米国と中国の国旗 |
米世論調査機関ピュー・リサーチ・センターは4日、米国にとって中国は「敵」または「競争相手」であるとする回答が計89%に上る一方、「パートナー」と位置付けたのは9%だったとする全米世論調査の結果を発表した。
また、中国への感情を寒暖で表現した場合、悪感情を意味する「冷たい」が2018年の46%から67%に増加。このうち「非常に冷たい」は23%から47%に上昇したとし、この3年間で米国民の対中感情が急激に悪化していることが浮き彫りとなった。
中国と「敵」としたのは全体の34%で、保守派の共和党支持者に限れば64%に上った。リベラル派の民主党支持者も71%が中国を「競争相手」であると答えており、中国への警戒感が超党派で高まっていることも分かった。
バイデン大統領の対中政策については53%が「信頼できる」と答え、「信頼できない」の46%を上回った。ただ、「信頼できる」は民主党支持者で83%に達した一方、共和党支持者では19%にとどまった。
また、「中国は市民の権利を尊重していない」との回答は90%に上ったほか、70%が「(中国との)経済関係が悪化しても人権問題(の改善要求)を優先すべきだ」と答えた。
米中関係での深刻な懸案としては「中国からのサイバー攻撃」(91%)との回答が最も多かった。このうち「非常に深刻」と答えたのは65%で、前年に比べ7ポイント増加した。
続いて「中国の軍事力増強」86%、「対中貿易赤字」85%、「雇用喪失」「中国の人権政策」「中国の技術発展」とも84%-などの順となった。
調査は2月1~7日、2596人を対象にオンライン形式で実施された。
【私の論評】既存タイプの政治家バイデンはトランプのように中国との対峙を最優先にすることなく、結局何もできなくなる可能性が高い(゚д゚)!
この調査の詳細は、ピュー・リサーチ・センターのサイトからご覧いただけます。そこから、以下に調査をまとめたグラフを以下に掲載します。
ピュー研究所の最新世論調査によると、外交政策問題の中で米国人はジョー・バイデン大統領の中国に取り組む能力に最も不信を示しています。
67パーセントの回答者がバイデンは米国同盟国との関係を向上できると考えている一方で、バイデンの中国への取り組みに信頼を示したのはわずか53パーセントでした。世論調査は米国人の外交政策に関する意見における傾向をより大きく調査したものですが、それによるとバイデンの中国政策に対する信頼はテロリズムと国際貿易を含む他の外交政策の中で最下位となっています。
また回答者は中国に対して史上最低の好感度を報告した。調査対象の約90パーセントは中国を「競争相手または敵」と見なしており、70パーセントはたとえ米国の北京との経済関係を損なうことになったとしても、中国の人権侵害に対するより厳しい取り組みを支持しています。中国に対する「冷たい感情」も2018年から21パーセント増加しました。
中国が主導したサイバー攻撃と中国の人権問題が「非常に深刻」とした回答者は共に20年から7%ポイント増え、それぞれ65%と50%になりました。
中国によって米国で雇用が失われたことが非常に深刻な問題とした回答者は前年から6%ポイント増の53%。中国の軍事力が拡大していることが非常に深刻な問題とした回答者も過半数の52%でした。
中国の新型コロナウイルスの対応が不十分だったとする回答者は54%。ただ、米国の対応が不十分だったとの回答者はそれを超える58%でした。
対照的に、同盟国との関係改善など、バイデン氏が外交問題で総じてプラスの結果を出すと予想するとした回答は6割に上りました。
バイデン氏の対中政策に関して懐疑的な見方がくすぶる背景には、中国の習近平国家主席に対する深い不信感もあります。ピュー・リサーチ・センターの調査では、習氏が国際問題に関して正しい行動を取るとの回答は15%にとどまりました。
バイデンと習近平 |
しかし米国人が北京の競争相手をどう見ているかには党派間で隔たりがあります。共和党の50パーセント以上が中国を「敵」と見なしている一方、民主党ではわずか20パーセントが同じ見方をしています。
