2021年9月29日水曜日

本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか ―【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!

本文わずか“2ページ”立民の残念なアベノミクス検証 雇用創出の実績を分析できず、支持母体の労働者に響くのか 

高橋洋一 日本の解き方

立憲民主党枝野代表

 立憲民主党がアベノミクスの検証結果をとりまとめ、「お金持ちをさらに大金持ちに、強い者をさらに強くした」「大規模な金融緩和で株価は上昇したが、消費増には結びつかず、物価安定目標2%も達成していない」「格差や貧困の問題の改善にはつながらなかった」などとして、枝野幸男代表は「アベノミクスは間違いなく失敗だった」と強調した。

 報告書は同党のウェブサイトで見ることができるが、本文2ページの極めて簡素なものだ。政治的には、自民党総裁選に世間の関心が集まる中で、自党の存在感を示すためのものなので、アベノミクスは失敗だったという結論ありきだ。しかし、その分析や視点は恐ろしくむなしい。

 まず、経済政策を評価する場合、特にマクロ経済政策では、第1に雇用の確保が重要だ。第2に、その上で所得が上がればいい。要するに、雇用量と給与の2つを見なくてはいけない。

 雇用量は総務省の就業者数や失業率など、給与は厚生労働省の名目賃金指数や実質賃金指数などの統計で確認できる。

 立民は労働者に支持される政党であるはずだが、まず雇用、次に所得という観点を忘れている。前身である民主党政権と第2次安倍晋三政権のパフォーマンスを比較してみよう。まず就業者数でいえば、民主党政権時代に40万人程度減少したが、安倍政権では390万人程度増加しており圧勝だ。ちなみに、安倍政権は過去の政権の中でも雇用創出のパフォーマンスはほぼトップである。

 もっとも、雇用が増加してもそれは非正規ではないかという批判もある。雇用が増えることが先決だと考えれば正規でも非正規でもどちらでもいいのだが、念のために比較しておこう。

 民主党時代、正規雇用は50万人程度減少し、非正規雇用は100万人程度増加した。安倍政権では正規で200万人程度、非正規で220万人程度増加しており、この点でも安倍政権の圧勝であり、非正規ばかりが増加したという指摘は完全な的外れだ。

 次に、所得について比較しよう。名目賃金は民主党時代2・3ポイント低下したが、安倍政権では2・9ポイント増加した。実質賃金では民主党時代に1・3ポイント低下し、安倍政権では4・5ポイント低下している。

 立民は、アベノミクスで実質賃金が低下したというが、民主党時代も低下している。一方、名目賃金は民主党政権で低下したが、安倍政権では上昇した。所得についても、安倍政権の方が民主党政権のときよりマシだろう。

 この程度の検証力しかないと、立民の政権運営能力を疑ってしまうし、そもそも支持母体の労働者にも響かないだろう。

 これでは、11月にも予定される衆院選での政権交代はやはり無理ではないか。(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

【私の論評】安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定(゚д゚)!

アベノミクスによる雇用増は、以下のグラフをご覧いただければ、一目瞭然です。


このような成果がなぜ得られているかといえば、安倍政権の時には、結局増税を2回も実施してしまったにもかかわらず、日銀はイールド・カーブ・コントロールにより、緩和を手控えながらも緩和姿勢を崩していないからです。

さらに、上のグラフでみても、わかるとおりコロナ感染症が経済に悪影響を与えても、日本では雇用が悪化しなかったのは、以前のこのブログにも掲載したように、日本には雇用調整助成金があるからです。

この制度は、労働者の失業防止のために事業主に給付するものです。類似制度は世界ではそれほど多くないが、似た制度があるドイツも、ピーク時の失業率上昇は0・7ポイントと他国と比べて抑えられています。

日本の失業率はコロナ前の2020年2月に2・4%でしたが、その後上昇し、10月に3・1%とピークになり、21年7月は2・8%まで低下しました。米国は20年2月に3・5%でしたが、4月に14・8%とピークで、21年7月は5・4%。EUは20年3月が6・3%でしたが、8月に7・7%、21年7月は6・9%となりました。

