マーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将) |
議会で、台湾は依然として中国の核心的利益として位置付けられているが、「軍事的に行おうとする意図や動機は現時点でほとんど見られない」と指摘。「軍事的に行う理由はなく、中国側も認識している。そのため、近い将来に行われる可能性はおそらく低い」とした。
また、中国が軍事的手段によって台湾全体を掌握するために必要な軍事力を備えるには「まだ道半ば」と語った。
台湾国防部(国防省)は15日、中国の戦闘機など28機が台湾の防空識別圏に侵入したと発表していた。
【私の論評】「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対する米軍の「政治的メッセージ」(゚д゚)!
そのためもあってか、最近台湾危機を懸念する声が急速に高まっています。ただ、このブログでは一環して、中国は台湾を奪取できない旨を主張してきました。
デービッド司令官の公聴会に先立つ昨年2020年9月1日、アメリカ国防総省(DOD)が「中華人民共和国を含めた軍事・安全保障に関する2020年版報告書」を発表しました(DOD Releases 2020 Report on Military and Security Developments Involving the People's Republic of China)。
報告書はミサイルと造船技術に焦点を当て、ミサイルについては、中国軍が射程500~5500キロメートルの中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていないと指摘しました。米国は元ソ連時代からロシアと締結してきた中距離核戦力(INF)廃棄条約に拘束されてきたからです。
報告書はミサイルと造船技術に焦点を当て、ミサイルについては、中国軍が射程500~5500キロメートルの中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていないと指摘しました。米国は元ソ連時代からロシアと締結してきた中距離核戦力(INF)廃棄条約に拘束されてきたからです。
したがって、もし米中が軍事衝突に至った場合、米軍は中国軍に勝つことができない恐れがあると報告書は書いています。中国軍が中距離ミサイルの大量発射という手法で、グアムや在日米軍基地を攻撃した場合に、米軍には抵抗手段がないというのが報告書の見方です。このままではインド太平洋地域における米軍の優位は保たれないと強い危機感を表明しました。
米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官 |
ところが、報告書ならびに、デービッドソン司令官の証言は、米国は中国に負けると言っているのと同じです。なぜ、そのような主張をしたのでしょうか、それにはそれなりの理由があるものと考えられます。
これは、「中距離弾道ミサイルの日本配備」を求めているということです。
米露間にはINF廃棄条約があったため、中国軍が中距離弾道ミサイルを1250発以上保有しているのに対し、米軍は全く持っていませんでした。さらには、最近ではロシアもこの条約を破り、中距離弾道弾の配備をすすめています。
そこでトランプ元大統領はINF廃棄条約から脱退し(2019年8月2日)、米国も自由に製造することができるようにして、ポストINFを配備してくれる国を探していました。韓国の文在寅大統領は習近平に忖度して断ったのですが、オーストラリアの首相は親中派のターンブル氏から嫌中派のモリソン首相に替わったので、候補地としてはオーストラリアと日本ということになりました。
6年以内に中国が台湾を武力攻撃すると言ったのは、日本には尖閣諸島があり、すぐさま影響を受けるだろうことを示唆したものです。日本が自国を守りたければ、矢面に立つ覚悟を持てという意味で、「米軍は中国軍より弱い」と誇張して、本気で「中国軍に脅威を感じている」と日本にシグナルを発したのです。
6年以内に中国が台湾を武力攻撃すると言ったのは、日本には尖閣諸島があり、すぐさま影響を受けるだろうことを示唆したものです。日本が自国を守りたければ、矢面に立つ覚悟を持てという意味で、「米軍は中国軍より弱い」と誇張して、本気で「中国軍に脅威を感じている」と日本にシグナルを発したのです。
ただし、現実には台湾にも多数の中短距離ミサイル、対空ミサイルが多数配備されているので、中国が台湾を奪取しようとした場合、台湾単独で戦ったにしても、大陸中国はかなりの損害を被ることになります。
最新型といわれる中国の戦闘機でもステルス性が低くくステルス性においては、米軍の第一世代と同程度ともみられていますので、中国が台湾に航空部隊を派遣した場合、そのほとんどが台湾に撃墜されることになります。
