2021年10月30日土曜日

成功だった日本のコロナ対策 世界的にも良いパフォーマンス 死亡率もワクチンで劇的改善 ―【私の論評】菅政権のコロナ対策は、病床増床には失敗したが医療崩壊は起こさず、総体的には大成功(゚д゚)!

成功だった日本のコロナ対策 世界的にも良いパフォーマンス 死亡率もワクチンで劇的改善 
高橋洋一 日本の解き方

 衆院選では新型コロナウイルス対策が争点の一つだが、昨年以来の日本のコロナ感染状況や医療体制、経済対策、ワクチン確保はどうだったのか。今後の課題は何か。

 10月22日現在までの累積ベースの状況について、20カ国・地域(G20)の中の日本の順番をみてみよう。100万人当たりの感染者数は少ない方から4位、死亡者数も少ない方から4位、100万人当たりのワクチン総接種回数は4位。これらは良いパフォーマンスといっていいだろう。

日本のコロナワクチン接種率は、70%を超え米英・イスラエルを越した

 なお、各国の人口当たりの超過死亡推計(2020年1月からの実際の死亡者数と前年からの推計された死亡者数との差)をみても、G20諸国中13カ国のデータしかないが、その中で、日本は最も少なく1位である。これは、新型コロナに対して、日本が最も悪影響を受けなかったと解釈できるだろう。最新の超過死亡推計では、日本のデータが幾分増加しているようだが、世界の中では依然少ない。

 こうしてみる限り、結果としては日本のコロナ対策は申し分ないパフォーマンスだ。

 一方、同じベースでみて、1000人当たりの検査数では14位だった。各国の検査状況をみても、検査を多くした国とその国の感染者数や死者数には特段の関係を見いだせない。

 こうしたデータをみる限り、いまだに、検査を重要項目としている政党は世界から取り残されていると言わざるを得ない。第6波に備えて、医療体制の強化を主張している政党はまだまともだ。

 医療体制については、医療サービスの供給強化のために予算がつけられたが、結果として未消化になった。本コラムで指摘してきたが、政府分科会や医師会側は供給体制強化より感染抑制のための人流抑制など社会規制の一本やりだった。そのため、第5波にいたるまで、この2年間で医療供給体制の強化はほとんどなされなかった。この点は、衆院選後に、政府としてもしっかり検証を行うべきだ。

 経済対策についても、人流抑制一本やりのために、うまく機能したとはいえない。都道府県が飲食店などに営業時間の短縮などを要請したものの、その補償的な意味がある補助金は必ずしも十分ではなかった。地方創生交付金も配布されていたはずだが、未消化部分もあった。これも検証対象とすべきだ。

 ワクチン確保はかなりうまくいった。昨年の補正予算による冷凍庫確保などの準備、今年4月の菅義偉前首相の米ファイザー社との直接交渉や打ち手問題解決のための超法規的措置などが功を奏し、今や、欧米主要国を抜いた状況だ。

 そのため第1~4波で感染者数約77万5000人、死者約1万4000人、死亡率約1・9%だったが、ワクチンがかなり行き渡った第5波では、感染者数が約93万人と多かったが、死者は約4000人、死亡率は約0・4%と劇的な改善だった。

 ワクチンを十分に接種すればコロナは「普通の病気」並みなので、さらなるワクチン接種を行いつつ、感染症法上の扱いも引き下げるのが先決だろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】菅政権のコロナ対策は、病床増床には失敗したが医療崩壊は起こさず、総体的には大成功(゚д゚)!

これだけ、急速に感染者数も死者も減ったのにはそれなりの理由があるはずです。今後は、その理由も解明してほしいと思います。

これについては、国内メディアでも様々な報道がなされていますが、英国のガーディァン紙等の見方を掲載します。

英国のガーディアン紙は、断定的な理由づけを行なっていないものの、日本の感染収束について2つの要因が大きく影響した可能性があるとみています。

 1つ目は、ワクチン接種の浸透です。日本は接種の開始時期こそ諸外国に遅れを取ったものの、現在では人口の約65%がワクチンの2回接種を終えており、これが新規感染を食い止めた可能性があります。

 一方、イギリスで必要回数の接種を完了している率は現時点での日本と同程度ですが、ここ1~2ヶ月ほどは伸び悩んでいます。オーストラリアは55%前後と、日本を10ポイント程度下回ります。

