2021年4月11日日曜日

ケリー米環境特使、中国訪問か サミット協力取り付け 米紙―【私の論評】ケリー氏はバイデン政権の対中政策の試金石となる(゚д゚)!


インド財務省を出て手を合わせるケリー米大統領特使=6日、ニューデリー

 米紙ワシントン・ポスト(電子版)は10日、バイデン政権で気候変動問題を担当するケリー大統領特使が、近く中国・上海を訪問する見通しだと報じた。

  実現すれば、同政権閣僚級による訪中は初めてとなる。米国が22、23日に主催する気候変動の首脳会議(サミット)を控え、世界最大の温室効果ガス排出国である中国の協力を事前に取り付ける狙いがあるとみられる。

【私の論評】ケリー氏はバイデン政権の対中政策の試金石となる(゚д゚)!

ケリー氏については、その胡散臭さをこのブログにも掲載したことがあります。その記事のリンクを以下に掲載します。
ボトムアップのバイデン政権、「親中」否定の動きは歓迎も…気にかかるケリー特使の動向 下手をすると、中国に人権を売りかねない ―【私の論評】いざという場合には、QUAD諸国はケリー氏をペルソナ・ノン・グラータに指定してでも結束せよ(゚д゚)!
ケリー大統領特使(気候変動問題担当)

詳細は、この記事をご覧いただくものとして、この記事から一部を引用します。
ケリー当時国務長官は、ジョンズホプキンス大学のSAISで行った米中関係に関する演説において、米中関係の強化がリバランス戦略の鍵になる要素であることに疑いの余地は無いとして、「今日の世界において、最も重要なのは米中関係であるということだ。米中関係が21世紀の姿を決める大きな要因になる」と述べていました。

クリントン国務長官の退任以降、米国のアジア回帰が変質していることがしばしば指摘されていましたが、ケリーが演説(2013年1月24日、上院公聴会での演説のこと)で提示した4つの柱は、改めてそのことを示していました。
オバマ政権が、中国を刺激しないよう、事実上の「中国封じ込め」としてクリントンが提示したアジア回帰を変容させた、という分析は、その通りでしょう。当時のオバマ政権が言う「アジア重視」は、もはや「中国重視」であると言っても過言ではなかったように思います。ケリー氏が4つの柱の一つとして挙げている気候変動対策については、早速、11月の米中首脳会談で、両国の削減目標で合意に達し、世界の耳目を集めました。
結局アジア回帰と語ったオバマ政権が実際には中国重視の政策に転じたことの理論的背景をケリー氏が主張していたということです。これは、現在の我々からも見逃せない点です。

さらに、この記事では、現在のケリー氏によってバイデン政権が再度対中宥和政策に傾く可能性を指摘しました。その部分を以下に引用します。

"
いずれ、気候変動対策の大統領特使になった『親中派』のジョン・ケリー元国務長官が中心に出て、対中宥和を打ち出す可能性はかなり高いです。日本としてしては、要注意です。

昨日の記事では、温暖化について以下のように述べました。
温暖化は中国にとっての格好の隠れ蓑になるかもしれません。今の中国は昨日も述べたように失業者が2億人ともされています。そうなると、消費活動は停滞し、産業活動も停滞するはずです。にもかかわらず、中国は昨年の経済成長は2.3%であり、奇跡的なV字回復をしたことにしています。

経済が停滞した、中国では今後温暖化目標など、何もしなくても達成できる可能性が大きいです。しかし、習近平は中国の努力によって、達成したように見せかけるでしょう。

中国は、故がなく、経済成長2.3%の数字を出すはずはありません。習政権は、これを前面に打ち出し、中国が温暖化で大成功したように見せかけるつもりかもしれません。

この大成功をケリー氏が利用して、中国への宥和政策への転換をはかる可能性はかなり高いです。

"
もしこの筋書き通りになれば、日本やEUそうして、米国自体も温暖化目標達成に苦しみ、中国は難なくこれを達成し、しかもこの方面での存在感を増すことになります。さらに、バイデン政権もオバマ政権のように中国に対して融和的になれば、目も当てられない事態になります。

