2021年12月14日火曜日

フランス・スペイン共同開発 インド海軍期待の新型潜水艦「ヴェラ」就役―【私の論評】多くの国々が対潜戦闘力を強化し、中国の多くの艦艇を持てば勝てるという幻想を打ち消すことに(゚д゚)!

フランス・スペイン共同開発 インド海軍期待の新型潜水艦「ヴェラ」就役

インド海軍「ヴェラ」の就役式典の様子

同型6隻あるうちの4番艦として就役

 インド国防省はこのたび、同国海軍向けの新型潜水艦「ヴェラ」の就役式典を2021年11月25日に挙行したと発表しました。

「ヴェラ」はインド海軍が整備を進めるカラヴァリ級潜水艦の4番艦です。全長は67.5m、幅は6.2m、高さ(深さ)は12.3m、水上航行時の喫水は5.8mで、満載排水量は1775トン。乗員数は43人で、ディーゼルエンジンと発電機によって、水中ならば最大20ノット(約37km/h)、水上ならば11ノット(約20km/h)の速力で航行できるといいます。

 主武装は魚雷並びに対艦ミサイルで、配備先は司令部をムンバイに置く西海軍コマンドになるそう。

 カラヴァリ級は、フランスのDCNS社とスペインのナバンティア社が共同開発した輸出用のスコルペヌ級潜水艦をインドがライセンス生産し導入しているもので、開発元であるフランスとスペイン両国での採用実績こそないものの、インド以外にもチリやマレーシア、ブラジルなどで購入・配備されています。

 累計建造隻数はすでに「ヴェラ」を含めて12隻を数えており、さらにインド海軍では1隻が進水済みで現在艤装中、もう1隻も2023年初頭の就役を目指して建造中です。

 なお、インド海軍によると「ヴェラ」とはアカエイを指す言葉で、海中を泳ぐモノとしてピッタリとのこと。その由来から、同艦のマスコットキャラクターとして艦名イラストにもアカエイが描かれているとのことです。

【私の論評】多くの国々が対潜戦闘力を強化し、中国の多くの艦艇を持てば勝てるという幻想を打ち消すことに(゚д゚)!

インドの新型潜水艦の就役は、インドが対潜水艦戦闘力(ASW)を強化する決意の現れとみることができます。インドをはじめ、中国を警戒する多くの国々が、ASW(対潜水艦戦闘能力)を強化するのは当然の流れといえます。

中国の対米海洋戦略では、中国は中距離ミサイルの配備などで(沖縄、台湾、フィリピンなど結ぶ軍事戦略上の防衛ライン)第1列島線内で米空母が活動できない体制を実現しようとしているのですが、沖縄や台湾など全てを中国のものにしない限りその実現は不可能です。

仮に中国のミサイルなどにより米空母が近づけなくなるとしても、米軍には「見えない空母」と言われる巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)が4隻あります。1隻でトマホークを154発積むことができます。

中国の最大の弱点はASWで、特に潜水艦を見つけ出す能力が低いでのです。仮に台湾有事が発生した場合、600発の巡航ミサイルを積んだ「見えない空母」が、第1列島線の内側に入り込み、ピンポイントで中国のレーダーや宇宙監視の地上施設を攻撃して、まず「目」を奪うでしょう。そうなれば、中国は米空母などがどこにいるか把握できず、ミサイルを当てようがなくなります。

そもそも中国の空母キラーと呼ばれる弾道ミサイル「DF21D」は米空母には当たらないとみらている専門家も多いです。弾道ミサイルはスピードがありすぎてコントロールが難しく、自由に動く対象に簡単には当てられないからです。

先に述べたように、中国のASWはかなり低いので、結果として海戦においては、日米などにとっては脅威ではありません。これは、ロシアも同じことです。そもそも、中国のASWは、ロシアから導入したものです。それよりも、警戒しなければならないのは、中国の軍人が米国に勝てると誤認することです。

軍事筋では昔からいわれているように、艦艇には二種類しかありません。水上に浮いている艦艇と、水中に潜む潜水艦です。水上に浮いている艦艇は、巨大な空母であろうと、巨大軍艦であろうと、航空機やミサイル等の標的に過ぎません。現在なら、対艦ミサイル一発で撃沈されてしまいます。

艦艇には二種類しかない、水上艦艇と潜水艦である

しかし、水中に潜む潜水艦は違います。ただ、潜水艦があったにしても、ASWが相手方よりも劣っていれば、不利です。潜水艦も撃沈されることになり、その後に水上艦艇もすぐに撃沈され無力化されてしまいます。

そのため、中国がいくら多くの艦艇を有していたとしても、現在の海戦では圧倒的に不利なのです。ただ、海戦戦闘の経験がほとんどない中国の軍人は、多くの艦艇を持てば勝てると勘違いするかもしれません。それで、米国などに挑めば、とんでもないことになります。

ただ勘違いしていないとしても、ASWの低い国々に対しては、脅威になります。そのため、インドをはじめ各国がASWに力を入れているのでしょう。それに日米等海戦能力が高い国々でも無用な衝突は避けたいでしょう。もし衝突して、本格的な海戦になれば、中国海軍は壊滅します。おびただしい死傷者がでるでしょう。

日本のASWは対潜哨戒力が元々高く強力ですが、近年は特に潜水艦隊を重視しており、毎年のように新しい潜水艦を進水、就役させており、昨年3月には世界初のリチウムイオン電池搭載の通常動力型潜水艦「おうりゅう」も就役しました。これはステルス性にすぐれ、ほとんど無音に近いとされており、潜航して行動していても中国軍が発見するのは困難です。

10月14日進水排水量3000トンの「たいげい」

潜水艦に抗う最も有効な手段は、潜水艦に他ならず、新しい最新型潜水艦が続々就役させることにより、海上自衛隊の対潜戦闘能力がさらに高まることは間違いないないです。このような流れの中で、インドはすでに新型通常型潜水艦を就役させており、オーストラリアは原潜、台湾は通常型潜水艦の開発を決めました。

インドは対潜水艦哨戒能力も高めつつあります。ボーイングは、インド海軍に11機目のP-8I哨戒機をこのほど引き渡しました。インド国防省が2016年に発注した追加4機のオプション契約のうち3機目の納入となりました。

インド海軍のP-8Iと奥にはラジャリ基地配備のTu-142MK-Eも見える

インド海軍はP-8初の海外顧客で、2013年から導入。米国外では最多機数で、ボーイングによると飛行時間は3万時間を超えたといいます。P-8の米国外の顧客ではインドのほか、豪州空軍、英国空軍が運用しています。

P-8は、小型旅客機の737-800をベースに開発された対潜水艦、対水上戦、情報収集、監視、偵察を担う多目的哨戒機で、2004年6月14日に公開されました。胴体は737-800、主翼は737-900を基に開発されました。今年8月にはノルウェー空軍向けの初号機が初飛行し、9月にはドイツ連邦軍向けに5機を受注しています。

このように世界各国が、ASWに力を入れつつあります。多くの国々がASWに力をいれるようになれば、中国の軍人の、多くの艦艇を持てば勝てるという誤解を打ち消すことになるでしょう。

そうして、ASWに力をいれることこそ、中国に対抗するためには、最も費用対効果が高いことはいうまでもありません。空母を開発するくらなら、一隻でも多くの高性能潜水艦、一機でも多くの対潜哨戒機をもつことが、中国の海洋進出の野望を打ち砕くことに近づくことになります。


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