両国では反ワクチン・デモが行われ、警官隊と衝突して負傷者を出すなどしています。米国の完了率もオーストラリアと同程度で、なおかつ伸び悩んでいます。

 2つ目の要因として、マスク着用への抵抗感の少なさが幸いした可能性があるといいます。ガーディアン紙は「諸外国が屋内その他でマスク着用義務を緩和する一方、多くの日本人は思い切ってマスクを外すことを想像しただけでも身震いしている」と述べています。

パンデミック以前から風邪やインフルエンザなどの予防で冬場のマスクは習慣化しており、着用に抵抗が少なかったことが要因のひとつとして考えられそうです。

 このほか、夏場のピーク自体が季節性のものだったとみる専門家もいます。エアコンを利用する夏冬は窓を開けづらくなり、感染症の流行につながる環境が生まれやすいです。 

デルタ株の特性か 日本の状況の変化については、英インディペンデント紙の元姉妹紙である『 i 』紙も注目しています。「日本のコロナ件数が謎めいた減少をみせた」とし、他のアジア諸国において厳しい状況が続くなかで特異な例になっているとの見方です。

 英エディンバラ大学で疫学を研究するマーク・ウールハウス教授は同紙に対し、デルタ株が従来株よりも顕著な波を描く特性があるためではないかと説明している。デルタ株は急速に感染拡大する特性をもつが、感染の収束も早いのだといいます。

 ウールハウス教授は日本の緊急事態宣言を評価し、「こうした対策は感染数を抑えることを目的としており、その意味で成功しているように思われる」とも述べています。 教授はインドにおけるデルタ株の第1波でも同じく急激な拡大と収束がみられたと指摘し、日本の急速な感染者数減少は特別な驚きではないと見ているようです。

ある感染者が感染してから二次感染者にうつすまでの時間を疫学用語で「世代時間」というが、デルタ株はこの世代時間が短い特性があります。結果、集団内に急速に広まり、そして急速に波が引く形になるのだといいます。 

 医療機器の充実も貢献 i紙は日本の状況から、英国が学べる点は多いと指摘しています。「日本の主要メディアではネガティブな記事がヘッドラインを飾りがちだが、データを比較すれば他のG7諸国よりも日本はおおむねうまくパンデミックに対処している」との評価です。

英国の倍近い人口を抱える日本ですが、新型コロナの死者数は同国の7分の1未満となっています。 同紙は理由のひとつとして、日本は人口あたりのCTスキャナー配備数が世界で最も多く、肺の異常を早期に発見しやすいことを挙げています。

100万人あたり111台を確保している日本に対し、英国では9台に留まります。ほか、体外式膜型人工肺(ECMO、エクモ)の配備数や病床数が多いことも有利だといいます。一方、医師と看護師の数は他のG7諸国よりも少ないとの指摘です。 

英国メディアの報道は、日本のコロナ対策は大成功という認識のもとで報道しています。一方日本の主要メディアでは少し前までは、ネガティブな記事がヘッドラインを飾り、多くの人に日本の「コロナ対策」は大失敗だったかのような印象操作ばかりしていました。

最近では、どう考えてもコロナ対策、特にワクチン接種は大成功したのは間違いないことが明らかになりつつあるせいでしょうが、今度はほとんど報道しないという状況です。ほとんど報道しないということで、ワクチン接種の大成功も報道しないという、報道の自由の権利を行使しているようです。

衆院選終盤に入った26日、菅義偉前首相と立憲民主党の枝野幸男代表が鹿児島入りし、新型コロナウイルス対応を巡って舌戦を繰り広げた。菅前首相が「切り札はワクチン接種」と強調したのに対し、枝野氏は「常に後手後手」と批判しました。

菅前首相は志布志、鹿屋両市で演説しました。国民の7割以上がワクチンの2回接種を終えた現状を踏まえ「一日も早く、一人でも多く接種することが、国民の命と暮らしを守ることになると考えた」と成果をアピール。「安心安全で、にぎやかな日常を取り戻すための一歩を踏み出すことができた」と指揮した対策に自信を見せました。

現状日本でコロナが収束しつつあるのは、ワクチン接種の驚異的な速さが功を奏したのは明らかです。それについては、このブログでも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
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この記事は、月日のものです。以下に一部を引用します。 

