2021年4月21日水曜日

日米が楽天グループを監視 中国企業株主で両国の情報流出を警戒 共産党の意向強く…経済的恩恵だけ享受はもはや通用せず―【私の論評】日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動をする楽天(゚д゚)!

日米が楽天グループを監視 中国企業株主で両国の情報流出を警戒 共産党の意向強く…経済的恩恵だけ享受はもはや通用せず


 日米両政府が、経済安全保障の観点から楽天グループを共同で監視する方針を固めた。中国IT大手の騰訊控股(テンセント)子会社が3月に大株主となったことで、日米の顧客情報が中国当局に筒抜けになる事態を警戒しているという。

 携帯電話事業参入で財務が悪化した楽天は日本郵政などを引受人に総額2423億円の第三者割当増資を実施。テンセント子会社は657億円を出資し、3・65%を保有する大株主となった。

 外為法では安全保障にかかわるサイバーセキュリティーや通信などの分野で外国の企業と投資家が国内企業に1%以上出資する際、事前届け出を求めている。資産運用目的で経営に関与しない「純投資」の場合は免除する仕組みで、楽天はテンセントの出資を純投資と説明する。

 だが、日本政府は楽天が米国でもネット関連事業を手掛け、米政府が自国民の情報流出リスクを懸念する事情も考慮。テンセントによる経営関与の有無や楽天の情報管理の実態を継続的にチェックし、米当局と随時意見交換する方針だ。

 テンセントは中国を代表するITグループで、ゲームや通信アプリ「微信(ウィーチャット)」などを手掛けるが、中国当局は自国のIT大手への統制を進めている。

 中国と覇権を争う米国も中国ハイテク企業への締め付けを強めており、日米首脳会談でも経済安全保障が議題となった。

 共産党の意向が強い中国では、経済活動に大きなリスクがつきまとう。政治問題に耳をふさいで経済的な恩恵だけを享受するやり方は通用しなくなっている。

 楽天グループは「テンセント子会社の出資は純投資であり、業務での協力を前提としたものではない。楽天の経営、ガバナンス、データに関与するものでは全くない。楽天と株主の間で情報は遮断され、特段懸念されるような事態は生じない」とコメントした。

【私の論評】日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動をする楽天(゚д゚)!

楽天グループを巡る「監視」が強まっています。共同通信は20日、楽天が中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)子会社から出資を受けた点について、日米両政府が共同で監視していく方針を固めたと報じました。この一報を受け、21日の東京株式市場では楽天株が一時前日比約6%下落しました。

日本政府は、通信事業を営み、莫大な個人情報を持つ楽天に対してテンセント子会社が出資する問題点に対して、きちんと対応する姿勢を見せるべく、共同監視の方針を打ち出したのでしょう。ただ、監視といっても日本側が「聞き取り」をして、それを米国と共有するスキームだといいます。

テンセント本社

米国では対米外国投資委員会(CFIUS)に、米国企業の買収や株式取得が安全保障に与える影響を調査する権限が与えられています。ところが、日本政府がそれをチェックする手段を持っていません。企業が必ず真実を語る性善説のうえに成り立つもので、プレッシャーにはなるものの、本質的な監視になるのか疑問符がつきます。

ただ、米国は国債金融を牛耳っているので、資金の流れを監視できますし、さらに高度なインテリジェンス能力を持っているので、様々な情報を得ることができます。これは、米国ではなく日本は日本政府にとって得られるものが多い共同監視ということができます。

楽天には、もう1つの監視が強まりつつあります。

それが、財務の健全性への監視です。

総務省は14日、高速・大容量通信規格「5G」向けの追加電波を、楽天モバイルに割り当てると発表した。東名阪エリアを除く全国において1.7GHz帯の基地局を開設できるようになる。地方での通信エリア拡大が期待でき、大手3社に比べて脆弱な楽天の通信環境の改善が見込まれます。

楽天にとっては悲願の割り当てです。ただ、認可にあたっては12の条件が課せられています。その1つに「設備投資及び安定的なサービス提供のために必要となる資金の確保、その他財務の健全性の確保に努めること」があります。

