事実上の“中国包囲網”、QUAD首脳会合開催へ 識者「G7より先行して対中路線を先導できる」 日本は存在感が求められる局面
クアッド4首脳、菅、バイデン、モリソン、モディ |
中国の軍事的覇権拡大に対峙(たいじ)する、戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」を構成する、日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国は、今月中旬にも初の首脳会合をオンラインで開催する方向で調整に入った。複数の政府関係者が明らかにした。「自由で開かれたインド太平洋」構想の推進や、新型コロナウイルスのワクチン普及に向けた協力などを話し合う見通しだ。日本にとっては存在感が求められる局面だ。
首脳会合には、菅義偉首相や、ジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ナレンドラ・モディ印首相が出席する予定。
クアッドは、ドナルド・トランプ前政権時の2019年に初の外相会合を開催し、中国を「唯一の競争相手」と位置付けるバイデン政権も4カ国連携を重視している。今年2月には電話で外相会合を行い、中国の力による一方的な現状変更の試みに強く反対する方針で一致した。
首脳会合が3月になったのは、対中政策で協調する日米豪3カ国と、やや距離を置くインドとの間で調整に時間がかかったためとみられる。
中国では5日、第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕した。習近平政権は「外部勢力からの干渉を断固として防ぐ」として、香港での「民主派排除」につながる選挙制度見直しを進める見込みだ。
新疆ウイグル自治区での人権弾圧をめぐっても、李克強首相は欧米からの批判を突っぱね、「中華民族共同体意識を確立し、宗教が社会主義社会に適用するよう導く」と強調するなど、強硬姿勢が目立つ。
中国は2035年までに「軍の現代化」を実現し、今世紀半ばに「世界一流の軍隊」とする目標を定めており、国防費を膨張させている。
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首脳会合には、菅義偉首相や、ジョー・バイデン米大統領、スコット・モリソン豪首相、ナレンドラ・モディ印首相が出席する予定。
クアッドは、ドナルド・トランプ前政権時の2019年に初の外相会合を開催し、中国を「唯一の競争相手」と位置付けるバイデン政権も4カ国連携を重視している。今年2月には電話で外相会合を行い、中国の力による一方的な現状変更の試みに強く反対する方針で一致した。
首脳会合が3月になったのは、対中政策で協調する日米豪3カ国と、やや距離を置くインドとの間で調整に時間がかかったためとみられる。
中国では5日、第13期全国人民代表大会(全人代)が開幕した。習近平政権は「外部勢力からの干渉を断固として防ぐ」として、香港での「民主派排除」につながる選挙制度見直しを進める見込みだ。
新疆ウイグル自治区での人権弾圧をめぐっても、李克強首相は欧米からの批判を突っぱね、「中華民族共同体意識を確立し、宗教が社会主義社会に適用するよう導く」と強調するなど、強硬姿勢が目立つ。
中国は2035年までに「軍の現代化」を実現し、今世紀半ばに「世界一流の軍隊」とする目標を定めており、国防費を膨張させている。
このタイミングでの首脳会合には、どのような意味があるのか。
評論家で軍事ジャーナリストの潮匡人氏は「重要なポイントは、6月のG7サミット(先進7カ国首脳会議)などに先行して会合が行われることだ。対中国の国際協調路線を先導することができる。中国の名前を出さないまでも、『自由で開かれたインド太平洋』などについて方針を一致させたい。地政学的に最も中国の影響を受けやすい日本も、存在感が求められる重要な局面だ」と分析している。
【私の論評】日本がクアッド関係国の軍事的危機を、無視するようなことがあってはならない(゚д゚)!
