2021年10月13日水曜日

【日本の解き方】財務次官「バラマキ」寄稿の論理破綻 高橋洋一氏が一刀両断 会計学・金融工学に基づく事実 降水確率零%で台風に備えるくらい滑稽 ―【私の論評】「親ガチャ」より酷い日本の「財務省ガチャ」状況は一日も速く是正すべき(゚д゚)!

【日本の解き方】財務次官「バラマキ」寄稿の論理破綻 高橋洋一氏が一刀両断 会計学・金融工学に基づく事実 降水確率零%で台風に備えるくらい滑稽 

矢野康治

 岸田文雄首相は14日に衆院を解散する。19日公示、31日投開票の衆院選ではコロナ禍で落ち込んだ経済再生が争点となり、各党は公約で大規模な経済対策を打ち出している。こうした動きを真っ向から批判するのが財務省の矢野康治事務次官が月刊誌「文芸春秋」11月号に寄稿した「バラマキ批判」論文だ。高市早苗政調会長が不快感を示す一方、鈴木俊一財務相は容認するなど政府・与党内でも反応が分かれるが、矢野次官の「財政破綻論」は正しいのか。元財務官僚の高橋洋一氏が一刀両断した。

 矢野康治財務事務次官が、月刊誌「文芸春秋」11月号への寄稿で、「このままでは国家財政は破綻する」として、財政再建の重要性を訴えた。

 鈴木俊一財務相は8日の記者会見で「個人的な思いをつづったと書いてある。中身は問題だと思わない」と説明した。麻生太郎前財務相からは了解を得ているという。

 岸田文雄首相は10日のフジテレビ番組で、「いろんな議論はあっていいが、いったん方向が決まったら関係者はしっかりと協力してもらわなければならない」とクギを刺した。自民党の高市早苗政調会長は同日のNHK番組で「大変失礼な言い方だ」と不快感を示した。

 矢野氏は「単に事実関係を説明するだけでなく、知識と経験に基づき国家国民のため、社会正義のためにどうすべきか、政治家が最善の判断を下せるよう、自らの意見を述べてサポートしなければなりません」と書いている。

 意見を述べるのは自由だが、その前提が間違っていては話にならない。間違った前提から出てくる意見は、有害以外の何物でもない。

 まず会計学から問題を指摘する。矢野氏が財政危機の証拠としてデータで示すのは、「ワニの口」と称する一般会計収支の不均衡と債務残高の大きさだ。

 全ての政府関係予算が含まれている包括的な財務諸表は小泉純一郎政権以降、毎年公表されている。この財務諸表は、しっかりした会計基準でグループ決算が示されているが、矢野氏が寄稿で提示したデータは、会社の一部門の収支とバランスシート(貸借対照表)の右側の負債だけしかないようなものだ。

 ただし、財務省が公表している連結ベースの財務諸表については日銀が含まれていないという問題もある。日銀は金融政策では政府から独立しているが、会計的には連結対象なので、財務分析では連結すべきものだ。

 日銀を連結した場合、資産1500兆円、負債は国債1500兆円と銀行券500兆円となる。銀行券は無利子無償還なので、形式的には負債だが実質的な負債ではないので、日本の財政が危機ではないのは、会計の基本を知っていれば明らかだ。

 金融工学からも問題がある。直近の日本国債の5年CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は0・00188%なので、大学院レベルの金融工学知識を使えば、日本の5年以内の破綻確率は0%にも満たないことが分かる。これは、バランスシートからみた破綻の考察とも整合的だ。

 このような状況で日本財政が破綻する恐れがあるというのは、降水確率零%の予報のとき、今日は台風が来るので外出は控えろというのと同じくらい、筆者には滑稽に思える。

 以上は、本コラムの読者であればおなじみだが、会計学や金融工学に基づく事実で、ノーベル賞学者らとも同じ世界標準のものだ。

 世界の誰とも対等に議論できるように正しい学問の知識を持つことが重要だ。財政が破綻しているのではなく、無知から出てくる財政破綻論や緊縮論こそ、もう破綻している。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】「親ガチャ」より酷い日本の「財務省ガチャ」状況は一日も速く是正すべき(゚д゚)!


