ハーシュ・パント(英キングズ・カレッジ・ロンドン国際関係学教授)、ヨゲシュ・ジョシ(国立シンガポール大学南アジア研究所研究員)
中国との国境紛争が生じている地域で補給物資を運ぶインド軍の車両 |
<小競り合いが続いていたカシミール地方でインドが中国軍を押し返した戦術と戦略>
インドと中国は2月10日、過去50年間で最大の衝突が生じていた国境紛争で、一部地域からの撤退を開始した。
実効支配線を挟んだにらみ合いは続いているが、今回問題となったインド北東部、ラダック地方のパンゴン湖周辺では、両軍が装甲車などを撤収する様子が衛星写真などで確認された。インドと中国は、領有権争いのある地域を「緩衝地帯」とも呼んでいる。
この結果にインドは大喜びしているに違いない。実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍を、事実上追い返したのだから。
今回の衝突が始まったのは2020年5月のこと。中国軍が実効支配線をまたいでインド側に侵入し、インド軍のパトロール活動を妨害するとともに、野営地や集落を設置したのだ。それは地理的にも規模的にも、局地的とか限定的と呼ぶレベルを超えていた。
中国軍6万人が集結
世界が新型コロナウイルス感染症への対応に追われている間に、中国は実効支配線付近に6万人ともいわれる兵力を集めて、インド側に圧力をかけ始めた。
これは1962年の中印国境紛争後に辛うじて維持されてきた均衡を脅かしただけではない。両国軍はパンゴン湖の北に位置するガルワン渓谷で実際に衝突して、インド兵20人が犠牲になったのだ。
インドのナレンドラ・モディ首相にとっては、メンツをつぶされた格好にもなった。17年にブータン西部のドクラム高地で、やはり中国が実効支配線を越えてブータン側に侵入し、応援に駆け付けたインド軍と衝突したとき、モディは中国の習近平(シー・チンピン)国家主席に直接対話を申し入れる「大人の対応」をしていたからだ。
中国がコロナ禍のどさくさに紛れて実効支配線を越えて、本来インド領とされていた地域の領有権を既成事実化するつもりだったとすれば、ガルワン渓谷での衝突は致命的なミスとなった。インドは中国のゴリ押しを受け入れるどころか、断固立ち向かう決意を固くしたからだ。
インドは経済力、外交力、軍事力を駆使して反撃に出た。まず、インド国内の中国企業にターゲットを定めた。
インドは原材料や完成品の輸入で中国に大きく依存しているが、中国も巨大なインド市場に依存している。そこでモディ政権は、インド国内で中国製アプリの使用を禁止し、中国国有企業によるインフラ投資参加に待ったをかけた。次世代通信規格5Gのインフラ事業から華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を排除する可能性も示唆した。
外交面でインドは欧米との連携を深める戦略を取った。昨年10月には、アメリカと衛星情報の共有などで合意したほか、インド洋で行われる日米印の合同軍事演習にオーストラリアを招いた。さらに海軍の駆逐艦1隻を南シナ海に派遣して、この海域の領有権争いで中国に対抗する陣営を応援する姿勢を示した。
軍事面では、ラダック地方の軍備を大幅に強化した。陸軍をほぼ3師団配置したほか、空軍もミグ29戦闘機、スホイ30攻撃機、ミラージュ2000戦闘機など最新鋭機を配置した。海軍は、対潜哨戒機ポセイドンを、ヒマラヤ地方の哨戒活動に派遣した。
中国の意表を突いたインド軍
そうまでしても、中国の侵攻に待ったをかけるのは容易ではなかっただろう。全体として見れば、インドの軍備は中国のそれを大幅に下回るし、中国経済はインドとのデカップリング(切り離し)を許容できるだけの規模がある。
ではなぜ、中国は今回、事実上の撤退に同意したのか。それはインドが限定的だが独創的な兵力によって、ラダック地方の戦術的現実を変えたからだ。具体的には、インド軍は高地を支配して、より低地にいた中国の意表を突いた。
例えば昨年8月末、インド軍はヒマラヤ山脈と並行して走るカイラス山脈の重要地点を確保した。ここからなら、パンゴン湖の北岸と南岸の中国の拠点が丸見えだ。また、インド軍は同湖北岸の高地にも拠点を築いた。この戦術に中国軍は驚いた。そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねない。
