2021年10月2日土曜日

【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く―【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!

【日本の解き方】菅首相1年間の大きな功績 懸案を次々処理した「仕事師内閣」、対韓国でも厳しい姿勢貫く

退任することが決まった菅首相

 19都道府県に発令されていた新型コロナウイルス緊急事態宣言と8県に適用されていた蔓延(まんえん)防止等重点措置が解除された。菅義偉首相は9月28日の衆院議院運営委員会で全面解除を表明したが、自身の自民党総裁任期までに、やり残した仕事をやったので、スッキリした様子だった。

 菅政権の1年の実績についてまとめてみよう。時系列でみると、不妊治療の保険適用(2020年9月)、学術会議任用拒否(20年10月)、日米豪印の枠組み「クアッド」の推進(20年10月に東京で外相会談、21年9月にワシントンで首脳会談)、カーボンニュートラル宣言(20年10月)、携帯電話料金の値下げ(21年2~3月)、日米首脳会談で台湾明記(21年4月)、ワクチンの供給(21年4月にファイザー社と直談判、接種の超法規的措置など)、「従軍慰安婦」という不適切表現に関する閣議決定(21年4月)、重要土地利用規制法成立(21年6月)、東京五輪、パラリンピック(21年7~9月)、デジタル庁の設置(21年9月)、米国の福島産輸入規制の撤廃(21年9月)などだ。

 こう並べてみると、菅政権は実務能力が高く、やはり「仕事師内閣」だった。菅首相が新たにイニシアチブを取ったのは携帯電話料金の値下げくらいで、残りは以前の政権からの懸案・宿題案件ばかりだ。デジタル庁の設置も、筆者が20年前の役人時代に、全ての行政手続きをオンライン化する目標があったくらいだから、20年越しの積み残し案件といってもいい。

 要するに、菅首相は、国家観を語りながら大きな方向性を論じる理念型政治家ではなく、歴代政権がやれなかった案件を地道にこなす実務的政治家だったのだ。

 菅首相には、確たる国家観がないなどと批判され、外交での対中姿勢を疑問視された。親中とされる二階俊博幹事長がいるからで、そのために国会での対中非難決議ができなかったともいわれる。しかし、国会の決議は、政府の責任ではない。政府としては、日米首脳会談での共同声明に「台湾海峡の平和と安定」を明記したのは国会決議より大きな意味があった。国会決議には政府に対する拘束力はないが、共同声明は政府そのものの方針を示しているからだ。

 しかも、安倍政権でも二階幹事長のクビは切れなかったが、菅首相は二階氏と差し違えた形となった。

 外交姿勢は、韓国に対しても厳しかった。21年6月に英コーンウォールで開催された先進7カ国(G7)首脳会議や7月の東京五輪をとらえて、韓国政府は日韓首脳会談をやりたかったが、菅首相は「国と国との約束が守られない状況で、首脳会談をする環境にはない」と言い切り、誘いに乗らなかった。

 次の政権は、新型コロナを含む国内問題については菅政権が「大掃除」をしてくれたので楽だろう。政権の大きな目標を達成するために政治資源を残務処理に充てないですむ。

 一方、外交では、中国と韓国とどのように向き合うか、なかなか難しいかじ取りが求められるだろう。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】新政権は、雇用の維持、迅速な鉄の三角形対策ができる体制を整えれば、長期安定政権となる(゚д゚)!

菅政権の功績は、正しく認識すべきでしょう。これを認識せずに、岸田新政権は前には進めないでしょう。

安倍政権と、菅政権の功績を忘れては、岸田政権は安定しないでしょう。安倍政権と、菅政権のお土産については、以前このブログでも述べました。その記事のリンクを以下に掲載します。
本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか ―【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!


詳細は、この記事をご覧いただくものとして、一部を以下に引用します。
これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。

「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。

だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。

「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。

そうして、今後自民党はさらにコロナ対策のために、補正予算を組むことになるでしょう。それは、様々な日程を考えると、衆院選後になるでしょう。そうして、日本経済は復活するでしょう。 つまりこれだけの貯金とお土産があれば、当面首相は誰でも務まるかもしれません。

ただし、最初の1年は安倍・菅政権の「お土産」で、岸田政権は安定するでしょうが、その後は、安倍政権がなぜ長期政権になり得たのか、菅政権は短期でなぜ成果をあげられたのか、そうしてなぜ短期政権に終わってしまったのかを真摯に分析して、政権運営に役立てることをしなければ、難しくなるでしょう。
このブログにも示したように、安倍政権が長期政権になり得たのは、何といっても雇用の劇的な改善だったことは間違いありません。その他にも様々な理由がありましたが、私はこれが最大であったと思います。

これは、その後の菅政権に受け継がれ、コロナ禍にあってさえ、世界的にみれば、先進国中では、失業率を最低に抑えることができました。それは、上のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。

経済政策においては、雇用が最優先で、雇用に関する統計が良ければ、他の指標が悪くても、経済政策は成功とみなすべきものです。他の指標がいくら良くても、雇用関連の統計が悪ければ、経済政策は失敗です。

