2021年10月24日日曜日

【日本復喝】中国進出企業に軍組織“侵食” 「軍民融合」で日本企業を虎視眈々…技術流出など経済安全保障の危機 ドイツ大手製造業内にも―【私の論評】衆院選後に、対中外交安全保障政策が激変しつつあることが明らかに(゚д゚)!

【日本復喝】中国進出企業に軍組織“侵食” 「軍民融合」で日本企業を虎視眈々…技術流出など経済安全保障の危機 ドイツ大手製造業内にも

岸田首相


 衆院選(31日投開票)では、新型コロナ対策や経済政策、外交・安全保障政策などが焦点で、自民党と公明党の連立与党と、立憲民主党と共産党を中心とする左派野党、第3極の日本維新の会などが競り合っている。岸田文雄首相は、経済活動と安全保障を重ね合わせて、日本の独立や生存、発展を確保する「経済安全保障」を打ち出しているが、軍事的覇権拡大を進める中国を意識しているのは間違いない。こうしたなか、中国に進出した日本の製造メーカーの合弁企業内で、民兵・予備役の軍事訓練や政治教育を行う「人民武装部」が活動していたことが分かった。日本企業は大丈夫なのか。産経新聞論説副委員長の佐々木類氏が迫った。


 「わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増すなか、領土、領海、領空、国民の生命と財産を断固として守り抜く」「防衛力の強化、経済安全保障など、新しい時代の課題に、果敢に取り組んでいく」

 岸田首相は8日の所信表明でこう語った。

 やや説明不足の感はあるが、「経済安全保障」を重視する認識は正しい。自民党は選挙公約「衆院選2021公約」にも、「経済安全保障推進法」策定を書き込んだ。

 ただ、中国は、軍事技術と経済発展を結び付ける「軍民融合」を国家戦略と位置付け、日本企業を虎視眈々と狙っている。

 都内に本社がある大手製造メーカーが中国に設立した合弁企業内で「人民武装部」が活動していたことが、日中関係者への取材で分かった。この合弁企業は、日本側と中国側が50%ずつ出資して約20年前に設立された。

 注目の人民武装部は、中国共産党への絶対服従を求められているほか、人民解放軍の指揮下にもある。主に、民兵や予備役の「軍事訓練」や「政治教育」など、軍事関連業務を担う。企業が所有する「資源の徴用」に応じることも義務付けられている。

 「民兵」とは、中国国防法で規程された組織で、人民解放軍、武装警察と並ぶ実力組織。「予備役」も日ごろから軍事訓練を行い、民兵同様、平時も暴動の取り締まりや災害救助などの任務を負う。

 問題の合弁企業内の人民武装部は昨年11月中旬、「人民武装愛国主義教育活動」を実施し、同社の民兵ら30人余りが参加していた。彼らの写真も存在する。

 日本側企業による管理が及ばない内部組織の存在は、企業統治のあり方が問われるだけでなく、技術流出など安全保障上の懸念もある。そもそも、中国では合弁企業内に共産党員が3人以上いる場合、党組織をつくることが義務付けられている。

 ■ドイツ大手製造業内にも 広報担当者、存在を否定

 この大手製造メーカーの広報担当者は、取材に対し、「(合弁企業内において)“人民武装部”という組織は存在しておりません。従いまして、いただいたご質問事項に関してお答えできるものはございません」と回答した。

 写真の存在も指摘したが、担当者は「回答は変わりません」と語った。

 中国国防法には外資企業を除外する規定はなく、人民武装部が存在するのは日本企業だけではない。

 ドイツ大手製造業内にも、人民武装部の存在が日中関係者への取材で確認されている。在中国のドイツメーカー広報担当者も「人民武装部はない」と存在を否定した。

 外資企業における人民武装部の存在は、まだ表立って公表されるケースは少ない。他社にも存在する可能性は十分ある。中国側も、外資企業や外国政府から反発を受けないよう慎重に活動を展開しているとみられる。