だから9月初め、上海協力機構(SCO)外相会議のためにモスクワを訪れていた中国の王毅(ワン・イー)外相は、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と2国間協議に応じたのだ。そこから4回にわたる軍高官級会議が開かれ、インドはこの問題に(取りあえず)片を付けることに成功したのだ。
だが、中印関係の根本的な問題が消えたわけではない。中国の影響力拡大と、定期的な実効支配線侵害は、今後もインドにとって最大の戦略的課題であり続けるだろう。このためインドは、対外戦略の3つの見直しを進めている。
第1に、軍の重点配備地域を北西部から北東部にシフトさせた。これまでインドが最も警戒してきた相手はパキスタンだったが、今後は中国になるだろう。既に陸・空・海軍の再編は始まっている。
「中国の孤立化」を急げ
第2に、中国との経済的デカップリングは今後も迅速に進むだろう。もちろんインドが譲歩しなければならない場面もいくつかあるだろうが、両国経済の軌道が異なる方向を向き始めたことは、今や明白だ。
日米豪印のいわゆるクアッドは、中国のパワーの源泉が自由主義経済の国々との経済的な相互依存関係であることに気付きつつある。従って中国を軍事的に抑止するためには、中国を経済的に孤立させる必要がある。これは短中期的にはクアッド諸国に痛みをもたらすだろうが、長期的には中国の痛みのほうが大きくなるだろう。
第3に、インドは引き続き、欧米諸国との協調路線を強化するだろう。これまでは、物質的および地位的な便益をるためにアメリカに追随していたが、今は、生き残りのためにアメリカと歩調を合わせる必要がある。インドが中国に対抗するテクノロジーや資金、武器を確保するためには、アメリカをはじめとするクアッドが必要不可欠だからだ。
パンゴン湖周辺からの中印両軍の撤退は、ひとまず両国間に緊張緩和をもたらしているが、根本問題が解決したわけではない。中国の軍事的台頭と領土拡張志向を考えると、今後も定期的な武力衝突は避けられないだろう。
インドが中国の弱いものいじめに立ち向かうためには、真に有効な軍事的抑止法を手に入れる必要がある。インド政府はそのために、これまでにない努力をする決意のようだ。このことは中印関係だけでなく、インド太平洋地域全体の地政学をも、新たな段階に移行させるだろう。
インドと中国は2月10日、過去50年間で最大の衝突が生じていた国境紛争で、一部地域からの撤退を開始した。
実効支配線を挟んだにらみ合いは続いているが、今回問題となったインド北東部、ラダック地方のパンゴン湖周辺では、両軍が装甲車などを撤収する様子が衛星写真などで確認された。インドと中国は、領有権争いのある地域を「緩衝地帯」とも呼んでいる。
この結果にインドは大喜びしているに違いない。実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍を、事実上追い返したのだから。
今回の衝突が始まったのは2020年5月のこと。中国軍が実効支配線をまたいでインド側に侵入し、インド軍のパトロール活動を妨害するとともに、野営地や集落を設置したのだ。それは地理的にも規模的にも、局地的とか限定的と呼ぶレベルを超えていた。
中国軍6万人が集結
世界が新型コロナウイルス感染症への対応に追われている間に、中国は実効支配線付近に6万人ともいわれる兵力を集めて、インド側に圧力をかけ始めた。
これは1962年の中印国境紛争後に辛うじて維持されてきた均衡を脅かしただけではない。両国軍はパンゴン湖の北に位置するガルワン渓谷で実際に衝突して、インド兵20人が犠牲になったのだ。
インドのナレンドラ・モディ首相にとっては、メンツをつぶされた格好にもなった。17年にブータン西部のドクラム高地で、やはり中国が実効支配線を越えてブータン側に侵入し、応援に駆け付けたインド軍と衝突したとき、モディは中国の習近平(シー・チンピン)国家主席に直接対話を申し入れる「大人の対応」をしていたからだ。
中国がコロナ禍のどさくさに紛れて実効支配線を越えて、本来インド領とされていた地域の領有権を既成事実化するつもりだったとすれば、ガルワン渓谷での衝突は致命的なミスとなった。インドは中国のゴリ押しを受け入れるどころか、断固立ち向かう決意を固くしたからだ。
インドは経済力、外交力、軍事力を駆使して反撃に出た。まず、インド国内の中国企業にターゲットを定めた。
