2021年12月13日月曜日

仏領ニューカレドニアの独立は否決 大統領、仏残留を宣言―【私の論評】貧しい国・小さな国が、そのノウハウがない中国の支援をうけ入れても、国民一人ひとりが豊かになる見込みは全くない(゚д゚)!

仏領ニューカレドニアの独立は否決 大統領、仏残留を宣言

ニューカレドニアの首都ヌメアからボートで20分のメトル島

南太平洋にあるフランスの海外領土ニューカレドニアで12日、独立の是非を問う住民投票が行われ、96・5%の反対で独立は否決された。マクロン大統領はテレビ演説で「仏領残留」を宣言したが、独立派は投票をボイコットして再投票を要求しており、対立は続きそうだ。

ニューカレドニアは世界屈指のニッケル産出国で、仏軍が基地を置くインド太平洋の拠点。近年は経済進出を続ける中国が、独立支持派に接近しており、仏国内で投票の行方に警戒感が強まっていた。独立派は「新型コロナウイルス犠牲者への服喪期間」だとして不参加を呼びかけ、投票率は44%にとどまった。

マクロン氏は演説で、住民投票は「住民の自由意思で決めた。誇りに思う」と結果を正当化し、ニューカレドニアの医療、経済の改善に取り組むと訴えた。中国の台頭を念頭に、「インド太平洋は(地政学的な)再編で緊張が高まっている。この地域で、ニューカレドニアの新たな地位を構築する」とも述べた。独立派重鎮は仏公共ラジオで、「これは投票として成立しない」と反発した。

住民投票は今回で3度目。先住民カナック系の独立要求を受けて、1998年に政府協定が結ばれ、独立を問う投票を3度行うことが決まった。18年の第1回投票で独立支持は43%、昨年の第2回投票では47%で、いずれも否決された。投票率は共に80%を超えていた。

住民投票を前に今年9月、仏国防省傘下の「フランス軍事学校戦略研究所(IRSEM)」は報告書で、中国がニューカレドニアで在外中国人を通じて独立派に接近していると警告。背景には、経済権益に加え、島を中国包囲網打破の拠点とし、オーストラリアを孤立させる狙いがあると指摘していた。ニューカレドニア周辺のフィジー、バヌアツなどでは、中国が影響力を強めている。

ニューカレドニアは19世紀にフランスに併合され、現在は人口約27万人。仏軍基地には約1700人の部隊が駐留する。今年9月には海上自衛隊の護衛艦が寄港し、日仏共同訓練を行った。

【私の論評】貧しい国・小さな国が、そのノウハウがない中国の支援をうけ入れても、国民一人ひとりが豊かになる見込みは全くない(゚д゚)!

この記事先日も似たような記事を掲載しました。あの記事は、間違えていました。元記事が2018年のものであり、それが今年の結果であると私が勘違いして掲載したものです。過ちに気づいたので、先日の記事は削除し、本日今年の記事を元記事として書き直したのがこの記事です。誠に申し訳ありませんでした。今後は、このようなことがないように気をつけます。

ただ、【私の論評】の内容はほぼ同じです。2018年にも住民投票があり、また今年も住民投票があり、結果として両方ともニューカレドニアの住民はフランス領であることを選んだといとうことです。いずれ、また住民投票が行われることも考えられ、ニューカレドニアが将来どうなるかは、わかりません。

ただ、この記事において、主張したように、ニューカレドニアの人々には、中国から支援を受けることができれば、一見良いようにもみえますが、中国は世界第二位の経済大国などともいわれますが、そもそもそれが事実であるかどうかもわかりません。なぜなら、中国のGDPの統計はでたらめであるからです。それは、世界中の経済学者が指摘しています。

さら、中国の統計が本当であったとしても、個人あたりのGDP約9,600ドルで世界第72位に過ぎないのです。日本円でいうと、100万円を切るほどです。自国内でこの程度のことしかできない国が、他国を支援して。国民一人ひとりを豊かにすることはできません。なぜなら、そのようなノウハウが中国共産党政府にはないからです。

ですから、中国に支援してもらい、国が豊かになり、国民一人ひとりが豊かになると、考えるのは大きな間違いです。

ニューカレドニア地図、赤い円内がニューカレドニア

ニューカレドニアの住民たちは、良い選択をしたと思います。現状では、独立すれば中国につけこまれる可能性が大きいです。

中国は世界中で、小さな国を取り込もうとしています。たとえば中米のニカラグアが「台湾は中国の領土の一部」だとして、台湾と断交すると発表しました。これに対し、台湾側も「尊厳を守るため」として、ニカラグアとの断交を決めました。


