2021年6月3日木曜日

三原じゅん子副大臣の鋭い眼光が話題「尾身会長の後ろで怖い」「メンチ切ってる」「ガンつけすぎ」―【私の論評】三原じゅん子副大臣は意思決定に直接関わる人、尾身氏は助言者という事実が忘れ去られている(゚д゚)!

三原じゅん子副大臣の鋭い眼光が話題「尾身会長の後ろで怖い」「メンチ切ってる」「ガンつけすぎ」


 自民党の三原じゅん子厚生労働副大臣の“メンチ”がネット上で話題になっている。

  政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会尾身茂会長が2日の衆院厚生労働委員会に出席。五輪開催について「今の状況で普通はない」とした上で「そもそもこの五輪は一体何のためにやるのか、目的が明らかになっていない」と指摘した。

  3日放送のフジテレビ「バイキングMORE」でもこの話題について放送。コメンテーターで出演した時事通信社の山田惠資解説委員が尾身会長の横で見きれる三原氏について「怖い顔がSNS上で話題になっている」と言及した。

  ツイッターでは「ニュースで尾身会長が映る度に、横にいる三原じゅん子が気になりすぎる」「尾身さんの後ろで三原じゅん子が怖い」「メンチ切ってる」「ガンつけすぎ」の書き込みが散見。副大臣という立場から、尾身会長の会見を最も近いポジションで聞くために、その鋭い眼光に注目が集まっているのは事実のようだ。

  山田氏は番組で「三原さんが「(尾身会長の)横で怖い顔をしながら、うなずいてもいたという不思議な顔をされていた」と尾身氏の厳しい指摘に首を縦に振っていることに着目。しかしMCの坂上忍は「自分も映っちゃってるから、尾身さんの言うことにもうなずいたフリをしないといけないし、いろんな感情の中であそこに座っていたような気がします」と推測していた。

【私の論評】三原じゅん子副大臣は意思決定に直接関わる人、尾身氏は助言者という事実が忘れ去られている(゚д゚)!

本日は、意思決定論から、上の記事の内容を分析してみたいと思います。

これを考える上で、尾身会長と三原副大臣の立場の違いを考慮する必要があります。

尾身 茂氏は、日本の医師、医学者(地域医療・感染症・国際保健)、厚生官僚、国際公務員を歴任されました。学位は医学博士(自治医科大学大学院・1990年)。

独立行政法人地域医療機能推進機構理事長(初代)、世界保健機関西太平洋地域事務局名誉事務局長、自治医科大学名誉教授、現在は新型インフルエンザ等対策閣僚会議新型インフルエンザ等対策有識者会議会長兼新型コロナウイルス感染症対策分科会長です。

経歴としては申し分のない立派なものです。

一方の三原厚生副大臣は、選挙で選ばれた政治家であり、しかも閣僚でもあります。一方尾身会長は、選挙で選ばれたわけではありません。どのような手続きを経て選ばれるのかは、わかりませんが、政府の指名によるものです。

三原じゅん子氏は選挙で選出された議員であり、閣僚でもある

日本のコロナ政策に関しては、尾身会長は助言をする立場です。日本政府のコロナ政策が失敗したとしても、責任を取れる立場ではありません。一方の三原厚生大臣は、直接責任のある立場です。

仮に、日本のコロナ政策が大失敗したとすれば、まず責任を取るのは厚生大臣であり、その次は厚生副大臣です。責任が重ければ、次には閣僚になることはできないかもしれません。それどころか、次の選挙では、有権者が認めなければ議員にすらなることはできないかもしれません。

尾身会長も責任をとる形で、有識者会議の会長や感染症対策文科会長などをやめるかもしれませんが、それにしても、助言機関の長をやめるというだけで、過去の経歴に傷がつくわけでもありません。

閣僚などと比較すれば、責任の度合いは段違いに低いです。コロナ対策において直接の責任を担う閣僚などは、感染症だけではなく、IOCの出方、社会や経済のあり方、国際関係などもみながら、それも過去や現在だけではなく、将来のことも考慮にいれながら、最終的な意思決定をします。総合的な観点からマネジメントするために意思決定するのです。

現在や過去のことだけを考え、将来を無視するような意思決定であってはならないのです。

コロナ対策においても、最終意思決定は閣僚ならびに総理大臣が行うべきものです。尾身会長が行うべきは、感染症専門家の立場から助言を行うことです。選挙で選ばれていない専門家が、政府のコロナ対策を左右することはできないし、すべきでもありません。

尾身会長が、その一線を超えれば、それはすでに民主主義ではなくなります。無論、尾身会長自身は、そのようなことはしてないようではありますが、マスコミなどに発言を切り取られ、マスコミや野党の倒閣運動にうまく利用されているようではあります。

それにしても、今回の尾身会長の、五輪開催について「今の状況で普通はない」とした上で「そもそもこの五輪は一体何のためにやるのか、目的が明らかになっていない」との指摘はたとえ切り取りであったにしても異様です。