認可の条件に財務の健全性の確保が明記されているのです。これは2018年4月に楽天モバイルの参入を認めた際にもついた条件です。モバイル通信はライフラインの1つとなりました。インフラ事業を営むにあたり、資金難となって突然サービスを停止されては困るからです。

財務の健全性を示す指標の1つに自己資本比率があります。楽天の自己資本比率は20年末時点で4.86%でした。金融事業を抱えるため低くなるのは仕方がない部分もありますが、16年末の14.82%や19年末の8.03%と比べると、低下が著しいです。楽天はモバイル事業への投資がかさみ、前期に1000億円超の最終赤字となりました。今期もモバイル事業での投資を継続し、赤字の公算が大きいです。

  楽天グループ連結経営指標等(国際会計基準) クリックすると拡大します

楽天は4月19日、外貨建てでの永久劣後債の発行を決めたと発表しました。ドル建てが総額17億5000万ドル(約1900億円)。ユーロ建ては10億ユーロ(約1300億円)で、発行総額は約3200億円となります。一度の起債では同社の過去最大規模です。

劣後債は、償還や発行体の解散または破綻時に他の債務への弁済をした後の余剰資産により弁済される債券である。 このため、普通の債券による資金よりは株式発行などにより得られる自己資本に近い性格の資金となる。 そのため、通常は同じ会社が発行する普通の債券よりも高い金利が設定される。

ただ、格付け会社からの格下げリスクは抑えられるメリットもあります。また楽天グループは国際会計基準を導入しているため、永久劣後債で調達した資金を全額資本として扱えます。自己資本比率の改善にもつながります。

3月には冒頭で扱ったテンセント子会社や日本郵政などから総額2400億円の出資を受け入れました。矢継ぎ早に資金調達に走る背景には、財務の健全性を確保しつつ、モバイル事業のインフラ投資を加速する狙いがあります。

一方でまだ足りないとされている、数千億円をどう調達するかが課題です。楽天が非金融事業で稼ぐ営業キャッシュフローよりもモバイル事業の設備投資が大きくなり、その赤字額は「2年で1兆円」ともいわれています。劣後債の発行や第三者割当増資で6000億円弱を調達したのですが、その差である4000億円強をどう調達するかが課題なのです。

また、楽天モバイルは20年4月から今年4月まで、「1年間無料」とするキャンペーンを実施したため、モバイル事業の赤字は続きます。この4月からは、1年間無料だったユーザーの期限が終わり、有料へと切り替わるタイミングが始まっています。

楽天モバイルの売りの1つが、「いつでも解約、解約金は不要」というものです。いわゆる「2年縛り」のように、期間中に解約した場合の違約金も発生しないのです。ユーザーにとってはメリットがありますが、楽天からすればいつでも解約されるリスクでもあるのです。競合が20GBで約3000円という新料金プランを3月に始めており、楽天モバイルの競争優位性は低下しています。

楽天モバイルでの収益化が難しい中で、いかに資金を確保するのでしょうか。おそらく保有する海外株式の売却や傘下のフィンテック企業のIPO(新規株式公開)を用いるのではないかと考えられます。IPOは準備に時間がかかるため容易ではないですが、対応策を示さなければ格下げリスクが高まってしまうことになります。

もう一つ問題があります。それはクリーンネットワーク計画への対応です。

昨年8月5日、米国務省のマイク・ポンペオ長官は「米国の資産を守るためのクリーンネットワーク計画の拡大を発表する」という声明を発表しました。実はこの計画は突然湧いて出たものではなく、4月に発表された「クリーンパス・イニシアチブ」という、米国の5GインフラからファーウェイやZTEといった中国の通信企業を排除しようと再確認する取り組みが発展したものです。

クリーンパス・イニシアチブを発表したポンペオ国務大臣(当時)

クリーンネットワーク計画は、「中国共産党のような悪意ある攻撃者による執拗な侵入工作から、国民のプライバシーや米企業の最も機密性の高い情報を守るためのトランプ政権による包括的な取り組み」だと発表されています。この計画では、通信やテクノロジーのインフラを守るための5つの分野を指定しています。