現内閣の基本方針を真っ向から否定する、矢野財務次官の檄文には驚きました。コロナ対策の各種給付金をバラまき合戦と断じ、国民はそれを望んでいないと勝手に決めつけ、マクロ経済学の基本を無視してひたすら家計の類推で論じています。国家財政を家計と同次元に見るこの論点には、驚きはしましたが、なにやら、あまりの低次元に矢野氏に対する哀れみすら感じました。

家計と、一国政府の財政は全く異なります。家計においては、できないことが政府にはできます。国債を発行したり、政府の一下部機関である、日銀は貨幣を発行することができます。これを同次元に述べるのは完璧な誤りです。

以下に日銀と政府連結のバランスシートをあげます。これは、高橋洋一氏が作成したものです。

上の高橋洋一氏の記事にもあるように、このバランスシートからみれば、銀行券が無利子無償還なので形式負債ですが実質負債でないので、日本の財政が危機でないのは、会計の基本を知っていれば明らかです。

矢野氏の議論は、財政は、国民の為にあることを無視する、稀に見る暴論です。

矢野次官の檄文には財界トップの支持者が多いですが、彼らも矢野氏と同じくマクロとミクロの違いを理解していません。これだけの財政赤字を出して初めて、現在の540兆円のGDPを維持しているのです。それは企業が巨額の貯蓄超過に陥っているからです。財政赤字を減らせば国民の所得は減ります。それが貯蓄と投資が常に等しくなるマクロ経済の基本です。

緊縮財政発言を経済同友会会長が正しいとして擁護しているというニュースが流れました。全く信じられないです。彼らは平成の30年間の景気後退を緊縮財政と日銀の金融引締のせいとは思っていないようです。一体何のせいだと思っているのでしょうか。

経済同友会桜田幹事

多くの政治家や官僚にとっては短期で個人の生活を考える限りにおいてはデフレはそう悪いものではないのかもしれません。物価が下がるほどには給料は下がらないからであり。実質ベースアップがあるようなものなのかもしれません。

また景気が悪いと一般の方からの頼まれ事も多くなり、権勢を振るう機会があり利権も生ずるのでしょう。彼らには、「公」の精神なるものはないでしょう。

国民経済が発展するのとともに、自分たちも発展していきたいなどという気持ちは彼らにはないのでしょう。そのためには、マクロ政策では、雇用こそ最も重要であるという考えもないのでしょう。本当に、クズです。

最近「親ガチャ」という言葉がはやっています。これは、親は選べず、人生は家庭環境次第で決まってしまう。こんな人生観をカプセル玩具の販売機に例えた「親ガチャ」という言葉です。若者を中心に賛同の声がある一方、「本人の努力が足りないから」と批判する声もあります。

「努力すれば何でもできる」というのは、明らかな間違いだと思います。そうして、国民は選挙で政治家を選ぶことはできまずか、財務省の役人を選ぶことはできません。

財政政策は、本来政府が目標を決めて、財務省の官僚は、それに従い専門家的な立場から様々な方法を選ぶというのが本筋です。ところが、現状では財務省の官僚が、あたかも大きな政治組織のように動き、財務政策の目標にまで大きな影響を及ぼしているというのが実態です。矢野氏の寄稿もその一環として行われたものです。

これは、国民からすれば日本は「財務省ガチャ」状態にあると言っても良いのではないでしょうか。無論デフレになっても、努力する人はいて、成功する人もいます。しかし、デフレは経済の病気であり、それも重大な病気です。どんな場合でも一刻もはやく是正すべきものです。デフレを景気の悪化などのようにみなすのは大きな間違いです。

これを放置しておけば、経済は悪化しますし、雇用もかなり悪化します。2012年あたりまでは、雇用は最悪でした。その後安倍政権が成立して、直後は積極財政、異次元の金融緩和政策がとられ、雇用は回復しました。

その後、安倍政権のときに結局、安倍総理自体は二度も増税を延期したのですが、結局財務省ガチャに抗えず二度も増税してしまったため、現状でも日本はデフレから完璧に脱却したとは言い難いです。ただ、最近はイールドカープコントロールにより緩和は手控え傾向ながらも日銀は緩和自体は続けているので、雇用は良い状況が続いてはいます。

さらに、日本では雇用調整助成金が功を奏して、コロナ禍において先進国では最も失業率が少小さいです。このこと自体は誇るべきことです。

しかし矢野氏の主張する通りの経済政策を実行すれば、また日本経済はデフレスパイラルに陥り、とんでもないことになるのは明らかです。雇用状況も従来のような酷い状況に戻ることになるでしょう。あの雇用の酷い状況を、また若者に味合わせるべきではありません。

デフレになっても、努力して成功する人もいますが、そういう人たちはまともな企業に就職できて、経済的にも技能的にもある程度基盤をつくることができた人でしょう。デフレが亢進すれば、就職もままならなくなり、スタートラインにすら立てなくなる人が大勢出ることになります。そういう人たちは、自分で自分の運命を切り開くこともできないのです。これは、「親ガチャ」よりも酷いかもしれません。

日本の「財務省ガチャ」状況は、一刻もはやく是正すべきです。岸田氏は一刻もはやく、矢野氏を更迭すべきです。



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