バイデン大統領 |
バイデン米大統領は2月4日に国務省で行った就任後初の外交政策演説で高らかに訴えた。
「米国が戻って来たと世界に伝えたい」
トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。
別の意味とは何か。オバマ元政権が推し進めたLGBT(性的少数者)の国際的な権利向上、いわゆる「LGBT外交」の復活である。外交演説は中国やロシアに関する発言に注目が集まったため、大手メディアはほとんど報じなかったが、バイデン氏は次のように宣言している。 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。
「LGBT問題で国際的なリーダーシップを回復する。LGBTを犯罪として扱う動きと戦い、LGBTの難民や亡命申請者を守るなど権利向上に努める」
バイデン氏はさらに、海外援助をLGBT外交のツールとして利用することなどを政府機関に指示する行政命令を出した。これは経済援助の条件として途上国に同性愛行為の非犯罪化などを迫ったオバマ政権の手法を踏襲したものだ。
米国が超大国のパワーを振りかざし、保守的な倫理観を保つ途上国に同性愛を肯定する異質な価値観を押し付けるのは、弱い者いじめにほかならない。特に植民地支配された歴史のあるアフリカ諸国は、オバマ政権の脅迫的なやり方を文化的に侵略しようとする「文化帝国主義」だと激しく反発していた。
このため、アフリカの宗教界はトランプ氏の再選を熱烈に望んでいた。各国の国家主権や伝統的価値観、信仰の自由を尊重するトランプ氏の姿勢を高く評価していたためだ。
アフリカの宗教界では既にバイデン政権への警戒感が高まっているが、懸念を一段と強めたのは、国務省傘下の対外援助機関、国際開発局(USAID)のトップにサマンサ・パワー元国連大使が起用されたことだ。パワー氏はオバマ政権でLGBT外交を主導した人物の一人であり、パワー氏は海外援助とLGBT問題を露骨に紐(ひも)付けすると予想される。
ナイジェリア・カトリック教会のエマニュエル・バデジョ司教は、USAIDはパワー氏の下で「アフリカの宗教的・文化的価値観に対し、思想的・文化的な襲撃を仕掛けてくることは間違いない」と、悲観的な見通しを示した。
バデジョ司教は、オバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏をこう酷評したことがある。
「世界には3種類の人間がいる。神を信じる者、神を信じない者、自分を神と思う者だ。クリントン氏は自分を神と思う人間の一人だ。宗教的価値や信念はクリントン氏にとって大切でないとしても、それを変えろと要求する権利はない」
バデジョ司教は、パワー氏に対しても同じ見方をしているに違いない。
一方、アントニー・ブリンケン国務長官は、LGBT問題担当特使を任命する意向を示している。
LGBT外交は米国の国益を促進するどころか、途上国の反米感情を助長する可能性の方が高い。中国との覇権争いが最重要課題である時に、そのような取り組みをする余裕があるのだろうか。
「米中新冷戦」の激化に伴い、各国は米国と中国のどちらの陣営につくべきか選択を迫られている。歪(ゆが)んだ価値観外交は途上国を米国から遠ざけ、中国の陣営に追いやる一因になりかねない。
(編集委員・早川俊行)
米国のバイデン大統領(78)が就任初日の20日に「LGBTQ差別禁止」に関する大統領令にサインしたことが思わぬ波紋を呼んでいます。長年、差別を受け続けてきた全米中の性的マイノリティーの人たちから称賛の声が上がった一方で、スポーツ界からは「女性アスリートが抹殺される」という批判的が上がっています。
米国の第46代大統領に就任した直後から数々の大統領令にサインし、自らの政策をさっそく実行し始めたバイデン氏。就任初日の20日には17の大統領令にサインしたが、その中の一つ「LGBTQ差別禁止」は、全米中の性的マイノリティーの人たちを歓喜さましせた。
というのも、トランプ政権時代は、保守的な支持層を意識して性的マイノリティーの権利保護に否定的だったため、不当な差別で職を失ったり、医療を受けられなかったりするケースが少なくなかったからです。