インドは原材料や完成品の輸入で中国に大きく依存しているが、中国も巨大なインド市場に依存している。そこでモディ政権は、インド国内で中国製アプリの使用を禁止し、中国国有企業によるインフラ投資参加に待ったをかけた。次世代通信規格5Gのインフラ事業から華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)を排除する可能性も示唆した。
外交面でインドは欧米との連携を深める戦略を取った。昨年10月には、アメリカと衛星情報の共有などで合意したほか、インド洋で行われる日米印の合同軍事演習にオーストラリアを招いた。さらに海軍の駆逐艦1隻を南シナ海に派遣して、この海域の領有権争いで中国に対抗する陣営を応援する姿勢を示した。
軍事面では、ラダック地方の軍備を大幅に強化した。陸軍をほぼ3師団配置したほか、空軍もミグ29戦闘機、スホイ30攻撃機、ミラージュ2000戦闘機など最新鋭機を配置した。海軍は、対潜哨戒機ポセイドンを、ヒマラヤ地方の哨戒活動に派遣した。
中国の意表を突いたインド軍
そうまでしても、中国の侵攻に待ったをかけるのは容易ではなかっただろう。全体として見れば、インドの軍備は中国のそれを大幅に下回るし、中国経済はインドとのデカップリング(切り離し)を許容できるだけの規模がある。
ではなぜ、中国は今回、事実上の撤退に同意したのか。それはインドが限定的だが独創的な兵力によって、ラダック地方の戦術的現実を変えたからだ。具体的には、インド軍は高地を支配して、より低地にいた中国の意表を突いた。
例えば昨年8月末、インド軍はヒマラヤ山脈と並行して走るカイラス山脈の重要地点を確保した。ここからなら、パンゴン湖の北岸と南岸の中国の拠点が丸見えだ。また、インド軍は同湖北岸の高地にも拠点を築いた。この戦術に中国軍は驚いた。そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねない。
だから9月初め、上海協力機構(SCO)外相会議のためにモスクワを訪れていた中国の王毅(ワン・イー)外相は、インドのスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相と2国間協議に応じたのだ。そこから4回にわたる軍高官級会議が開かれ、インドはこの問題に(取りあえず)片を付けることに成功したのだ。
だが、中印関係の根本的な問題が消えたわけではない。中国の影響力拡大と、定期的な実効支配線侵害は、今後もインドにとって最大の戦略的課題であり続けるだろう。このためインドは、対外戦略の3つの見直しを進めている。
第1に、軍の重点配備地域を北西部から北東部にシフトさせた。これまでインドが最も警戒してきた相手はパキスタンだったが、今後は中国になるだろう。既に陸・空・海軍の再編は始まっている。
「中国の孤立化」を急げ
第2に、中国との経済的デカップリングは今後も迅速に進むだろう。もちろんインドが譲歩しなければならない場面もいくつかあるだろうが、両国経済の軌道が異なる方向を向き始めたことは、今や明白だ。
日米豪印のいわゆるクアッドは、中国のパワーの源泉が自由主義経済の国々との経済的な相互依存関係であることに気付きつつある。従って中国を軍事的に抑止するためには、中国を経済的に孤立させる必要がある。これは短中期的にはクアッド諸国に痛みをもたらすだろうが、長期的には中国の痛みのほうが大きくなるだろう。
第3に、インドは引き続き、欧米諸国との協調路線を強化するだろう。これまでは、物質的および地位的な便益をるためにアメリカに追随していたが、今は、生き残りのためにアメリカと歩調を合わせる必要がある。インドが中国に対抗するテクノロジーや資金、武器を確保するためには、アメリカをはじめとするクアッドが必要不可欠だからだ。
パンゴン湖周辺からの中印両軍の撤退は、ひとまず両国間に緊張緩和をもたらしているが、根本問題が解決したわけではない。中国の軍事的台頭と領土拡張志向を考えると、今後も定期的な武力衝突は避けられないだろう。
インドが中国の弱いものいじめに立ち向かうためには、真に有効な軍事的抑止法を手に入れる必要がある。インド政府はそのために、これまでにない努力をする決意のようだ。このことは中印関係だけでなく、インド太平洋地域全体の地政学をも、新たな段階に移行させるだろう。
【私の論評】中国撃退の背景にチベット人特殊作戦部隊!日本も尖閣に侵入した中国軍を撃退できる(゚д゚)!
