2021年4月9日金曜日

米中対立下の世界で「いいとこどり」はできない―【私の論評】米中冷戦は、米ソ冷戦と同じく、イデオロギー対立、大国間の勢力争いという2つの要素で戦われいずれ決着する(゚д゚)!

米中対立下の世界で「いいとこどり」はできない

岡崎研究所

 中国政府は、3月11日に閉幕した全人代で、香港の立法委員選挙の制度を変えることを打ち出し、香港の一国二制度をほぼ完全に葬り去ろうとしている。直接選挙される立法委員を50%から22%まで減らす。従来は行政長官を選んでいた選挙委員会の権限を拡大し、立法会の議員の一部も選ぶようにする。資格審査委員会を設置し、候補者が「愛国主義」であるかどうかなどの審査を受けるように求める。などといった内容である。これは、中国による自由主義の価値への重大な挑戦の最新の例の一つである。


 こうした香港情勢をとらえて、エコノミスト誌3月20日号は‘How to deal with China’と題する社説を掲載し、これから中国に見られる専制と自由の価値を擁護する勢力間の長い闘争が行われていくという情勢判断をしている。香港の自治と民主政が中国に踏みにじられていったこと、中国の政治の在り方を見て、こういう判断に行きついたということだろう。3月下旬のアンカレッジでの米中会談を見ても、この情勢判断は正しいと思われる。

 日本は、米中対立の時代が来ていることを明確に理解し、その価値観からして米国の側に立つというのが基本である。安全保障は米国に依存するが、中国との関係も特に経済面では重視するというような姿勢をとれるような生易しい状況ではない。

 この米中対立については、イデオロギー対立なのか、経済・技術の主導権争いなのか、あるいは大国間の勢力争いなのか、いろいろな説明があるが、これらの対立が複合的に重なり合ったものであると考えるべきだろう。米ソ冷戦時代はソ連の経済力は弱く、対立はイデオロギー対立と軍事対立を中心に行われたが、今度の米中対立は、中国が強い経済力を持つ中で、経済技術面での競争がかなりの比重を占めることになるだろう。これが物事を複雑化する。

 短期的には、もし選択を迫られれば多くの国は西側より中国を選ぶ可能性もある。中国は64か国にとり最大の商品貿易パートナーであるが、米国は38か国にとりそうであるに過ぎないからだ。長期的には、国の大きさ、多様性、革新性により、中国は外部圧力に適応できる能力を備えているかもしれない。香港での民主主義の後退は香港のドル決済や株式市場の繁栄に影響を与えていないし、中国本土への投資も盛んであるという。レーニンは「資本家というものは自分を縛り首にする縄さえ利潤のためには売るものである」といったことがあるが、大企業も徐々に中国への投資などを考え直すべきであろう。

 上記社説は、厳しい米中対立を予測しつつも、対応策として対中国「関与」が唯一賢明な道であるというが、これには必ずしも賛成できない。「関与」は何を意味しているのか、分からないが、中国の国際法違反を看過して普通の対話をするということならば、賛成しがたい。ダメなものはダメとし、それなりのコストを課していくべきであろう。

 より長期的には、中国の勢いはそれほど続かないと思われる。人口の少子高齢化はすでに始まっており、一人っ子政策のマイナスは大きくなっている。特に若年層での男女の比率の不均衡は、さらなる少子化につながる。環境面での制約、水不足や大気汚染はいまそこにある危機である。さらに言うと、専制体制は政治の不安定化の危険と隣り合わせである。国民の負託を受けているとの正統性がない政権には脆弱性がついて回るものである。

【私の論評】米中冷戦は、米ソ冷戦と同じく、イデオロギー対立、大国間の勢力争いという2つの要素で戦われ、いずれ決着する(゚д゚)!

