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岡崎研究所
バイデンは、当初から移民に対して寛容な姿勢を見せ、強制送還される移民申請者の割合も前政権に比べて大幅に減少し、5月にはハイチ人に一時的保護(TPS)を与える政策を発表した。しかし、8月初めの最終決定ではその対象を、7月29日までに入国したものに限定した。
この間にハイチ人の間に、米国領内に入りさえすれば何とかなるとの期待感や誤解が拡大したことは想像に難くない。
ハイチ本国からの流れだけではない。2010年のハイチ大地震の際にブラジルとチリが合計約30万人規模のハイチ人を受け入れたが、現地社会に統合されず貧困状態に置かれたままのハイチ人も多く、その中にはこの機会に米国に再移住することに踏み切った者も大勢いたようである。
その後、デル・リオに終結した1万5000人(一説には3万人)の移民希望者は、5500人以上がハイチに強制送還され、8000人が自主的にメキシコに戻り、国際橋の下のキャンプは撤去された由である。しかし、他の国境地域での問題もあり、また、同様の事態が再発する可能性もあろう。
バイデン政権は、強制送還については、新型コロナウイルス感染防止のための公衆衛生法に基づくトランプが定めた「タイトル42」と呼ばれる大統領令を根拠とした。また、馬に乗った国境警備隊員が移民を追い立てるニュース動画が拡散し、非人道的な扱いに民主党幹部からも強い批判の声が上がると共に、「タイトル42」は違法であるとの訴訟も起こされ、ハイチ問題担当の大統領特使が抗議の辞任をするまでに至った。
バイデン政権は、公衆衛生上の措置としての強制送還を正当化するとともに、正規の手続きに従う移民申請には前向きに対応する方針だと説明するが、従来の共和党からの移民政策緩和批判に加えて、逆に民主党内リベラル派からは不十分だとの批判が高まり、コロナ対策やアフガン問題と並んで、支持率低下の大きな要因となっている。特にハイチ移民の多くは黒人であり、この問題はバイデンの支持基盤でもある黒人層の支持率にも影響するとの懸念も指摘されている。
民主党の目指す人道的な移民政策とそれにより生ずる移民の急増という現実に対する対応策が機能しないジレンマは当初から指摘されていたが、コロナ対策で時間を稼ぐ間に体制を整えることもあり得るかもしれないと期待されていた。しかし、ハイチ危機が生じたこともあり、バイデン政権は全く対応できていない。もともと、殺到する庇護希望者を処理する体制が十分整わない内に、移民に対して寛容な姿勢を示したことに無理があったと言えよう。
選挙への影響も不可避
公衆衛生の保護を根拠とする強制退去も、緊急避難的措置としてやむを得ない面もあるが、法的には疑義もありこれに過度に頼ることは望ましくない。他方、米国内に入った者に一律に一時保護資格を与えれば、移民の流れは制御できないレベルになる恐れがあり、当然選挙にも影響が出てくるであろう。移民の流れはいつまでも続かないとの楽観論もあるが、説得力に乏しいように思われる。
移民の流れの中継地や待機地となるメキシコなどに移民の人道的待遇を確保するための資金協力をしてでも協力を得ることが極めて重要であり効果的であろう。また、問題の根源であるハイチの抱える問題は根深いが、米国政府が、同国の混乱収拾に積極的に関与することも必要であろう。
ドナルド・トランプ前大統領は6日「ハニティ」出演中に、強固な南部国境を維持するためにバイデン政権がしなければならなかったのは、「そのままにしておく」ことだったと述べました。この間にハイチ人の間に、米国領内に入りさえすれば何とかなるとの期待感や誤解が拡大したことは想像に難くない。
ハイチ本国からの流れだけではない。2010年のハイチ大地震の際にブラジルとチリが合計約30万人規模のハイチ人を受け入れたが、現地社会に統合されず貧困状態に置かれたままのハイチ人も多く、その中にはこの機会に米国に再移住することに踏み切った者も大勢いたようである。
