2021年3月20日土曜日

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」―【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

イージス艦「はぐろ」就役 「ミサイル防衛能力の役割を期待」


海上自衛隊の最新鋭イージス護衛艦「はぐろ」が、19日に就役した。

イージス護衛艦「はぐろ」は、まや型護衛艦の2番艦として建造され、19日に、海上自衛隊に引き渡された。

「はぐろ」は、味方の艦船や航空機などをネットワークで結び、レーダー情報をリアルタイムで共有できるCEC(共同交戦能力)を備え、日本の防空の中核を担うことになる。

これで、日本の弾道ミサイル防衛を強化するため、防衛省が進めてきたイージス艦の8隻体制が整った。

岸信夫防衛相「本艦は、総合ミサイル防衛能力の担い手としての役割を期待されており、1日も早く任務に即応しうるよう、日々の訓練に精励してください」

「はぐろ」は、長崎県の佐世保基地に配備され、就役訓練を行ったうえで、警戒監視などの実任務にあたる。

(FNNプライムオンライン3月20日掲載。元記事はこちら

【私の論評】日米イージス艦、潜水艦、哨戒機が黄海で哨戒活動にあたり北はもとより中国を牽制(゚д゚)!

イージス護衛艦「はぐろ」の海上自衛隊への引き渡しのニュースは、多くのメディアで報道されていますがね、イージス艦の8隻体制とは何を意味するのか、これについてはほとんど報道されていません。本日はそれについて掲載します。

政府は、2015年1月14日に閣議決定した平成27年度予算案で、防衛省はミサイル防衛(MD)の要となるイージス艦1隻(前回就役の「まや」)の建造費を計上しました。30年度までにもう1隻(今回就役した「はぐろ」)調達する予定で、海上自衛隊のイージス艦は8隻になるとされました。


当時の6隻態勢から8隻態勢への転換が今回なされたわけです。海自関係者は「この2隻分の差が大きな変化をもたらす」と説明していました

イージス艦は4年に1度、半年間の定期検査を受けなければならず、これとは別に1~2カ月間の年次検査も必要となります。この間、乗員は船体整備などを行っており、イージス艦を運用する能力は落ちてしまいます。再び洋上に出た後に乗員の練度を最高レベルに戻すにはさらに数カ月かかるというのです。

日本の主要都市を弾道ミサイルから守るためには、最低でもイージス艦2隻が必要となります。8隻態勢になることで「常に最高の状態でイージス艦2隻が任務に就ける」(海自関係者)というわけです。

海自のイージス艦は、米国が開発した防空システム「イージス・システム」を搭載した護衛艦です。同時に多数の対空目標を捕らえるフェーズドアレイ・レーダーを搭載し、十数個の敵に向けてミサイルを発射できます。

北朝鮮が弾道ミサイルを発射した場合はイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃し、撃ち漏らせば地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が着弾直前に迎撃します。

前回の「まや」に続き、今回新たに調達されたイージス艦は共同交戦能力(CEC)を搭載し、さらに進化しました。

それまでのイージス艦は、味方の艦艇が捕捉した敵の情報を受け取っても、改めて自分のレーダーで敵を捕捉し直さなければ攻撃できませんでした。ところが、新システムでは僚艦の敵情報を受け取れば、そのデータを基にして即座に攻撃できます。

ただ、イージス艦を運用する自衛隊には苦い教訓があります。北朝鮮が24年4月13日に弾道ミサイルを発射した際、失敗に終わった事実を海自イージス艦は把握できなかったのです。