この党派間の隔たりはバイデン政権の中国政策実施に影響を及ぼす可能性があります。バイデン政権はウイグルジェノサイド宣言のように中国に関するトランプ政権の政策の一部を続けていますが、バイデンはトランプ政権のよりタカ派の方策の一部を実行するには至っていません。
2月にバイデンは米国の大学と中国が支援する孔子学院の間でさらなる情報公開を義務付ける保留中だったトランプ大統領令を取り消しました。重要な移行、外交、そして防衛の立場に就くバイデン任命者と候補者の中には中国に共感する見方を示したことのある人物もおり、中国の支援する団体と緊密なつながりを獲得している場合もあります。
先週公表のギャラップ調査では、中国に対して否定的な見解を持つ米国民の割合が79%に上り、調査を開始した1979年以来で最悪の水準となりました。中国よりも悪かったのはイランと北朝鮮だけでした。
4日の初の外交演説で、トランプ前政権が決めたドイツ駐留米軍の削減計画の凍結を発表しました。演説で「重大な競争相手」と位置づけた中国や、ロシアの脅威に対抗するため、欧州や日本など同盟国との連携を強めるとしています。
「米国は戻ってきた。外交を再び対外政策の中心に据える」。バイデン氏は4日、国務省で初めて実施した外交演説で強調しました。
まず示したのは、米国第一を掲げたトランプ氏の外交政策の転換です。バイデン氏は「米国の外交政策や安全保障の優先課題に適合させるため、オースティン国防長官が米軍の世界的な態勢を検証する」と述べ、3分の2に縮小する予定だった駐独米軍再編を検証が終わるまで見合わせると明らかにしました。
駐独米軍の削減は2020年夏、トランプ前政権がドイツとの調整も経ずに決めた経緯があります。ドイツが国防費を十分に負担していないと判断したためで、北大西洋条約機構(NATO)などからはロシアの脅威が増すなかでの一方的な決定に不満の声があがっていました。
オースティン氏は声明で「米軍の態勢見直しに際しては、同盟国や友好国と相談する」とトランプ前大統領との違いを明確にした。駐独米軍の削減計画の凍結はバイデン氏が掲げる同盟国重視の一環といえます。
バイデン政権でアフガニスタンの米軍撤収期限の延期論が浮上しているのも同じ文脈です。アフガンに駐留するNATO加盟国と足並みをそろえ、現地の治安安定に取り組むべきだとの声があります。トランプ氏は海外の米軍縮小という選挙公約の実現を優先し、反政府武装勢力タリバンとの合意に基づく5月の撤収に前のめりでした。歴代米政権は安全保障環境に応じて米軍再編に取り組んできました。ブッシュ(第43代)政権は米同時テロに直面したことで旧ソ連との冷戦を想定した陸軍中心の態勢を見直し、機動性を重んじる非対称のテロとの戦いに軸足を置く米軍のトランスフォーメーション(変革)に動きました。
オバマ政権はアジア太平洋へのリバランス(再均衡)を提唱し、中東や欧州からオーストラリアなどへの配置転換を志向しました。ただ、過激派組織「イスラム国」などテロとの戦いに終止符を打つことができず、構想は道半ばに終わりました。
トランプ前政権は軍備予算を拡張する一方で、日本、韓国には駐留米軍の撤収をちらつかせながら負担増を迫ったこともあります。その交渉は決着せず、バイデン政権に持ち越しました。バイデン氏は最大の競争相手である中国の抑止に向けてどう米軍を配置するのが適切かを探ることになります。
欧州はアジアの安全保障に関与を強めています。ドイツはフリゲート艦の日本派遣の検討を進め、英国は空母クイーン・エリザベスをインド太平洋に送ります。南シナ海への海洋進出など中国の動きが念頭にあるのは明らかです。
バイデン氏は4日の演説で、トランプ氏が重視した中国の人権問題も取り上げました。中国の人権弾圧を明示して「攻撃的な行動に対抗する」と宣言しました。
NATOはバイデン政権発足後で初めてとなる国防理事会を17、18両日にオンラインで開きます。アフガンでの対テロ作戦、NATOが伝統的な脅威に据えるロシアに加え、中国への対処を協議する。トランプ前政権できしんだ同盟再構築に向け、具体的な第一歩となります。
