2021年12月20日月曜日

統計書き換え問題 集計方法変更、民主党政権時に決定―【私の論評】先進国としてはお粗末な日本政府の統計(゚д゚)!

統計書き換え問題 集計方法変更、民主党政権時に決定

多くの人は、また野党やマスコミにより、この出来事を「政治利用」するのだろうなと考えて憂鬱になったことでしょう。

彼らにとって、この出来事そのものもあまり関心がないでしょう。それよりも「安倍叩き」ができるということでぬか喜びしていたのでしょう。

ただ、「集計方法変更の検討を開始し、決めたのは鳩山由紀夫政権の時期と重なる」わけですから、「アベガー」「アベガー」とばかり叫ぶわけにもいかず、残念というのが正直なところでしょう。

もうそんなことは、多くの国民が見抜いています。上の望月氏のツイートも「このようなことがなくなるよう現政権はきちんと対応してほしい」などの趣旨の発言はありません。

このようなことをしても無駄であることは、 18、19日に実施した朝日新聞社の全国世論調査(電話)で、立憲民主党の新代表に泉健太氏(47)が選ばれたことについて、立憲への期待感を聞いたところ、「期待する」は40%で、「期待しない」は43%だったという結果をみても明らかだと思います。

泉健太立憲民主党代表

そんなことよりも、多くの国民は、なぜこのようなことが置きたのか、正しい統計値はどうなのか、このようなことが今後起きないために、政府はどうするつもりなのかということに関心があるでしょう。与党はもとより、野党やマスコミはこのような国民の関心に応えるべきです。


今回の不適切な扱いは、事業者から集めた調査票のうち、期限に間に合わなかった分の受注実績で起きた。書き換えが始まったのが2013年度からという。期限に間に合わなかった分を翌月以降の分と合算して計上するよう都道府県に調査票を書き換えさせていたという。しかも、期限に間にあわなかった分を推計値としていたが、それに実際の受注実績を加えて二重計上しているもののあったという。

通常統計調査にすべての業者が回答してくれることはないので、回収率調整を行うのですが、それは回答しなかった業者の受注額その自体を推計するのではなく、全体の回収結果額について回収率の差で補正すべきものです。いずれにしても、報道では調査票を消しゴムで計していたという報道もありましたが、まともな統計実務者からすればありえないことです。

2019年には、厚生労働省の毎月勤労統計でも統計処理で不適切な問題がありましたが、これもまともな統計の実務者なら簡単に間違いであるとわかるものでした。これは、統計委員会への報告もなしで行われていたことが判明しています。今回もおそらくは報告なしで行われたのてしょうか。

ただ、会計検査院は、2019年11月に国交省に指摘をしていました。その指摘を受け、国交省は20年1月に都道府県に対して書き換えをやめるように指示しました。しかし、書き換えそのものは国交省本省職員が今年3月まで行っていたとされています。2021年4月以降は書き換えやめ、正しい集計になっているとれています。

今後、検事経験者や弁護士などによる第三者委員会を設置し、経緯や原因を究明することとしていますが、しっかり検証すべきです。

統計法では、基幹統計の作成に従事する者は、「基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為」をすれば、統計法60条により6月以下の懲役または50万円以下の罰金となっています。

「基幹統計をして真実に反するものたらしめる行為」には、「基幹統計調査の実施に当たって、架空の調査票を捏造する行為、調査票に記入された報告内容を改ざんする行為、基幹統計調査の集計過程においてデータを改ざんする行為」が含まれると解されています。

統計改ざんをすれば、統計法による処分を受けます。法令に照らして、国の信頼を根本から失墜させるので関係者には厳しい処罰をすべきです。

ただし、調査票を書き直した上、その保存期間が短く、過去に遡って統計を正しく直すのはかなり難しいです。

さらに悪いことに、厚労省の毎月勤労統計問題が起きた後、2019年7月内閣官房統計改革推進室が作られました。ところが、岸田政権になってから、安倍政権下で作られた他の三つの推進室とともに、先月、看板が下ろさてしまったのです。

たとえ、一部が間違っていたにしても、他の数字から正しい数字に近い数字を推計することもできます。そのようなことも、この推進室は担っていたものと思います。

統計がしっかりとしてなければ、様々な経済対策にも悪影響を及ぼすだけではなく、国際的な信用にも悪影響がでるおそれがあります。

たとえば、中国では、2010前後まで約10年間にわたり、中国全体のGDPと、中国全省のGDPとの合計が乖離しているという珍事がありました。省の合計のほうが、全体のGDPよりはるかに大きいという不思議な事態が発生していたのです。

私自身は、これより前から中国の統計、GDPの統計資料は出鱈目であるらしいということは知っていたのですが、当時実際に省の合計を計算してみて、全体と比較してみたのですが、見事に食い違っていました。それ以来、中国の公表するGDPなど信用したことがありません。

ただ、最近はこのような食い違いはないですが、それにしても現在でも出鱈目であることは下のグラフをみてもわかります。


上のグラフは、今や懐かしのBRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)、および韓国の経済成長率の推移を見たものです。中国以外の国々の経済成長率が四半期ごとに変動する様子と、あまりにも「直線的」な中国の経済成長率が確認できます。

あまりに当たり前ですが、経済成長率が毎四半期、これほどまでに一定を維持するなどということは決してあり得ないです。

もともと中国の経済統計などプロパガンダに過ぎないのです。その数値を信用して、中国経済は〇〇年までに米国経済を追い抜くなどと予測するのは、本当に無意味で愚かなことです。

日本の統計はこれほど酷くはないですが、それにしても、お粗末です。欧米だと、統計の責任者は、統計学の博士号を持った人がなるのが普通ですが、日本の役人のほとんどは文系出身で、統計の素人がほとんどです。

さらには、財務省の緊縮により、統計部署に人員が十分に割りふりされないという現実もあるようです。そのようなことのも改善も含めて、日本でも、今後間違いが起こらないようにしっかり対応していただきたいものです。

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