第二次世界大戦後、インドは自主独立、非同盟を外交の柱にしてきたが、近年、インドは、西側諸国と外交、安全保障上の連携を深めるようになった。軍事的には、既に、数年前から、海軍の合同軍事演習として、「マラバール作戦」を展開し、インドと米国の他、日本、豪州も加わって多国間の合同軍事演習となっている。インドは、人口数から言って、世界最大の民主主主義国であり、約8億人の有権者がいる。その意味では、立派は「西側」の国家である。そして、モディ政権は、「自由で開かれたインド太平洋」地域に、大きくコミットしている。
米国でバイデン政権が発足して約2か月、3月12日、日米豪印の「クワッド」の初めての首脳会議がオンラインで開催され、4か国間の協力の重要性が改めて浮き彫りにされた。会議ではワクチン、気候変動、最先端技術について、それぞれ作業部会を設置することが合意され ている。ワクチンについては、東南アジアを中心にアジア諸国に新型コロナワクチン10億回分を2022年までに提供することとされた。ワクチンではインドも重要な役割を占める。インドはワクチン大国で、インドの製薬会社「セラム・インスティテュート・オブ・インディア」 がアストラゼネカとノババックスのワクチンを大量生産する契約を結んでいる。中国のワクチン外交が云々されているが、インドも中国に負けないワクチン外交を展開できる。ただしインドのワクチン外交は「クワッド」の枠内で行われることとなる。
インドの第二次世界大戦後の独立直後の外交の柱は非同盟であった。ネルーが1954年に発表したもので、冷戦のさなかにあって、米国、ソ連 のいずれの陣営にも属さないことを表明した。 非同盟政策はいわば冷戦の産物とも言えうるものであり、ソ連の崩壊とともにその意味を失っている。
インドが西側諸国との関係を重視するようになった背景には中国の台頭がある。3月12 日の「クワッド」首脳会議の後に発表された声明では、4か国の首脳が「東シナ海及び南シナ海における、国連海洋法条約を含む国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するために連携することで一致した」と述べられている。中国を名指しはして いないが、中国を念頭に置いての見解であることは明らかである。クワッドの首脳会談後には、バイデン政権で国防長官に就任したオースティン長官が、日本と韓国の後、インドを訪問し、米印国防大臣会談がニューデリーで行われた。ここでも、インドのシン国防大臣とオースティン国防長官との間で、平和で安定的なインド太平洋地域の為に、両国の連携が欠かせないことが確認された。
米印関係の変遷の中では、核の問題が重要な役割を果たしてきた。1974年にインドが「平和的核爆発」と称して核実験を行うと、米国は強い懸念を表明し、非核国における濃縮と再処理を禁止する方針を明らかにした。その後、2007年7月、米印両国は、原子力協力協定を結び、インドは民生用原子力施設にIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れることに合意し、米国は原子力関連の技術と燃料の供給についてインドに協力することを表明している。米国が、インドの軍事用原子力施設にはIAEAの査察が行われないことを認めたことは、米国がインドをNPT上の核保有国としては認めないが、事実上の核兵器国として認めたことを意味すると考えてよい。
日本にとって、インドが西側諸国との関係を強化することは歓迎すべきものである。自由で開かれたインド・太平洋は、日本にとって特に重要である。日本とインドはそのようなインド・太平洋の確保、維持のために積極的に協力して いくこととなるだろう。
今夏、英国で開催される予定のG7(西側主要先進諸国)サミットでは、日米英仏独伊加(プラスEU)の7か国の他、豪州、韓国と並びインドが招聘されている。西側の一員として、インドの役割は大きくなって行くだろう。
インドの第二次世界大戦後の独立直後の外交の柱は非同盟であった。ネルーが1954年に発表したもので、冷戦のさなかにあって、米国、ソ連 のいずれの陣営にも属さないことを表明した。 非同盟政策はいわば冷戦の産物とも言えうるものであり、ソ連の崩壊とともにその意味を失っている。