以上、バイデン氏の政策などについても触れてきましたが、ここで気になるのは、バイデン氏は既存のタイプの政治家であり、やはり何かといえば、あれもこれもという総合的対策になる傾向があるということです。
トランプ氏の場合は、どちらかというと中国と対峙することを最優先にしていて、その他は従属的な要素と考えているようでした。そうして、それは、大統領になってから現実をみてそのような考えてに変わっていったと思います。北朝鮮の問題もそうです。トランプ氏は中国の問題が片付けば、北朝鮮の問題も片付くと考えていたようです。
この文脈で考えると、ロシアの脅威も従属的にみていたのだと思います。なにしろ、現在のロシアはGDPは日本の1/5です。人口は、1億4千万人です。これではロシアのできることは限られます。いくら頑張っても、できるのは、クリミア併合くらいであり、その以上のことはできません。ドイツ駐留米軍の削減計画もうなずけるところがあります。ドイツに多数の駐留軍を配置するくらいなら、中国との対峙にまわしたほうが、コストパフォーマンスは高いと考えたのでしょう。
現在のロシアは単独でNATOと対峙することもできません。米国抜きのNATOとでも戦えば、負けるでしょう。そうはいいながら、ロシアはソ連の核兵器や軍事技術の継承者ですから、侮ることはできないのですが、中国の脅威から比較すれば、さほどではありません。
中国は、一人あたりのGDPは先進国と比較すると及ぶべくもないのですが、人口が14億人もあり、国全体の経済では世界第二の大国になりました。世界にはこれを超える国は米国だけです。それを考えると、トランプ氏が中東への関与を縮小しようとしたのも理解できます。
中東といえば、従来は石油の産地ということで、米国にとっも重要な地域ですが、現在の米国は産油国となり、中東の価値は相対的に低下しています。私自身は、トランプ政権末期の中東和平の実現は、無論中国との対峙を最優先に考えてのことだと思います。
これを考えると、トランプ氏が中国問題を最優先するのは当然といえば、当然です。そうして、トランプ氏はバイデン氏とは異なり実業家です。実業家の特性として、物事に優先順位をつけて、会社を経営します。優れた経営者程のそのような傾向が強いです。
なぜそうなるかといえば、いかに大きな企業であっても、ヒト・モノ・カネ・情報・時間など使える資源は有限だからです。あれもこれもと、同時に実行すると、結局何もできなくなり、会社は衰退します。
しかし、その時々で3年から5年で、最優先の問題・課題を解決していくと、うまくいくことが多いのです。これは、企業でマネジメントをしている方なら、多くの人が経験していると思います。優先事項が5つくらいあったとして、その最上位項目を片付けると、ほとんどの場合、上位三項目くらいは自動的に解決するか、そこまでいかなくても、わずかの手間で解消できることが多いです。物事に優先順位をつけなくても、民間企業のように倒産することのない政治家や官僚との大きな違いです。
トランプ氏は大統領になって、超大国米国ですら、使える資源は有限であり、政治家や官僚の得意とする総合的対策をしていては、絶対にうまくはいかないと考えるようになり、中国との対峙を最優先に考えるようになったのでしょう。
もちろん、国でも企業でも、最優先事項だけ実施するというわけにはいかず、他のことも予算をつけて実行していかなくてはならないです。しかし、優先順位をつけなければ、何も成就しません。これは、戦時体制を考えればわかります。特に総力戦などの場合、あれもこれもと考えていれば、戦争に確実に負けます。負けてしまえば、本末転倒です。まずは、戦争に勝つことを最優先にしなければなりません。
あれもこれもという傾向は、党派にかかわらず、オバマ政権、ブッシュ政権、クリントン政権など過去の政権をみていてもそういうところがありました。トランプ政権だけが、例外だったと思います。バイデン氏もこのことに早く気づき、中国との対峙を最優先にすべきです。
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