インドが中国軍を退けた事実は、日本や台湾など中国の脅威にさらされている国々にとっては、実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍を、事実上追い返したことは、久々の朗報だと思います。インドができることを日本や台湾だけができないということはないはずです。
インドがカシミール地方でインドが中国軍を押し返した戦略と戦術は、外交面でインドは欧米との連携を深める戦略をとったこと、中国軍の意表をついた戦術採用したこと、クアッドにインドが加入しているという事実ということに集約されそうです。
これは、日本にも多いに参考になります。外交面では、日本はインドと同じかそれ以上に従来から、欧米と連携を深めています。
中国軍の意表をついた戦術は日本もとれます。これは、後で述べます。最後のクワッドに関しては、もともと安倍総理がこれを提案したものです。
中国軍の意表をついた戦術に関しては、上の記事では、以下のように記述しています。
インドが限定的だが独創的な兵力によって、ラダック地方の戦術的現実を変えたからだ。具体的には、インド軍は高地を支配して、より低地にいた中国の意表を突いた。
例えば昨年8月末、インド軍はヒマラヤ山脈と並行して走るカイラス山脈の重要地点を確保した。ここからなら、パンゴン湖の北岸と南岸の中国の拠点が丸見えだ。また、インド軍は同湖北岸の高地にも拠点を築いた。この戦術に中国軍は驚いた。そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねない。
これに関しては、あまり報道はされていませんが、インドに在住しているチベット人の活躍があったものみられます。
昨年8月末、インドと中国の緊張関係は、ヒマラヤ山脈の高地での兵士の戦闘につながったことが確認されています。戦闘は、インドのラダック地方パンゴン湖周辺の係争中の実効支配線沿いで起こり、500人以上の兵士が関与して約3時間続いたと報告されています。
インドは、中国の侵略に対応したものだとし、数日後には特殊作戦部隊がステルス作戦で中国の野営地を押収したと述べました。
この事件は、同じ地域で同様の衝突が起き、インド人兵士20人と中国軍の兵士(人数は不明)が死亡してから2カ月以上が経過した後に起きました。死傷者の数字はまだ報告されていないですが、インド人兵士1人が地雷原に入って死亡し、1人が負傷したといいます。
それらの兵士はチベット人で構成されるインドの秘密部隊、特別フロンティア部隊(SFF)の一員でした。この件をきっかけに、この秘密部隊は注目を浴びることになりました。創設から約60年を経た今、この部隊のメンバーをはじめとする多くのインド在住チベット人が悲願とする「中国への挑戦」を始めています。
最良の兵士候補はインドに大勢いるチベット難民でした。その多くは1959年にチベット蜂起に失敗した後、彼らの指導者であるダライ・ラマとともにインドに逃れてきた人々でした。
難民たちは高地に慣れており、中国共産主義勢力との戦いに意欲を燃やしていました。何人かは蜂起に加わった軍人で、何人かは以前にCIAによってゲリラ戦の訓練を受けていました。この部隊は、インドの国内情報機関である情報局によって創設され、その後、インドの対外情報機関である調査分析部隊に引き継がれました。
当初は「エスタブリッシュメント 22」と呼ばれていたましたが、1967年にSFFと改名されました。CIAは1970年代初頭まで訓練や装備の援助を行っていました。彼らは献身的な山岳部隊であり、ヒマラヤの厳しい気候の中でのパトロールと戦闘の達人でした。
SFFは1962年の中国と戦争時にはまだ創設されておらず、創設の主な理由は中国と対峙することでしたが、これまでそれを行う立場に置かれたことはほとんどありませんでした。インド人が中国への対抗に情熱を燃やしている隊員が緊張状態をエスカレートさせるのではないかと危惧したのかもしれません。
しかし、SFFは何度も戦場で活躍してきました。1971年のインド・パキスタン戦争では、バングラデシュ(当時の東パキスタン)のパキスタン軍の背後に 3000人の隊員が降下して要所を制圧し、パキスタン兵がミャンマーに退却するのを防ぎました。この戦闘では50人の隊員が死亡、190人が負傷しました。
彼らは 「ブルースター作戦」でシーク教徒の反乱軍と戦い、1984年にサイアヘン氷河をインドが制圧するのを助け、1999年にもカルギル戦争で戦いました。