その後、デル・リオに終結した1万5000人(一説には3万人)の移民希望者は、5500人以上がハイチに強制送還され、8000人が自主的にメキシコに戻り、国際橋の下のキャンプは撤去された由である。しかし、他の国境地域での問題もあり、また、同様の事態が再発する可能性もあろう。
バイデン政権は、強制送還については、新型コロナウイルス感染防止のための公衆衛生法に基づくトランプが定めた「タイトル42」と呼ばれる大統領令を根拠とした。また、馬に乗った国境警備隊員が移民を追い立てるニュース動画が拡散し、非人道的な扱いに民主党幹部からも強い批判の声が上がると共に、「タイトル42」は違法であるとの訴訟も起こされ、ハイチ問題担当の大統領特使が抗議の辞任をするまでに至った。
バイデン政権は、公衆衛生上の措置としての強制送還を正当化するとともに、正規の手続きに従う移民申請には前向きに対応する方針だと説明するが、従来の共和党からの移民政策緩和批判に加えて、逆に民主党内リベラル派からは不十分だとの批判が高まり、コロナ対策やアフガン問題と並んで、支持率低下の大きな要因となっている。特にハイチ移民の多くは黒人であり、この問題はバイデンの支持基盤でもある黒人層の支持率にも影響するとの懸念も指摘されている。
民主党の目指す人道的な移民政策とそれにより生ずる移民の急増という現実に対する対応策が機能しないジレンマは当初から指摘されていたが、コロナ対策で時間を稼ぐ間に体制を整えることもあり得るかもしれないと期待されていた。しかし、ハイチ危機が生じたこともあり、バイデン政権は全く対応できていない。もともと、殺到する庇護希望者を処理する体制が十分整わない内に、移民に対して寛容な姿勢を示したことに無理があったと言えよう。
選挙への影響も不可避
公衆衛生の保護を根拠とする強制退去も、緊急避難的措置としてやむを得ない面もあるが、法的には疑義もありこれに過度に頼ることは望ましくない。他方、米国内に入った者に一律に一時保護資格を与えれば、移民の流れは制御できないレベルになる恐れがあり、当然選挙にも影響が出てくるであろう。移民の流れはいつまでも続かないとの楽観論もあるが、説得力に乏しいように思われる。
移民の流れの中継地や待機地となるメキシコなどに移民の人道的待遇を確保するための資金協力をしてでも協力を得ることが極めて重要であり効果的であろう。また、問題の根源であるハイチの抱える問題は根深いが、米国政府が、同国の混乱収拾に積極的に関与することも必要であろう。
【私の論評】バイデン政権の政権運営上のアキレス腱は移民政策(゚д゚)!
ケーブルテレビFOXニュースのニュース番組「ハニティー」の司会を現在務めているショーン・ハニティー氏 |
「我々の時の国境がおそらくこれまでで最も強固だったと言えるだろう。彼らがやるべきことはそのままにしておくことだ。彼らは我々を訴えた。議会民主党が2年半の間やったことだ。全ての訴訟で勝ったが、開始できたのは2年半後だった」とトランプは、FOXニュース司会のショーン・ハニティに述べ、「50カ国」が米国に犯罪者を入国させていると主張しました。
トランプは、開かれた国境によって違法な麻薬密輸の数が増加したことを強調しました。「麻薬は最低レベルだった―密輸される麻薬、特にフェンタニルは凶悪な麻薬だ。それは食い止められ、長い間見たことのないレベルになっていた」とトランプは主張し、今その命取りになる麻薬が前代未聞のレベルで米国に入ってきていると続けました。
「これまでの3、4、5倍だ。米国に流入している。何かがおかしい。こんなことが言えるとは信じられないだろうが、国を愛していない人がいるということだ」とトランプは述べました。
トランプは、バイデン政権が「何万人もの」不法移民の入国を、我々の知らないような国から・・・2週間に1度許していると主張しました。
民主党でテキサス州ラレードのピート・サエンズ市長は9月に、トランプの下で国境安全策は効力を発揮していたと述べました。
国境警備協議会のブランドン・ジャッド会長は4月に、「バイデン大統領ほど組織犯罪の強化に貢献した人物はいない」と述べました。しかしホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、南部国境が開放されているという事実について反発し続けています。