 米国は現在、安全保障の観点から中国への輸出管理を強めている。日本企業内の人民武装部の活動次第によっては、米国が今後、日本企業を米国のサプライチェーン(供給網)から外すなどの制裁措置を検討する可能性もある。

 岸田政権は、人民武装部の実態を調査し、「経済安全保障上のリスク」について、目配せしていく必要がありそうだ。

 ■佐々木類(ささき・るい) 1964年、東京都生まれ。89年、産経新聞入社。警視庁で汚職事件などを担当後、政治部で首相官邸、自民党など各キャップを歴任。この間、米バンダービルト大学公共政策研究所で客員研究員。2010年にワシントン支局長、九州総局長を経て、現在、論説副委員長。沖縄・尖閣諸島への上陸や、2度の訪朝など現場主義を貫く。主な著書に『静かなる日本侵略』(ハート出版)、『日本が消える日』(同)、『日本復喝!』(同)など。

【私の論評】衆院選後に、日本の対中外交安全保障政策が激変しつつあることが明らかに(゚д゚)!

まずは、人民武装部とは何なのかを説明します。中華人民共和国国防法22条に人民解放軍現役部隊および予備役部隊、人民武装警察部隊と並んで中華人民共和国武装力量として民兵組成が記載されています。


また、同22条の後半部分には「民兵は軍事機関の指揮下で戦備勤務、防衛作戦任務、社会秩序の維持と補佐を担う」と規定されています。

同様に中華人民共和国兵役法第六章(36条〜38条)では民兵の位置づけや役割、任務が規定され、 さらに細則については民兵工作条例[1]および当条例に従って公布、施行された各地方政府発布の条例等で規定されています。

各地の民兵は中華人民共和国の各地方政府の人民武装部と人民解放軍の二重リーダー制により管理されています。各地方政府の人民武装部は地方政府の幹部がリーダーとなっています。

民兵といっても様々なタイプがある。上は「中国女民兵方隊」

全国統一的な「民兵」部隊というまとまった1つの大きな組織ではなく、広大な国土の地域ごとの特性に応じた民兵組織の集合体であり、その組織も規模が大きなものは1つの社会を形成しています。

平時は民間人と同様にあらゆる産業(工業、農業、漁業、他)、業務(生産、輸送、警備、護衛、監督、他)に従事しているが、法律の規定により状況に応じた一定の軍事訓練が課されています。

大学にも民兵組織があり、サイバー戦部隊も存在しています。

新型肺炎COVID-19の流行においても民兵が動員され、防疫等の活動に従事しています。

民兵は、正規兵の兵役を終えたもの、正規兵から削減されたものなどの受け皿としても機能しています。中華人民共和国駐日本大使館によれば「民兵は国の武装力の構成部分である。民兵は軍事機関の指揮のもとで戦争に備える勤務、防衛作戦任務を担い、社会秩序の維持に協力する。総参謀部は全国の民兵活動を主管し、各軍区は当該区域の民兵活動に責任を負い、省軍区は当該地区の民兵指導と指揮機関である。」とされ、中国人民解放軍の軍区の指揮下にあるとされています。

キャベツを収穫する中国民兵

2004年国防白書で初めて1000万人と発表しました。2011年の中国共産党の発表によれば800万人にまで削減されています。

さて、日本と中国との合弁企業においては、当然のことながら中国共産党が何らかの形で関与しているのは間違いないでしょう。ただ、共産党や、人民解放軍、警察などが直接関与するということであれば、日本企業は警戒心を抱くので、直接は関与せず、人民武装部の民兵が合弁企業に浸透したり、中国人労働者に人民武装部が接近し、それらを人民武装部に取り込むなどの形で間接的に関与しているものと考えらます。