この記事には、ケリー氏の胡散臭さをあげましたが、もう一つ書き忘れていたことがありましたので、以下に掲載します。

2014年8月東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラムなどに出席するためミャンマーの首都ネピドー(Naypyidaw)を訪れていた米国のジョン・ケリー(John Kerry)当時国務長官は、米国商務省資産管理局による制裁対象(Specially Designated Nationals:SDN)にリストアップされている人物がオーナーのホテルに宿泊したとして、欧米諸国で話題となっていました。

当時のテイン・セイン大統領が主導する政治改革に対し、米政府は長期にわたる制裁をほとんど解除しました。しかし、ミャンマーへの投資を約束した上で、一部の個人や企業に対しての制裁は残していました。

SDNリストに載る企業や個人は、かつての軍事政権との密接な関係により多額の利益を得ているとされ、米企業と事業を行うことを禁止されていました。実際のところ、ミャンマーの大手企業や有名企業の多くがSDNにリストアップされていました。

皮肉にも、当時のケリー国務長官が宿泊したのは高級ホテルであるレイク・ガーデンで、制裁リストに載るザウザウ氏(Zaw Zaw)が所有するマックス・ミャンマーが運営していたのです。

レイクガーデン ネピドー

ケリー国務長官はネピドーで、ミャンマーに対する米政府の制裁が残されていることの重要性を主張しました。しかし、皮肉にも自身がブラックリストに載るホテルに宿泊したことで、メッセージは何の意味も持たないものになってしまったのです。

当時の国務省報道官はケリー国務長官はいかなる規則にも違反していない旨を伝えていました。しかし、これは規則違反だけの問題だったのでしょうか。

さて、2021 年 2 月 1 日に発生したミャンマー国軍による政権掌握を受け、米国バイデン大統領は、即日、「同国の民主化進展の逆行 により、米国は直ちにわが国の制裁法を再検討の上、適切な措置を取らざるを得ない」との声明を出し、米国が 2016 年以降解除 していたミャンマー向け経済制裁を復活させるかどうか、注目されていました。

同年 2 月 10 日、バイデン大統領は、ミャンマー関連の制裁に関する大統領令 に署名し、同 11 日、米国財務省外国資産管理室(OFAC)は、大統領令に基づき、ミャンマー の軍事関係者や企業等を、資産凍結等の制裁対象となる個人や組織等のリスト(SDN リスト)に掲載しました。

また、同日、米国商務省産業安全保障局(BIS)は、ミャンマーの軍関係当 局に対する輸出、及び、ミャンマーが米国の友好国であることを理由に認められてきた機微度の高い貨物、ソフトウェア及び技術 のミャンマーへの輸出規制を強化することを公表しました 。

このSDNリストを過去に台無しにしかねなかった、ケリー氏です。その彼が、バイデン政権閣僚級による最初の訪中をするのです。

ケリーがとのような話をするのか、どのような約束をするのか、要注意です。

バイデン政権の対中国政策は、最近では「言葉」では中国に対して厳しいことを言っていますが、言葉では厳しいことはいえます、かつてのオバマ政権もアジアに回帰するとして、リバランス政策を実行すると言葉ではいいましたが、結局はそうはなりませんでした。

      2014年エアフォースワンに乗りこむオバマ大統領。この時の
      アジア歴訪は、「リバランス」への理解を求める旅だった

言葉だけで、行動が伴わなければ、その言葉はなかったのと同じです。バイデン政権の対中政策もどうなるのか、まだわかりません。

しかし、これを早めに知る方法があります。それは、ケリー氏の発言や行動に注視することです。

バイデン政権内でケリー氏が頭角を現し、中国に関連して様々な発言や行動をすれば、バイデン政権は中国に対して宥和的になるでしょうし、ケリー氏が凹んで、目立たない存在になれば、バイデン政権は中国に対して厳しく対応するようになるでしょう。

その意味で、ケリー氏はバイデン政権の対中政策の試金石になるとみるべき。


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