2021年12月21日火曜日

武蔵野市条例案否決 八木秀次氏「全国波及の恐れ」―【私の論評】認識されてしかるべき「住民投票条例」と「自治基本条例」の末恐ろしさ(゚д゚)!

武蔵野市条例案否決 八木秀次氏「全国波及の恐れ」

八木秀次氏

東京都武蔵野市議会で21日、日本人と外国人を区別せずに投票権を認める住民投票条例案が否決されたことについて、麗澤大の八木秀次教授(憲法学)は「根源的な問題は自治基本条例にある」との考えを示した。


今回の条例案の根拠となるのは自治基本条例だ。国家以前に自治体が存在するとし、自治体外交や『無防備都市宣言』に代表される独自の防衛政策も想定する。法律より上位に位置付けられるとする、革命的な条例だ。

外国人投票権は、あくまで表面上の問題に過ぎない。さまざまな立場の活動家がやってきて街宣活動を繰り広げる中で、反対派の主張がヘイトスピーチ扱いされる状況が生まれてしまった。そもそもの根源である自治基本条例の問題に、土俵を変える必要がある。

自衛隊・米軍の基地や原発がある自治体、国境離島の自治体で同様の条例ができたらどうなるか。今回の条例案は否決されたが、市はこのまま断念すると思えないし、全国に波及する恐れもある。引き続き注視が必要だ。

【私の論評】認識されてしかるべき「住民投票条例」と「自治基本条例」の末恐ろしさ(゚д゚)!

八木氏の上の記事でも示されている、自治基本条例とは、「自治体の自治(まちづくり)の方針と基本的なルールを定める条例」であり、「他の条例や施策の指針となることから、自治立法の体系上の最高法規とであり、『自治体の憲法』ともいわれる。」とされます(礒崎初仁「自治体政策法務講義(改訂版)」(第一法規 平成30年3月)62頁)。

なお、全国で最初に自治基本条例を制定したニセコ町の取組みを紹介した木佐茂男・逢坂誠二編著「わたしたちのまちの憲法-ニセコ町の挑戦」(日本経済評論社2003)は、「その自治体の地方自治(住民自治・団体自治)のあり方について規定し、かつ、その自治体における自治体法の頂点に位置づけられる条例」と定義づけています(164頁)。

自治基本条例を推進する立場からの記事については、詳細は以下のリンクをご覧ください。


この記事によれば、最近自治基本条例を定める自治体は減少傾向にあります。以下にそれを示すグラフを掲載します。


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確かに、平成20年代後半以降はその伸びは鈍化しています。これは、自民党政務調査会が作成したパンフレット「チョット待て‼“自治基本条例”~つくるべきか、もう一度考えよう~」が平成24年1月に公表されるなどした結果、制定の勢いが下火になったとの見方もあります。確かに、これも大きいですが、多くの保守界隈の人々がその恐ろしさを伝え続けてきた結果でもあると思います。

ただ、上の八木秀次氏の記事にもあるとおり、自治基本条例は、国家以前に自治体が存在するとし、自治体外交や『無防備都市宣言』に代表される独自の防衛政策も想定します。法律より上位に位置付けられるとする、革命的な条例です。

この危険性については、北海道を事例として、その危険性をこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
「一帯一路」を自国から締め出した豪州―【私の論評】一帯一路で中国は大失敗するが、脆弱な国や地域を大混乱に陥れる可能性が高いことに豪州は気づいた(゚д゚)!

詳細はこの記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

外国人参政権こそまだですが、日本に住んで、その市町村に住民票があれば、外国人でも事実上、政治に参加できるようになりました。「住民投票条例」と「自治基本条例」のためです。

あらかじめ投票方法や有資格者を条例で定め、請求要件さえ満たせばいつでも、どんな些細なことでも実施できるというもので、市町村体位で独自に制定されています。外国人にも投票権が保証されるケースがあり、地方行政に直接参加できるわけです。

北海道内ですでにこうした条例を定めている自治体は、芦別市、北広島市、増毛(ましけ)町、稚内市、安平(あびら)町、むかわ町、猿払(さるふつ)村、美幌町、遠軽(えんがる)町の9自治体で、2015年以降は、新たに北見市、苫小牧市、占冠村が続きました。この2市1村は、いずれも外国人に対して、居住期間など条件付きで投票権を認めています。

これら12の自治体はある意味、地雷を抱えているといえます。条例を根拠に、多数派の居住者(外国人)が首長のリコールを成立させることもできるとなると地方自治が将来、多数派に牛耳られることもあり得ます。そうした懸念を道議会に忠告したのが米国総領事館だったというところに、行政機構の弛緩が窺えます。

やはり、人口という数の力は厳然とした力であり、武力にも匹敵します。

かつて「北海道人口1千万人戦略」という構想が話題になったことがありました。国交省と道開発局が主催する講演会(2005年)において発表されたもので、北海道チャイナワークの張相律代表が提唱しました。