今回の、クアッド首脳会談が注目されるのは、やはり初の首脳会談だからでしょう。それ以外であれば、いままでも何度か開催されてきました。先月十八日にも、 「QUAD(クアッド)」の外相会合はオンラインで開催されました。
習近平主席は2015年12月31日、中国建国以来、最大規模となる軍改革の断行を発表しました。これは毛沢東や訒小平でさえ手を付けなかった解放軍の大改革です。
習近平主席が唱える「中国の夢」つまり「中華民族の偉大なる復興」の実現にとって、解放軍は不可欠な存在です。
とくに台湾の併合は中国の夢の核心部分であり、それを実現することにより実績をつけて、毛沢東や鄧小平を超える指導者になることが習近平主席の野望です。
解放軍改革は、2015年12月31日から2020年末までの5か年をかけて実施されてきました。
「中華民族の偉大なる復興」の達成年度は2049年(中国建国100周年の年)であり、この年までに「社会主義現代化強国」を達成し、軍事的には「世界一流の軍隊」の建設を目指しています。
その前段階として2020年までに「解放軍の機械化と情報化」を達成し、2035年までに「国防と解放軍の現代化」を実現すると宣言しています。
解放軍改革によって一挙に米軍に匹敵する実力がある解放軍になるわけではありません。この解放軍改革は、2020年、2035年、2049年という目標年に向かう3段階発展戦略の第1段階として捉えることができます。
「中華民族の偉大なる復興の道筋」 |
こうした、中国の軍事・経済的影響力拡大に対抗するために安倍晋三前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想に、ドナルド・トランプ前米大統領が共感して発足した協議体がクアッドなのです。最初に構想したのは、安倍前総理なのです。
このロードマップをみてみると、昨年までには、第二列島線までを確保することになっていますが、現実には台湾・尖閣諸島を含む第一列島線も確保できていません。一方、ロケット軍の創設などには取り組んでいます。一言でいうと、陸上国である中国は、海洋においての試みはロードマップどおりにはいっていません。
そうして、陸上国である中国なのですが、先日もこのブログに掲載したように、中国と小競り合いが続いていたカシミール地方でインドが中国軍を押し返しました。
クアッドは、ジョー・バイデン米政権での継承が懸念されていたのですが、1月28日の日米首脳電話会談で、バイデン大統領は菅義偉首相に継承を伝えていました。同月29日には、ジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が、中国への厳然とした対応を強調し、クアッドによる協力が「インド太平洋地域における米政策の基礎となる」と述べていました。4カ国の外相会合はバイデン政権発足後初となりました。
このブログにも以前掲載したように、クアッドには、英国の参加の可能性が浮上しています。英国政府は、香港問題やウイグル族へのジェノサイドをめぐって中国への対抗姿勢を鮮明にしています。英国は、日本が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を正式申請し、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする部隊を日本の南西諸島周辺に長期派遣することを予定しています。
このブログにも以前掲載したように、クアッドには、英国の参加の可能性が浮上しています。英国政府は、香港問題やウイグル族へのジェノサイドをめぐって中国への対抗姿勢を鮮明にしています。英国は、日本が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加を正式申請し、最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする部隊を日本の南西諸島周辺に長期派遣することを予定しています。
英空母「クイーン・エリザベス」 |
ドイツのクランプカレンバウアー国防相は昨年12月12日までに、時事通信の書面インタビューに応じ、日本やオーストラリアなどインド太平洋諸国との連帯を示すため、独連邦軍のフリゲート艦1隻を近くインド太平洋地域に派遣すると表明しました。また、中国の南シナ海での領有権主張に強い警戒感を示し、自衛隊やインド太平洋諸国の軍隊と共同訓練を行う可能性にも言及しました。
先月19日、フランスのパルリ国防相は仏紙フィガロとのインタビューで、フランス海軍の原子力潜水艦エムロードを南シナ海に潜航させたことを強調しました。フランスは仏領ポリネシアやニューカレドニア等を太平洋に保有しており、その排他的経済水域に中国が進出していることに懸念を有しています。
中国が南シナ海で行っているような国際法違反を野放しにすれば、いずれは太平洋の自国領土にも波及する可能性があることから、今回の原子力潜水艦派遣に踏み切ったものと考えられます。同20日には九州西方で仏フリゲート艦プレリアルと海自、米海軍が共同訓練を行いました。
英空母部隊の東アジア来航時、これにドイツ海軍のみならずフランス海軍も加わったら、英仏独というNATO主要海軍国が揃い踏みすることになり、クアッドとの共同訓練で中国に対しては強烈なメッセージを発することができる。
クアッドが、英国が加わった「QUINTET(クインテット=5人組)」に発展すれば、自由社会の対中抑止力は格段に増すでしょう。日本は、英国と米国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドの5カ国が、安全保障上の機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」への参加も望まれています。この両方を日本は何としても、実現すべきです。
自由社会の連携が進み、日本が一定の位置を占めているのも、安倍前政権での安全保障改革で国際的信用度が高まったことが大きいです。国内では猛烈な批判にさらされましたが、特定秘密保護法の制定や集団的自衛権の限定行使を可能にしなければ、クアッドもファイブ・アイズへの参加もあり得ません。安倍政権は大きな戦略を描き、自由社会結束の基礎をつくったといえます。
クアッドの立役者 安倍前総理 |
今後は、新・日英同盟の締結やクアッドの同盟化も必要となるでしょう。そのためには、国内体制の整備が不可欠です。自衛隊が海上保安庁と同様に領海侵入などに対処できる「領域警備法」整備は言うまでもありません。さらに、現在限定的な集団的自衛権をさらに拡張することも必要不可欠です。
クアッドの関係国が、軍事的危険にさらされているときに、日本が限定的な集団自衛権しか行使できないとして、関係国の危険を無視するようなことがあってはならないからです。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼」するとして、自国防衛の主体性を放棄している現行憲法の改正が欠かせないことも再認識すべきです。
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