2021年12月12日日曜日

米潜水母艦「フランク・ケーブル」6年ぶり来航 台湾情勢にらみ抑止力強化【日曜安全保障】―【私の論評】オースティン長官の「抑止」とは、最恐の米攻撃型原潜による台湾包囲のこと(゚д゚)!

米潜水母艦「フランク・ケーブル」6年ぶり来航 台湾情勢にらみ抑止力強化【日曜安全保障】

長崎佐世保港に寄港した「フランク・ケーブル」

緊迫する台湾情勢について、「抑止力を強化している」と発言した、アメリカオースティン国防長官。

その「抑止力」とは何なのか? 

日本に来航した、アメリカ軍のある1隻の艦船に注目した。

 深緑の台湾海峡を航行する黒い影。

 11月29日に撮影された衛星写真には、中国の「094型晋級戦略核ミサイル原子力潜水艦」が浮上したまま、北上する姿がとらえられていた。

 定期点検か、修理か。 中国北部の造船所へ移動していたとみられている。 この潜水艦には、核ミサイル「JL-2」の発射口が12カ所ある。

 「JL-2」は、核弾頭を最大3個搭載でき、最大射程は8,000kmとされていて、潜水艦の基地に面した南シナ海中央部からは、日本全域がすっぽり射程に入る。

 そんな脅威が、台湾海峡を進んでいた。 台湾情勢をにらみ、抑止力を強化しているアメリカは同じ日、長崎県の佐世保基地に、1隻の船を寄港させていた。

 これは、アメリカ海軍の潜水母艦「フランク・ケーブル」。 船の甲板に横たわっている、巨大なクレーン。 

「フランク・ケーブル」は、搭載されたクレーン3基を駆使して横づけされた原子力潜水艦に、水や食料のほか、魚雷などの武器を補給し、簡単な修理を行うこともできるとされている。

 6年ぶりに日本に来航した「フランク・ケーブル」は、たった2隻しかないアメリカ海軍の潜水母艦のうちの1隻。 

これまで何度も実戦で使われてきた「トマホーク巡航ミサイル」を、アメリカ海軍の原子力潜水艦に搭載することが可能で、今回、神奈川・横浜、広島・呉、長崎・佐世保、そして沖縄と、立て続けにその姿を見せた。 

「フランク・ケーブル」が原子力潜水艦に補給できる「トマホーク巡航ミサイル」。

 1,600km以上先の地上の標的を、ピンポイントで攻撃することができるミサイルで、1991年の湾岸戦争以降、さまざまな作戦で使われてきた。 

トランプ政権下で行われた2018年のシリア攻撃では、60発以上の「トマホーク」が撃ち込まれた。

 フジテレビ・能勢伸之解説委員「原子力潜水艦の動力は原子力なので、航続距離はほぼ無限だが、トマホークを撃ち尽くせば、どこかで再び搭載しなければならない。巨大なアメリカ軍基地があるグアムやハワイなど太平洋の半分を渡るより、潜水母艦が日本のような同盟国に展開すれば、すぐにトマホークの搭載が可能になる。アメリカ海軍には、トマホークを発射できる、さまざまなタイプの潜水艦がある。トマホークを最大154発連射できる巡航ミサイル原潜もある。この数は、敵に大打撃を与えるだろう。海の中の動きは見えなくても、こうした潜水母艦の存在は抑止力を強化するといえ、それが日本各地に姿を見せ、極東でにらみをきかせたことの戦略的意義は、決して小さくはないだろう」

【私の論評】オースティン米国防長官の「抑止」とは、最恐の米攻撃型原潜による台湾包囲のこと(゚д゚)!

フランク・ケーブルについては、すでに11月30日にこのブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。上の記事で注目すべきは、フランク・ケーブルは、トマホークの補給も行えるということです。私の記事では、これは当たり前の事実なので、それについては、はっきりとは掲載しませんでした。私の記事と、上の記事の両方を読んでいただければ、さらに理解が深まると思います。
米潜水艦母艦「フランク・ケーブル」 佐世保に入港 原潜運用に変化か―【私の論評】米軍は攻撃型原潜を台湾近海、南シナ海に常時潜航させている(゚д゚)!

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分のみを以下に引用します。

米国はすでにこのブログで掲載して説明したように、緊迫している台湾近海に攻撃型原潜を複数隻派遣している可能性が大です。さらに、南シナ海にも要所要所に原潜を潜ませていることでしょう。

メンテナンス中のシーウルフ級攻撃型原潜(コネティカットと同級) 巨大さがよくわかる
台湾近海や南シナ海に常時潜水艦を配置するということになれば、さすがに米国でも、潜水艦の数には限りがあり、交代のために時間をかけて日本等に寄港するのはやめて潜水母艦で潜水艦に対する物資補給と乗組員休息に切り替え効率的に運用するように切り替えたのでしょう。

ただ、潜水母艦での原潜の交代要員の休憩も長い期間は続けられません。さらに潜水母艦自体の物資補給や乗組員の休息も必要です。そのため、攻撃型原潜や潜水母艦も日本等にも寄港するのでしょうが、それにしても特に原潜の寄港回数は減っていると解釈できます。

このブログでは、何度か述べましたが、米軍は中国に比較すると圧倒的にASW(対潜水艦戦闘力)が優れており、米攻撃原潜が、台湾近海、南シナ海に常時潜んでいれば、中国側は迂闊なことはできません。これは、かなりの抑止力になります。

