2021年9月6日月曜日

中国軍機19機、台湾の防空圏に侵入 台湾が発表―【私の論評】中国の台湾武力侵攻は、少なくとも今後数十年は不可能(゚д゚)!

中国軍機19機、台湾の防空圏に侵入 台湾が発表

BBC News


台湾国防部(国防省)は5日、中国空軍機19機が、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。

国防部によると、侵入したのはJ‐16戦闘機10機、Su-30戦闘機4機、 H-6爆撃機4機、 対潜哨戒機1機。

台湾はミサイルシステムを展開させるとともに、中国軍機に遠ざかるよう警告するため、戦闘機を発進させたという。

国防部は、中国軍機が台湾沿岸より中国沿岸に近い東沙諸島の北東を通過したとする、飛行ルートを示した地図を公表した。

中国はこの件について、まだ公式なコメントは出していない。

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繰り返される飛行

台湾はここ1年以上、中国空軍機が繰り返し台湾付近を飛行しているとして、抗議を続けている。

中国は台湾を自国の一部と考えている。一方、台湾は自らを主権国家とみなしている。

中国は台湾側の発信に対する不満を示すため、しばしば軍機を台湾の近くで飛行させている。

6月には、中国軍機28機をADIZ内で飛行させた。台湾がそれまでに公表した中で、最大規模の侵入だった。

今回の飛行の背景は不明。

ただ、台湾国防部は先週、中国軍に関する分析で、台湾の防衛能力を「無力化する」能力があるとし、中国の脅威は強まっていると警告していた。

(英語記事 Nineteen China planes entered defence zone: Taiwan

提供元:https://www.bbc.com/japanese/58459780

【私の論評】中国の台湾武力侵攻は、少なくとも今後数十年は不可能(゚д゚)!

今回の記事で注目したのは、台湾の防空圏に侵入した19機のうち1機が対潜哨戒機だったということです。

中国は以前から、対潜哨戒機を台方面に頻繁に派遣しています。

台湾国防省のホームページ「中華民国国防省即時軍事動態」には、台湾防空識別圏南西空域への中国空軍機侵入の情報があります。

台湾国防部(国防省)の建物

調査期間は、2020年9月9日〜2021年6月30日までの約10か月293日間です。

中国空軍機が台湾の防空識別圏に侵入した日数は183日で、調査した総日数の6割を超えています。3日に2日侵入されていることになります。

日本の場合、接近飛行が多かった2か年でも、2017年に18日、2018年に17日です。

日本の場合は、東シナ海の中間線を越えた日数ですが、台湾の場合は、台湾が設定している防空識別圏のすべてではなく、台湾海峡の中間線とこの延長線を越えた場合のようです。

台湾海峡の南西部では、中間線まで約100キロで、東シナ海の沖縄と中国大陸の中間線は約300キロであり、距離感がかなり異なることを踏まえても、台湾への接近日数が日本の10倍以上であることは、注目しなければならないです。

中国の軍事的威嚇は、この10か月間、ずっと続いていたのです。

これら、空軍機の侵入を見ただけでも、台湾海峡の軍事的緊張度はかなり高いものと感じます。

中国空軍機による軍事的威嚇の詳細を明らかにするために、2020年、機種ごとに侵入する機数が多い順に、侵入の日数と機数を列挙します。

①相手国に最も脅威を与える戦闘機の侵入日数は32日で、他の機種と比べて少ない方ですが、機数は237機で最も多い。

②潜水艦の行動を探知する対潜哨戒機の侵入日数が最も多く、123日で、機数136機です。

③艦艇・空軍機・防空兵器のレーダーなどの電子情報を収集する電子戦機は、56日で、機数62機です。

④軍各部隊が発信する電波(通信)情報を収集して、軍の行動、組織を解明する情報収集機は、50日で、機数52機です。

⑤敵空軍機の飛行情報を収集して、友軍の戦闘機などにリアルタイムに情報提供する早期警戒管制機(AWACS)は、16日で、機数18機です。

⑥爆撃機の台湾周辺飛行は、7日で26機である。侵入機種の中では最も少ない。

この中で、最も注目すべきは、対潜哨戒機の刺入日数が最も多いことです今回も台湾の防空券に侵入した中国軍機19機のうち一機は、対潜哨戒機です。

中国の対潜哨戒機Y-8Q

台湾に接近した中国空軍機の機種は、対潜哨戒機、情報収集機、電子戦機、早期警戒管制機、爆撃機および戦闘機の6機種です。

これらの機種で最も活動日数が多かったのは、上にも掲載したように対潜哨戒機で、123日でした。台湾の潜水艦は、1945年と1985年前後に建造された旧式の潜水艦の4隻と100トンクラスの特殊潜航艇2隻だけです。