米金融大手ゴールドマン・サックスは17日、中国で投資銀行業務を手がける現地合弁の完全子会社化を巡って、中国当局の承認を受けたと発表しました。これにより、経営の自由度が高まり、成長戦略を進めやすくなります。米系による全額出資が認められたのはJPモルガン・チェースに続き2例目。米中対立が続くなか、中国政府は金融市場の開放を国際社会にアピールする狙いもあるようです。

ただ、いまのところ完全子会社化されたのは、この二社だけです。ただし、完全子会社しても、人民武装部が会社内部に深く浸透している可能性は否定できません。

こうしたことは、中国にある海外企業の全部にあてはまります。日本も例外ではないでしょう。そうして、いずれ米国は、中国の米国企業における人民武装部の排除を試みるでしょう。排除できない場合は、中国の米国企業を中国から撤退させるようにする可能性もあります。

そうなれば、米国が日本企業を米国のサプライチェーン(供給網)から外すなどの制裁措置を検討する可能性も当然のことながらでてきます。

そうして、それに対して政府もそれなりの対応する構えを見せています。

岸田首相の政策の一つの目玉となるのが、「経済安全保障政策」という新しい分野の構築と推進です。首相は先般の自民党総裁選で、「経済安全保障推進法」の策定を公約に掲げましたた。そうして10月4日の組閣では、経済安保相のポストを新設し、若手の小林鷹之氏をあてました。

 同政策の源流は、岸田首相が自民党政調会長時代に創設した「新国際秩序創造戦略本部」にあります。その座長を務めたのが自民党幹事長に就いた甘利明氏であり、小林氏は事務局長として実務面から甘利氏を支えてきました。

地元で遊説した甘利幹事長



経済安全保障政策は、甘利氏の強い影響力のもとで今後進められていくでしょう。 この新国際秩序創造戦略本部での議論をベースに、来年の通常国会で「経済安全保障一括推進法(仮称)」が制定され、経済安全保障政策が本格的に稼働することが見込まれます。 

今年5月に示された「中間とりまとめ」で同本部は、経済安全保障政策を「わが国の独立と生存及び繁栄を経済面から確保すること」と定義しました。その上で、具体的な政策を「戦略的自律性の確保」と「戦略的不可欠性の維持・強化・獲得」に分けています。

前者は、主に他国に過度に依存する状況を変えること、後者は、世界で日本のプレゼンス、優位性を高めていくことです。前者が守りの戦略、後者が攻めの戦略と言えるでしょう。当面は、前者に力点が置かれるとみられます。

自民党は12日、経済安全保障政策を担った「新国際秩序創造戦略本部」を「経済安全保障対策本部」に名称変更し、高市早苗政調会長が本部長に就任したと発表した。発令は11日付。政府が経済安全保障担当相を新設したのに合わせました。その他の人事は次の通りです。(敬称略)

経済成長戦略本部長 小里泰弘▽人生100年時代戦略本部長 上川陽子▽新型コロナウイルス感染症対策本部長 西村康稔▽デジタル社会推進本部長 平井卓也
この動きをみると、日本の対中国政策は、自民党を中心して法律の立案が作成され、国会で審議され法律を制定し、その法律にもとずき「経済安全保障担当相」が実行するという形で実施されていくものとみられます。

24日最初で最後の地元街宣を行った高市早苗氏

先日もこのブログに掲載したように、我々は頭のスイッチを切り替えて、日本の外交安全保障政策の政策形成過程の枠組みを捉え直す必要があります。甘利氏が幹事長であることが意味する外交安全保障上の変化のシグナルを敏感に感じ取ることは、日本の未来を考える上で極めて重要なことです。中国はこれに相当危機感を感じているはずです。

現状では、衆院選があるので、この流れはあまり目立ちませんが、今回の選挙で自民党が勝利性が、負けるにしても政権交代でも起こらない限り、はっきりすることになるでしょう。

過去においては、遅々として進まなかった対中国政策が一気加速されることになりそうです。自民党はこの流れについても、わかりやすく有権者に伝えていくべきです。

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