さらに、台湾が中距離ミサイルで中国国内の三峡ダムや重要拠点などに対して、ミサイルによる飽和攻撃を行った場合、大陸中国も甚大な被害を被ることになります。
これに、日米が加勢した場合、特に海戦においては、中国は日米に比較して、圧倒的に対潜哨戒能力と潜水艦のステルス性に劣っている、一方日米は中国より数段優れた世界一の対潜哨戒能力を持っているのと、日本は静寂性に優れた潜水艦隊を持つことと、米国は静寂性には劣るものの、強大な攻撃力を持つ原潜を多数保有していることから、海戦では圧倒的に中国が不利であり、日米は有利です。
世界一ステルス性が高いとされるB2爆撃機(手前) |
さらに、航空戦においても、米国はステルス性の高い最新鋭の戦闘機を多数配備しており、中国はこれを発見することはできません。一方、中国の戦闘機はステルス性が低く、日米は容易にこれを発見でき、地対空ミサイル、空対空ミサイルで、ほとんどが撃墜されることになります。そうなると、航空戦でも、日米はかなり有利です。
中国がいくら、中短距離ミサイルを多数所有していたにしても、その他いくら優れた兵器をもつていたにしても、ステルス性の高い航空機を撃墜したり、ステルス性が高い潜水艦を撃沈することはできません。敵を発見できなければ、攻撃することはできません。
昨年は4海域で、大規模な軍事演習を行いました、しかし最近の人民解放軍は軍事演習が目立たなくなりました。台湾侵攻をちらつかせたにもかかわらず、人民解放軍の動きは止まっています。これが、本気なら軍事演習を継続するべきです。米軍は人民解放軍の実状を見抜いたようで、台湾に米軍機を入れました。これは米軍が中国を確認するための派遣だと思われます。
おそらく、人民解放軍は物資不足で動けないのでしょう。現代の陸軍2万人規模の一個師団であれば、1日で2000トンの水・食糧・その他を消費します。空軍が陸軍の一個師団を火力支援するなら、一日で弾薬も含めて4000トン消費するのです。つまり、セットで6000トン消費するのです。
作戦規模が大きくなれば、5倍や10倍の消費になるのは当たり前です。この消費に耐えるように、各国は常に生産・輸送・備蓄・補給を行います。消費と同時に備蓄も進めるので、生産ができなければ対応困難となります。
作戦規模が大きくなれば、5倍や10倍の消費になるのは当たり前です。この消費に耐えるように、各国は常に生産・輸送・備蓄・補給を行います。消費と同時に備蓄も進めるので、生産ができなければ対応困難となります。
昨年中国は4海域で大規模な軍事演習を行ったが今年は鳴りを潜めた |
軍事演習ですら、最近実施しないというか、物資不足で実施できないような中国の実態をみれば、中国による台湾奪取など途方も無い妄想ともいえます。そもそも、兵站を維持できなければ、台湾に上陸してもすぐに奪還されることになります。
それに、ステルス性の高い日本の潜水艦や、ステルス性の高い日米の戦闘機、攻撃力の高い米潜水艦が台湾を取り囲んでしまえば、人民解放軍の上陸部隊は、台湾に上陸する前に殲滅されてしまいます。
日米とも軍は愚かではないので、初戦で、空母打撃群や艦艇を大々的に台湾に派遣するなどことはしません。初戦は日米対中国の潜水艦隊決戦になるでしょう。これにも、中国は惨敗することになります。さらに、航空機も駆逐し、場合によっては中国国内の軍事拠点も破壊した後の詰めの段階ではじめて米軍は空母打撃群を派遣することになるでしょう。
仮に人民解放軍が台湾に上陸できたにしても、補給ができずに、上陸部隊はお手上げになってしまいます。そうなると、どう考えても、現状でも、米軍が中国負けるなどということは考えられません。
やはり、米インド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官の「今後6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」との証言は、日本に対して「中距離弾道弾」を配備せよとの「政治的メッセージ」と考えるほうが筋が通っています。
やはり、今回の米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長(陸軍大将)の主張する、中国が必要とする軍事力を開発するには時間がかかるため、中国が近い将来、台湾を軍事的に占領しようとする可能性は低いという発言のほうを米軍の公式見解とみるべきでしょう。
ただ、中国の中短距離弾道ミサイルは、確かに台湾や日本の不安定要因になるのは明らかであるため、日本も中短距離弾道ミサイルの配備をすすめるべきでしょう。中国は台湾を奪取することはできませんが、それと中国の中距離弾道ミサイルの脅威とは別問題です。日本も対抗手段を持たなければ、中国の「コスト強要戦略」等に脅かされることになります。
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