一方、バイデン氏は副大統領だったオバマ政権時代から性的マイノリティーの権利保護で指導的立場を取ってきました。その姿勢は閣僚人事にも表れ、運輸長官に指名されたピート・ブティジェッジ氏はゲイを公表した初の閣僚となりました。
今回の「LGBTQ差別禁止」の大統領令は、昨年6月に連邦最高裁が「職場でLGBTQを性的指向・性自認に基づいて解雇することは違法」とした歴史的判決に基づいているといいます。
一方でこの大統領令に問題点を指摘する声も上がっているといいます。
「大統領令には『性同一性や性的指向に関係なく、すべての人は法律の下で平等に扱われる』としたうえで『子供たちはトイレ、更衣室、学校のスポーツへのアクセスが拒否されるかどうかを心配することなく、勉学に励むことができる』という一節がある。この部分が元男性のトランスジェンダーアスリートの増加につながるととらえられ『女子アスリートが抹殺される』と保守派から問題視する声が上がった」(在米ジャーナリスト)
この声は思った以上に大きく、ツイッターでは「#BidenErasedWomen」というハッシュタグがつけられ、全米でトレンド入りするまでに拡大しています。
スポーツの世界で、元男性のトランスジェンダーアスリートをどう扱うかは、いまだに議論されている難しい課題です。
IOC(国際オリンピック委員会)では2015年にガイドラインを制定。「性適合手術を受けていなくても男性ホルモンのテストステロンを1年以上、一定レベルに抑制できている」などの条件で出場を認めています。東京五輪もこのガイドラインを基に女性としての出場を認めています。
ある五輪競技関係者は「難しい問題ですね。女性として生まれてきた女子アスリートから見たら、元男性のトランスジェンダーアスリートはもともと体のつくりが違うため、フィジカルの差が大きくなりすぎる。いくらテストステロンを抑えたとしても、女性では超えられない潜在的な壁がある」と明かしています。
皮肉にもトランプ前大統領は退任前の17日、こんな事態を想定してかせずか、バイデン氏の大統領令を担保する昨年6月の連邦最高裁判決について「長年性別によって分けられてきた分野にまで解釈を広げるべきではない」として、適用範囲の限定を狙った司法省通達を出していました。
バイデン氏にとっては、長年LGBTQの権利を守る活動を続けてきて、それを実現する大統領令にサインしただけのつもりが、まさかの部分にケチをつけられた形です。
中国政府のLGBTに対する態度は「合理的」です。ゲイは社会の安定や経済発展のために「使える」ので支持し、レズビアンなどは放置されるか、意見の違いを公にすれば弾圧されます。多様な個人が集合体として社会をつくるという考えはなく、権力者がつくりたい社会の部品として有用かどうかという、いわば自分の都合で峻別しているにすぎないです。
セクシュアリティーだけではありません。現在の中国社会は合理性や生産性のみを優先して設計され、その枠に当てはまらない少数民族、宗教者、障がい者などのマイノリティーに対しては一貫して冷たい態度を取っています。これをやめない限り中国はまともにならないでしょう。
ただ、現状においては、LGBT外交で、結果として中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれることになりかねません。実際、そのようになりつつあります。日本でも自民党が、これを推進すれば、そうなりかねません。
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別の意味とは何か。オバマ元政権が推し進めたLGBT(性的少数者)の国際的な権利向上、いわゆる「LGBT外交」の復活である。外交演説は中国やロシアに関する発言に注目が集まったため、大手メディアはほとんど報じなかったが、バイデン氏は次のように宣言している。 トランプ前大統領が掲げた「米国第一」から多国間主義に回帰し、国際問題に積極的に関与していく決意を示したものだ。だが、途上国、特にアフリカ諸国では、別の意味で米国が戻って来たと受け止めた人も多いに違いない。
「LGBT問題で国際的なリーダーシップを回復する。LGBTを犯罪として扱う動きと戦い、LGBTの難民や亡命申請者を守るなど権利向上に努める」