まずは、「クリーンなキャリア」を標ぼうして、通信ネットワークが「信用ならない中国」の企業とつながらないようにすることを確認するといいます。さもないと、米国の安全保障への脅威になるからです。

2つ目は「クリーンなストア」。スマートフォンなどでアプリを入手するストアから中国製のアプリを排除します。中国製アプリはプライバシーを危険にさらし、ウイルスだけでなくプロバガンダや偽情報をばらまきます。スマホなどのデバイスから、個人や企業の貴重なデータが盗まれると、中国政府の利益になりかねないからです。

3つ目は「クリーンなアプリ」。中国のスマホメーカーは信用ならないアプリをスマホなどにプリインストールしたり、ダウンロードさせようとします。国務省によれば「中国政府による監視活動の手先であるファーウェイ」は、米国や他の国の先端企業のイノベーションを利用しており、そうした企業はファーウェイ製スマホなどのアプリストアから自分たちのアプリを撤退させるべきだと主張。さもないと、中国の人権蹂躙活動の片棒を担ぐことになると訴えています。

4つ目は、「クリーンなクラウド」です。中国製のクラウドサービスに対するけん制です。米国民の貴重な個人情報や、新型コロナのワクチン研究などを含む企業の知的財産が、敵対国家である中国のアリババやバイドゥ、テンセント、チャイナテレコム、チャイナモバイルといった企業のクラウドシステムで保存されたり処理されたりするのを防ぐ必要があると主張しています。さもないと、クラウドから中国政府などに情報が盗まれるというのです。

最後は、「クリーンなケーブル」です。インターネットの大半は、陸上や海底に設置された光ケーブルでデータを運ぶのですが、中国共産党はそうしたケーブルからとんでもない規模でスパイ工作を行って情報を獲得しています。世界中の大陸間を走る海底ケーブルから情報が盗まれないよう国外の同盟国と警戒を続けると述べています。

これらが、トランプ政権のクリーンネットワーク計画です。米国で禁止される方向で進んでいたTikTokやWeChatへの強硬姿勢も、まさにこの流れから出てきたものです。要するに、今後はこれまで以上に範囲を広げて中国企業などを締め付けていこうという意思表明なのです。

そうして、このクリーネットワーク計画は、バイデン政権にも引き継がれています。そしてこれに、既に述べた5Gなどの「クリーンパス・イニシアチブ」を加えることで、米政府の中国企業排除「クリーンネットワーク計画」が完全なものになります。

ちなみに米国務省は、これらの主張をクリアしたクリーンな通信企業を合わせて公開しました。その中には、日本からは、NTTやKDDI、楽天、ソフトバンク、NEC、富士通も含まれていました。

また英国やチェコ、ポーランド、スウェーデン、エストニア、ルーマニア、デンマーク、ラトビア、ギリシャなどが、ファーウェイよりもスウェーデンのエリクソンを優先的に導入すると約束していると発表しました。これらの国が、米国の中国企業排除に賛同しているということです。

楽天は愚かだと思います。新たなネットワーク構築するので、中国抜きのクリーンネットワーク作りやすい環境にあったのにもかかわらず、わざわざ中国を引き入れたのです。これで、米国からは楽天は「クリーンネットワーク計画」におけるクリーンな通信企業のリストから除外されたでしょう。

古いネットワークを用いる場合には、最初から中国のものを用いないことを前提とはしていないので、どこに中国のものが使われているかを確認した上で、それを排除し、さらに中国とは関係のない企業のものと交換しなければなりません。これには、膨大な時間とコストを要します。

日米政府による監視と財務の健全性の確保。強まる監視網に対し、楽天には丁寧な説明が求められています。そうでないと、クリーンネットワークとは認められないでしょう。

楽天では、法務部は機能しているのでしょうか。日本の外為法や米国のクリーンネットワーク計画など、無視した活動していますが、これでは国内では上場を廃止されたり、米国から報復される可能性もでてきたといえます。

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