このチャーター便は、国境問題で移民局が疲弊しているテキサス州から出発し、少なくとも8月から実施されているとのことです。
先週、ニューヨーク・ポストは2機の飛行機がウェストチェスター・カウンティ空港に着陸するのを目撃しましたが、降りた乗客のほとんどは子供や10代の若者のようで、ごく一部は20代の男性のように見えたとしています。
ニューヨーク・ポスト紙に掲載されたウェストチェスター・カウンティ空港に着陸した移民を輸送した航空機 |
水曜日の午後10時49分と金曜日の午後9時52分に到着した飛行機の乗客が降りてバスに積み込まれるのを、ウェストチェスター郡の警官が見守っていました。
何人かはその後、ニュージャージーの親戚やスポンサーと合流したり、ロングアイランドの居住施設に降ろされたりしています。
Post紙がオンラインのフライト追跡データを分析したところ、8月8日以降、21便で約2,000人の未成年の移民がホワイトプレーンズ郊外の空港に到着したことがわかった。
記録によると、いくつかの飛行機は、自主的な外出禁止令が発令されている午前0時から午前6時30分の間に着陸しており、ヒューストンからの2便は8月20日の午前2時13分と午前4時29分に到着しています。
この措置の隠蔽に関して、ホワイトハウスが最近急増している同伴者のいない未成年者にどのように対処しているかという疑問を提起しています。
米国税関・国境警備局が発表した最新の数字によると、7月と8月の間に、37,805人の同伴者のいない未成年者がメキシコから米国に入国するところを捕らえられており、時には「コヨーテ」と呼ばれるプロの密輸業者に見捨てられた後に入国しています。
米キニピアック大が6日公表した世論調査で、バイデン大統領の支持率が38%となり、不支持の53%を大きく下回りました。主要な米メディアや調査機関、大学による世論調査では、政権発足以来最低の水準。南部国境での移民希望者の流入や、アフガニスタンからの駐留米軍撤収に伴う混乱が響いたとみられます。
移民政策では支持が25%だったのに対し、不支持は67%に上りました。米政府は9月にカリブ海の島国ハイチから大挙した移民希望者を強制送還し、批判されていました。
アフガンをめぐっては、駐留米軍を「一部のみ撤収すべきだった」が50%、「一部でも撤収すべきでなかった」が15%。「すべて撤収すべきだった」は28%にとどまりました。新型コロナウイルス対応に関しては支持が48%、不支持が50%と拮抗(きっこう)しました。
調査は今月1~4日、全国の成人1326人を対象に電話で実施。3週間前の前回調査でバイデン氏への支持は42%、不支持は50%でした。
アフガン撤退は、明らかに失敗でしたが、元々はトランプ前大統領が決めたことです。対中国政策に関しては、オバマのリバランス政策を継承するものとみられますが、実施していることはトランプ政権とあまり変わりありません。
ただ、オバマがはじめたTPPのへの加入をためらっているのは、合点がいきません。
移民政策に関しては、トランプ氏の真逆の政策を実行すると思われましたが、ハイチから大挙した移民希望者を強制送還するなどして、批判を受けています。
ハリス副大統領 |
ところが、グアテマラの記者会見でのこの発言が波紋を呼びました。
ハリス副大統領
ハリス副大統領の発言は、与党・民主党を支持する人、特にリベラル色が強い人の反発を招き、米のメディアは政治的なスタンスにかかわらず、各社が大きく取り上げた。「国境を越えようと考えている人たちにはっきりと言っておきたい。来ないでほしい。来ないでほしい」
左のリベラル、右の保守、両方からの批判に板挟みなのがバイデン政権の移民政策です。バイデン政権は、中米諸国への支援強化で移民の流入を減らす方針ですが、各国の経済状況や治安情勢の改善は一朝一夕にできるはずもありません。
移民をめぐる問題は政権運営上のアキレス腱にもなりかねないです。
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