上の記事では、米中のイデオロギー対立なのか、経済・技術の主導権争いなのか、あるいは大国間の勢力争いなのか、いろいろな説明があるが、これらの対立が複合的に重なり合ったものであると考えるべきだろうとしています。

そうして、米ソ冷戦時代はソ連の経済力は弱く、対立はイデオロギー対立と軍事対立を中心に行われたが、今度の米中対立は、中国が強い経済力を持つ中で、経済技術面での競争がかなりの比重を占めることになるだろうとしています。

しかし、私はそうは思いません。特に経済についてはそうです。以前このブログでは中国経済について分析しました。その記事のリンクを掲載します。
中国経済、本当に崩壊危機の様相…失業者2億人、企業債務がGDPの2倍、デフォルト多発―【私の論評】中国には雇用が劣悪化しても改善できない構造的理由があり、いまのままではいずれ隠蔽できなくなる(゚д゚)!
中国・人民大会堂(「Wikipedia」より)

この記事で、中国の経済統計はそもそもフェイクであり、フェイクであることを前提とすれば、中国が経済発展して、米国経済を追い抜くなどという考えはファンタジーに過ぎないことを解説しました。以下に、この記事より引用します。
中国が発表した昨年(2020年)の四半期ごとのGDP成長率は、前年同期比で1-3月期がマイナス6.8%、4-6月期がプラス3.2%、7-9月期がプラス4.9%、10-12月期がプラス6.5%です。この数字を前期比に変えると、年率換算で1-3月期がマイナス37%、4-6月期がプラス60%、7-9月期がプラス13%、10-12月期がプラス12%です。

1-3月期のマイナス37%は随分大きなマイナスに見えるかもしれないですが、英国の4-6月期のマイナス60%と比べると遥かに軽いことになります。

確かにコロナ禍は英国に大きな打撃を与えました。コロナ禍前のイギリスの完全失業率は4.0%でしたが、コロナ禍発生後に最大で5.1%にまで上昇しました。失業率が1.1%も上昇し、それが一時的にはGDPマイナス60%という大きなブレーキにつながったのです。

中国政府が発表する失業率統計はGDP同様全くあてにならないことで有名であり、これをそのまま真に受けるわけにはいきません。では、他の機関はどのような数値を出しているのみてみます。

アジア開発銀行は6290万人から9520万人が新たに失業したのではないかと推計しました。「スイス銀行」の俗称で知られるUBSは7000万人から8000万人が新たに失業したのではないかと推計しました。中国の有名エコノミスト、李迅雷氏も、新たな失業者は7000万人を超えるとし、これによって失業率が20.5%まで高まったのではないかと述べています。
更に引用します。
中国のスマホの国内出荷台数は2016年に5.6億台だったのが、2017年に4.9億台、2018年に4.1億台、2019年に3.9億台、2020年に3.1億台と、年々縮小し続けています。スマホは2〜3年もすればバッテリーのもちが悪くなって買い替えたくなるものだが、買い替え需要があまり発生していません。スマホは中国でも、多くの人の必需品になったようですが、それにしても横ばいではなく、年々下がっているのです。

中国の乗用車の販売台数の推移はどうかといえば、2017年に2376万台だったのが、2018年に2235万台、2019年に2070万台、2020年に1929万台と、やはり年々落ちています。これを見ると富裕層の消費も伸びているとは考えにくいです。

これでは、毎年6%以上の経済成長を続けてきたという話自体がフェイクだと考えないと辻褄が合わないです。

以上で示したように、中国の経済統計はそもそも出鱈目です。これは信用するわけにはいきません。

さらに、このブログでも 何度か掲載してきたように、中国経済には2つの構造的な大問題があります。一つ目は中進国の罠であり、2つ目は国際金融のトリレンマです。

一つ目の中進国の罠は、一種の経験則であすが、発展途上国が一定の中所得までは経済発展するが、その後は成長が鈍化し、なかなか高所得になれないのだ。ここで、中所得の国とは、一人あたりGDPが3000~10000ドルあたりの国をいうことが多い。10000ドルというと日本円でいえば、100万円くらいです。

