2021年12月27日月曜日

ロシア軍、1万人以上撤収 南部のウクライナ国境―【私の論評】一人あたりGDPで韓国を大幅に下回り、兵站を鉄道に頼る現ロシアがウクライナを屈服させ、従わせるのは至難の業(゚д゚)!

ロシア軍、1万人以上撤収 南部のウクライナ国境


 インタファクス通信は26日までに、ロシアの南部軍管区に属する1万人以上の部隊がクリミア半島などでの展開を終えて駐留する基地に撤収を始めたと伝えた。

  南部軍管区はウクライナに近いロシア南部の各州を管轄。欧米は衛星写真などを基に、ロシアがウクライナ国境付近に約9万人の部隊を集結させ、年明けにもウクライナに侵攻する可能性があると主張してきた。今回の撤収が欧米とロシアの間の軍事的緊張の緩和につながるかは不明。

  同軍管区は25日、インタファクスに対し、計1万人を超す部隊が1カ月の訓練を終えて撤収中だと明らかにした。

【私の論評】一人あたりGDPで韓国を大幅に下回り、兵站を鉄道に頼る現ロシアがウクライナを屈服させ、従わせるのは至難の業(゚д゚)!

このブログでは、以前ロシアがウクライナに侵攻するにしても、最大でいくつかの州であろうことを予測したことがあります。その根拠として、現状のロシアのGDPは韓国以下であり、しかも韓国よりも一人あたりではさらに低いので、とても大規模な戦争を遂行できるだけの力はありません。

ロシアは面積こそ世界一ですが、人口は約1億4000万で日本をわずかに上回る程度。経済規模は日本の3分の1以下、米国の10分の1以下で、世界で12位。G7各国はもちろん、韓国をも下回るのです。

一人あたりのGDPでは、韓国31,638ドル、ロシアは10,115ドルです。ちなみに日本は40,089ドルです。(2020年)

そうして、ロシア陸軍の兵站は、鉄道にかなり依存しているので、国境付近ではある程度のパフォーマンスを発揮できるものの、ウクライナの奥にまで侵攻はできないということも根拠にあげました。

これらを考慮すれば、ロシアがウクライナに深くまで侵攻して、ウクライナ全土を傘下におさめることなどできません。

現状でも、ロシアがウクライナに再度侵攻するにしても、できるのはせいぜいいくつかの州だけであり、それも軍事力だけで攻め落とすのは不可能であり、ウクライナでも、ロシア人が多く住む州で、ロシア人を味方につけてハイブリッド戦に持ちこみ、それでようやっといくつかのロシア人の多い州を併合できるということになると予測しました。

7日、ウクライナ東部ドネツク州で、親ロシア派武装勢力との境界線付近を歩くウクライナ軍兵士

そうして、この予測は現在だけではなく、将来にもあてはまります。ロシアの経済が今後すぐに上向くことはないでしょうし、さらに兵站の大きな部分を鉄道に頼っている状況が変わらいなかぎり、この状況は変わりません。

この状況は、当然のことながら、米国やNATO諸国に見透かされているでしょう。米国、NATOは環視衛星などで、ロシアの鉄道輸送を監視しており、南部のウクライナ国境の南部軍管区がどの程度の戦争ができるのか、詳細まで熟知していることでしょう。

このようなことを言うと、ロシアの軍事技術が高いし、核兵器があるから、ウクライナに簡単に侵攻できる、などと言う人いるかもしれません。

確かに、ロシアは軍事技術は未だに高く、核兵器も有しており、軍事的に侮れるような国ではありません。ただ、ロシアがウクライナに侵攻するのは、ウクライナを破壊するためではありません。破壊するだけなら、ロシアは存分に力を発揮できるでしょう。

ただし、ロシアにとっては、ウクライナの一部でも、占拠し、さらに統治する必要があるのです。そうなると話が違ってきます。長期にわたって、軍隊を駐留させる必要があります。そのためには、兵站は欠かせません。兵站に不安があるようでは、占拠し統治するのは不可能です。

ロシアの兵站の特徴については、「のりものニュース」に興味深い記事が掲載されていました。そのタイトルとリンクを以下に掲載します。

その差は鉄道の線路幅にあり? ウクライナとポーランド ロシアの脅威度が段違いなワケ

燃料が無くては、戦車は動けない。タンクローリーから給油されるT-72戦車。タンクローリーも鉄道で前線まで移動してくることが多い(画像:ロシア国防省)。

 この記事では、ウクライナとポーランドとでは、ロシアの脅威度が段違いであり、その根拠はウクライナはロシアと同じ広軌の線路を用いて、ポーランドはそうではないからとしていますが、確かに、平時ではそうかもしれませんが、戦時ではこれがウクライナにとって格段に不利だとはいえないでしょう。

ウクライナ軍は、国境内にロシア軍が入れば、自ら線路を破壊するでしょう。線路など、手榴弾でも破壊できます。

さらに、米軍やNATO軍は、先にもあげたように、ロシアの鉄道やウクライナの鉄道を監視していますから、ロシア軍がウクライナ侵攻をはじめれば、当然ウクライナの鉄道などを航空機かミサイルで破壊することでしょう。そうなると、ロシア軍には戦車の燃料や弾薬、水・食料などの物資が届かず、お手上げになってしまいます。

今回の1万人以上のロシア軍の撤退は、以上のようなことが影響しているものと思います。今回ロシアがウクライナ領内に入り込んだ場合、米軍やNATOに鉄道網を破壊する口実を与えてしまうことになります。

ロシアがウクライナ攻勢すれば、米軍、NATOはウクライナ領内だけではなく、ロシア領内の鉄道を破壊するかもしれません。無論、米軍、NATOの情報筋は、ウクライナの鉄道や、ロシアの鉄道のどの部分を破壊すれば、最も効果があるかを熟知していることでしょう。

一度、米軍やNATO軍が、ウクライナや、場合によってはロシア領内の鉄道網の破壊に踏み切れば、その後も何度も繰り返されるという危機もありえます。

バイデン米大統領(左)とプーチン露大統領(右)

それに、米国のジョー・バイデン大統領は7日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領とビデオ会談し、ロシアがウクライナの国境周辺で軍備を増強させていることについて深い懸念を表明しました。そして、ウクライナへ侵攻すれば「強力な経済的およびその他の措置」を講じると述べました。

ジョー・バイデン米国大統領は4月15日、米国大統領選挙への介入や米国企業へのサイバー攻撃などを理由に、ロシアへの制裁を強化する大統領令に署名しました。同令を受けて財務省は、米国金融機関にロシア中央銀行などとの取引の一部を禁止するとともに、合計で25の企業・機関、21の個人を特別指定国民(SDN)に指定しました。国務省も、在米のロシア外交官10人の国外退去を決定した。バイデン政権は、状況次第で制裁内容を拡大するとしていました。

もし、ロシアがウクライナに侵攻すれば、米国の追加制裁が発動されるのは必定でしょう。そうなると、ロシア経済はますます疲弊することになります。

さらに、ロシアがウクライナの一部でも新たな占拠すれば、ウクライナがNATOに与する格好の根拠を与えることになります。ロシアとしては、それだけは絶対避けたいのでしょうが、現在のロシアにはウクライナに対して、十分な経済支援などできません。

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