インドが西側諸国との関係を重視するようになった背景には中国の台頭がある。3月12 日の「クワッド」首脳会議の後に発表された声明では、4か国の首脳が「東シナ海及び南シナ海における、国連海洋法条約を含む国際法をはじめとするルールに基づく海洋秩序への挑戦に対応するために連携することで一致した」と述べられている。中国を名指しはして いないが、中国を念頭に置いての見解であることは明らかである。クワッドの首脳会談後には、バイデン政権で国防長官に就任したオースティン長官が、日本と韓国の後、インドを訪問し、米印国防大臣会談がニューデリーで行われた。ここでも、インドのシン国防大臣とオースティン国防長官との間で、平和で安定的なインド太平洋地域の為に、両国の連携が欠かせないことが確認された。
米印関係の変遷の中では、核の問題が重要な役割を果たしてきた。1974年にインドが「平和的核爆発」と称して核実験を行うと、米国は強い懸念を表明し、非核国における濃縮と再処理を禁止する方針を明らかにした。その後、2007年7月、米印両国は、原子力協力協定を結び、インドは民生用原子力施設にIAEA(国際原子力機関)の査察を受け入れることに合意し、米国は原子力関連の技術と燃料の供給についてインドに協力することを表明している。米国が、インドの軍事用原子力施設にはIAEAの査察が行われないことを認めたことは、米国がインドをNPT上の核保有国としては認めないが、事実上の核兵器国として認めたことを意味すると考えてよい。
日本にとって、インドが西側諸国との関係を強化することは歓迎すべきものである。自由で開かれたインド・太平洋は、日本にとって特に重要である。日本とインドはそのようなインド・太平洋の確保、維持のために積極的に協力して いくこととなるだろう。
今夏、英国で開催される予定のG7(西側主要先進諸国)サミットでは、日米英仏独伊加(プラスEU)の7か国の他、豪州、韓国と並びインドが招聘されている。西側の一員として、インドの役割は大きくなって行くだろう。
【私の論評】インドは経済発展し、いずれ先進国に仲間入りするが、中国は先進国になれないまま没落する(゚д゚)!
日本や他の先進国が、インドとの関係を強化するのは理にかなっています。まずは、経済的にみてもそうです。中国は、これからも経済成長していくと見ている人もいるようですが、その見方は間違いです。中国はこれから、中所得国の罠にはまり、以降は経済発展しません。一方インドはこれから経済成長をし、現在の3倍くらいの規模になる可能性もあります。
なぜそのようなことがいえるかといえば、民主主義指数とGDPとの関係をみていけばそれは明白だからです。それについては、以前もこのブログに掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
米中「新冷戦」が始まった…孤立した中国が「やがて没落する」と言える理由―【私の論評】中国政府の発表する昨年のGDP2.3%成長はファンタジー、絶対に信じてはならない(゚д゚)!
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、高橋洋一氏はこの記事で以下のように語っています。
世界銀行のデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、上の民主主義指数を組み合わせてみると、面白い。中所得国の罠がきちんとデータにでている。
中所得国の罠とは、様々な国で経済発展をするのですが、10000(日本円では100万円)ドル前後から伸びなくなったり、一旦10000万ドルを超えて成長しても、それ以下に押し戻されるというのがほとんどということです。
その罠の正体は、結局経済を伸ばそうとしても、多くの国々が民主化、政治と経済の分離、法治国家化をしないことです。先進国といわれる国々では、これらを実施して、10000ドルの壁を超えて、今日先進国になっているのです。
日本を訪れたもデイ印首相(手前)と安倍首相(当時) |
そうして、10000万ドルの壁を超えるのは、非常に難しく、産油国などの一部を除いて、今日この壁を超えて先進国になったのは、日本だけです。逆に10000ドルの壁を超えて先進国になっていたものが、押し返されて10000ドル以下になり、発展途上国になったのはアルゼンチンだけです。
高橋洋一氏は、最近同じグラフをIMF(国際通貨基金)のデータを使って作成しています。IMFデータにより2000年以降20年間の一人当たりGDPの平均を算出し、民主主義指数を組み合わせています。以下にそのグラフを掲載します。
民主主義指数が6程度以下の国・地域は、一人当たりGDPは1万ドルにほとんど達しない。例外は産油国と小国である。民主主義指数6を超えると、一人当たりGDPは民主主義度に応じて伸びる。一人当たりGDPが1万ドル超の国で、一人当たりGDPと民主主義指数の相関係数は0.68と高い。