当時は荒唐無稽なプランという受け止め方でしたが、昨今の北海道を見ていると、単なる個人の思いつきレベルではなかったことがわかってきます。「1千万人のうち200万人が中国移民」というのがポイントでした。

5人に1人が中国移民、という「戦略」が14年前に提唱されていたのです。そして土地が次々と買収され、実際に人数も増えています。このことが何を意味するのか、少なくとも政治家や官僚は警戒心を持つべきです。

このブログでも述べたことですが、たとえば中国が北海道のいずれかの市町村に、多数の中国人を意図的に送り込んで、住民投票条例」と「自治基本条例」を活用して、いずれかの市町村の植民化に成功したとしても、最後には手放すことになります。

なぜなら、西洋列強などの事例でもわかるように、植民化はほとんどの場合大失敗して、何の利益ももたらさないどころか、金食い虫となってしまうからです。オランダの東インド株式会社などは、例外中の例外です。だからこそ、ほとんどの西洋列強国は、最終的には植民地を手放したのです。

ただ、列強が植民地を手放すまで、植民地とその宗主国との軋轢は、虐殺・虐待・弾圧など凄まじいものとなりました。だから、植民されないほうが良いに決まっています。植民する側も、利益がでないどころか、損をした上に、被植民地の住民からは恨まれることになります。こういうこともあり、かつての宗主国も新たな植民などしないのでしょう。

北海道の市町村も、「住民投票条例」と「自治基本条例」などを制定して、外国人が多くなればその次の段階では外国人参政権が施行されるようになり、そのいきつく先は、実質的な中国の植民地ということになりかねません。

しかも、中国は過去に本格的な植民の経験がありません。だから、「一帯一路」などで大儲けできるという幻想を抱いています。日本の市町村も中国の植民地になれば、とんでもないことになりかねません。大陸中国のように植民地の日本人が弾圧されることになるでしょう。

ただ、日本という国は、このような危機からは様々な理由や、時の運から免れることが多いです。その根拠となることが、渡邉哲也氏の以下の記事に掲載されていました。
日本の「不動産価格」がいよいよ下がり始める理由
中国人はしばらく日本には戻ってこない
渡邉哲也

 

渡邉哲也氏


この記事で、渡辺氏は、「コロナ禍が収束して「元のように通勤しなさい」と命じる会社はどのくらいあるだろうか。最もリモートワークに適した業種であるIT系の企業が多い渋谷区の空室率の高さがそれを物語っている。都心のオフィス需要は、コロナ前の7掛け程度になると予想される」と語っています。

一方中国人によるインバウンドについては、以下のように述べています。
中国は、海外からの文化輸入をさせたくない。現在の中国は文化的な鎖国状況に近い。習近平が恐れるのはズバリ「自由の味」だ。香港の例を挙げるまでもなく、一度自由の味をしめれば、中国政府に反旗を翻す者が増加するのは当然の成り行きだ。そのため、国民を外国になど自由に行かせたくない。こうした中国政府の姿勢に最も素早い反応をしたのが、いまや中国企業傘下となったラオックスである。

2021年8月、早々と全国13店舗のうち7店舗を閉店してしまった。コロナ禍の影響で外国人が入国できず、売り上げ回復の目処が立たないからとしている。2020年2月に111人が希望退職に応じたのに続き、同年夏には社員、契約社員を対象に250人程度の希望退職者を募っている。かなりあわただしい撤退戦である。

コロナ禍の影響による撤退に擬態しているが、中国企業傘下にあるラオックスが真っ先に逃げ出したことには注目したほうがいい。この先、中国からのインバウンドに未来はないと知る「上からの指示」に違いなく、中国系企業の日本撤退の連鎖は止まらないだろう。

今後中国によるインバウンドは期待できないでしょうし、「 国民を外国になど自由に行かせたくない」というのが習近平政権の方針であれば、今後日本の市町村の土地を買い漁っても無駄になるだけなので、その動きも鈍化するでしょう。

私自身は、東京の不動産価格については、まだはっきり断定はできないとは思っているのですが、中国によるインバウンドは戻って来ないのは確かだと思います。インバウンドに再び期待を寄せるのは間違いだと思います。

そうして、中国による日本の土地などの購入も鈍化することになると思います。そうなれば、「住民投票条例」と「自治基本条例」を活用した、日本の市町村の中国による実質的植民化への動きも鈍化するでしょう。

これにより、当面の脅威はなくなるかもしれません。しかし、潜在的な脅威はいまなお存在し続けているわけであり、中国の情勢が変わった場合は、またその脅威が増大するかもしれません。それに、中国の植民化が鈍化しても、他の国が植民化をすすめるかもしれません。

そもそも、国民国家において地方自治体がまるで憲法のような「自治基本条例」を定め、「住民投票条例」で外国人差政権に道を開くというのは、国民国家の趣旨からしてもまったくおかしなことであり、それを阻止するように、法律を改正するなり、新たな立法すべきと思います。

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