他のメディアによると、尾身氏の発言は「何のために開催するのか明確なストーリーと、リスクの最小化をパッケージで話さないと、一般の人は協力しようと思わない」と述べたとされています。

助言者という立場では少なくとも「今の状況では難しい」などとそのエビデンスを含めて発言すべきであり、「五輪の目的」などには言及すべきではありませんでした。責任のない人間がここまでの発言をすることは、決して許されることではありません。

このような発言を衆院厚生労働委員会で聴いていた、三原じゅん子氏の表情が固くなるのは当然です。このような発言が続くなら、政府としては尾身氏を解任せざるをえなくなるでしょう。

これは企業のことを考えれば、容易に理解できるでしょう。監査役や、相談役などの人間が、株主総会などの公の場で、たとえ感染症リスクのようなリスクがあったにせよ、多くの取引先の直接の利害もからむ会社が行う一大イベントに関して、「行う意味がわからない」「誰も協力しない」などと発言すれば、どうなるのか、考えてみればご理解いただけるものと思います。

ただし、政府としては、このような反対意見も十分に検討する機会を持ち総合的な観点から意思決定するのは当然のことです。

マネジメントの大家ドラッカー氏は意思決定について以下のように語っています。
意思決定についての文献のほとんどが事実を探せという。だが、成果をあげる決定を行う者は、事実からスタートすることなどできないことを知っている。誰もが意見からスタートする。(『経営者の条件』)
ドラッカー氏は、意思決定が正しいものと間違ったものからの選択であることは稀だと言います。せいぜいのところ、かなり正しいものとおそらく間違っているものからの選択なのです。はるかに多いのは、一方が他方よりもたぶん正しいだろうとさえいえないような2つの行動からの選択だといいます。

最初から事実を探すことを求めるのは好ましいことではないのです。なぜなら誰もがするように、すでに決めている結論を裏づける事実を探すだけになるからです。

見つけたい事実を探せない者はいないのです。 これは、野党などのやり方をみていればわかります。とにかく、倒閣のためには、疑惑でもなんでもないものを疑惑とするのですが、結局安倍政権も菅政権も倒閣できていないです。

意思決定も科学と同じように仮説が唯一の出発点です。われわれは仮説をどう扱うかを知っています。論ずべきものではなく、検証すべきものです。

これは事実と事実のぶつかり合いではなく、意見と意見とのぶつかり合いなのです。それぞれの意見がそれぞれの事実を見ています。それぞれの事実を現実としているのです。
初めに意見をもつことを奨励しなければならない。そして意見を表明する者に対しては、事実による検証を求めなければならない。仮説の有効性を検証するには、何を知らなければならないか、意見が有効であるためには事実はどうでなければならないかを問わなければならない。(『経営者の条件』)

 ドラッカー氏は意思決定に関して、以下のようなことも語っています。

マネジメントの行う意思決定は全会一致によってなしうるものではない。対立する意見が衝突し、異なる見解が対話し、いくつかの判断のなかから選択が行われて初めてなしうる。したがって意思決定における第一の原則は、意見の対立を見ないときには決定を行わないことである。(『エッセンシャル版マネジメント』)

20世紀最高の経営者GMのアルフレッド・スローンは、反対意見が出ない案については、検討不十分として結論を出させなかったといいます。

アルフレッド・スローン氏

意見の対立を促すには理由があります。一見もっともらしいが間違っている案や、不完全な案にだまされなくするためです。頭脳と感性を刺激し、すばらしい案を生み出すためです。

常に代案を手にするためでもあります。行なった意思決定が実行の段階で間違いであることや、不完全であることが明らかになったとき、途方に暮れたりしないためです。

そもそも戦略にかかわる問題については、ある案だけが正しく、ほかの案は間違っているなどと考えるべきではありません。そのようなことは、ありえないとすべきです。もちろん自分が正しく、他人が間違っていると考えてもならないです。なぜ意見が違うのかを常に考えなければならないです。

 明らかに間違った結論に達している者がいても、それは、なにか自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えなければならない。(『マネジメント』)

ドラッカー氏の意思決定に関する主張からすれば、尾身氏がオリンピック開催に反対することは間違いではないと思います。 しかし、尾身氏が一つ間違えていることがあります。それは、尾身氏は助言者であって、意思決定者ではないということです。助言者は、意思決定権者に様々な情報を伝えるのが役目であり、いかなる意思決定にも関与すべきではありません。

上の意思決定の原則は、すべて最終意思決定者や最終意思決定に直接関わる人、すなわち意思決定に責任を持つ人達にあてはまることです。

助言者には当てはまりません。その助言者が、政府が推進する五輪に対して上記のような発言をしたということに驚きを隠すことができません。

菅総理の学術会議人事に対して反対する人々


最近では、学術会議の人事をめぐつて、人事の原則を無視したような、発言や行動が目立ち、今回は意思決定の原則から外れたような発言や行動がなされ、なにやら、日本社会の根幹のタガが外れてしまったのではないかと思えてなりません。

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