それぞれ、コロナ前とコロナ後のピークの差は日本が0・7ポイント、米国が11・3ポイント、EUが1・4ポイントでした。コロナ前と直近の差は日本が0・4ポイント、米国が1・9ポイント、EUは0・6ポイントです。

これらの数字から、コロナ禍による失業率の上昇を最も抑えたのが日本であることがわかります。



ご存知のように、本日自民党総裁選においては、岸田氏が勝利しました。

これまでの歴史を見ると長期政権の後は短命政権が続いています。ただ岸田政権には「貯金」と「お土産」があります。

「貯金」は安倍元首相が残した「雇用の改善」と「国政選挙6連勝」です。このおかげで衆参ともに自公で過半数をがっちり確保しており、一度の選挙で多少負けても毎年の予算は通ります。

だから短命になりにくいでしょう。政権が長く続くと成果も出ます。

「お土産」は退陣する菅首相からもあり、ワクチン接種を強力に進めたおかげでコロナは終息しつつありますし、先にも述べたように、コロナで雇用が激減することもなく、菅政権下で東京オリパラも開催してもオリパラが感染を加速することもなく終えたので、国内では大きな懸案事項もありません。安倍・菅路線を継承すれば、大やけどすることもないでしょう。

そうして、今後自民党はさらにコロナ対策のために、補正予算を組むことになるでしょう。それは、様々な日程を考えると、衆院選後になるでしょう。そうして、日本経済は復活するでしょう。 つまりこれだけの貯金とお土産があれば、当面首相は誰でも務まるかもしれません。

菅退陣で政党支持率が上がり衆院選で大負けすることもないでしょう。

なぜなら、上の記事にもあるように、最大野党の立憲民主党の体たらくがあるからです。今年は、自民党の総裁選ですっかり影が薄くなったのですが、昨年も同じでした。

昨年立憲民主党はどうだったかといえば、立憲民主党国民民主党などが合流してつくる新党の代表選が7日、告示され、国民の泉健太政調会長(46)と、立憲の枝野幸男代表(56)が立候補を届け出ましたが、10日に投開票され、枝野氏が代表に選出されました。

ただ、ほぼ同時期に自民党の総裁選も行わており、野党の代表戦は影の薄いものになりました。

今年も、昨年と同様に総裁選によって立憲民主党などの野党は影の薄い状況です。

昨年に続き、今年も総裁選で、すっかり野党は影が薄くなりました。

立憲民主党の安住淳国対委員長は29日、新たな首相を選出する臨時国会に関し、予算委員会の開催を含む十分な質疑時間を確保するよう与党に要求すると強調しました。国会内で記者団に「理不尽なことをすれば(臨時国会の)初日に内閣不信任決議案提出もあり得る。徹底抗戦する」と牽制しました。

同時に「自民党総裁選で言っていたことは本当に実現するのか。土日を使ってでも予算委を提案したい。ちゃんと質疑した上で衆院選で国民の信を仰ぐべきだ」と指摘したそうです。

これに先立ち安住氏は、共産、国民民主両党の国対委員長と国会内で会談し、予算委開催を求める方針を改めて確認したそうです。

立憲民主党には、理念も信念も何もないようです。ただただ、自分が議員バッヂをつけて国会議員でいられさえすればそれでいいようです。そのためだったらイデオロギーもポリシーもかなぐり捨てて、共産党であろうと手を組むというような姿勢であれば、次の総選挙でも大敗北は確定でしょう。

まさに、安倍・菅両氏の「お土産」と立憲民主党の体たらくで、新政権は安定することでしょう。このようなことを見越してか、菅総理が総裁不出馬を公表してから、市場はこれを好感して、株価が上がり始めました。それを見越せずに、いつもと同じ対応しかできない立憲民主党には明日はないと思います。

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