上の記事では、「クラーク・ケーブル」そのものに、注目していますが、潜水母艦は単体で行動しても無意味であり、潜水艦に対して補給したり、乗組員を休養させることによってはじめて意味がでてきます。

上の記事では「潜水艦」自体の記述は少なく、「クラーク・ケーブル」の寄港の意味が理解しにくくなっていると思います。もっと潜水艦に関する記述を増やすべきだったと思います。

米国のオースティン国防長官は上の記事にもあるように、緊迫する台湾情勢について、「抑止力を強化している」と発言しているとしています。

これは、おそらく米国のオースティン国防長官と韓国の 徐旭ソウク 国防相が2日、ソウルで米韓定例安保協議(SCM)を開き、「台湾海峡の平和と安定の重要性を確認する」と明記した共同声明を採択したあとの記者会見での発言だと思われます。聯合ニュースによると、SCMの共同声明に台湾問題が盛り込まれるのは初めてです。

オースティン氏は協議後の記者会見で、中国の軍事力強化に懸念を示し、「中国が米国と同盟国に向けている全ての脅威を防御し、抑制する」と強調しました。

この抑止力に関しては、上であげた私の記事でも古森義久氏の記事を引用した上で、説明しています。古森義久氏の記事のリンクと一部を以下に引用します。
アメリカ海軍の潜水艦が中国への抑止誇示
古森義久氏
 この潜水艦群の動きは太平洋艦隊司令部のあるハワイ州ホノルルの新聞が同司令部からの非公式な通告を受けて5月下旬(ブログ管理人注:昨年5月下旬)に報道した。アメリカ海軍は通常は潜水艦の動向を具体的には明らかにしていない。だが今回は太平洋艦隊所属の潜水艦の少なくとも7隻が西太平洋に出動中であることが同司令部から明らかにされた。

 その任務は「自由で開かれたインド太平洋」構想に沿っての「有事対応作戦」とされている。この構想の主眼は中国のインド太平洋での軍事膨張を抑えることだとされるため、今回の潜水艦出動も中国が覇権を目指す南シナ海や東シナ海での展開が主目的とみられる。 
 同報道によると、太平洋艦隊所属でグアム島基地を拠点とする攻撃型潜水艦(SSN)4隻をはじめ、サンディエゴ基地、ハワイ基地を拠点とする戦略ミサイル原子力潜水艦(SSBN)など少なくとも合計7隻の潜水艦が5月下旬の時点で西太平洋に展開して、臨戦態勢の航海や訓練を実施している。

このブログでも何度か掲載したように、米軍のASW(対潜水艦戦闘能力)は中国よりも格段にすぐれていますから、台湾有事のときには、米軍が三隻程度の攻撃型潜水艦で、台湾を包囲してしまえば、中国軍はこの包囲を突破することはできません。

無理に突破しようとすれば、米攻撃型潜水艦はトマホークで中国軍の内陸のレーダー基地や環視衛星の地上施設を破壊するでしょう。米国はこれらの施設がどこにあるかをすでに知っていることでしょう。さらに、中国の潜水艦や対潜水艦戦闘用艦艇を魚雷などで撃沈するでしょう。空母などは、格好の攻撃目標です。またたくまに撃沈されるでしょう。 対潜哨戒機も対空ミサイルで撃墜するでしょう。

これによって、中国は対潜水艦戦闘に欠かせない、目と耳を失うことになります。これで、中国は台湾侵攻を諦めざるを得なくなります。

それで諦めずに、強襲揚陸艦や上陸用舟艇やこれを護衛する艦艇や潜水艦などを送れば、これもことごとく撃沈ということになります。なにしろ、この時点で中国軍には目も、耳もない状態になっているので、米攻撃型原潜に対してはなすすべがありません。

運良く台湾に部隊を上陸させることできたにしても、多くの部隊を送ることはできないでしょうし、それに米潜水艦によって補給をたたれるでしょうから、お手上げになるだけです。

一方米攻撃型潜水艦は、潜水母艦から迅速に補給を受けつつ攻撃ができますから、トマホークなど1000発でも、2000発でも打ち放題になるので、圧倒的に有利に戦闘を展開できます。それにもしかすると、台湾にも補給基地を用意しているかもしれません。それに、日本の米軍基地からも補給が受けられます。交代しながら、24時間臨戦態勢で、攻撃ができます。

もし、それでも台湾に上陸した中国の地上部隊が台湾軍を攻撃をしようとすれば、台湾軍に撃破されることになるでしょう。それでも諦めなければ、潜水艦によりほぽすべての艦艇が撃沈され、中国海軍は壊滅します。このような攻撃ができる米軍の攻撃型原潜がすでに台湾付近に潜航しているとみなすべきです。

そのことを米軍は、「フランク・ケーブル」を神奈川・横浜、広島・呉、長崎・佐世保、そして沖縄と、立て続けに寄港させるこによって、中国に対してはっきりわかるように示しているのです。

米オースティン国防長官

私は、オースティン国防長官が述べた「抑止」の全貌はこのようなことだと思います。これでは、中国は台湾への武力侵攻はあきらめざるをえません。侵攻すれば、中国海軍は崩壊し多数の犠牲者を出し、習近平の権威は地に落ちることになります。

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