2021年9月14日火曜日

日本、東南アジアでテロ攻撃の可能性があるとして在住邦人に警告―【私の論評】アフガンで多くのテロ集団等が拮抗し長い間膠着状態となり、テロが世界中で蔓延する可能性は十分にある(゚д゚)!

日本、東南アジアでテロ攻撃の可能性があるとして在住邦人に警告


東京:外務省は13日、テロ攻撃の可能性があるとして、東南アジア6か国にある宗教施設や混雑した場所に近づかないよう邦人に警告した。

外務省によると、「自爆テロなどのリスクが高まっている」という情報があったという。

この警告はインドネシア、フィリピン、シンガポール、マレーシア、タイ、ミャンマーに住む邦人に向けたものだ。

このうちの数か国では、そのような脅威について何も知らず、また情報源についても日本側から伝えられていないため困惑している。

タイ外務省のTanee Sangrat報道官は、日本はこの件に関する情報源を明かさず、日本大使館も「タイに限った話ではない」こと以外に何も把握していないと述べた。

キサナ・ファサンナチャロエン警察副報道官は、タイの治安当局は、脅威の可能性について何の情報も得ていないと述べた。

同じく、フィリピン外務省も脅威が高まっているという情報について何も知らないと述べた。一方、インドネシア外務省のテウク・ファイザシャ報道官は、現地の邦人に警告が出されたこと自体を否定した。

この短い警告文の中で、日本は自国民に対し、現地のニュースや情報に注意し、「当分の間」は警戒するよう促しているが、具体的な期間やその他の詳細については触れていない。

日本の外務省は、情報源の開示や他の国々との共有に応じていない。

今回の注意喚起は関連する国々の大使館に出され、邦人に伝えられたという。

【私の論評】アフガンで多くのテロ集団等が拮抗し長い間膠着状態となり、テロが世界中で蔓延する可能性は十分にある(゚д゚)!

そのようなことを述べれば、カントリーリスクを疑われ、投資などを控えられたり、外国の企業が撤退するおそれもあります。よほど目前に明らかに、脅威が迫っている場合を除いて、いずれの国でも、テロの脅威など喧伝しないのが、国益にかなった行動といえます。

しかし、本当にテロの脅威が高まっていないと思っているとしたら、あまりにインテリジェンス能力に乏しいといわざるをえません。

なぜなら、私のような素人でさえ、国際的なテロの危険を感じるからです。それも、単なる不安などではなく、様々な情報をあたれば、その危険をひしひしと感じるからです。

世界に衝撃を与えた米同時テロから11日で20年となりました。米国は8月末でアフガニスタン戦争に幕を引きましたが、テロとの戦いに終わりは見えません。

2001年9月11日、国際テロ組織アルカイダ所属のテロリストが民間機を乗っ取り、ニューヨークの世界貿易センタービルに突っ込みました。その後のアフガン戦争は、テロ組織を根絶やしにするはずでした。

ハイジャックされた航空機が衝突し、炎上する世界貿易センタービル(ニューヨーク、2001年9月11日)

しかし20年に及ぶ戦争で米国は疲弊。イスラム主義組織タリバンの復権を許し、最終局面ではIS系勢力の自爆テロを受けました。投げ出したかのような撤収の失態も新たなリスクになりかねないです。

アフガン南部カンダハル。1日のタリバンの軍事パレードでは、米製ヘリコプター「ブラックホーク」が旋回しました。ドローンや軍用車両「ハンビー」、自動小銃M16。米国が旧政府軍に提供した武器がタリバンの手に渡りました。同国には約20のテロ組織があるとされ、アルカイダなどに流れる懸念さえあります。

テロの脅威は「アフガンをはるかに超え、世界中に転移している」(バイデン米大統領)。米国務長官が指定する外国テロ組織は70を超え20年で約2.5倍に増加しました。


米ブラウン大によれば、米国は対テロで18~20年に7カ国でドローンを含む空爆を実施し、79カ国で現地治安部隊などを訓練しました。

タリバンの勝利で、各地のテロ組織は勢いづいています。アルカイダ幹部はタリバン復権について「歴史的勝利だ」と称賛し、米への再攻撃を辞さない構えをみせています。

テロ組織の活動も20年で大きく進化しています。

「暗号資産(仮想通貨)の寄付集めを含む洗練されたサイバー技術だ」。米司法省は20年8月、アルカイダやISなどのテロ組織から数百万ドルの仮想通貨を押収したと発表しました。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は6月、ランサムウエア(身代金要求型ウイルス)攻撃の脅威は、同時テロ並みだと危機感も示しました。今後、多くのテロ組織がサイバー空間での活動を本格化させる懸念が高まっています。