その点からすると、安倍政権もそれに続く菅政権も、成功したといえます。このことからすると菅政権は長期政権になっても良かったと思いますし、私はそうなることを願っていました。

なぜなら、コロナ禍などの未曾有の危機がある場合は、よほどのことがない限り政権交代はしないほうが良いからです。私自身は、菅政権の成果が十分評価されず辞任に至ったのには、単なる説明不足を超えて大きな理由があると思います。

日本には様々なルールや規制があります。それに守られ、いわゆる“既得権益”を受けている人たちがいます。農業の分野で言えば、日本は零細農家を守るため、株式会社は農地を持つことができません。

当初は意味のある制度だったのでしょうが、農業が国際化されてきた今日日本は世界的にみても良い作物を作れるのですから、株式会社に農業にも参入してもらい、生産性を上げ、輸出もしたほうが良いはずです。

ところが“入ってはいけない”という人たち、そこに結びついた政治家たち=族議員、そして業界の既得権益を持った人をつなぐ役割を担っている官僚がいます。この三角形がスクラムを組み、新しいことをやろうとするときに妨害するのです。こうした三角形はどこの国にもありますが、日本の場合はそれを取り持つ官僚組織がかなり強い状態で維持されています。


それは、医療の世界にも厳然として存在します。医師会、族議員、厚生官僚による三角形(医療ムラ )は厳然として存在してるのです。これは、ある意味「加計問題」と本質は同じです。

1年以上も前から、コロナ病床は、かなり増床すべきことはわかっていました。そうして、昨年の補正予算でも、それに関する予算は潤沢につけられていたにもかかわらず、この医療ムラの猛反撃にあい、現在に至るまで大きく増床されることはありませんでした。感染症対策分科会も、こうした医療ムラの圧力に対抗できなかったのか、結局対策といえば、病床の増床ではなく、人流抑制ばかりを提言していました。

尾身会長

そのため、コロナ感染者数が増えるたびに、野党・マスコミは、医療ムラを批判するのではなく、菅政権を批判しました。尾身会長は、マスコミに利用された形になったといえます。これは、間違いなく菅政権を追い詰めていきました。特に、マスコミは感染者数が増えるたびに、不安を煽り、様々な印象操作で菅政権を追い詰めました。

特に日本では、まだまだマスコミの報道を信じる人が多いので、強力な医療ムラを崩壊させるには、仕事人内閣の菅内閣ですら、時間と労力がかかることは無視して、菅内閣を責め立てました。野党もその尻馬にのり、菅内閣を糾弾しました。

マスコミが、菅内閣ではなく、医療ムラを批判していたら、状況は変わっていたかもしれません。まさに、短命政権が多い理由は煽るマスコミとのせられる人たちなのです。それについて、以下の動画で高橋洋一が明確に語っています。

自ら一次資料にあたったり、ニュースソースとして信頼できる人を探す手間を惜しみ、ワイドショーなど、ヨダレを垂らしながら視聴して「アベがー、スガがー」などとつぶやいている人たちが多数いる限りにおいては、これからも短命政権が繰り返されることも十分ありえるでしょう。

新政権が、長期安定政権を目指すなら、雇用の確保、それに三角形の対策をすべきでしょう。とにかく、コロナのような深刻な問題が起こったときには、それに関連する三角形を一時的にでも機能できなくする仕組みを早期に導入すべきです。

日本では、もともと患者数がかなり少なく、すでに米国を追い越した強力なワクチン接種で、諸外国に比較すれば、ダメージははるかに少なくなりましたが、一歩間違えば大変なことになっていたかもしれません。

もし、英米なみの損害を受けていれば、医療ムラの住人たちも、マスコミも自分たちや家族などの命が惜しいですから、対応が変わっていたかもしれません。菅政権による強力なワクチン接種政策が、医療ムラの温存に繋がった可能性もあるかもしれないと思うと複雑な気持ちがします。

マスコミが煽った割には、ダメージが少なかったからこそ、現在のような状況になっているのだと思います。

新政権は、雇用を維持すること、鉄の三角形対策を一時的にでも迅速にできる体制を構築すれば、長期安定政権となるでしょう。逆に、他は良くてもこの2つができなければ、短期政権になることも覚悟しておくべきでしょう。

すぐに鉄の三角形を崩壊させるのは不可能です。いずれは鉄の三角形を欧米レベルの緩やかなものにするのは当然のことですが、それ以前に何か重大な問題が起こったときに、鉄の三角形一時的にでも機能させないようにできる措置を構築しておくべきです。

医療ムラの場合だと、医師免許制度を利用して、緊急時に政府の指示に従わない場合、医師免許を一時的に停止したり、悪質な場合は停止できるようにしておくべきでしょう。これは、相当効き目があると思います。医師免許がなくなれば、利権どころではなくなります。

自ら短期政権になっても、自民党政権を守った菅総理そうして安倍元総理の思慮深さに学ぶべきです。政権交代に耐えられるような、まともな野党が存在しないし共産党に浸透されつつある立憲民主党が存在する、現在これは非常に重要なことです。現状では、場合によっては短期政権になっても、国民のため、自民党政権存続のためなどに何かを確実に変えるという覚悟も新総裁には必要になると思います。

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