政府は、日本の大学や研究機関を通じて軍事転用可能な先端技術が海外に流出するのを防止するため、外国政府の「強い影響下」にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とする方針を固めた。安全保障上の懸念が強いケースは不許可とし、流出を阻止する。
複数の政府関係者が明らかにした。外国為替及び外国貿易法(外為法)の通達を改正し、2022年度までの運用開始を目指す。中国は海外に派遣した留学生・研究者や、日本人を含む外国人への資金提供などを通じ、軍事転用可能な技術の獲得を図っているとされ、対策を強化する。
外為法は、軍事転用可能な機微技術の外国人に対する提供は、国内であっても「みなし輸出」に当たるとし、輸出と同様に経産相の許可制としている。
ただ、現行制度では、国内で雇用された外国人や入国から6か月が経過した外国人は、日本人と同じ「居住者」として扱われる。「居住者」に対する軍事関連技術の提供は許可が不要となり、政府内で「技術流出の抜け穴」だとして規制強化策が検討されてきた。
通達の改正では、「居住者」であっても、雇用関係や資金提供などを通じて外国の政府や法人から「強い影響」を受けていると判断される場合は、こうした「居住者」に技術提供を行おうとする大学や研究機関、企業に対し、経産相への許可申請を義務付ける。
日本人研究者は「居住者」に当たるが、外国の「強い影響下」にあれば同様に規制対象とする。こうした研究者への技術提供が外国人への提供と同一視できる場合なら、現行法の運用の厳格化で規制可能だと判断した。中国の人材招致プロジェクト「千人計画」に参加している研究者などを想定している。「強い影響下」にあるかどうかの判断基準の具体化も急ぐ。
留学生・研究者らと外国政府との関係などの把握は、大学などが担う。政府は、外国からの資金提供状況や外国機関での勤務経歴などの情報を大学などと共有することも検討している。
一方、自由な研究活動を阻害しないため、留学生らに対する基礎研究分野の情報提供や、一般的な特許出願内容の情報公開、研究者による論文発表などは規制の対象外とする考えだ。
【私の論評】これは政府が昨年5月に施行された改正外為法を厳格に適用し取締を強化していく前ぶれ(゚д゚)!
外為法(「外国為替及び外国貿易法」)は、わが国と外国との間の資金や財(モノ)・サービスの移動などの対外取引や、居住者間の外貨建て取引に適用される法律です。
外為法の目的は、対外取引に対し必要最小限の管理・調整を行い、対外取引の正常な発展やわが国または国際社会の安全の維持等を促すことにより、国際収支の均衡と通貨の安定を図り、さらにはわが国経済の健全な発展に寄与することです(同法第1条)。
外為法を所管しているのは、財務大臣と経済産業大臣ですが、同法第69条の定めに基づき、日本銀行がその事務の一部(許可申請書、届出書、報告書の受理事務や国際収支統計等の作成事務)を行っています。
外為法を所管しているのは、財務大臣と経済産業大臣ですが、同法第69条の定めに基づき、日本銀行がその事務の一部(許可申請書、届出書、報告書の受理事務や国際収支統計等の作成事務)を行っています。
外為法は1998年(平成10年)4月に抜本的に改正され、資本取引の「事前届出・許可制」が原則として廃止されました。これにより、現在は、対外取引を行った後に当該取引の内容を財務大臣や事業所管大臣等に事後的に報告する「報告制度」が基本となり、許可や事前届出を要するのは、経済制裁や一部の直接投資・技術導入に限られるようになりました。
戦後の日本では当初、国内産業を守りつつ、貴重な外貨を日本企業の設備投資に回すため対外取引は制限されてきました。1980年代にかけて自由化にかじを切って以降は、日本企業への出資などを原則自由とする法規制が形作られました。
しかし先端技術が民間から多く生まれ、企業が持つデータの価値が高まるなかで、近年は規制強化の動きが目立つようになりました。米国は昨年2月13日、対米外国投資委員会(CFIUS)の機能を強化する法律を施行。重要技術やインフラ、個人データを扱う事業への出資は支配権を取らなくても審査することにしたほか、軍事施設の近くにある不動産の取引も審査対象に加えました。
このように外為法は、法律そのものは、十分対応していたのですが、運用が穴だらけだったところがあります。本来みなし輸出(日本政府から業務を受注した企業が、日本政府の技術や機密に関連する情報を日本人あるいは永住権保持者以外に渡すこと)が確認された時点で外為法違反なのですが、取り締まりができていなかったのです。
今回は、経済制裁等を実施していない外国政府であっても、そのの「強い影響下」にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とするということのようです。許可されていないものを提供した場合は、外為法違反で取り締まるということです。無論これは、中国を念頭においたものであるとみられます。
ただ、米国がデカップリングを推進しても、日本から米国の技術やそれかわる日本独自の技術が中国に漏れることなどがあれば、米国のデカップリング政策は無意味になります。だから、バイデン政権は日本を含め、同盟国との連帯を強め、中国包囲網を築きたいようです。
日本は安倍元総理により、アジア太平洋戦略に米国を組み入れることに成功し、さらにQuadでも米国を取り込み、米国をアジアの安定と平和の一角を占めるように促し、それに成功しました。これはトランプ政権のときのことですが、バイデン政権も継承しています。
一方で、日本には政界や財界に親中的な勢力も多く、日本から米国の技術や日本独自の技術が中国に漏れる可能性は未だ高いですし、事実一部の情報は漏れているものと考えられます。
日本としては、中国包囲網築きたい米国の考えは、以前から認識しているため、これに応えるためにも、特に軍事転用可能な先端技術が海外に流出するのを防止するために、中国の強い影響下にある留学生や日本人研究者に対する技術提供は、経済産業相の許可制とする方向で検討をすすめているのだと考えられます。
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これでは、日本の先端技術が中国にただ漏れであり、これによって、中国はFCVの技術を手にして、将来これによって自動車販売で急速に伸びていく可能性も高いです。
このようなことは、中国をデカップリングしようとしている米国からみても、裏切り行為であるとうつることでしょう。この状態を日本が放置しておけば、米国はトヨタを制裁対象にすることも十分考えられます。
しかし、このようなことになる前に、日本政府はこれに対処するため、外為法を弾力的に運用していく必要があります。たとえば、外為法の輸出管理の輸出規制品目に、FCV技術を用いた製品を加えるなどのことを実施すべきです。
中国と取引している企業や、これからそうしようと考えている企業は、このことを前提として、経営戦略を立案すべきです。
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