中国海軍は、たった6隻の潜水艦・艇の情報を収集するために、最も頻繁に活動しているのでしょうか。中国軍は、台湾海域の潜水艦の動きに、かなり神経質になっていることが分かります。

これは、当然のことながら、台湾の潜水艦にだけ神経質になっているわてけではないでしょう。潜水艦は、水中を潜って行動するので、なかなか発見しづらく、昔から潜水艦によって様々な情報収取活動や、待ち伏せなどで使用されてきました。台湾周辺の海域では、中国はもとより、日米やロシアや日米の同盟国の潜水艦も当然のことながら、潜んでいます。これは、断言できます。

中国としては、台湾の潜水艦というよりは、これらの潜水艦の動向に神経を尖らせているとみるべきです。特に、日米やその同盟国の潜水艦には、神経を尖らせているでしょう。

なぜなら、中国が台湾への侵攻を企てれば、当然これらの潜水艦に察知され、妨害されるのは必定だからです。

中国は中距離ミサイルの配備などで(沖縄、台湾、フィリピンなど結ぶ軍事戦略上の防衛ライン)第1列島線内で米空母が活動できない体制を実現しようとしていますが、沖縄や台湾など全てを中国のものにしない限りその実現は不可能です。

仮に中国のミサイルなどにより米空母が近づけなくなるとしても、米軍には「見えない空母」と言われる巡航ミサイル原子力潜水艦(SSGN)が4隻あります。1隻でトマホークを154発積むことができます。

中国の最大の弱点は対潜能力で、潜水艦を見つけ出す能力が低いです。台湾有事が想定された場合、600発の巡航ミサイルを積んだ「見えない空母」が、第1列島線の内側に入り込み、ピンポイントで中国のレーダーや宇宙監視の地上施設を攻撃して、まず「目」を奪うでしょう。そうなれば、中国は米空母などがどこにいるか把握できず、ミサイルを当てようがないです。

そもそも中国の空母キラーと呼ばれる弾道ミサイル「DF21D」は米空母には当たらないとみられています。弾道ミサイルはスピードがありすぎてコントロールが難しく、自由に動く対象に簡単には当てられないからです。

中国の弾道ミサイル「DF21D」

さらに、日本の潜水艦の動向にも神経を尖らせているのは明らかです。このブログには、何度か掲載したように、日本の海上自衛隊はすでに潜水艦22隻体制を構築しています。いずれの潜水艦も中国の対潜哨戒能力では発見するのは難しいです。

これらの潜水艦が、台湾近くの海域に潜み、中国軍が台湾に武力侵攻しようとして、台湾に艦艇を差し向ければ、それらの艦艇はことごとく日本の潜水艦に撃沈される可能性があります。

もっと恐ろしいのは、日米の潜水艦隊が協同した場合です。日本の潜水艦は、ステルス性が高く台湾周辺の海域や中国の海域で、自由自在に情報収集活動ができます。その情報を米軍の攻撃力の高い原潜と共有すれば、かなり効果的な攻撃ができます。

日米潜水艦隊が協同で海戦を行えば、世界最強の潜水艦打撃群になるでしょう。これでは、中国一国では、とても歯が立ちません。中国の艦艇は潜水艦も含めて、ことごとく撃沈され、航空機はもとより、レーダーや宇宙監視の地上施設はことごとく破壊されることになります。

これを中国は恐れているのでしょう。ただし、恐れているだけでは、無意味です。何か対抗手段を生み出したいでしょうが、少なくとも今後数十年は無理でしょう。それでも、台湾に侵攻しようとすれば、中国は多くの艦艇、航空機、人員を失うことになります。だからこそ、中国は超限戦などに力をいれるです。こちらのほうも警戒を怠るべきではありません。

台湾は現在最新鋭の潜水艦を開発中です。5隻で台湾を守る体制を目指しています。これに台湾が成功すれば、それ以降台湾は数十年にわたって、中国の侵攻を独力で阻止することができるようになります。

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