100万回に関しては識者の人でも不可能と語っていました。しかし、この認識は全くの間違いです。

安倍政権だった2020年5月、2次補正予算が成立したときにワクチンに関しては1300億円の補正予算がつけられました。その予算計上の積算においては、ワクチンはファイザー製を用いることが前提でしたから、冷凍施設が必要とされ、これを全国1万ヵ所に設置するという想定で積算したのです。

冷蔵庫を1万ヵ所設置することを前提とすると、そこで1日に100人打つというのは難しい数字ではありません。100人には3時間ほどで打ててしまいます。だから100万回というのは、別にとんでもない数字ではないのです。当時の安倍総理はおそらく、一日100万回は不可能ではないと思っていたと思います。 さらに、ワクチン供給に関しては、2021年3月のときにほぼ決まっていました。さらに菅総理が渡米したときに、ファイザー協議して本決まりになりました。このときに、6月末までに1億回分のワクチンが送られて来ることは決まっていたのです。そうなと、6月末には高齢者はそれで全員接種できるし、2回打っても余ってしまうのです。それはもうわかっていたことです。

ワクチン1日100万回接種というのは、当初から予定されていたことなのです。そうして、それは安倍政権が計画をし、菅政権に引き継がれ、実行されて今日に至っているのです。 

一方、上の高橋洋一氏の記事にもあるように、「医療体制については、医療サービスの供給強化のために予算がつけられたが、結果として未消化になった。本コラムで指摘してきたが、政府分科会や医師会側は供給体制強化より感染抑制のための人流抑制など社会規制の一本やりだった。そのため、第5波にいたるまで、この2年間で医療供給体制の強化はほとんどなされなかった。この点は、衆院選後に、政府としてもしっかり検証を行うべきだ」とありますが、これについては、その理由をこのブログにも掲載したことがあります。

その記事のリンクを以下に掲載します。

【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く―【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!

これは、10月2日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。

日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。
それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。
尾身会長
そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

菅政権のコロナ対策のうち経済対策については、マスコミ等はボロクソにいいますが、失業率という面でいうと、これもかなり良いパフォーマンスを発揮しました。それについても、このブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。

衆院選、初の任期満了後に…臨時国会10月4日召集を閣議決定―【私の論評】誰が総裁になっても、当面緊縮路線には振れない、今後の政局だが・・・(゚д゚)!

これは、9月22日の記事です。詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。

日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。
それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。

これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。その理由は、日本では雇用保険の中に雇用調整助成金があるからです。この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。

コロナ失業を防いだ雇用調整助成金
厚生労働省は16日、2021年版の労働経済白書を公表しまた。新型コロナウイルス感染拡大により雇用が悪影響を受けたとする一方、雇用調整助成金(雇調金)などの効果により、完全失業率は2・6ポイント程度抑制されたとの推計を示ました。雇調金がなかった場合、失業率は5・5%に上昇した可能性があるとしています。

このように、雇用調整助成金は確実に効果を上げたのですが、一方では財源が逼迫しているので、保険料をあげようなどとの議論もされています。しかし、それでは何のための保険なのかということにもなりかねません。総裁選、衆院選と選挙が続く時期に、政府は当然このようなことはできないでしょう。それに、こういうことのためにも、補正予算を組むべきです。

このブログでは、経済政策においては、雇用政策がうまくいけば成功ですが、他の経済指標が良くても雇用政策がうまくいかなければ、失敗であるとのべてきました。その観点からすると、菅政権の経済政策はうまくいったといえます。

そのようなことを掲載すると、飲食店がどうのとか、旅行業者がどうのこうのという人もいるかもしれませが、それはミクロな見方であって、マクロ的には世界の先進国の中では最も失業者が少なかったのですから、菅内閣の経済政策は失敗したなどとはいえません。それは、何よりも数字ではっきり示されています。

岸政権は発足したばかりで、まだ良いとも悪いとも評価はできませんが、マスコミは菅政権の政策が大失敗したように、印象操作しているようですが、大失敗とはいえません。

それどころか、菅政権のコロナ対策は、病床増床には失敗しましたが医療崩壊は起こさず、総体的には大成功しました。

明日の選挙では、是非とも上に掲載したことなども考慮して投票をしていただきたいものです。

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