2021年9月17日金曜日

中国がTPP正式申請も…加入できないこれだけの理由 貿易摩擦、領有権問題などなど門前払いの可能性―【私の論評】英国は加入でき、中国はできないTPPは、世界に中国の異質性をさらに印象づけることに(゚д゚)!

中国がTPP正式申請も…加入できないこれだけの理由 貿易摩擦、領有権問題などなど門前払いの可能性

中国の習近平国家主席

 中国は16日、日本などが参加している環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入を正式申請した。TPPによる中国包囲網に対する習近平主席の強い警戒感が背景にあるとみられるが、自由化と透明性が要求されるTPPはハードルが高い。他の加盟国との対立も抱え、門前払いの可能性もある。

 習主席は昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、TPP参加を「積極的に検討する」と表明していた。

 TPPには英国も参加を申請し、台湾も意欲を見せている。米国が離脱後、TPPを主導する日本では自民党総裁選が行われるなど政局が流動化している時期に加入を申請し、揺さぶりをかける狙いもあるようだ。

 だが、交渉入りには高い水準のルール順守が前提条件になる。TPPは国有企業への優遇や補助金で自由競争をゆがめることを禁じている。政府調達の際の外資排除や国外へのデータの持ち出し禁止を含めた強権的な自国優遇策も問題だ。共産党の一党支配をやめるぐらいの覚悟がないと加入は難しいのが現実だ。

 また、加入には全参加国の承認が必要だが、オーストラリアと貿易摩擦を抱えるほか、ベトナムとは南シナ海の領有権問題で対立、日本も尖閣問題に神経をとがらせている。

 いずれにせよ、中国の思惑に振り回されるのは得策ではない。

【私の論評】英国は加入でき、中国はできないTPPは、世界に中国の異質性をさらに印象づけることに(゚д゚)!

中国のTPP加入は、結論からいうと不可能です。そもそもWTO違反を繰り返す、中国がより厳しい貿易協定であるTPPに加入することはできません。正式申請をしても、確実に門前払いになります。

現在の通商代表部(USTR)代表キャサリン・タイ氏 両親が台湾出身の米国人

2018年、米国通商代表部(USTR)は「中国のWTO加盟支持は誤りだった」と する年次報告書を出しています。その趣旨を以下に掲載します。
中国は、2001年にWTOに加盟後、加盟議定 書に定められた条項で要求されるように、 WTOの義務に従うために何百もの法律や規制 などを改正する予定であった。

米国の政策立案 者は、中国の加盟議定書に定められた条項が、 開放的で市場主義的な政策に基づいており、無 差別、市場アクセス、相互性、公平性、透明性 の原則に立脚した国際貿易体制と両立しない既 存の国家主導の政策と慣行を解体することを望 んだ。

しかし、その希望は失われた。中国は現在、 国家主導経済のままであり、米国や他の貿易相 手国は、中国の貿易体制に深刻な問題に直面し 続けている。一方、中国はWTO加盟国として の承認を、国際貿易の支配的プレーヤーにするために利用してきた。これらの事実を踏まえ て、中国の開放的な市場指向の貿易体制が確保 されないことが証明された以上、米国が中国の WTOへの加盟を支持したことが誤りだったこ とは明らかである。

中国はWTO加盟国として の承認を、国際貿易の支配的プレーヤーにするために利用してきました。もし、仮にTPPに入れたとしても、TPPを同じように利用するだけです。

TPPの現状のルールは先進国にとっては当然のことで、部分的に異なることも多少はありますが、それを改定することはさほど難しいことではなく、加入するのは難しくないですが、中国にとっては困難です。中国が現在のままのTPPに加入するためには、国内の体制を変えなければ無理です。

特に、民主化、政治と経済の分離、法治国家化は必須です。これができないと、TPPのルールを満たすことは不可能です。しかし、これを実行してしまえば、中国共産党は国内で統治の正当性を失い、共産党一党独裁制は崩れ、現体制は崩壊することになります。

これについては、昨年このブログに掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。

習氏、TPP参加「積極的に検討」 APEC首脳会議―【私の論評】習近平の魂胆は、TPPを乗っ取って中国ルールにすること(゚д゚)!

昨年11月APEC首脳会議で議長を務めるマレーシアのムヒディン首相

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事の結論部分を引用します。

日本としては、TPPを大いに発展させ、1993年以降の世界貿易の変化を反映したTPP協定の規定をWTOに採用するように働き掛けることができます。これには、EUも賛成するでしょう。 
TPPのルールを世界のルールにするのです。単なる先進国だけの提案ではなく、アジア太平洋地域の途上国も合意したTPPの協定をWTOに持ち込むことには中国も反対できないでしょう。

TPPのルールがWTOのルールとなれば、中国は中共を解体してもTPPルールを含む新WTOに入るか、新WTOには入らず、内にこもることになります。内にこもった場合は、中国を待つ将来は、図体が大きいだけのアジアの凡庸な独裁国家に成り果てることになります。その時には他国に対する影響力はほとんどなくなっているでしょう。

いずれにせよ、TPPは加盟国だけではなく世界にとって、有用な協定になる可能性が高まってきたのは事実です。日本は、TPPのルールを世界の自由貿易のルールとするべくこれからも努力すべきです。

日本は、このような姿勢を堅持すべきです。

麻生太郎財務相は17日の閣議後会見で、中国が日本やオーストラリアなどが参加する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入を正式に申請したことについて、「今の中国が新規加入できる状態かね」と述べ、否定的な見方を示しました。

オーストラリアのテハン貿易相は17日に声明を出し、2国間で「閣僚級協議で解決すべき重要な問題がある」として中国をけん制した。中国が政治問題と絡めた制裁関税などを解かない限り、交渉入りに応じられないとの立場をにじませました。

オーストラリアのテハン貿易相

テハン氏は、加入交渉を始めるには全加盟国の承認が不可欠で、貿易自由化などで「高い水準」を満たさなければならないとの原則を強調。さらに、新型コロナウイルスや人権問題を巡るオーストラリアの対中政策に反発して、貿易を絡めて圧力を強める中国を暗に批判しました。

環太平洋連携協定(TPP)に参加する11カ国は1日、閣僚級会合「TPP委員会」をテレビ会議形式で開きました。議長を務めた西村康稔経済再生担当相は終了後に記者会見し、英国の加入交渉に関する初会合を今月中にも開催する意向を示しました。今後1カ月以内をめどに開くことで各国が合意し、自由貿易を巡るルール水準を維持することも確認しました。 

西村氏は、英国加入に「極めて大きな戦略的な意味がある」と強調しました。 

この日の会合では6月に事実上始まった英国の加入交渉の進展状況などを議論。終了後に「英国が協定の全ての義務を順守する旨を十分に示すことに期待している」との共同声明を公表しました。

今後TPPは、英国は加入可能なのに、中国は加入できないということで、改めて中国の異質性を顕にすることになりそうです。

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