バイデン氏はさらに、海外援助をLGBT外交のツールとして利用することなどを政府機関に指示する行政命令を出した。これは経済援助の条件として途上国に同性愛行為の非犯罪化などを迫ったオバマ政権の手法を踏襲したものだ。
米国が超大国のパワーを振りかざし、保守的な倫理観を保つ途上国に同性愛を肯定する異質な価値観を押し付けるのは、弱い者いじめにほかならない。特に植民地支配された歴史のあるアフリカ諸国は、オバマ政権の脅迫的なやり方を文化的に侵略しようとする「文化帝国主義」だと激しく反発していた。
このため、アフリカの宗教界はトランプ氏の再選を熱烈に望んでいた。各国の国家主権や伝統的価値観、信仰の自由を尊重するトランプ氏の姿勢を高く評価していたためだ。
アフリカの宗教界では既にバイデン政権への警戒感が高まっているが、懸念を一段と強めたのは、国務省傘下の対外援助機関、国際開発局(USAID)のトップにサマンサ・パワー元国連大使が起用されたことだ。パワー氏はオバマ政権でLGBT外交を主導した人物の一人であり、パワー氏は海外援助とLGBT問題を露骨に紐(ひも)付けすると予想される。
ナイジェリア・カトリック教会のエマニュエル・バデジョ司教は、USAIDはパワー氏の下で「アフリカの宗教的・文化的価値観に対し、思想的・文化的な襲撃を仕掛けてくることは間違いない」と、悲観的な見通しを示した。
バデジョ司教は、オバマ政権で国務長官を務めたヒラリー・クリントン氏をこう酷評したことがある。
「世界には3種類の人間がいる。神を信じる者、神を信じない者、自分を神と思う者だ。クリントン氏は自分を神と思う人間の一人だ。宗教的価値や信念はクリントン氏にとって大切でないとしても、それを変えろと要求する権利はない」
バデジョ司教は、パワー氏に対しても同じ見方をしているに違いない。
一方、アントニー・ブリンケン国務長官は、LGBT問題担当特使を任命する意向を示している。
LGBT外交は米国の国益を促進するどころか、途上国の反米感情を助長する可能性の方が高い。中国との覇権争いが最重要課題である時に、そのような取り組みをする余裕があるのだろうか。
「米中新冷戦」の激化に伴い、各国は米国と中国のどちらの陣営につくべきか選択を迫られている。歪(ゆが)んだ価値観外交は途上国を米国から遠ざけ、中国の陣営に追いやる一因になりかねない。
(編集委員・早川俊行)
【私の論評】LGBT外交で中国を利するバイデンは、国内で足元をすくわれる(゚д゚)!
米国の第46代大統領に就任した直後から数々の大統領令にサインし、自らの政策をさっそく実行し始めたバイデン氏。就任初日の20日には17の大統領令にサインしたが、その中の一つ「LGBTQ差別禁止」は、全米中の性的マイノリティーの人たちを歓喜さましせた。
というのも、トランプ政権時代は、保守的な支持層を意識して性的マイノリティーの権利保護に否定的だったため、不当な差別で職を失ったり、医療を受けられなかったりするケースが少なくなかったからです。
一方、バイデン氏は副大統領だったオバマ政権時代から性的マイノリティーの権利保護で指導的立場を取ってきました。その姿勢は閣僚人事にも表れ、運輸長官に指名されたピート・ブティジェッジ氏はゲイを公表した初の閣僚となりました。
今回の「LGBTQ差別禁止」の大統領令は、昨年6月に連邦最高裁が「職場でLGBTQを性的指向・性自認に基づいて解雇することは違法」とした歴史的判決に基づいているといいます。
一方でこの大統領令に問題点を指摘する声も上がっているといいます。
「大統領令には『性同一性や性的指向に関係なく、すべての人は法律の下で平等に扱われる』としたうえで『子供たちはトイレ、更衣室、学校のスポーツへのアクセスが拒否されるかどうかを心配することなく、勉学に励むことができる』という一節がある。この部分が元男性のトランスジェンダーアスリートの増加につながるととらえられ『女子アスリートが抹殺される』と保守派から問題視する声が上がった」(在米ジャーナリスト)
コネチカット州の高校生陸上選手、テリー・ミラー。トランスジェンダー女性である 彼女や他の選手が州の大会で優勝を独占した結果、3人の女性選手が競技への参加資格 において「自認する性」を優先する州の方針に異議を唱えた |