SFFの特殊部隊はまた、CIAが中国の核兵器開発計画を監視するのを秘密裏に支援し、中国との国境沿いに最新の監視装置を設置し、維持するのをサポートしました。
SFFの初代司令官の息子で、SFFとともに戦った退役軍人であるグルディップ・シン・ウバン(Gurdip Singh Uban)氏は最近、彼らを「大胆不敵だ」と評し、「決して躊躇しない」と語りました。
SFFはインドの内閣官房の管轄下にあり、インド軍の一部ではありません。この部隊の兵力は3000人から5000人と推定されています。
グルカ兵として知られているインド人やネパール人の戦士もSFFには存在しますが、部隊の記章はチベットの旗に見られるのと同じ雪獅子であり、そのアイデンティティは明らかにチベットであるといえます。
その起源と任務のため、この部隊は秘密にされてきました。インド当局は、8月の戦闘で死亡した軍歴33年間の古参兵テンジン・ニーマ(Tenzin Nyima)の家族に、彼の任務について話さないよう求めました。
テンジン・ニーマ氏 |
しかし、ある出来事によって、この部隊は注目を集めました。その部隊が8月下旬に中国の野営地を攻撃したとき、インド在住のチベット人がインドと中国が大規模な軍事力増強を行っている国境地帯に向かうSFFの兵士を温かく見送る様子を撮影したビデオが公開されたのです。
このことは、SFFとインドのチベット人コミュニティ全体が、彼らが受けるに値する認知と注目を得ることへの期待につながっています。それはまた、宿敵に立ち向かう機会を得て、インドに住む一部のチベット人の感情をかき立てたのです。
ある元SFF兵士は最近、サウスチャイナ・モーニング・ポストに対し、「ほとんどのチベット人がこの部隊に参加するのは、これが中国と戦う唯一の方法だからだ」と語っています。
さて、SFFの話が長くなってしまいましたが、中国軍の意表をついた戦術は日本もとれるという話に戻ります。
それは、このブログの読者なら、もうご存知でしょう。無論日本の静寂性(ステルス性)に優れた、潜水艦隊を用いることです。
以前にもこのブログに掲載したように、中国海軍の対潜哨戒能力はかなり低いので、日本の潜水艦の行動を確認することはできません。一方、中国の潜水艦は静寂性が劣っているどころか、騒音がするので、日本の海自の対潜哨戒能力は世界トップ水準です。
日本の世界トップレベル対潜哨戒能力の象徴でもあるP1哨戒機 |
この優位性を活用すれば、特殊作戦部隊(SFF)がステルス作戦で中国の野営地を押収したようなことが、日本側には容易にできてしまいます。
さらに、日本は当然のことながら、東シナ海の海域に関しては隅々まで知っていますし、中国の潜水艦はじめとする艦艇の音紋を把握しており、中国海軍がどのような行動をしているかを熟知しています。
さらに、東シナ海や尖閣諸島付近の海底についても熟知しています。これは、SFFの兵士たちが、高地を熟知しているのと同じです。どこに潜水艦を潜めておけば、効果的なのかを熟知しているのです。
これらの情報と、日本の潜水艦のステルス性を活用すれば、SFFが実行したように、中国海軍に対して、様々なステルス作戦を実行できます。
このようなことを前提として、以前もこのブログに掲載したように、たとえ中国海軍や民兵が尖閣諸島に上陸したとしても、日本の潜水艦隊で尖閣諸島を包囲し、近づく中国の補給船や航空機などを威嚇するか、最悪撃沈、撃墜するということをすれば、尖閣諸島に上陸した部隊は補給が受けられずお手上げになり投降するしかなくなります。
尖閣諸島に近づく艦艇も、すぐに撃沈されてしまいます。おそらく、日本の潜水艦隊が、尖閣諸島を包囲した段階で、そこにとどまっていては、想定を大きく上回る損害を被りかねないと判断し、SFF等が実効支配線を侵害してインド側に入り込んできた中国軍が撤退したように、尖閣に上陸した中国軍も撤退するのではないでしょうか。撤退しなければ、中国は多くの艦艇・航空機を失うことになります。
なにやら、最近は保守派でも、中国の軍事力が圧倒的に強いので、尖閣は危ないと煽りまくる人もいますが、それだけだと中国に利することなりかねず、バランスを欠くと思います。中国の脅威を訴えるのは良いことだとは思うのですが、それだけではなく上で述べたような文脈のような情報も同時に提供してしかるべきと思います。
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