イージス艦といえども水平線の向こう側を低空で飛ぶミサイルを捕捉することはできません。より北朝鮮に近い黄海に展開していれば、発射失敗を確認することができました。

ところが、黄海にいたのは米軍と韓国軍のイージス艦だけで、海自イージス艦はいなかったのです。自衛艦による黄海展開に対し、韓国や中国が嫌がることに配慮したのです。

ただ、状況は変わっています。海自は現在で、艦艇や航空機を派遣しています。これは、以前のブログにも掲載しています。その記事のリンクを以下に掲載します。
詳細は、この記事をご覧いただくものとして、以下に一部を引用します。この記事は、2018年1月21日のものです。
核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議を履行するため、海上自衛隊の護衛艦や哨戒機が昨年12月から日本海や朝鮮半島西側の黄海で、外国船から北朝鮮船舶への石油などの移し替えがないか警戒監視活動に当たっています。


黄海・東シナ海などを常時警戒監視しているP3C哨戒機が不審船を発見した場合、護衛艦を現場に派遣します。政府関係者は「監視活動を顕示することで北朝鮮への石油製品の密輸を抑止することにつながる」としています。

ここで、黄海という言葉がでてきますが、黄海での海自による警戒監視活動は戦後はじめのことです。これは、中国側からすれば脅威だと思います。自分たちは尖閣付近の海域で船舶を航行させたり、最近では潜水艦を航行させたりしていたのが、日本の海自が黄海で監視活動を始めたのですから、彼らにとってみれば、驚天動地の日本の振る舞いと写ったかもしれません。

しかし、黄海初の日本の海自による監視活動に関して、日本のマスコミは当たり前のように報道しています。中国側も非難はしていないようです。中国としては、米国側から北への制裁をするようにと圧力をかけている最中に、監視活動にあたる日本を批判すると、さらに米国からの圧力が大きくなることを恐れているのでしょう。

このようなこと、少し前までのオバマ政権あたりであれば、「弱い日本」を志向する人々が多かったので、批判されたかもしれません。というより、そのようなことを日本に最初からさせなかったかもしれません。そうして、中国は無論のこと、大批判をしたかもしれません。そうして、日本国内では野党やマスコミが大批判をしていたかもしれません。

このようなことが、すんなりと何の摩擦もなくできるのは、やはり米国では「強い日本」を志向する勢力が大きくなっているからであると考えられます。

このような哨戒活動をして、実績をつくった日本は、イージス艦も当然黄海にも派遣していることでしょう。そうして、当然のことながら、日本の潜水艦も随分まえから派遣していることでしょう。

なぜなら、日本の潜水艦は静寂性(ステルス性)に優れており、このブログにも過去に何回か述べているように、中国の貧弱な対潜哨戒能力ではこれを発見できないので、日本の潜水艦は自由に水中を航行して、 様々な情報活動にあたるとともに、模擬訓練で中国の艦艇を沈める訓練もしていることでしょう。

昨年10月14日に進水した最新鋭潜水艦「たいげい」


当然のことながら、米原潜もいずれかに潜んでいることでしょう。日米の潜水艦、イージス艦は、バラバラに行動しているのではなく、互いに密接に情報を交換しつつ、黄海で監視活動にあたっていることでしょう。

共同交戦能力(CEC)を搭載した、「まや」、「はぐろ」などでは、日米は協同で、攻撃できる体制を整えつつあるでしょう。

そうして、これは北朝鮮のみならず、中国に対してもかなりの牽制になっているはずです。中国が台湾奪取への動きをみせれば、すぐに黄海上の日米のイージス艦等に察知されてしまうでしょう。

中国としては、このようなことはさせたくないのでしょうが、黄海には米国のイージス艦も存在するわけですから、なかなか正面切って非難することができないのかもしれません。

ただ、中国としては、この事実を日米に対して表立って非難すると、国内で中国海軍の脆弱性が暴露される危険もあるので、沈黙しているのかもしれません。そのかわり、尖閣付近で示威活動を派手に行い、国内向けプロパガンダをしているといのが実情かもしれません。

今回のイージス護衛艦「はぐろ」の就役により、常時少なくとも二隻のイージス艦で日本列島をカバーして、北朝鮮のミサイル等に対処することができます。当然のことながら、これは中国への牽制ともなります。

潜水艦20隻体制も完成したこと等もあわせると、これで日本の防衛力もかなり向上したといえます。

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