確かに、日本ではパートやアルバイト等でない限り、普通に働いている人で、年収が100万という人はいないです。

中国に関しては、現在年収を平均すると、10000ドル前後になっています。そうなると、中進国の罠にはまる可能性が高まっているわけです。

どうして、中進国の罠があるかといえば、以下に私の仮説を掲載します。結局中進国では、民主化、政治と経済の分離、法治国家化が十分になされないので、ある一定程度まで経済が発展しても、その後は発展しないというものです。

かつての先進国のように、これらがなされれば、多数の中間層が輩出されて、それらが自由に社会経済活動を行い、その結果として経済発展するのです。その過程においては、社会のあらゆる層や、地域でイノベーションが起こります。

多くの中進国で、経済発展がとまってしまうのは、民主化、政治と経済の分離、法治国家化がなされず、その結果として多数の中間層が輩出されることもなく、これらが自由に社会経済活動をすることもできません。

このような社会で、現在の中国のように、政府が号令をかけて、多くの資金を提供してイノベーションをしたとしても、社会の多くの層や地域でイノベーションが起こることはなく、遅れた社会が温存され、結局のところ経済成長が止まってしまうです。

これは、現在まさに中国ははまり込んでいる罠であり、今後中国は経済発展することはないでしよう。

さらに、もう一つの構造的な問題は、国際金融のトリレンマにはまってしまい、中国は経済政策の一環として、独立した金融政策を実施できいないということがあります。これも先のリンクの記事から引用します。

 先進国が採用するマクロ経済政策の基本モデルとして、マンデルフレミング理論というものがある。これはざっくり言うと、変動相場制では金融政策、固定相場制では財政政策を優先するほうが効果的だという理論だ。

 この理論の発展として、国際金融のトリレンマという命題がある。これも簡単に言うと(1)自由な資本移動、(2)固定相場制、(3)独立した金融政策のすべてを実行することはできず、このうちせいぜい2つしか選べない、というものだ。
 先進国の経済において、(1)は不可欠である。したがって(2)固定相場制を放棄した日本や米国のようなモデル、圏内では統一通貨を使用するユーロ圏のようなモデルの2択となる。もっとも、ユーロ圏は対外的に変動相場制であるが。

 共産党独裁体制の中国は、完全に自由な資本移動を認めることはできない。外資は中国国内に完全な自己資本の民間会社を持てない。中国へ出資しても、政府の息のかかった国内企業との合弁経営までで、外資が会社の支配権を持つことはない。

 ただ、世界第2位の経済大国へと成長した現在、自由な資本移動も他国から求められ、実質的に3兎を追うような形になっている。現時点で変動相場制は導入されていないので、結果的に独立した金融政策が行えなくなってきているのだ。

中国では、雇用がかなり悪化していますが、これを是正するには、大規模な金融緩和をすることが必要不可欠なのですが、それを中国共産党はできないのです。

これは、中国が民主化、政治と経済の分離、法治国家化の実施、変動相場制に移行しなけばは、これからも中進国の罠にはまりつづけ、独立した金融緩和が実施できないことを意味します。

であれば、中国がこれから過去のように経済発展する見込みはないということです。ここで、元の議論に戻ります。

1988年ソ連ではじめて行われたミスコンの様子


現在の米中の対立は、イデオロギー対立、経済・技術の主導権争い、大国間の勢力争いが複合的に重なり合ったものでしたが、今後中国は経済発展できないので、いずれ、イデオロギー対立、大国間の勢力争いという2つの要素で戦われることになるでしょう。

米ソ冷戦時代と同じく、いずれ決着がつくことになるでしょう。私は、おそらく10年くらいで決着がつくと考えています。

その時には、中国共産党は崩壊し、ある程度の民主的な国家がいくつかできるか、あるいは緩い連合体を形成するなどの形になると思います。

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