この声は思った以上に大きく、ツイッターでは「#BidenErasedWomen」というハッシュタグがつけられ、全米でトレンド入りするまでに拡大しています。
スポーツの世界で、元男性のトランスジェンダーアスリートをどう扱うかは、いまだに議論されている難しい課題です。
IOC(国際オリンピック委員会)では2015年にガイドラインを制定。「性適合手術を受けていなくても男性ホルモンのテストステロンを1年以上、一定レベルに抑制できている」などの条件で出場を認めています。東京五輪もこのガイドラインを基に女性としての出場を認めています。
ある五輪競技関係者は「難しい問題ですね。女性として生まれてきた女子アスリートから見たら、元男性のトランスジェンダーアスリートはもともと体のつくりが違うため、フィジカルの差が大きくなりすぎる。いくらテストステロンを抑えたとしても、女性では超えられない潜在的な壁がある」と明かしています。
皮肉にもトランプ前大統領は退任前の17日、こんな事態を想定してかせずか、バイデン氏の大統領令を担保する昨年6月の連邦最高裁判決について「長年性別によって分けられてきた分野にまで解釈を広げるべきではない」として、適用範囲の限定を狙った司法省通達を出していました。
バイデン氏にとっては、長年LGBTQの権利を守る活動を続けてきて、それを実現する大統領令にサインしただけのつもりが、まさかの部分にケチをつけられた形です。
バイデン氏の「LGBT外交」は、外交ではなくて、足元から崩れていく可能性が大きいです。トランスジェンダーの女性が、女子スポーツに進出するようになれば、米女子スポーツは崩壊するでしょう。
下は、中国のトランスジェンダー女性とされる人の写真です。
2019年7月11日、中国の全国陸上競技選手権大会で優勝した湖南女子チーム。 「男女混合リレー?」と2選手の性別に首をかしげる人が多いようだ |
それでも、米国がトランスジェンダー女性を女子スポーツに参加することを認め続ければ、米国の女子スポーツは、多くのの種目で、米国トランズジェンター女性が勝つことになり、世界の女子スポーツは崩壊するでしょう。
最後に、日本の国会議員杉田水脈氏は「LGBTの人たちは生産性がない」と主張したことで、かなり叩かれましたが、彼女は言葉のつかいかたを間違えたと思います。私なら「全人類が、LGBTになれば、特にLGだけになれば、人類が崩壊する。BTはそれを助長する」といいます。これは紛れもない事実です。私自身は、彼女はこれを言いたかったのだと思います。無論これは、LGBTとされる人々を差別せよ、と言っているわけではありません。
これには現状では誰も反論できないでしょう。反論したとしても無意味です。これも、いずれ人工子宮なるものができれば、そうとばかりは言っていられなくなるのかもしれませんが、それにしても、これには確実に倫理的な問題が絡むでしょうし、それに現状では、普及しておらず、まだ未来の話です。
LGBTの人たちを不当に差別することはやめるべきだと思うのですが、スポーツの世界まで、LGBTを貫けば、とんでもないことになります。これは、誰にでもわかりやすいことなのですが、それ以外の分野でも、表には出てこない問題もかなりあるのではないかと思います。それが、表にでてくれば、バイデン政権は弱体化するでしょう。
中国にも上の写真で示したように、トランスジェンダーの女性スポーツ選手はいます。しかし、習近平自身は「トランスジェンダー外交」までは考えていないようです。
中国政府のLGBTに対する態度は「合理的」です。ゲイは社会の安定や経済発展のために「使える」ので支持し、レズビアンなどは放置されるか、意見の違いを公にすれば弾圧されます。多様な個人が集合体として社会をつくるという考えはなく、権力者がつくりたい社会の部品として有用かどうかという、いわば自分の都合で峻別しているにすぎないです。
セクシュアリティーだけではありません。現在の中国社会は合理性や生産性のみを優先して設計され、その枠に当てはまらない少数民族、宗教者、障がい者などのマイノリティーに対しては一貫して冷たい態度を取っています。これをやめない限り中国はまともにならないでしょう。
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