中所得国の罠をクリアするためには、民主主義の度合を高めないといけない。と同時に、各種の経済構造の転換が必要だ。その一例として、国有企業改革や対外取引自由化などが必要だが、本コラムで再三強調してきたとおり、一党独裁の共産主義国の中国はそれらができない。
共産主義国家では、資本主義国家とは異なり生産手段の国有が国家運営の大原則であるからだ。なお、上に書いたようにTPPはそのような要素を盛り込んでいる。
上の一つの図からいろいろなことがわかる。
中国の一人当たりGDPはようやく1万ドル程度になったので、これからどうなるか。中国の民主主義指数は2.27なので、6にはほど遠く、今の程度のGDPを20年間も維持できる確率はかなり低い。
となると、中国はこれから経済停滞に陥る可能性がでてくる。
インドは現段階では一人当たり6000ドル程度だが、民主主義国なので、今後経済発展が期待できる。民主主義6.61なので、一人当たりGDPは今の3倍程度まで上昇しても不思議ではない。今後経済的に中国は衰退し、インドが発展していくのは明らかです。インドの2020年10~12月期(2020年度第3四半期)の経済成長率は、前年同期比0.4%となり、3四半期ぶりにプラス成長に回復した。10~12月期は、タイやインドネシアなどでは経済成長率がマイナスであり、これと比べれば、インド経済はV字型回復を遂げたと言ってよく、成長力の強さが示されました。
2020年3月25日から5月31日までインド全土で実施されたロックダウンによって、政府や企業の活動がほぼ機能麻痺状態に陥り、4~6月期の経済成長率は大幅に落ち込んだが、7~9月期以降は、行動規制が緩和され経済活動が正常化に向かったことを反映し、景気が回復しました。この数字は信頼できます。
一方中国は昨年は、GDPが2.3%成長というのは、全く信用できないことは、以前のこのブログでも掲載しました。
民主化、政治と経済の分離、法治国家化をするとなぜ経済が伸びるのかといえば、これを実施すれば、星の数ほどの中間層が生まれ、これらの中間層が、自由に社会・経済を実行するからです。
民主化、政治と経済の分離、法治国家化をするとなぜ経済が伸びるのかといえば、これを実施すれば、星の数ほどの中間層が生まれ、これらの中間層が、自由に社会・経済を実行するからです。
そうして、彼らが自由に社会・経済活動をする過程において、国中のありとあらゆるところが、イノベーションが起こるからです。そうして、社会全体が発展し、社会の遅れた部分が一掃され、急激に経済発展するのです。
一方、中国などでは、民主化、政治と経済の分離、法治国家をしてしまえば、中国共産党は統治の正当性を失い崩壊して、新しい体制ができあがることになります。それは、中国共産党が拒むでしょうから、中国は経済発展できないのです。
中国共産党が、大金をばらまき、号令をかけ、共産党主導でイノベーションを行えば、たしかに資金を投下された部分では、イノベーションが起こるでしょうが、それはいわば、いくかの点におけるイノベーションになるか、せいぜい直線状にしかおこらず、社会の遅れた部分の大部分が温存され、それがネックとなり経済は発展しないのです。これが、中所得国の罠の本質です。
中国は先進国になれないまま没落していく運命 |
そうして、その社会の遅れを政府だけでは改善・改革できないのです。やはり多数の中間層を輩出させ、それらが自由に社会のあらゆるところで、イノベーションを起こすからこそ、社会が発展し、結果として経済も発展するのです。
中国では昨年、「一国二制度」をとりやめ、香港を中国に併合しました。しかし、中国がこれからも経済発展したければ、大陸中国こそ、かつての香港のようになるべきだったのです。
一気にそうしなくても良いですから、時間をかけて少しずつでも行い、大陸中国が香港のようになっていけば、中国はこれからも経済発展できたでしょうが、中国は逆をやってしまいました。社会も経済も発展しないまま、中国は先進国になれずに没落していくことでしょう。
インドはこれからも社会変革を行い、経済が発展していけば、いずれ先進国の仲間入りができるでしょう。
【関連記事】
英国政府、TPP参加で“中国包囲網” 日米豪印「クアッド」にも参加検討 識者「親中懸念のバイデン米政権の不安埋めてくれる」 ―【私の論評】日本と英国は、ユーラシアのランドパワーに対峙している(゚д゚)!
0 件のコメント:
コメントを投稿