ニカラグアの外務省は9日「即日、台湾との外交関係を断つ」という声明を発表しました。

声明では「ニカラグア政府は、世界に中国は1つしかないと認識する。中華人民共和国が中国の唯一の合法的な政府であり、台湾は中国の不可分の領土の一部だ」としています。

これは中国政府の主張と一致します。

台湾の蔡英文総統は10日、新北市内で開かれた行事のあいさつでニカラグアとの断交について触れ「台湾の民主主義が成功すればするほど、国際社会からより強く支持され、権威主義陣営からの圧力もより大きくなる」と述べました。

そのうえで「外交的な圧力であろうと、言論による攻撃や武力による威嚇であろうと、民主主義と自由を貫いて世界に向かって進み、国際的な民主主義のコミュニティーに参加するというわれわれの決意と努力は変えようがない」と述べて、中国の圧力に屈しない姿勢を強調しました。

また、台湾外交部は、10日午後の報道発表文で「『民主主義サミット』の初日にニカラグアを誘惑して台湾と断交させた中国の行いは下劣で、民主主義の世界を公然と挑発するものだ」と、中国を非難しました。

では、なぜ中国がそのようなことをするのでしょうか。それは、以前もこのブログで指摘したように、人口が 1 万 7,000 人と、国連加盟国の中で最小 の部類に入るパラオも国連の会議等で1票の投票権を持っているからです。

2018年 菜々緒 パラオにて 自身のインスタグラムから

小さな国でも、多くの国々を中国の味方につければ、国連で中国の意見が通りやすくなります。そうして、中国は台湾併合への道を引き寄せることができます。

ニューカレドニアなどは、それ以外にも上の記事にもあるように、太平洋地域での中国の覇権構築の脅威があります。ここに中国の原潜の潜水艦の基地などをつくられてしまえば、中国の南太平洋の覇権は、南シナ海から西大西洋にも及ぶことになりかねません。それは、日米はもとより、この地域に領土を持つフランス、南太平洋に領土ををもつ英国、これらの地域近いオーストラリアにとっても脅威がますことになります。

そうして、最後にこれらの小さな国々の人々に警告をしたいと思います。これは、内容は中東欧諸国についてのものですが、これは一般に小さな国や、貧乏な国にあてはまることだと思いスマ。以前このブログで主張したことですが、以下に再掲します。
中国は人口が多いので、国全体ではGDPは世界第二位ですが、一人あたりということになると未だこの程度(約9,600ドルで世界第72位)なのです。このような国が、他国の国民を豊かにするノウハウがあるかといえば、はっきり言えば皆無でしょう。

そもそも、中国が「一帯一路」で投資するのを中東欧諸国が歓迎していたのは、多くの国民がそれにより豊かになることを望んでいたからでしょう。

一方中国には、そのようなノウハウは最初からなく、共産党幹部とそれに追随する一部の富裕層だけが儲かるノウハウを持っているだけです。中共はそれで自分たちが成功してきたので、中東欧の幹部たちもそれを提供してやれば、良いと考えたのでしょうが、それがそもそも大誤算です。中東欧諸国が失望するのも、最初から時間の問題だったと思います。
これは、中東欧諸国だけではなく、他の国にもあてはまることです。いずれの小さな国、経済的に貧しい国が、中国の支援などを受け入れても、そもそも中国には国民一人ひとりを豊かにするノウハウなどまったくないのです。

このような支援を受け入れて成功するのは、独裁者のみでしょう。独裁者やそれに追随する富裕層だけが、さらに豊かになり、多くの国民は何も変わらないか、ますます悪くなるだけです。次の住民投票では、こうした事実を住民にしっかりと伝えるべきでしょう。

国民一人ひとりを幸せにできるノウハウは、中国などよりも、フランスなどの先進国のほうがより優れていると思います。実際先進国においては、国民一人あたりのGDP(≒一人ひとりの賃金)が100万円を軽く超えています。

実際、ニューカレドニアの一人あたりのGDPは2019年で34,942ドルであり、フランスの38,625ドル(2020年)よりは低いですが、それでも中国よりははるかに高いです。無論経済だけが、幸せの尺度ではありませんし、先進国の国民全員が幸せかといえば、そうとばかりもいえないですが、それにしても100万円以下では厳しいです。

私はニューカレドニアの人々には、独立の道を選んでも良いとは思いますが、中国の甘い言葉にのって支援をうけ、その結果中国に良いように扱われ、住民の利益が損なわれることがあってはならないと思います。

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