を与える」ことです。

何らかの理由で経済活動が急激に縮小すると、危機が終わっても経済活動のレベルがすぐに元の状態に戻らない傾向にあります。危機時に本来使うべきおカネが削られてしまうことで成長の種が撒かれず、低成長が長期化してしまうことが一因です。

ここで言う「本来使うべきおカネ」とは、雇用や設備投資、すなわち労働者育成や最新設備導入、研究開発費など成長に必要なおカネです。そうした支出が過度に抑制されると危機が過ぎ去った後に、熟練労働者の不足に直面したり、新製品の開発が進まず技術革新が滞ったりすることで低成長が長期化してしまいます。

日本では1990年代前半のバブル崩壊から2000年代前半(ITバブル崩壊や金融システム不安)までの不況の影響で「就職氷河期」と呼ばれる極端な新卒採用の抑制が長期化し、その結果、人的資本の蓄積が進まず、長期停滞の一因になりました。

ちなみに「就職氷河期世代」とは1993年から2005年までに新卒就職活動に差し掛かった年代を指すことが多いです。


またこの間、企業の設備投資や研究開発費が抑制されたことも大きいです。1990年代まで高い国際競争力を有していた電気機器セクター(家電、半導体)において韓国、中国勢の追随を許しシェア低下につながったのも、この履歴効果で一部説明できます。

こうした過去の教訓を踏まえると、コロナ禍における日銀の責務は「履歴効果」を回避することにあるでしょう。政府は長期にわたって国債を発行し続け、日銀をそれを買い取るというきと継続することにコミットし、金融緩和が続く安心感を醸成する必要があります。

この方式は、安倍元総理が「政府日銀連合軍」と呼んだ方式ですが、これは米国やEUなどでも普通を行われているごく常識的な方式です。このブロクでは過去に何度か説明したように、このような方式をとっても、5%や6%を超えるようなインフレにでもならない限り、何も悪いことはおこりません。4%くらいなら十分許容できますし、無論将来世代へのつけになることもありません。

そうして、「負の履歴効果」を回避するにはどうしたから良いか、それが先に述べた「高圧経済」です。

高圧経済と言えば、米財務長官のイエレン氏が象徴的な人物です。2016年、当時FRB議長だったイエレン氏は「負の履歴効果が存在するならば、政策によって総需要を長期間刺激し続ける『高圧経済』を維持していけば、逆に、正の履歴効果が起きる可能性もある」と発言しています。

これはどういうことかといえば、景気が十分に回復した後も景気刺激策を講じ続けることで雇用や設備投資を力強く促していくという政策態度です。経済ショックに見舞われた後は、高圧経済の実現によって人々の苦い記憶を払拭し、前向きな支出を促す必要があるという考え方です。

その点、米国の経済対策は「高圧経済」の実現という政策理念があるように思えます。コロナ禍における米国の景気対策は1年半でマネーストック(民間非金融部門にあるおカネ)が3割強も増加する極めて巨額な規模で、マクロの家計所得は劇的に増加しました。こうした「やり過ぎ」とも言える経済対策は負の履歴効果の回避に大きく貢献したと考えられます。

日本国民全体の賃金の底上げを行うには、いまこそ「高圧経済」により、「負の履歴効果」を消し去り「正の履歴効果」を生み出すべきなのです。

そのようなことをせずに、税制を変えることによって賃金を上げることなどできません。

先にリンクを掲載した記事の「私の論評」の結論部分を以下にあげます。
日銀がさらなる量的金融緩和に踏み切らない限り、名目GDPも名目賃金も上がることはありません。これだけは、勘違いするべきではないです。

勘違いすれば、とんでもないことになります。たとえば、お隣韓国では、雇用状況がわるいというのに、あまり金融緩和をしないで最低賃金を機械的にあげましたが、どうなったでしょうか。雇用が激減してとんでもないことになりました。今日もテレビで、韓国の悲惨な現状が報道されていました。

日銀が大規模な金融緩和をしないうちに、「非正規雇用」が多いからなどとして、非正規雇用を機械的に減らしてみたり、「企業の内部留保」を機械的に減らすようなことをすれば、がん患者に、突然激しい運動をさせてみたり、厳しいダイエットをするようなものであり、無論賃金が上がるということもなく、韓国のようにとんでもないことになります。

立憲民主党のように「分配なくして成長なし」というのも、これと同じようにとんでもないことになります。成長する前に分配をしてしまえば、韓国のように雇用が激減するだけになります。

考えてみれば、「失われた30年」は、日銀による実体経済にお構いなしに、金融引締を実施し続けたことによるデフレ、政府によるこれも実体経済にお構いなしに増税など緊縮財政を長い間にわたって続けてデフレに拍車をかけてきたことが原因です。

もう、いい加減このような愚かな政策はやめるべきです。

岸田政権による税制の変更では、日本人の賃金の底上げがおこるようなことはありません。効果がないからといって、機会的に最低賃金をあげるようなことをすれば、韓国のように雇用が激減してとんでもないことになるだけです。

冒頭の記事など読んでいると、岸田政権には経済対策など期待できないようです。ただ、岸田首相が、経済政策で税制の改定などの無意味なことをするのはまだ許容できますが、消費税増税や、コロナ復興税などを実施して日本経済を毀損するのだけはやめてほしいです。

そうなったら、自民党内の反対派もちろん、野党も含めて、岸田おろしをしていただき、自民党は次にはまともな「総裁」を選んでいただきたいです。

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