アルカイダや「イスラム国」を支持する武装勢力は東南アジア、南アジア、中東、アフリカなど各地にあります。それらの活動は基本的には地域的なものですが、数としては限定されるものの、これまでも現地にある欧米権益などはテロの標的になってきました。

昨今のアフガニスタン情勢が各地の武装勢力の士気を高め、テロ活動がエスカレートすることへの懸念の声も聞かれます。

たとえば、インドネシアでは歴史的にアルカイダと関係があるイスラム過激派「ジェマーイスラミア(JI)」や「イスラム国」を支持する「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」が活動しており、インドネシアの治安当局はネット監視を含め警戒を強めています。

新華社通信(8月20日報道)によると、インドネシアでは8月中旬に国内11州でテロ組織への一斉摘発が行われ、インドネシア独立記念日(17日)にテロを計画していた容疑で計53人を逮捕され、うち50人がJIのメンバー、3人がJADのメンバーだったといいます。

 ロイター通信(8月29日報道)によると、マレーシアではタリバンがカブールで最近拘束した「イスラム国ホラサン州」の戦闘員6人のうち2人がマレーシア人だったということで、政府はこの件で警戒を強めています。

また、英国の情報機関は7月、アフガニスタン情勢が悪化すれば、イスラム過激思想の影響を受ける英国人がアフガニスタンに渡り現地のテロ組織に参加し、帰国後、国内でテロを実行する恐れがあるだけでなく、アルカイダなどは自らの勝利と認識してネット上での広報活動を活発化させ、国内に潜む過激派分子が刺激を受け単独でテロを起こす危険性があるとの認識を示しました。

 今日、アフガニスタン情勢が直接的に、グローバルなテロリスクになっているわけではありません。しかし、アフガニスタンが再び内戦の模様を呈し、第2次タリバン政権と諸外国の関係構築が上手くいなかければ、中長期的にはこういったリスクが現実を帯びてきます。

アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンは7日、暫定政権の主要閣僚を発表し、最高指導者アクンザダ師が声明で「すべてはイスラム法(シャリア)によって統治される」と宣言しました。首都カブール制圧後は穏健路線を掲げ、あらゆる勢力による「包括的な政府の樹立」を主張していましたが、強権統治時代からの幹部らが独占する体制となりました。

統治の基盤固めを急ぐタリバンは、国民に経済復興などへの参加を呼び掛け、国際社会に支援を要請しました。ただ、米政府は一部閣僚の所属組織やこれまでの活動に懸念を示しており、国内外の「タリバン政権の承認」は難航必至です。

現地メディアなどによると、閣僚ら33人が任命され、複数ポストは調整中。将来の国家体制を決める暫定政権だといい、首相のモハメド・ハッサン・アフンド師をはじめ、国連の制裁対象者や、米国が国際テロ組織に指定するグループ幹部らが名を連ねました。

タリバンの母体のパシュトゥン人が大半を占め、現段階で女性やガニ前政権のメンバーらは含まれていません。


2001年に崩壊した旧タリバン政権時代、厳格なイスラム法の実践を監督した「勧善懲悪省」も復活しました。女性の権利や娯楽が厳しく制限された当時、暴力的な取り締まりを行い、市民に恐れられました。

首相のアフンド師は「厳格な宗教指導者」とされ、旧政権で副首相などを務めました。バーミヤン巨大石仏の破壊を認める立場にあったとされています。

国際テロ組織アルカイダや、過激派組織「イスラム国」(IS)との関係を指摘されるタリバン最強硬派「ハッカニ・ネットワーク」からは、シラジュディン・ハッカニ指導者が内相に就任した他、幹部数人が閣僚に任命されました。アクンザダ師は政府の上位で意思決定する「評議会」(シューラ)を主導します。

暫定政権の発足を前に、派閥の主導権争いが伝えられました。タリバンの内情に詳しいパキスタン人専門家は「亀裂が深まるのを避けるため、ポストをすべて分け合った結果、排他的な政府となった」とみています。

これでは、第2次タリバン政権と諸外国の関係構築が上手くいくことはありません。そうして、アフガニスタンは内戦状態になるでしょう。

タリバン、旧アフガニスタンの軍の残党、アルカイダなどのいくつもの武装集団などが拮抗し、長い間膠着状態となり、紛争が継続されることになるでしょう。そうなれば、テロが世界中でエスカレートする可能性は十分にあります。

東南アジアでのテロは、その前哨戦になる可能性もあります。

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